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『ひまわり』緊急上映に寄せて

イタリアを代表する名優ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニが競演し、名匠ヴィットリオ・デ・シーカが監督、日本でも大ヒットを記録した不朽の名作『ひまわり』(70)。

本作は1970年に日本ヘラルド映画が日本劇場初公開。弊社では2011年にフィルムにて全国リバイバル公開し、2020年に日本劇場公開50周年を記念し、弊社独自でレストアしたデジタル素材にて『ひまわり 50周年HDレストア版』として再び全国公開しました。

【STORY】第二次世界大戦下のイタリア。ジョバンナ(ソフィア・ローレン)とアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)は、美しいナポリの海岸で恋に落ち結婚する。その後、アントニオは厳しいソ連の最前線に送られ行方不明になってしまうが、ジョバンナは何年経っても戻らない夫のことを生きていると信じて疑わない。終戦後、手がかりもないままアントニオを探しに単身ソ連へ渡るジョバンナ。しかし、広大なひまわり畑の果てに待っていたのは……。

2020年の公開時、すでにコロナ禍だったため緊急事態宣言により公開延期となり、無事なんとか上映ができたという一幕がありましたが、やはり平常時に比べると映画館には行きにくいという方が今以上に多かったように思います。
2022年2月24日、ロシアがウクライナへ軍事侵攻を開始したという報道がありました。それを受け、ふと『ひまわり』の一番有名なひまわり畑のシーンはウクライナで撮影された事を思い出しました。
在ウクライナ大使館のHPにも、撮影地はキーウ(キエフ)から南へ500kmほど行ったヘルソン州と言われているとの記載もありましたのでTwitterで発信をしたところ、多くの反響を頂きました。(撮影地については4/12追記情報以下ご参照下さい)

※4/12追記※
日本劇場公開当時よりの情報および在ウクライナ日本国大使館の情報で、ひまわり畑の撮影地はこれまでヘルソン州としておりましたが、NHK鹿児島放送局の茶園ディレクターによる元モスクワ支局勤めというご経験と人脈を生かしたご取材ののち、撮影地はポルタワ(ポルタヴァ)であると判明致しました。以下記事及びニュース動画ご参照下さい。
https://www.nhk.or.jp/kagoshima/lreport/article/000/08/

美しい一面のひまわり畑の映像と第二次世界大戦の悲劇の物語、TVやSNSで伝えられるウクライナ爆撃の模様が重なり、『ひまわり』を観返してみたところ、以下のようなセリフを再発見しました。
ソフィア・ローレン演じるジョバンナが、出兵したまま帰らぬ夫を探しに行くひまわり畑のシーンです。

イタリア兵とロシア兵が埋まっています
ドイツ軍の命令で穴まで掘らされて
ご覧なさい ひまわりや どの木の下にも麦畑にも
イタリア兵やロシアの捕虜が埋まっています
そして無数のロシアの農民も 老人 女 子供……

2020年公開時には、このシーンは“過去に起きた痛ましい歴史”を物語るシーンでした。2022年3月14日現在、ヘルソン州はロシアによって制圧されているという報道があります。
ひまわり』は第二次世界大戦の悲劇を描いた1970年の映画ですが、今起きている事と非常に強い共通性を感じました。悲劇を繰り返している事、現在進行で本作のように人々を別つ争いが生じている事、その先に待ち受けているかもしれない事――。

弊社は映画配給会社なので、いかなる時も業務上では映画を公開する事しかできませんが、今『ひまわり』を上映する事で、皆さんに受け取って頂けるものがあるのでは、何かできるのではないかと思いました。
その数日後、一部の劇場さんに上映のご相談を差し上げたところ、意図を汲み取って下さり、すぐにご承諾頂けたため、緊急上映が決定しました。
株式会社アンプラグドとして、上映から得た収益の一部を今回の戦禍に於ける人道支援のための寄付に充てる事も同時に決まりました。

そこからの日々、情勢は厳しさを増す一方で、当初上映が決定した際は「この上映時までにはどうか停戦していたら」と願っていたものの、2022年3月14日時点ではそれは叶いませんでした。
緊急上映の反響も大きくなっていき、全国の劇場さんや、ホールなどでの自主上映のお問い合わせも急増、上映決定箇所は数日間で当初の約10倍に至るまでとなりました。
劇場さんや上映会によっては、独自にそれぞれの寄付先を掲げていらっしゃるところもありますし、通常料金での上映も、割り引いての上映もあります。

大切なのは、今、劇場やホールで不特定多数の方々と共に本作を鑑賞頂き、同時に各々のご感想を持ち、考える事だと思っております。
中には、戦地と化した場所や、戦う事になってしまった方の事や、被害に遭われている人々に想いを馳せる方もいるかもしれません。大好きな映画が戦争と結び付けられた事で複雑な思いを抱かれる方もいるでしょう。本作はメロドラマの傑作でもあり、恋愛映画でもあるからです。それもまた一つの感想です。

映画は非常に雄弁であり、そこから得るものは十人十色です。
この機会を、意味のある上映にできれば、意義のある映画体験にして頂ければ幸いです。

上映劇場情報などは公式HPに随時掲載しております。

また、一部チラシ裏面に来場者先着特典DVDの記載がございますが、2020年公開時の情報となりますため、今回の実施はございません。申し訳ございませんが予めご了承下さいませ。
DVDは差し上げられませんが、劇場で共に体感し、お持ち帰り頂ける想いを大切にして頂ければと思います。

※6/27追記※
2022年3月以降、ウクライナ軍事侵攻をきっかけとした映画『ひまわり』緊急上映につきまして、この度、弊社アンプラグドの収益の中から4,130,000円を日本赤十字社、および国連UNHCR協会を通じて寄付致しました。 ご鑑賞頂いた皆さま、ありがとうございます。


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