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盲目的な恋と友情/辻村深月 感想

辻村さんの書くおはなしが
とっても大好きなんだけれど
この作品は結構心に重くのしかかってきた。

せっかく読んだので
好きだなって思った表現3つと感想を綴る。


あらすじは以下の通りだ。

タカラジェンヌの母をもつ一瀬蘭花は自身の美貌に無自覚で、恋もまだ知らなかった。だが、大学のオーケストラに指揮者として迎えられた茂実星近が、彼女の人生を一変させる。茂実との恋愛に溺れる蘭花だったが、やがて彼の裏切りを知る。五年間の激しい恋の衝撃的な終焉。蘭花の友人・留利絵(るりえ)の目からその歳月を見つめたとき、また別の真実が――。

冒頭で、蘭花が茂実のことを
「この世の天国と地獄をいっぺんに運んできた」
と称していて、胸が躍った。
そう、恋ってそういうものだ。
そう思える相手でないと盲目になんてなれない。
幸せでなきゃいけないのは大前提として、
誰といるよりも苦しい時間があるから、
より甘美な時間を過ごせるものじゃないかな
と思ってしまう。
(最後まで読んだら違う捉え方もできてゾッとする)

2人が初めてキスをする直前の
「水がたっぷり入ったグラスを想像する。
少し衝撃が加わればたちまちあふれ出すような、
そういう予感が私たちの間には横たわっていた。」
という表現もめちゃくちゃ良かった。
男女の、今日いけるな、みたいな雰囲気を
とっても綺麗に表現していて素敵だった。
どっちかが、とん、と近付いたら
全てが始まってしまう、あの感覚。

あとは、蘭花が茂実の浮気相手(既婚者)を
「非公式に取り憑いているだけの存在」
と呼んでいたのが面白かった。
しっくりきた!!!
浮気されても自分の彼女としての立場は
揺らがないとしても
普通に嫌だし不快なんだよな。
邪魔、無駄、それ(浮気相手)いらないよね?
っていうあの気持ち。
「問題は、茂実を信じる信じないではない」
「信じられなくなった自分の恋人をどうするか」
という蘭花の言葉は大人だったし、
好きという欲に抗えないだけの子供だった。
この上なく不健全な恋だ。


少し自分の話になるんだけれど
「殺されるなら今の彼氏が良い」
と思いながらそこそこ長く暮らしていて
本人に伝えたら喜んでいた。

私たちもお互いどこか歪だ。
どちらかにもう少し常識がなかったら
大事にしたいものが、家族や友達がなかったら
2人でどこまでも沈んでいけたのかもしれない。
そんな感覚を(たぶん)お互い持ちながら
彼はTinderを開いてしまうし
私は彼のアカウントをすぐ特定するし
彼は心の底では見つけられるのを望んでいる。

そんな彼が愛おしいのだ。

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