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トイレトレーニングとは、人格形成だった!

みなさんは、どこでうんちをしますか?
いきなり変な質問ですみません。そんなのトイレに決まっていますよね(笑)

私たちは、生まれたときは自分でうんちの後始末をすることはできません。
みんな、うんちもおしっこもしっぱなしです。
でも、いつまでもしっぱなしというわけにはいきませんよね。成長するにつれて、自分でトイレに行ってうんちをすることを身につける必要があります。
トイレでうんちをする行為は、本能的に身につくものではなく、意識的に身につけるべきことなので、ほうっておいて勝手にできるようになることはありません。

そこで今回は、トイレトレーニングの大切さについて説明します。とはいっても、トイレトレーニング手法の解説ではないですよ。
実は、子どもたちは「トイレでうんちができるようになること」をとおして、とんでもなく大切なことを習得しているのです。

それは、自分がどう感じているかを意識できる能力(メンタライズ)の習得です。
言い換えると、トイレトレーニングは人格形成にかかわる超重要なプロセスなのです
こんな重要なことがトイレトレーニングに隠れていたなんて驚きです。

このプロセスについて教えてくれたのは、東京で子どものクリニックを営む精神科医のS先生です。
S先生によれば、うんちやおしっこをとおした親子のコミュニケーションは、生まれた時から始まっているとのことです。

赤ちゃんにできることは、うんちやおしっこをしたあとに大声で泣くことです。泣くというのは「うんちやおしっこが出たよ!」と伝えているのではなく、ただ、ただ「不快で気持ち悪いー!」というSOSです。
このSOSを受け取った人は、おそらく「今日もいいうんちでよかったねー」とか、「うんちがおしりにくっついて気持ち悪かったのねー」という言葉をかけながらオムツを替えると思うのですが、この語りかけが重要なのです。

赤ちゃんは自分の身体で感じている感覚を、大人が言葉にして繰り返し話しかけてあげることで、自分の感情を意識できるようになります。これを感情の社会化と言います。また、体を心地よい状態にしてもらうことで安心感を獲得するのです。

赤ちゃんは生後6か月ぐらいまでには、うんちをすると気持ちいいと感じられるといわれています。しかし、もしSOSを無視したり、大人が嫌々な素振りを見せながら対応してしまうと、赤ちゃんはうんちがおしりにくっついている不快感を自分の中で処理しようとします。つまり不快感を感じないように心の底に押し込めたり、うんちをすること自体を我慢するようになってしまうのです。

それから、決まった時間に機械的におむつを替えることは一見、効率的でよさそうに思いがちですが、逆効果です。なぜかというと、赤ちゃんの状況を無視しているからです。大切なのは、赤ちゃんの気持ちを非言語で読み取ることです。

繰り返しになりますが、トイレトレーニングには人格形成という重要なミッションが隠されています。

うんちやおしっこをしたくなる感覚や、おもらしをしてしまったときの不快な感覚は、脳の脳幹部や大脳辺縁系が担っています。一方で「うんちが出てスッキリしたね」といった身体感覚を他者に言葉で伝える能力は前頭葉の中の前頭前野の部分が担っています。
つまり、トイレトレーニングを通じて学んでいるのは、単に「トイレでうんちができるようになること」だけではなく、「身体感覚」と「言葉で伝える」という2つのことをつなげる大切な能力なのです。

トイレまで間に合わなかったり、うんちをしたいと上手く言えなかったりするのは、子どもが甘えているのではなく、ましてや親の言うことを聞かないわけでもありません。
身体で起きていることを伝えるための能力を習得しようと必死に努力している最中なのです。だからこそ、私たち大人は、子どものことをしっかり見てあげることが大切です。

うまく出来たときは、ほめてあげることが必要ですし、失敗したときは、「おしっこが出て、ぬれちゃったね」や「うんちが出て気持ち悪かったんだよね」などを言語化することが大切です。
失敗したときに、躾だからといって厳しく叱ったりすると「うんちやおしっこは悪いこと」として、間違ってメンタライズされてしまいます。また、失敗した状態を放置してしまうと、子どもは感情の危機を脱するために自分で何とかしようとします。どのようにするかというと、自分の心を守るために乱暴になるか、心を閉ざしてしまうのです。身体で起きていることと感情が上手くつながらないので、発達性トラウマ障害になることも懸念されます。

メンタライズ能力を育てるのは、子どものまわりにいる大人の役目です。
うんちを介したコミュニケーションが人格形成に大きく関わっているとは本当にびっくりですが、このことを理解していればトイレトレーニングに対する考え方も変わると思います。
保護者のみなさんは、ぜひこの時間を大切にしていただきたいです。


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