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パーソンズ美術大学留学記 Week8 #076

自己紹介はこちら

毎日学んだことをメモしているツイートを引用しながら、2021年10月18日~10月22日(Week8)を振り返ってみます。

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Design-Led Research(Power & Influence Mapping編)

「場を作るのがデザイナーの役目」というのが、Transdisciplinary Designで学んだマインドセットです。今回はこのマインドセットをどう生かすのかを考えることがテーマでした。

「場」をデザインする前に、現時点の人間関係・力関係を理解することが必要です。外からノコノコやってきて「こうした方がいいですよ」なんて言っても提案したデザインを採用してくれないでしょう。それよりも前に、誰が困っているのか、誰が「権力」を持っているのかという集団内の力関係を理解することから始めます。

その後、リーダーシップを発揮するとか、命令する、押し付けるという方法を取らず、いかに自主的に機能する「場」を生み出せるかがデザイナーの腕の見せ所です。押し付けでもなく放任でもない「Just Enough Structure」と呼ばれる「ちょうどいい仕組み」のデザインを目指します。前回の「植物を育てる」例と同じで、デザイナーがするのはあくまで「環境を整えること」。「さりげない優しさ」をデザインにしのばせるデザイナーになりたいです。

ところで、別の授業内で秋学期の半分を振り返る機会があったのですが、ほとんどがDesign-Led Researchへの不平不満(笑)。というのも、ペースが早すぎて理解が追いつかないのです。たしかに、週2回の授業に加えて、授業外でのグループワークを踏まえた発表を求められるので結構ヘビー。しかも、毎週扱うテーマが変わっていきます。

もちろん、今のスタイルが合っていると思っている人もいると思いますが、目まぐるしい変化にはついていけない人も生まれます。先生たちも「授業スタイルのデザイン」を常に試みているようなので、何か変更・改善がなされるのかにも注目したいです。


Ecosystem of Hate

人類の長い歴史の中では、血縁関係のある人だけで構成される小さな集団内で一生を過ごすことがほとんどだったはずです。しかし、文明が進むにつれて、工場での「労働力」になるために故郷を離れて都市に行くという生き方が生まれました。こうして、親や兄弟との生活をしなくなることが孤独感に繋がり、見ず知らずの人と一緒に働くというストレスが生まれました。

つまり、血縁関係以外の人と関係を築くことは人間の本能に組み込まれていない恐れがあるのです。「見知らぬ人=敵」という公式が成り立たない現代では、他者との人間関係の築き方を教育によって後天的に学ぶ必要があるのでしょう。しかし、現代の教育現場では「良い学校に進学する、良い会社に入社する」ための教育が重視され、人間関係を学ぶ機会は珍しいと思います。相手を思いやる「慈悲の心」を学ぶ機会をデザインできないかと考えたりしました。

また、発火する脳細胞同士が配線されるという性質であるヘッブの法則「Cells that fire together wire together」も学びました。自分で反芻することで、嫌な記憶や考え方をさらに固着してしまうという負のループに陥ってしまうことを、脳科学的に説明しています。「一度身につけた習慣や癖は、それが良いか悪いかに関わらず、中々抜け出せない」ということの説明に使われる法則です。

来週からは、「Design Strategy for Reconciliation(和解のための戦略をデザインする)」をテーマにアウトプットをしてみることになっています。紹介されたのは「金継ぎ」された器。割れてしまった器でも金を使うことでその「傷」が味になるというのは面白い捉え方だと思います。

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「What's your favorite scar?(お気に入りの傷は?)」という質問を聞いたことがあるのですが、似たような考え方ですかね?(73 Questions With Margot Robbie | Vogueの2:10から)

マイナスイメージがある体の傷を「お気に入り」と言える思考は素敵で、人生を楽しくしてくれそうです。心の傷・トラウマや過去の嫌な記憶も自分の一部であると受け入れられたなら、もっと楽に生きていけるんだろうな、と思ったりしました。それが難しいから悩むんですけどね。


Transition Design

「Design for Sustainable transitions」をテーマにしたパネルディスカッションがありました。Transition Design に携わるデザイナーの根本にあるのは「このままじゃダメだよね」という問題意識のようです。

一方、何がダメなのかは人によって違います。「資本主義は限界だ」と思う人もいれば、「植民地化がダメだった」と思う人もいます。Transitionの方向性も、「原点回帰派」と「未知の世界派」がいる気がします。目指す未来も実現するための手段も人によって異なる状況で、「Transition Design」と言っても捉え方は人それぞれに感じました。何だか掴みどころのないように感じているので、まだまだ調べる必要がありそうです。

ただ、過去の人類の歴史が現在の世界を形成してことは事実です。ならば、今の我々の行動の結果が未来の世界を形作っていきます。ひとりひとりにできることは小さなことかもしれませんが、デザイナーとして未来のために何ができるかは常に自分に問い続けたいです。


留学で英語は上達する?

留学で気になることと言えば、「アメリカに住むと英語は上達するのか?」という疑問。ニューヨークで2ヶ月住んでみての経過報告です。

リスニングについては、英語を聴くことが当たり前になってきました。アメリカに来たばかりのころは、1時間も聞いていると英語がただの音に聞こえて意味が理解できなくなっていました。でも、今は一日中英語を聴いていても、集中力が切れることがなくなってきました。英語で話しかけられることへの恐怖心、聞き取れない部分があることへの不安感といったことも減っている気がします。先生やクラスメートなど毎週声を聞いている人は話し方や内容の傾向を掴んできたのか、ほぼ聞き取れるのですが、初めて会う人の場合は半分も聞き取れないこともあるので、「慣れ」が重要な気がしています。

スピーキングに関しては、勇気を出して発言する機会が増えてきました。思い切って自分の考えを言ってみると、「それいい言葉だね」と言ってくれることも多くて嬉しいです。きっと「カタコト」に聞こえているんだろうけど、相手の返事や対応がきちんと返ってくるということは、自分の言っていることは一応伝わっているのでしょう。とりあえず意思疎通ができていることに安心しています。

もちろん、「もっと詰まることなく話したい」「ネイティブみたいな発音とスピードで話したい」とは常々思います。でも、本格的に英語を使うようになってまだ2ヶ月。そんなにすぐに上達するはずがありません。

何度も聴く単語や言い回しは自然と覚えるので、教材を使って学ぶような「勉強」はしていません。赤ちゃんが言語を覚えるのと同じ方法で、体で覚えていくスタイルですね。基本的な文法などの知識は大学受験のためにしっかり培ってきたはずなので、今はひたすら英語の荒波に揉まれながら実践あるのみで英語力を鍛えています。「1日1回は授業で発言する」などの個人的な小さな目標を設定して、地道に続けていくことにしています。海外に住むことの最大のメリットは、学んだ英語表現をすぐに試せることですね。


まとめ

Week8が終了し、秋学期も折り返し地点です。2年間の授業で言えば、1/8が終了したことになります。自分がデザイナーとして成長しているのかどうかはハッキリとはわかりませんが、毎日が刺激的で日々新しいアイデアが浮かんでくる今の生活は恵まれていると感じます。それでは、また来週!


今週の英語表現

Identity are not built by oneself.

血縁関係と都市生活についての発言を私がした後で、あるクラスメートが教えてくれた言葉です。「自分が何者か」は他人との関係性で浮かび上がってくるものです。親と子、先生と生徒、店員と客などなど。「自分が何者か」を一人っきりで考えていても答えには辿り着かないのも当然かもしれません。「相補性のある世界」を表しているようで、なんだかエヴァい。

いただいたサポートは、デザイナー&ライターとして成長するための勉強代に使わせていただきます。