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「鶴亀/舞鶴雪月花」中村屋陽春歌舞伎巡業公演 2024.3.27 府中の森芸術劇場どりーむほーる

「鶴亀/舞鶴雪月花」中村屋陽春歌舞伎巡業公演 2024.3.27 府中の森芸術劇場どりーむほーる

中村屋(中村勘九郎・七之助・勘太郎・長三郎)


中村屋陽春歌舞伎特別公演


中村勘九郎さん、七之助さん、勘太郎さん、長三郎さんの巡業公演に行ってまいりました。いつぶりかな、と思ったら2年ぶりでした。すっごく久しぶりな気がしたけどそうでもなかった(COVID19禍のせいでここ数年の時間感覚がぶれてしまってます)。

今回の巡業は、というか、今年は1年を通して十八代目勘三郎丈の追悼公演が続く中村屋です。
ロビーにはお写真が飾られていて、まだ私としては直視できない現実のひとつなので複雑な心地。干支一回りしちゃいましたね、旦那。




「舞鶴雪月花」への想い


今回、行こうと思ったのは「舞鶴雪月花」がかかるから、というのがありました。
と言っても、最初から行く予定だったわけじゃありませんでした。
春に巡業をやるのは知ってたしスケジュールも見ていたんですが、平日が中心で予定が合わずにチケットを手配していなかったんですね。
そんな中で、府中公演の1週間ほど前に探しものをしていて昔、勘三郎さんからいただいた雪達磨の色紙を見つけ、巡業のことを思い出し、その直後にこの日に休みを取れることになり、チケットぴあを見たら前方の席が空いていてチケットが取れ(しかもその日までしか事前予約はできなかった…翌日から当日引換券だけだった)、と、とんとんとーんと進んだという経緯でした。
「勘三郎さんに呼ばれた」と言われましたが、そうだとしたらそれはたぶん、もうちょっと歌舞伎も見てよ!っていう文句だと思います。すいません、ほんと、ご無沙汰で。

私にとってはとても思い入れのある演目なので、また中村屋で見られたのは嬉しかった。

十八代目の雪達磨への想いを残しておきます。

「舞鶴雪月花」が描く命の儚さと煌めき(2012年3月平成中村座・再録)

可笑しみだけでなく、哀しさがある、生命が消える儚さと美しさを感じさせる、そういう雪達磨でした。なので、勘九郎さんがどう踊るのかがとても楽しみでした。

トークコーナー


冒頭は吉崎典子さん司会でのトークコーナー。勘九郎さん、七之助さん、勘太郎さん、長三郎さん、鶴松さんの5名で。支度の関係で、七之助さんとお子さんふたりが先に帰り、続いて鶴松さんが帰り、最後ひとり残される勘九郎さんが「僕も白塗りするのに…対して変わらないのに…」とぶつぶつ言ってました(笑)
とっても面白かったです。皆さんの質問もよかったですね。
勘太郎さんが終始まじめなのね。長三郎さんが終始おもしろなのね。最高の兄弟です。

以下、ざっとメモしておいた話を少し。

「歌舞伎役者あるある」
最近、サ活に鶴松さんと勘九郎さんではまってるそうなんですが、勘九郎さん、サウナで台詞を口にしたり、無意識に踊ったりしてしまうんだそうです(笑) 鶴松さんがこの間も踊っていて…と話したときのことは勘九郎さん、覚えてませんでした(笑)
勘太郎さんも学校でよくやっていて、先生にも言われるとか。長三郎さんはないそうです。ほんと?無意識だからじゃないの??(笑)

「進学して友達ができるか不安です」
昼の部では、長三郎さん、質問なくて拗ねてた(笑)そうなんですが、午後の部では、若い女性が進学して友達ができるか不安です、と質問したのに対し、自分から話しかけちゃえばいいんですよ!と回答できてご機嫌でした。
この答えに、七之助さんが「この人、コミュニケーションお化けなんですよ…」と、寿司屋の大将などもすぐメロメロにしちゃう、人たらしな部分を紹介していました。長三郎さん的にはほんとのことを言ってるだけなんだそうですが、言い方が人の心をつかむ言い方なんでしょうね。
陽キャな長三郎さん、そういうところは勘三郎さんに似てるのかも。

「三代の連獅子をなさる気は」
先日の歌舞伎座での連獅子がすばらしかったという方から、勘九郎さん、勘太郎さん・長三郎さん、そのお子さん、の3代での連獅子を考えていないか、という質問。
まだまだ先のことだけれど、「祖父も父もできなかったので視野にはある」とのお言葉でした。勘三郎さん、勘太郎さんが生まれて、やる気満々でしたもんね…。

「玉三郎さんから教わった中で、目から鱗だったこと」
七之助さんへの質問。僕の回答で玉三郎さんのニュアンスを正しく伝えられないといけないけれども、と少し注意を入れつつ。
若いころは型が大事と、型を強く意識していたけれども、玉三郎さんからは心がなくてはだめだ、と、心がまずあってそれが型につながっているんだ、と言われたときには、まさに目から鱗だった、というようなお話がありました。

「野崎村」お光のこと
鶴松さんへの質問。2月の追善興行ではじめて、歌舞伎座で主役をやらせてもらった。部屋子の主役ということで会社の反対も多少あったようで、それを説き伏せてくれた勘九郎さんに感謝したい、と。
大変なお役だったようで、忘れるのが怖くてずっと台詞を口にしていたんだけれど、かえってそれがよくない、慣れになって心がなくなる、と七之助さんからは注意があったそうです。
なますの大根も慣れてしまってだんだん切るのが速くなってしまったそうで、実は余った大根はスタッフさんが持って帰って食べてるそうで、最後のほう、切りすぎてなくなってしまって怒られた、なんて話もされてました。

「10代のうちにやっておくこと」
鶴松さんはチャンスがあれば留学を、と勧めてました。実は英語が好きで得意だった鶴松さん、唯一の悔いなんだそうです。

「籠釣瓶のこと」
勘九郎さんへの質問。
幕が閉まってから、勘三郎さんは毎日、玉三郎さんの手を引いて起こしていた、という逸話をもとに、勘九郎さんはどうでしたか?と。
「福助の叔父も言ってたんですが、手を引くのはみんなやるみたいです」
「でも七之助は稽古のときに手を出したら、あいつ、自分で大丈夫、って立ち上がってすたすたいっちゃって、情がなかったですねえ!」まあ、兄弟ですからねえ、照れもあるのでは。本番では起こすのはやっていたそうです。
あとは、劇場のしーんと静まり返った緊張感のある空気に、ああ、これだよ!って嬉しくなった、と。芝居の充実を感じてらしたそうです。
しょっちゅうかかるわけじゃないけど、また何度もやると思うので、ぜひ見てほしい、と語ってらっしゃいました。

最後に、鶴亀・舞鶴雪月花のみどころを勘九郎さんがお話されて、トークコーナーは終了でした。

鶴亀


小三郎さんがお元気でとにかくなにより。
仲弥さん、仲四郎さんとも、品よく。
演者は変わりつつ、中村屋巡業ですごくよくかかるんだけど、基礎の基礎って感じなんでしょうかね。

舞鶴雪月花


桜の精は七之助さんでとてもとても美しかった…もったいなかったのは引き抜きで、明かりのせいもあって色味がほぼ同じだったのであんまり気づかれなかった。めちゃくちゃきれいな引き抜きだったのに!(桜の装置の後ろで、きっと國久さんが引き抜いてたんだと思うの…)

松虫は、なんかもう、長三郎さんの愛嬌がたまりませんでした。3匹の衣装の緑が子どもから父にかけて、若緑、緑、深緑になってるの、ほんと素敵。
鶴松さんの意識がぐーっとふたりに向かってるのがわかる躍りで、父らしさはまだまだ感。3人の息がこなれてくのはこれからかなぁ、最後の方にもう一度見たかったかも。

勘九郎さんの雪達磨はとてもチャーミングで、ユーモアが勝つ雪達磨でした。詩情は少なめ。明るくてよき。
顔の拵えがすごくかわいくて、勘九郎さん独自。鼻がね、炭団をはめたんじゃなくてちょっと塗った、みたいになってるの(ワンピースのブルックっぽかった)。あと口の表情よ!! 恋文を書く時の炭団を抜いたあとの口元の表現がすごかったなー。

「カラスの勘三郎」の詞章のところで天を拝んだ勘九郎さんでした(じじんちゃまとお父様のふたりが空にいますからねぇ)。ユーモラスが強い雪達磨でした。わかりやすさ、伝わりやすさへの腐心をあちこちに感じました。

思い出深い12年ぶりの「舞鶴雪月花」で泣くかと思ったけど全然でした。ニコニコ見ちゃいました。楽しかったな。
ファン層も変わって若返ってて、ええことや、と思いながらの帰り道でした。

おまけ。雪達磨からの誕生日プレゼントの話。

せっかく発掘したので当日、持っていきまして。
勘三郎さんの番頭さんはこの経緯はご存知なのですが、マネージャーさんはご存知なかったことが今回、判明。めっちゃびっくりしてました(笑)
久しぶりに勘三郎さんの思い出を話せて嬉しい1日でした。

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