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パーソンズ美術大学留学記 Week9 #080

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毎日学んだことをメモしているツイートを引用しながら、2021年10月25日~10月29日(Week9)を振り返ってみます。

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Design-Led Research(Intervening in Systems編)

「なんでその人にインタビューしたの?」「なんでそのデザインツールを使ったの?」という問いに明確に答えられる必要があると教わりました。「なんとなく」で突き進むと、デザインプロセスは無秩序になってしまうからです。

森の中を歩く時、目印を残して進んでいくのに近い気がします。デザインプロセスでは、往々にして行き詰まって、次に何をすればいいのかわからなくなります。迷子です、遭難です。そんな時、「なぜその手法を選んだのか、どうやってここまできたのか」を明確にしておいた方が、原点に戻りやすいのです。


また、「Thick Data」という言葉も学びました。一般的には「Big Data」で統計処理をすることが、新しいインサイトを生み出す方法と思われています。しかし、BigDataはどこまでいっても「統計学」の延長線上にあり、最適化が可能であっても、そこには本質を捉える「意図」が欠けているのではないかという疑問があるようです。

一方、エスノグラフィー的なアプローチで得られた「Thick Data」と言われるデザイナーが肌で感じた感覚を大事にします。それは統計的に言えばサンプル数が足りないと言われるかもしれないけれど、問題の本質を捉えたインサイトかもしれないのです。定量化できないことをないがしろにする科学に対するデザインからのアンチテーゼですね。以下の動画が参考になります。

TED Talkの公式サイトからも見れます。


さらに、デザインを考える時に、ミクロとマクロの両方の視点を持つべしとも教わりました。プロトタイプとしてすぐに作れるアイデアでありながら、社会問題の解決にも貢献できそうかどうかを見据えます。この考え方には、世界はフラクタル的な構造であるという前提もあります。もしこの「フラクタル仮説」が正しいならば、ミクロな解決策を生み出せば世界全体にも同様に適応できるはずなので、結果的に社会全体の問題解決に繋がるというわけです。


リモートでスペインの学生と英語でディスカッション

お互いに「英語でなんて言うのかな?」とつぶやきながらコミュニケーションを取っていました。しかも、学びたてのデザイン思考を駆使してアドバイスをするのは中々大変でした。

私は日本で「コーチング」の授業を受けたことがあったので、コーチング的なアプローチをとり、こちらからはできるだけ支持をしないことを心掛けました。コーチングが得意なのかどうかはまだよくわかりませんが、少なくともやっていて苦ではなく、コーチ的な立ち位置は楽しいなと感じました。

来週にもまたミーティングがあります。私が参加することが、プロジェクトを良くする役に少しでもたっていれば嬉しいですね。議論をかき乱す厄介な存在になっていないことを祈ります。


デザイナーは、ヒーローや救世主ではない

デザインは大きく分けて、社会問題の発見・理解問題解決の考案・実装のの2つの軸があります。今はこの2つを同時に学んでおり、1年生の秋学期は特に社会問題の発見・理解に重きを置いている印象があります。

こうして様々な社会問題を学んでいると、だんだん気が滅入っていく自分に気づきました。忙しさや疲れの蓄積などの他の要因からくるものかもしれませんが、社会問題を考えすぎることが一因であることは間違いないと思います。社会の闇の部分を見すぎるというか。「私にできることなんて何もないのではないか」と無力感に苛まれるというかなんというか。

今週の授業で言えば、「資本主義と労働環境」「脱植民地化」をメインで扱いました。どちらも世界規模の社会問題で、今すぐに対策ができるわけではないし、個人でできることにも限界があります。ちなみに、私が労働環境と聞いて真っ先に思い出すのが、チャップリンの「Modern Times」です。

デザイナーの仕事の中は世界の問題を発見することであるという側面もあります。あえて世界の嫌なところ・不便なところを探すという、粗探しをしている感覚に陥ることがあります。しかも、対象とするのは「Wicked Problems」と言われるような因果関係が不明瞭で解決策もない問題ばかり。しかも、デザイナーはこうした社会問題を解決する責任を負っていてるかのようなスタンスで向き合うことを学んでいます。

ただ、「私に任せろ、解決してみせる」的な自意識があまりにも自分の染みついてしまうと、日常生活に支障をきたしそうで少し怖いと感じることもあります。こう感じるのは、私が「Think Clearly」を愛読書にしているからかもしれません。「自分にコントロールできることだけに集中する」というストア派哲学の考え方や、世界には問題が溢れているのだから、世界に責任を感じる必要はないというスタンス。こうした考え方が好きな私にとって、今学んでいることは正反対に思える時もあります。私がデザイナーとして働くようになったら、「何をするかよりも、何をやめるか」「個人レベルでできる行動の提案」を重視したデザインをしていくことになるのだろうなと予感しています。

ちなみに、アメリカに来てからというもの、家にテレビがないこともあって、ニュースをまったく見なくなりました。日本やアメリカの時事ネタをほぼ知らない状態だと思います。でも、この状態が自分の精神衛生上かなり快適です。


まとめ

授業と授業外でのミーティングが朝から晩まであり、目が回る忙しさです。来週には春学期の科目登録が始まる(!)ので来年のことも思い描きつつ、ひとまず今週末はゆっくり休みたいです。


今週の英語表現

Juicy

「役立つ情報が多い」ことを表す形容詞です。果汁たっぷり、肉汁たっぷりなイメージですかね。

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