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自分の創作を世に放って自分が生きてたっていうことを知ってもらいたい人

ねぎねぎねぎねぎ。ねぎって言うとみっくみくにしてあげる思いだします。
当時私はIT業界にいて、取引先に札幌の企業があったから(初音ミク作ったクリプトンは札幌の会社なんですね)、その人と初音ミクの話になったときに、オタクくさいキモ! って言ったの永遠に忘れないからな。
そうだなあなたは。
初音ミクがパリでオペラすると思わなかっただろうし。
ボカロPだった米津玄師が紅白でるなんて思わなかっただろうし。
ボカロ曲の歌い手だったAdoが世界で5億部売れてるワンピースの映画に採用されてニューヨークタイムズスクエアでCM流れるなんて、思いもよらなかっただろうな!
おお。無名人インタビューなのに、有名人の名前で相手を呪ってしまった。
神よ、反省します。
初音ミクが残したのは、テクノロジーが人間を追い越すのではなくて、人間は、テクノロジーの見せる未知の力に引きずられるかたちで、新しい才能を開花させる、ということだった。
記録。私、これいまだにほんとなのかどうなのかわからんのだけど、日本って敗戦後、教科書で戦争中オッケー敗戦後エヌジーだった内容を墨で塗り消したって話があるじゃない。
だったとしたら、今の日本には、あったできごとを「昔正解だったけど今は違う」といった注釈付きで残しはせず、無かったこととして処理するクセが残ってるんでわ? 改竄するんでわ?
無名人インタビューはありのままの物語を記録・保管する事業です(といういち側面はあるね)。
今日の無名人インタビューも楽しんでいただけたならば幸いですございます。

今回ご参加いただいたのは ゆず さんです!

現在:足を伸ばせないベッドの中で寝てるみたいな。

toki:今、何をしていらっしゃる方ですか?

ゆず:今は大学の4年生です。

toki:最近取り組んでいることや、力を入れていることはありますか?

ゆず:自分は昔から創作をやってる人間なんですけど、最近は全然できてなくて。
もう4年生なのにまだ単位も残っているし、卒論も全然書けてないし。夏休みは車の免許取れって親がうるさくて、免許合宿に行ったりとかして。なので、今は卒業のために頑張っている感じです。

toki:就職先はもう決まっているんですか?

ゆず:就活は春に一応終わって。内定をもらってます。

toki:今は大学を卒業するためのことに時間を多く使っているという感じなんですね。
もし何も制約がなかったとしたら、どういう時間の使い方ができたら理想的ですか?

ゆず:どうしても自分の生きがいはもう創作みたいになっちゃってるので。多分曲作ったり、文章書いたりとかするかなって思います。

toki:今やられている創作ってどんなものがあるんでしょうか?

ゆず:主に二つあって。まずボーカロイドの曲を公開してるのが一つ。あとWeb小説を投稿しているのが一つですね。

toki:なるほど。でも今はあまり創作の時間を取れていないと。
創作が生きがいとおっしゃっていましたが、生きがいになかなか時間が割けない日々に対して、どういうお気持ちでいらっしゃいますか?

ゆず:なんだろう、足を伸ばせないベッドの中で寝てるみたいな。でもそれは就活のときからずっと思ってたことで。就活のときも創作に全然時間を割けなかったので。
それが今も続いてて、すごく厳しい。何のために生きてるのかわからなくなるというか。こんなことしたくて生きてるわけじゃないのにな、と思ってしまうときはあるけど、でもまあ一個一個片付けなきゃな、みたいな感じですね。

toki:そうなると、卒論書いたり授業に出席されたり、卒業に向けてやらなくてはいけないことへの心持ちってどんな感じなんですかね。

ゆず:死なないためにやる、という感じかな。すごい大げさなんですけどね、内定をもらってしまったのもあって余計にそう感じますね。
その内定は本当に幸運なことに、すごく行きたかったところの内定をいただいたんですよ。
でも例えば、もし仮に単位が足りませんでしたとか、卒論が書けませんでしたとかで、留年とかになったら、内定を取り消されて、就活をやるならもう1年またやり直してみたいなことになると思うんですけど、その先がすごく怖いというか。昔はレールを外れるのがむしろかっこいいみたいに思ってたのに、年をとるにつれてレールから外れるのがすごく怖くなった。正確には、ずっと怖かったんだと思います。なんだかんだ、こういうのが安泰だよねっていう道を選んできて、これからも選び続けないといけないってどこかで思ってるから、すごく怖いんだと思います。
だからモチベーションがあるとかないとかではなくて、もう卒業できなかったら死ぬんだろうぐらいに思ってるんです。人生が終わるんだろうなと思ってるから、生きるために頑張るしかないって。 

toki:卒業できなかった先にある恐怖を避けるためにやっている、という感じですかね?

ゆず:そんな感じです。

toki:就職についてのことも少しお伺いしたいなと思うんですけれども。差し支えなければ内定先の業界を教えていただけないでしょうか。

ゆず:社名は伏せるんですけど、出版社に内定をいただいてます。自分はそういうのを運で片付ける人が本当に嫌いなんですけど、本当に運で良かった自負があるんですね、自分は。
そもそもエンタメってすごい人気で、どこも倍率が高いんですけど。自分もエンタメ業界は出版以外にも、ゲームとかテレビとかいろいろ見てて、でも全部駄目だったんです。出版業界も他の会社は全部駄目だったのに、そこだけなぜかスルスルっといってしまって。
沢山の人が受けて、中には就職浪人をする人もいるくらいの会社なのに、自分が受かっていいんだろうか? ってなんか一瞬、内定ブルーになったくらい。多分、みんなが羨むようなところに就職をもらってしまったからには、これを無駄にしたら人生終わるって思ってしまうんだろうな。

toki:スルスルっと選考が進んだことに対して、例えば「やっぱり自分に向いているんだ!」みたいなふうに捉える方もきっといると思うんですけど、「受かってしまった」という気持ちの方が強いんですかね?

ゆず:なんなんですかね、多分選考の途中は自分に向いてると思っていた。そう思ってないとしんどかったから、「我こそはふさわしい!」みたいな感じで挑戦してたんだけど、終わっていざ振り返ってみたら、自分はたいして読書もしてないし、周りみたいに面白いエピソードも経験もないなって。そんな中で、自分なんかで良いんだろうかみたいな風に思ってしまっているのかもしれません。

toki:「来年の4月から出版社で働く」ということに対して、今どんなお気持ちですか?

ゆず:今の話と矛盾するかもしれないですけど、社会人になることをすごい心待ちにしてる自分がいて。結局は半年後の卒業っていうところが、自分にとって今一番重い枷だから、そこを早く抜けたいっていう気持ちでしか今動いてない。
これも一種の現実逃避なんですけど。今がつらいから未来に希望や夢を見てるみたいなところがきっとあるんですけど。だから、仕事だってきっと大変なこともあるし、仕事をいざやりだしたら、もしかしたらまた悩むかもしれないけど、今はなんか早く働きたいとか、早く自立したいみたいな風に思ってる自分はいるんですよね。

toki:出版社とか、どの会社に就職するかっていうよりかは、社会人になることに大きな意味を感じていらっしゃるということですかね?

ゆず:もちろん仕事の内容ももちろん好きです。自分は漫画がとても好きだったので、憧れの編集者になれるかもっていう意味ではもちろん楽しみです。でも、どこまでそれが本物の興味からの憧れというか楽しみなのか、現実逃避なのか。自分でもどのくらいの割合なのか判別できない。半々ぐらいかな。

toki:なるほど、ありがとうございます。
質問がちょっと変わるんですけれども、最近はどんな時に楽しみを感じますか?

ゆず:最近の楽しみか…パッとは出てこないですね。音楽を聴くとか。YouTubeを見るとかそういうことになっちゃう。あんまりないかもしれない。

過去:他人と一緒に作るみたいなことを初めて経験して、誰かと創作するのってすごく楽しいなって。

toki:小さい頃はどんなお子さんでしたか?

ゆず:それ絶対聞かれると思ってたんですけど、難しいな。
今振り返れば、小学校のときとかは新聞係とかをやってて、自分で企画とか文章とか考えるのが好きだったから、今の創作に繋がってる面もいろいろあるなとか思うんです。かといって、自分は割とクラスの中心にもいたし、陰でずっとひとりで黙々と創作してたタイプかというとそうでもなかったですね。子どものときは。
多分それは、ある程度普通に、「普通」になじんでおかなきゃみたいな気持ちがどこかであったんだと思います。

toki:クラスの中心にいたっていうのは、無意識で気づいたら中心にいたのか、中心にいたいなと自分の中で意識していたのかでいうと、どちらに近いですか?

ゆず:いや、いたいなとは思ってなかったです。単純に、その頃はフレンドリーでいられたんです。ある意味、無遠慮に人の心に入っていけたのかな。
過去の自分はよく隣の席の子の趣味とかを積極的に聞いてたんですよ。例えば隣の子がK-POP好きだったら一緒に曲を聴いたりとか、なんならハングルを覚えたりとかして、一緒になって楽しむっていうことができたんですよね、あの頃は。
今はもう絶対できないんですけど、それが多分相手にとっては嬉しかったんだろうなって、今思うと。誰とも分け隔てなく懐に入っていく感じでしたね。

toki:そうやって、一緒になって楽しむっていうのは、どういう動機でやっていたんですかね。

ゆず:どういうモチベーションだったのかはわからない。

toki:もう自然とやっていたみたいな?

ゆず:そうだと思います。別にその子が好きだとか、下心があったとかでは多分なくて。

toki:今はできないというお話でしたが、その性格が変わるタイミングがどこかであったのでしょうか?

ゆず:自分が暗くなってったのは中3頃からです。中1ぐらいのときに曲を作り始めて、中2中3になるにつれて、創作をしていることがばれて、ちょっとばかにされたりとかもあるのかな。
みんながみんな自分のことを受け入れてくれるわけじゃない。それは知ってたけど、あまり自分を見せるのとか、人の心の中にどんどん土足で踏み込むみたいなことを遠慮するようになっていったのはその時ぐらいからかもしれないです。

toki:中1のときに曲を作り始めたっていうのは、どんなきっかけで始められたんですか?

ゆず:元々は、嵐っていうアイドルが好きで。櫻井翔くんがラップを書いていて、そこで初めてラップに出会った、hip-hopとは全く関係ない文脈で申し訳ないんですけど笑。ラップの、韻を踏む──つまり母音を合わせるんですけど。そのパズルみたいな営みがすごいおもしろくて、そこから自分もやりたいと思って。
韻を踏むっていうところから、徐々に一曲通してのラップを作れるようになって。そこからだんだんとラップじゃない普通の曲も作るようになったという経緯です。

toki:中学生のときは、どんな気持ちで曲を作っていましたか?

ゆず:もう夢中でやってました。そのときは、ほとんど誰にも見せてなかったから、作品を褒めてもらえるみたいな経験もほぼなかったです。たとえば恋愛している時って、言語化できない気持ちだったりするじゃないですか。言語化できない気持ちがうまく歌詞になると、自分ってこういう気持ちだったんだって知ることができる。その表現できることがすごい楽しかったっていうのが一番大きいかなと思います。

toki:誰かに見せるっていうよりは、自分のための創作だったんですね。

ゆず:そうですね。

toki:それが中2、中3なって周りにも知られるようになったっていうお話だったんですけど、その出来事は、自分の創作に何か変化や影響を与えたりしましたか?

ゆず:いや、特に何も。嫌ってくる人のことは「私も嫌いです」ぐらいで気にしてなかったので、創作は変わらずやってました。それは多分、一方で受け入れてくれる人が周りに何人かいたっていうのもあったと思うんですけど。だから特に何か創作の内容に変化があったわけではないかな。

toki:そうなんですね。先ほど、中3ぐらいから性格が暗くなったというお話がありましたが、より具体的に言うとどんな性格になったんですかね?

ゆず:わかりやすく言うと、異性とつるむよりも同性とつるむことが多くなったりとか、会話ができる人を自分で狭めていくようになった。なんなんでしょうね、多分いろいろ理由はあると思うんですけど。
まず何か、初対面の人の方が自分はうまく話せるっていうのは今も変わっていなくて。でも段々話していくと距離感がわかんなくなったりとか、疲れちゃったりして。段々疎遠になっちゃうみたいな。2回目以降しんどくなっちゃうみたいなことが自分は多くて。それも相まって、同じコミュニティで3年間過ごしていると、最後の方は段々としんどくなって暗くなっていく。だから逆に言うと高1はちょっとまた明るく戻るんですけど。

もうひとつは、自分と合う人間、合わない人間を、無意識に選別し始めたのは多分大きいのかなって思いますね。例えば話が合うとか、趣味が合うとか。中1のときとか別にそんなに自分も確固たる趣味とかがなかったから、K-POPの話とかも全然、「何それ?」って食いついていけたけど、今はもう自分がK-POPに興味ないことを知っているし、興味ない話を突っ込んで聞こうと思わなくなっちゃったから、自分と合わない人のことはもうハナから遠ざけているというか。大体自分と合うような人を選んで話しちゃうみたいな傾向が始まったのかなっていう感じがします。

toki:なるほど。高1のときにまた明るい性格に戻るというお話でしたが、高校生活はどんな感じでしたか?

ゆず:高校はそれなりのところに行ったので、陰口を言われるとかはなくなったて、そういう意味では平和にはなりましたね。
だから逆に創作とかはあんまり隠さなくてもよくなって。文化祭とかでも毎年企画を考えるようになりました。あとはうちの学校には議員っていう珍しい制度があって、先生に頼ることなく生徒だけで行事を運営するんですけど。それにずっと自分は参加してて。そこでの議論だったりルール整備だったりに、やりがいを覚えてました。

toki:高校に入ってから、ご自身の創作に変化とかってあったりされました?

ゆず:作曲は変わらず続けてましたけど、高校に入って小説を書きましたね。高校に文芸部があったから。
一応自分は陸上部だったんですけど、掛け持ちで2年生のときから入って。2年生のときに絵が描けるやつがいて、一緒に漫画を書かない?みたいに言われて、じゃあ原作やるから描いてくれってなって。それをきっかけに文芸部に入って、部誌に載せてもらうことがありました。
そういう、人と共同で創作をすることを初めてしたのがそうかもしれないですね。それこそ文化祭では人生初めて劇の脚本を書いて、演出も担当しました。そこでやっぱり他のクラスメイトと一緒に作るみたいなのを初めて経験して、誰かと創作するってすごく楽しいなって。とても忙しかったし大変だったけど、人と作ることの方にすごく熱中していました。

toki:ひとりで作るのと、誰かと一緒に作るのとでは、どんな違いがあると思いますか?

ゆず:そうだなあ…。自分はどっちかっていうと下地を作るというか、0から1を作るっていう役割が基本的には多くて。「こういう企画をやりたい」っていう原案を考える立場が多かった。
そこに、「じゃあこれやってみたら面白いんじゃない?」とか「ここはこうしようよ」みたいに、自分のアイディアにいろんな人が手を加えてくれる。自分の作った1を、皆が10にも100にもしてくれる、その自分の手を離れて大きくなっていく工程が見ていてとても面白かったですね。
もうひとつ高校時代の体験で大きかったのは、これは他人とつくるって話ではないけど、“誰かに楽しんでもらう”っていうのを初めて味わったのも大きかったですね。それもめっちゃ感動した。お客さんが自分の書いたギャグのシーンで笑ってくれたりとか。泣いてくれたりするのってすごいことだなって思いました。

toki:小説を書き始めたのは高校生からというお話でしたが、文章を書くことをやりたいと思ったきっかけは何だったんでしょうか。

ゆず:小説書き始めたって言ったのは高校生ですけど、厳密には、小学校のときからも書いてはいて。でも、やっぱ完結させるのって難しくて殆ど書き終わらなかった。高校の時に初めてちゃんと完結させて、1個の作品ができたんです。小学校のときも新聞を書いてたし。中学校でも、教科書の文章の続きを考えようみたいな課題があったんですけど、皆はめっちゃ嫌がってたけど自分はすごく楽しんでやってました。
そういう意味ではやっぱり、人と違う自分らしいことを思いつく、「こんなの自分しかやらないじゃん」ってものを具現化できるのが、文章もとい創作の面白さなんだと思います。もうひとつは、読んでくれる人をどうやって楽しませるかとか、どうやって笑かすかとか、そういうのを考えるのが楽しいなっていうのはずっと思うことですね。

toki:今「こんなの自分しかできないじゃん」ってお話がありましたが、それって冒頭に現在のところでおっしゃっていた「前はレールから外れるのがかっこいいと思っていた」って考え方に、通じるところはあるんですかね?

ゆず:そうですね。創作やってる人ってやっぱりどこか変人というか。今はそんな珍しいとも思わないですけど、でもやっぱりどこか、自分とか世界とかに不満があるからやる人が多いと思っていて。既存のものに満足できないからこそ「自分がやってやる」ってなると思うので。自分にしか作れないものを作るから楽しいっていうのがあるんだと思います。
だから自分はレールが外れる人生を望んでるって思ってたのかな。小学生のときはサラリーマンなんかなりたくねえみたいなこと言ってましたね。「殆どの人はサラリーマンだろ」みたいなこと親に言われたんですけど笑。サラリーマンの当時のイメージはやっぱり、嫌々働いてるというか、毎日同じことをしてる退屈なことっていうイメージが強くて。なんかもっと面白いことしたい、もっと楽しいことしたいって思ってたんだと思います。
実際、文化祭とかで企画したときも、自分がやりたい仕事って多分こういう仕事なんだって強く実感したんです。企画とか他人とチームで作ることって、二度と同じ経験をできない。同じものを作ることは二度とないから。毎回毎回新しいことができる、新しいアイディアを考えなきゃいけないっていうのがすごくいいなと思って、それが自分の中の軸になりました。

だから自分は安定志向ではないと思ってたけど、でもなんだかんだ、いい高校、いい大学に行って、大手の企業に勤めてっていう道を歩んでしまってますね。「親が安心するしな」みたいな言い訳で。
でも、それはどっかでちょっとずつ、大人になるにつれて自分を諦めてきてるんだろうなって思う。高校のときは、どこかで自分が特別になれると思ってた。大学生になってYouTubeとかWeb小説とか、一般の不特定多数の人に見てもらうようになって、もちろんそれでプロになれるわけもなく、そこまでの才能もなく、そこまで努力できる気概もなく。なんだかんだでもう4年生になってしまって。

これでレールを外れたとして、自分は創作だけをして生きていけるかって言われたら、きっと厳しいんだろうなって気付いたんでしょうね。創作はきっと死ぬまでするけど、それで食べていく/生きていくっていうことが本当に自分にとって幸せ、いやそれも幸せだけど、そうじゃなくても、別に働きながらでも、それこそ安定を取りながらでも、曲を書いたり小説を書いていけば、それは幸せなんじゃないかって半ば強制的に思うようになった。そうやって自分を納得させて今生きてるから、安定志向になったのかなってちょっと今、思いました。…ごめんなさい、自己分析始まっちゃって。

未来:自分の創作を世に放って、自分の携わった作品を世界に流通させて。そしてこのインタビューで、自分が生きていたっていうことを誰かに知ってもらうってことを死ぬまでにしておきたい。

toki:5年後や10年後、死ぬときまでにでも、なんでもいいんですが、どうなっていたいとか、こんなことをやりたいとかっていうものは何かありますか?

ゆず:繰り返しになりますけど、基本的には創作を続けていたい。多分続けられてなかったら、生きてないだろうなと思う。
まあ出版社って多分激務なんで、入社して何年かは自分の創作できないかもしれないですけどね。でも結局は出版社の仕事も、作家さんと一緒に話して何かを作ることなので。だからそういう意味では、さっき言った自分の軸に合った仕事に就けたなと思っているんですけど。二度同じ仕事をすることはないし、同じ作品を生み出すってことはないから。
そういう意味ではいざ仕事を始めてみたら、これは自分ひとりで作ってるわけじゃないけど、共同の創作みたいなものだから、それが生きがいになって、自分だけで作る創作からはいっとき離れるかもしれないですけど。どちらにせよ、何かしらで作るっていうことは続けていたいなとは思います。

toki:創作に関して、編集者の場合、自分が中心となって作るというよりかは、作家さんを中心にして作っていく感じになると思うのですが、ゆずさんとしてはそれでもいいのでしょうか?

ゆず:自分は全然それでも嬉しいかなと思うんです。0→1の部分は確かに好きでよくやってきたけど、そこ以外の楽しさも知っているから。
例えば文化祭とかでも、予算なくなりましたとか、期限がやばいですみたいな、いろんなハプニングが起きると思うんですけど、そのときにどうやって解決するか、解決策を考えるのも自分は好きなんです。これって編集の仕事に通ずることですよね。もっと作品を面白くするにはどうしたらいいかとか、きっといくらでも考えられる仕事だと思うから。
もうひとつ出版社のいいところは、自分が携わった作品が世界中にばら撒かれるわけじゃないですか。それが個人的にはすごい嬉しい。

そう、これだけはちょっとインタビューで言っておきたくて。このインタビューを受けた理由にもつながる話なんですが。
多分インタビューに申し込んだのは8月とかだと思うんですけど、その時は今よりも元気がなくて。もうのたれ死ぬ、みたいな感じだったんですよ。前期で全然単位が取れなくて。就活も終わって暇だったはずなのに単位も3つくらい落として。卒業できないんじゃないかって。
そういう死が脳裏にちらついていた時になると、「自分をこの世界に残しておきたい」っていう欲求が、必ず現れてくるんですよね。死ぬ前に何か自分が生きてた証を、この世界に残しておかないといけないっていう、本能的な欲求が。それはもう、子供を残すとかそれと同じぐらい本能的なレベル。自分はあまり子供が欲しいとは思わないんですけど、むしろその代わりとしてこの欲求があるのかもしれない。自分の創作を世に放って、自分の携わった作品を世界に流通させて。そしてこのインタビューで、自分が生きていたっていうことを誰かに知ってもらうっていうことを死ぬまでにしておこうっていうのを、今すごくやりたいってなってるんだと思います。

toki:そうだったんですね。

ゆず:もちろん創作の発端は誰かに見せるために始めたわけじゃないから、自分の創作やる理由はそれだけじゃないんですけど、でもなんか自分が遠い未来まで生きてるっていう実感がない中で、今生きてる自分をどう残すかみたいなことを考えて生きてるなっていう感じがすごくする。そういった経緯で、このインタビューを受けました。

toki:インタビューへの参加に、そんな背景があったとは。なるほど、ありがとうございます。
このインタビューもnoteに残るわけですよね。自分が作ったものも、これからも世の中に残っていくっていう中で、それを見た人にこういうふうに思ってほしい、感じてほしいみたいなものって何かあるんですか?

ゆず:自分をこう思ってほしいみたいなのはないです。すごくわがままなことを言えば、自分は音楽や小説といった作品に、自分の人にあまり見せないような暗い部分とか、醜いところとか、ありのままを込めているので、それを受け入れてほしいんだと思います。受け入れて欲しいとまでは言わなくても、知っていてほしい。
人と話すときとか会うときは、どうしても作っちゃうじゃないですか、ある程度。でもそれだけだと、自分の外面の自分しか残らないから。この世界にも、みんなの記憶の中にも。そうなるともっと、自分の内面の悩みとか、醜さとか、自分がこう思って生きてたんだ、これを悩んで生きてたんだっていうことも、残しておかないと、自分の100%が残らないなって。そう思って曲も書いてるし、noteも書いてます。そういう意味で、ありのままの自分を知ってほしいと思っています。

toki:自分が残したものをどう受け取るかは、見たその人に委ねるという感じなんですね。
なにか、こういう人間でありたいとか、こういう人間になりたいとか、内面的な部分で目指したいところはありますか?

ゆず:ぱっと出てこないですね。あんまり今までの文脈と関係ないけど、誰かといるときに、丸い人間でありたいなって最近はすごい思う。なんか今まで割と自分は尖って生きてたというか、強く思想を持って、こうあるべきだ、みたいなのを個性として生きてたけど、人の話を聞けたり、人のことを受け入れられたり、自分に包容力がないから、それが欲しいなって今思います。包容力ある人に助けられてというか、自分にないからこそ包容力がある人にすごい安心するというか。その人には何話しても「うんうん」って聞いてくれるというか、受け入れてくれるその安心感を与えられる人っていいなあって最近思います。

toki:ありがとうございます。すごく聞きたかったんですが、もし本当に人生が本当になんでも思い通りになるとしたら、それこそ、就職先蹴って、レールを外れても絶対に失敗しない保証がある状況になったら、どうしますか?

ゆず:どうしますか…東京ドームでワンマンとかやりたいです。贅沢を言うなら一流の演出家やミュージシャン達の力を借りて、自分の作った曲たちを自分で歌いたい。そこに凝縮した「自分」を、多くの人に知ってもらいたいなって思います。
でも本来は主役とか目立つのってあんまり好きじゃないんですけどね。よくよく考えれば、これは就活中に答えたインパクトある回答でした笑。いざやれって言われたらやれないだろうな。

toki:ありがとうございます。
毎回インタビューの最後に、もしもの未来について質問をしているんですけれども、もしゆずさんの人生の中に創作がなかったとしたら、今の人生ってどんなものになっていたと思いますか?

ゆず:どんなものになっていた…そうですね。本当に何も考えられないぐらいには、創作が自分のアイデンティティのど真ん中になっちゃってるから…自分じゃないんだと思いますね。その世界線は自分じゃないです。

toki:なるほど。ありがとうございます。そろそろインタビューも終盤になりますが、最後に何かいい残したこと、これだけは言っておきたかったということがあれば、お願いします。

ゆず:そうですね。とりあえず今10月ですけど、半年後がちょうど3月で卒業の時期なんで、半年後、3月にちゃんと卒業できましたって言えるように頑張りたいなと。これが最後の世に出る私の文章にならないように、頑張りたいなっていう意思表明だけしておきたいなと思います。

toki:応援しております。インタビューは以上で終わりますが、よろしいでしょうか?

ゆず:はい、大丈夫です。

toki:ありがとうございました。

あとがき

ゆずさんのお話を聞きながら、作ることの楽しさを思い出しました。
特に印象深いのは、1人で作るか、みんなで作るかの話。大人数で一つのものを作るのって、本当にめんどくさい。自分がやった方が早いなって思っちゃったり、人によってモチベーションがバラバラだったりするから。でも、というより、だからこそ、作品が完成したときの達成感って格別ですよね。性格も能力もバラバラだけど、目指すところは共通していて、そうやっていろんな人の力が合わさって、1人では決して作り上げることのできない大きな作品が生まれるっていうのは、とても素晴らしいことだなと。
1人でやってできたことより、みんなでやってできたことの方が、記憶に残っているって人、多いんじゃないかなと思ったりしました。少なくとも私はそうです。

それから、「自分が生きていた証を残しておきたい」というお話がありました。そういった背景があり、この度無名人インタビューに応募してくださったということでしたが、それを聞いて、ゆずさんの生きていた証をこの世に残すその過程に携わることができたのはとても光栄なことだなと思いました。
よく考えてみれば、これまでのインタビューも、これからのインタビューも、その人の生き様や、考え方をこの世界に残していくお手伝いをしているようなものですよね。そう思うと、インタビューがとても尊い行為のように思えてきました。”インタビュー”っていう字面だけ見ると、カタカナで、どこか無機質で冷たい感じがしますけどね。なんか”インタビュー”の良い言い換えはありませんかね。思いついた方はぜひ教えてください。
そんなふうに、インタビューという行為には、その人を深く掘り下げるだけではなくて、その人自身の存在を残す意味もあるのだなと、新たなインタビューの側面に気付かされたインタビューでした。ゆずさん、ありがとうございました!

次回の無名人インタビューもお楽しみに。

インタビュー担当:toki

編集協力:あおい

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