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就職と人インタビュー 花梨-006 2023/11/29

前回。

最終回である。
1回目は2023/8/20に行われた。
 就職に関して、不安があった。
2回目は2023/9/6に行われた。
 インタビュー前日にコロナにかかっていたことが判明していた。
 就職に向けての不安はなくなっていた。やってみなければわからないから。
 就職先の近辺に引っ越しすることになっていた。
3回目は2023/9/18に行われた。
 コロナでふせっている時に、何もできないことに悔しさを感じていた。
4回目は2023/10/1,2023/10/2に行われた。
 就職前日と、就職当日の日のインタビューだった。
 特に不安もなく前日を過ごし、当日もリモート入社であったこともあり、特になにもなく終わる。
5回目は2023/10/16に行われた。
 就職から2週間後。研修を終えて、現場で実際に仕事を始めていく。なんとなく。

6回目の今回=最終回は、2023/11/29に行われた。
8月からの3か月間、初めて就職する人の心理を追いかけていった。あまり不安がない人だった。けれども、性格的に向上心を感じるところもあり、気負った勢いで不安がないと思おうとしていたのかもしれない。と、思ったりもしないでもない。
げに人の心はわかりませんね。
ともあれ、この最終回では、また新しいエピソードの始まりのような展開になったことが、印象に残ったインタビューでした。これまで聞いていたストーリーとは違う話の始まり。
人間の人生を物語として眺めるのならば、始まりと終わりの連続なんでしょうね。そしてその始終の繰り返しというのは、たぶん自分では見えにくくて、他人によって紐解かれないとわからないものなのでは?
そして紐解かれないと、自分の人生に秘められた深い価値、興味深い意味にも気づかないのでは?
自分というものが、ただ漫然と生きているのではなく、自分という確かな個性によって力強く一歩一歩を踏みしめ、生き歩んでいるのだということは、他人にしか気づかせてもらえないのでは? と。
そして、この意味においてのみ、他人というのは自分にとって存在理由があるのではないかしらん。と思った次第であります。
夜が明ける。なんの? なんの夜? なんでしょうねえ。
苦しみの夜が明ける? 違いますねえ。始まりという名の夜が開け始めた、ということです。
最終回のインタビューも、どうぞお楽しみくださいませ。
まえがき:qbc(無名人インタビュー主催・作家)


導入

——今、どういう状況ですか?

花梨:今は、働き始めて約2ヶ月が経って。
発達障害やグレーゾーンの子が通う教室で働いているんですけど、そこで授業を担当しています。

1日の流れは、担当する授業の準備をして、振り返りの記録を書いて。あとは、教室の業務、電話とか運営面をやっている状態です。

——はい。

花梨:1ヶ月目は先輩の授業に一緒に入らせてもらうことが多かったんですが、最近は独り立ちの時期に差し掛かっていますね。

——授業って、どんな内容のことをするんでしょうか?

花梨:担当する子どもにもよるんですが。例えば、待っててって言われたら、10秒間待てるとか。5W1Hの質問に答えることができるとか。その子の成長過程において、日常生活で今これが出来るといいよねっていう目標がいくつか決められているんですね。それに沿って、工作やゲーム、プリント課題など授業内容を決めていて。要は、どういう環境設定のもと、狙いとする目標に該当するような行動を引き出していくか考えていく形です。

なので、授業の内容は個別で様々です。身体的感覚が弱い子は運動系を多めに入れるなど、カスタマイズしてやっている感じですかね。

——授業は、何人くらいが参加しているものなんですか?

花梨:人数は、今、1対1を中心に担当させてもらっているんですが。割合としては、1対1の授業と、1対2、3人の授業が半々ですかね。

——子供たちの年齢は?

花梨:未就学を対象にしてるので、3歳から6歳の子が一番多くて。たまに2歳の子とかもいます。3歳から6歳は、大体同じぐらいの割合でいる感じです。

——授業でしていることというのは、幼稚園保育園でしていることとだいたい同じでしょうか?

花梨:やってること自体は、すごく似ていると思います。それを個別で実施する形。やっている内容としては、保育園とか幼稚園と同じように、工作したり運動したりプリントしたり。それを短時間で実施する感じですね。

——2ヶ月経って、どうですか?

花梨:やっぱり面白いという気持ちが一番ですかね。発達障害を持ってる子と、そもそも接したことがなかったので。というか、未就学の子と関わったこともなかったので。

その子の行動や喋ってる内容、あとはこんなところで躓くの? みたいな。例えば、どうしても今絵を描きたくて、後でねって言われても、それが受け入れられなくて泣き出すとか。

自分が全く想像してなかった考えや、その考えの結果起きる行動を見るのが新鮮だし、その行動がどうして起きたのか分析するのがすごく面白いなと思いますね。単に未知の領域なので、今は知的好奇心が勝っている気がします。

という一方で、子どもたちと関わるようになって、思うこともあって。教室って利用の順番待ちをしている子がすごく多くて。2年待ってようやく利用できる子とか、ざらにいるみたいで。

その間にも子どもって、日々成長して行くわけじゃないですか。たった数週間でも、全然違うと思いますし。ってなったときに、直接支援だけではなくて、もっと違う支援の届け方にもいずれは携わりたいなと考えています。

——違う支援の届け方というのは、具体的にはどういうことをイメージされていますか?

花梨:新規教室の開設に携わるとか、各教室のサポート役を担うとか。あとは、情報発信やメディアとか。将来的には、そっちの方面に関われたらいいなと思いつつ、今こうやって日々子どもたちと接して、いろんな面白さを味わえてるのが楽しいっていう、そんな2か月でした。

——仕事の闇の部分とか、ありませんでしたか?

花梨:闇の部分、ありました。1週間前、体調を崩して、めちゃくちゃ病んでました。っていうのも、私が入ったところが、人員が不足している教室で。
だから、まだ2か月だけど、いろんなことを任せていただけるような環境なんです。例えば、1日に3つの授業をやってもらいますって言われて。でも、その準備や振り返りに、そもそもどのくらい時間がかかるのかを把握出来ていない状態で。

教室はベテランの先輩が多いので、声をかけづらい、ヘルプを出しにくくなってしまって。業務量が一気に増えたけど、誰にも頼ろうとせず1人で試行錯誤して頑張ろうみたいな。そんな状態が重なって、1回パンクしかけたことはありました。

その時はすごく病んでたんですけど、それをきっかけに、いろんな人に意見を求めたり、今困っていますって伝えられるようになったので。病んだんですけど、病んで良かったみたいな感じですね。病んでなかったら多分、大きなミスをしていたかもしれないので。それを考えると、結果オーライかなと思います。

——パンクっていうのは、どうなったんですか?

花梨:自分は今、何が出来ていて、どこが出来ていなくてというのが、全く把握できていなくて。今やっている仕事が次どう繋がっていけばいいのかもよく分からなくて。

ある日、ヘルプで来ていただいた方が、一緒に振り返りをしてくれたんです。その時、普通に泣きましたね。自分で振り返りの時間を作れなかったので、まず振り返りを一緒にしてくれた優しさに、感動して泣いてしまって。

さらに、いろんな手立てを一緒に考えてくれたんですね。例えば、優先順位や時間配分を考えることが出来ていなかったので、一緒に考えてもらったり。という出来事を経て、今は安定しつつあります。

——パンクっていうのはつまり、その人の前で泣いたということ?

花梨:そうなりますね。今こうやって話せていますけど、振り返りをするまで、自分が何にモヤモヤしていたのかずっと分からなかったんです。現状の把握ができたこと、あとは人の優しさに触れたこと。その結果、感情が溢れ出た感じでした。

——モヤモヤというのは、なんでしょうか?

花梨:いろいろとモヤモヤしてたんですけど。
私はどちらかというと、足りないところがいっぱいあった方が安心する方で、常に課題をを埋めていたいタイプなんですけど。今の職場は、ありがたいことにプラスのフィードバックを沢山くれるんですね。現状絶対先輩たちの基準には達していないのは明白なのに、それを伝えてもらえない。もっとビシバシ言ってくれればいいのに、とモヤモヤしていました。

で、二つ目は、さっき言った内容と被るんですが。
自分は今何が出来て、どこが課題でっていうのを振り返れないまま、次の日になっちゃって。また授業をして課題が振り返れないまま次の日に行って。っていう風に、日々仕事は降ってくるけど、それがどこに繋がってて、自分は今どういう状態にあるのか把握できなかったのが、二つ目のモヤモヤです。

三つ目が、仕事をこなす中で、先輩に、もう困ってますとか一緒に考えてくださいみたいな援助要請が出せなくて。1人で頑張ってやりきるぞみたいなモードになっていたことですかね。

振り返りで、その3点が言語化できて、今はすっきりした状態です。

——人前で泣きだすというのは、これまでもあったことですか?

花梨:初めてかもしれないです。結構いろんな環境で、こうなりがちというか。いつもあんまり人に頼らないで自分で何とか頑張ろうって思うし、褒められると本当か? って疑っちゃう方で。今何をしているのかが腑に落ちないと、すごくモヤモヤする方なんですけど。

それでも、泣くまでは行ったことはなかったですね。家に帰って泣くとかはありますけど、問題が起こってる環境で泣く、っていうか感情を出すみたいなのは、なかった気がしますね。学生時代を振り返ると。第3者に聞いてもらうことが多かったような気がします。

今後のお話

——初めてお仕事に就かれたわけですけれども、今後はこういう仕事をしていきたいですとか、未来については、どうお考えですか?

花梨:未来ですか。
そうですね。働いてみて強く思ったのは、未来についてもう少しポジティブに、自発的に考えればよかったな、就職活動中、っていうことです。

就職活動に対する先入観が強くて、働くって自由がなくなることだ、ぐらいに思ってて。だから就職活動も全然やる気が出なくて、今に至るっていう感じなんですけど。でも、いざ働いてみると、辛い時はあるんですけど、それ以上の面白さや楽しさがあるなと思えていて。

なので、もう少し肯定的に考えてみようっていうのが、未来に対する考え方のスタンスです。

ただ、この仕事をずっとやろうとはあんまり考えていなくて。長くても2年くらいかなと思ってます。どのタイミングになるかは分からないんですけど、自分の今後の暮らしを考えると、違う仕事、違う業種にチャレンジするんだろうなと考えています。

——なるほど。今の職場は辞める?

花梨:現状楽しい部分もあるんですが、将来ずっとやっていくかって言われると、それは違うと感じていて。2、3年のタイミングか、もっと早くなるかは分からないですけど、違う環境に行く選択をするんだろうなと今は思ってます。

——今の職場でのネガティブなことを教えてください。

花梨:今の仕事に関してで言うと、どの環境でも活かせるような力がつく仕事ではないなと思っていて。そこがネガティブっちゃネガティブです。

発達障害児に対する支援にはすごく詳しくなれると思うんですけど、それ以外の業界や仕事にチャレンジしたいと思った時に、どう役立つんだろうと考えることがあって。その道筋があんまり見えないのは、自分では問題に感じています。

だからこそ、就職活動をもう少し前向きに考えればよかったかなと、後悔に繋がってますかね。どんな場所でも働けるようにしたいと将来的には考えているんですが。やっぱり、こういった発達障害の支援となると、教室があって直接教えていくのが、主なスタイルになると思うので。どうしても場所に縛られますよね。

就職活動中は、そこら辺を考えず、早く終わることだけを考えてしまっていたので。今の自分に残された課題なんだと捉えています。

でも、未来に対してはポジティブに考えています。副業もOKなので、この1、2年は、違う領域のことも試していけたらいいのかなとは思ってますね。

——今の状況について、周囲の人たちと相談はしましたか?

花梨:しました。結構いろんな人と喋っています。
ぼんやりと考えてしまう方なので、現実的なツッコミが欲しくて。それをどうやって実現するの、みたいな。

——どんな人たちに?

花梨:大学時代の知り合いが多いですね。引っ越してきて距離が近くなったので、会うことが増えました。LINEで聞いてもらう時もあるんですけど、大概はご飯とか食べながらダラダラ話す感じですね。

自分の中で考えるだけで、行動に移さず満足してしまう性格なので。人に話すことでお尻を叩くような感じです。だから、いろんな人に考えを聞くようにしています。

——物理的に、関東に引っ越してきたというのは、大きな変化でしたか?

花梨:そうなんですよ。対面で会えるようになって、仕事の話をできそうな人が増えたっていうのは、自分にとってはすごくポジティブな変化ですね。

——まあ、今の仕事は辞めるよ、てことですね。

花梨:そうです。長くはないなって。今後もいろんな人と対話してみて、考えを固めていきたいです。

——最後に、現在就職活動をしていたり、就職活動をそろそろするであろう人たちに、メッセージをお願いします。

花梨:メッセージですか。
1つ目は、想像してもしょうがないから、早くリアルを知った方がいいよっていうのは、これは自分の体験からになっちゃうんですが、強く実感しました。

就職活動してると、やっぱ一定のイメージで判断すると思うんですが。イメージを強く持っていざその会社に入ったときに、実際は違ったとか、思ったよりは良かったとか、いろいろ思うところがありました。

イメージや期待を持つこともすごく大切なんですが。それ以上に、一回その環境に入ってみて、自分がどうなっていくのか観察していくのが大事だなと感じました。

私の周りだけかもしれないですが、就職活動って、それだけで人生が決まるみたいな感じに捉えている子が多くて。精神的に追い詰められてる子もいたんですけど。その思い込みはもしかしたら当たるかもしれないし、当たらないかもしれないし。

就職活動は、決断の時期だとは思うんですが、その決断をすごく重く捉えなくてもいいんじゃないかなと思います。

2つ目は、1つ目に重なるんですが。
だからこそ、自分がやってみたいことや将来に、ちゃんと向き合って考えて欲しいなと思います。

今働きはじめてすごく思うんですけど、自分の1日のうち何時間も費やす最初の仕事を、ちゃんと見定める時期が就職活動だったなと気づいたんですね。その最初の決断によって、どういう仕事に就くのか、どういう環境に行くのか、どういう人と出会うのか、未来が全く変わってくると思うんです。

重く考えるなって言ったり、ちゃんと考えろって言ったりしちゃうんですが。
自分の将来をちゃんと計画的に作っていくという意識のもと、就職活動ではいろんなお仕事を見れるといいのかなと思います。

無名人の企画で、未来を作っていくのが就職活動みたいなニュアンスの話をしていて。いやいやこれ嘘でしょ、言いすぎでしょ、って働く前は思っていたんです。

けど、今働いてみると、本当にその通りだなと思って。働くことについて、もっと肯定的に考えていってもいいんじゃないかなと伝えたいです。

終わりに

8月からの3か月間、人間の心理を追いかけていくのは楽しかった。人の心は楽しい。
楽しいって言っちゃなんだけど。

・人間って、コロコロ変わるじゃない? そしてけっこうどんな性格だか分かりにくいじゃない?
・そして、ドラマとかお芝居の登場人物って、性格はあんまり変わらなくて、ハッキわかりやすいキャラクターじゃない?

人間なんて、生きているってことは動いている、止まってないから、たぶん同じ人間じゃないんだと思うのよね。好きな人だってコロコロ変わるし。だから法律ってもので結婚しておかないと、コロコロ好きな人変わっちゃうんだと思うの。

で、一方で、お芝居という作りごとではさ、これがまた不自由なことにキャラクターは、分かりやすい性格を持たされて、一貫性を持って行動するのよね。

うむ。
で、人間というのは、自分とは何者か? って悩むじゃない? どういう人間なのか? って。でもさ、コロコロ変わるんだから、自分が何者か、なんていうのはないんですよ。
あるとしたら、社会的立場みたいなもんでしかなくて。
でも、まあ一定の、一貫した自分、みたいなものを想像しちゃって、そうなれなくて、悩むんだと思う。
ブレちゃう自分が嫌なのよね。

で、演劇と。
演劇が今も古代も人気なのは、たぶん人間が、お芝居の世界では一貫した自己というものを持っていて、そこに憧れるから、それを見て自分にもこういう性格一面があるんじゃないかな、と自分にないものを演劇空間の中に見出すからじゃないのかな、と思います。

なぜ急に演劇の話が? インタビューの中で語られる「人」というのはですね、実は、60分の単発インタビューの時にはあんまりブレてなかったのに、連続インタビューではかなりブレるようになったんですよね。
あれこれ、同じ人? 同一人物なのかな? てくらい。
その日の体調や気分も影響するでしょうし、あーなんかほんと、人間テコロコロ変わるよな、そりゃそうだよな、と思った次第で。
それを眺めるのは、楽しい。
ドラマやお芝居のように決まった性格人物のストーリーを眺めるのは、そりゃまあ安心して見られるんだけど、この現実の人間というまったく安心して見てられないドラマは(自分だって巻きこまれるかもしれないんだし)、まあ、目が離せない。
この楽しみを世界に。

制作:qbc(無名人インタビュー主催・作家)

編集:なずなはな(ライター)

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