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11月15日の手紙 美術館に行こう


拝啓

先日、ひさしぶりに美術館へ出かけました。
以前は、
もっと頻繁に行っていたものですが
コロナ禍ですっかり、出不精になってしまいました。
久々に、えいや!と遠出をすることにしたのは、
どうしても、長沢蘆雪展をみたかったのです。

長沢蘆雪(ながさわろせつ)とは江戸時代の画家です。円山応挙の弟子で「奇想の絵師」と呼ばれています。
長沢蘆雪の子犬の絵を教えてもらってからなんと愛らしい絵だろう…と思ってきました。

長沢蘆雪の子犬たち 
美術館で購入したポストカード


写実的というよりはどこか戯画的な子犬たちがころころと重なりあったり、跳ね回ったりする様子は、心慰められるものがあります。
整った美しさだけではなく、生きているもののでこぼこした可愛らしさが長沢蘆雪の子犬にはある気がするのです。

連休中は混むだろうと思い、平日に行きました。
チケットはオンラインで調達です。最近は展覧会、美術館はオンラインチケットを利用する方がスムーズなのです。今回行った中之島美術館は公式サイトからオンラインチケット購入先までリンクが貼られていました。オンライン決済するとメールにQRコードのURLがやってきます。
今回は、初めて行く美術館です。下調べをすると、いくつかの駅から、少し遠いけれど歩けない距離ではない15分〜20分の立地です。まあ、なんとか行けるでしょう。下調べというにはあまりにも適当ですが、それくらいにしておかないと、思い切って出かけることができません。

当日はスマホの地図アプリを起動してその誘導通りに歩きました。この日は暑く、秋らしい格好だと、じんわり汗ばむほどでした。
中之島美術館は、近代的な立派な建物で、非常に洒落ています。チョコレートケーキのような黒い建物でした。
また地元の小学生と思われる集団が別入り口の方へ歩いていきます。開館5分後ぐらいに入ったのですが、それでもチケットカウンターはそこそこ混雑していました。
平日に美術がそれなりに混んでいるのは安心するような残念なような気持ちになります。この先のことを考えれば安心するのが良いのかもしれません。
平日に仕事をしなくてはならないというルールがなくなって、行きたい時に美術館に行ける世の中のほう文化的といえば文化的な世の中ですから。
エスカレーターに2度ほど乗って、目当ての展示室まで行きます。
事前に展示に行った人から「音声ガイドありきの展示と言えるかも」とアドバイスをもらったので、音声ガイドを借ります。
スマホの1.5倍はありそうなとても重い、機械を首からぶら下げ、イヤホンをつけてもらいます。
音声ガイドというよりは、無線機といわれたほうがしっくりきそうなフォルムで、無骨な灰色です。電卓のような数字のボタンと表示窓、そして再生ボタンと停止ボタンが付いています。
QRコードを呼び出し、かざして入場します。
さっと入れました。映画チケットでQRコードを使う場合は、ネットが繋がらなくなった時のために、スクリーンショットを撮っておきます。今回も念の為にそうしておいたのですが、スクリーンショットをかざして無事入場できました。
今後はこの形が多くなりそうです。
便利だし、無くすことも、ほとんどありませんから。
手帳にチケットの半券を貼るような文化の人だけは困るかもしれません。
ですが、そういう人に憧れていたけれど、結局そうなれなかった人間としては、チケットがない方が清々しい気もします。映画の半券、チケットの半券をうまく手帳に貼る才能がないのに、それらを集めていると、妙な後ろめたさがあります。それなら最初からなければいいわけです。
素晴らしい!
展示されているあの目録も、紙でもありましたが、データでもアクセスできるようになっていました。
これも、チケット同様、いい傾向です。

さて、今回の展示は、長沢蘆雪だけでなく、師匠の円山応挙、同世代に生きた他の画家たちの作品も織り交ぜたものでした。
長沢蘆雪は円山応挙のもとで真面目に、写生的な絵を修行をしているのですが、
長沢蘆雪と円山応挙の絵が並んで展示されていると、個性というもののは隠しきれないものだということがわかります。
精密な描写をしていても、そこから、はみ出んばかりの個性が垣間見えるのです。
楽しみにしていた子犬たちの絵も可愛らしかったですが、幽霊画(目がとても怖くて素晴らしい)や無量寺障壁画の龍図(圧倒的なパワー)、寒山拾得図、蕗図などの方が印象に残りました。
長沢蘆雪は研究熱心な画家で、様々な画風や手法やデザインを試していたのだろう、本当に絵が好きなんだろう、と感じました。

音声ガイドは借りてよかったです。展示は解説が控えめでしたので、あった方が断然、絵の背景がよくわかります。
こういうところでは、お金を出すべきだなぁと思いました。
さて、
長沢蘆雪は、40代で、旅先で不審な亡くなり方をしています。毒殺とも、自死とも言われていたそうで、普通な亡くなり方ではなかったらしいとのこと。一体何があったのでしょう。
伊藤若冲が84歳、円山応挙が62歳で亡くなったことを考えるとまだまだやりたいことはあっただろうと思います。
あれだけ、生き物のエネルギーを描いているひとが若くして亡くなるというこの世のままならなさ…。

実物を見て、さらに長沢蘆雪に興味が湧きました。
ミュージアムショップはかなり充実しており、色々とグッズを買ったのですが、何故か怖気付いて、図録を買わなかったのです。あれは、買うべきでした。
図録は一期一会。行ったら買った方が良いですね。
久しぶりの美術館、インプットが減っていたので、良い刺激になりました。
時々は面倒くさがはずに、遠出しなくては。





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