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【無名人インタビュー】自殺未遂、童貞、小説家志望の人

今回ご参加いただいたのは kusakari さんです!
Twitter YouTube Kakuyomu

▷イントロ

自殺未遂、童貞、小説家志望。この3つのワードに魅力を感じるかどうか。なんていうか、毎回毎回、新手のおもしろい人が集まってきてくれてうれしい。
kusakariさん回です。
序盤、自殺未遂エピソードでびっくりしつつ、中盤は自分の性癖を語り、終盤はその性癖の由来と小説に対する思いをお話いただきました。
たぶん私qbcはこの人と似ているのかなと思ったりしながら話していました。話すっていうか、ほんとは話を聞かなきゃいけないんだけど、なんとなくこの頃から、50回前後から、自分もめっちゃ喋りだすようになったかもね。
あああ。
あんまり話さない性のこと話してる回、kusakariさん回をどうぞお楽しみください。

1、自殺未遂

qbc:ご応募ありがとうございました。どういったところでご応募いただいたのでしょうか?

kusakari:qbcさんにフォローといいねをnoteにいただいたんですよね。それで何本か記事を読んで、で募集のフォームを見つけたからですね。

qbc:インタビューにどんな期待をされていますでしょうか?

kusakari:会ったこともない人相手だからこそ喋れることってあるよね、と思って。昔、カウンセリングとか受けてる時に、なんでこんなによく知らない相手に喋れるんだろうと思ったことがあって。それをさらに活字にもしてもらえるんだーと思ったからですね。

qbc:初対面で顔も合わせてないのに、わりと話せるんですよね。
では、みなさんにお伺いしてるんですけど、どんなインタビューにしていきましょうかね?

kusakari:基本的に、なんだ。うーん。一応簡単なプロフィールから喋っていった方がいいですよね。

qbc:お願いします!

kusakari:一応小説を書いてて。別に商業的には何にも起こってないというか普通にネットに載せてるだけで。あとはちょっとYouTubeに動画あげてて、まぁそれでちょっとした収入を得てるくらいですね。あとフリーターをちょっとやってるくらいですね。

qbc:あ、YouTubeで収益があるんですね。すごい。

kusakari:生きてけないような、微々たる額ですけどね。

qbc:あ、文学系のチャンネルって実は少ないですよね。

チャンネルはこちら!

kusakari:はい。でも、そもそも初期に高校倫理の動画をアップしていたおかげでその登録数になってるんだと思うんですけどね。

qbc:しっかり解説されてますよねー、でも。

kusakari:大学で哲学をやってて、一応。そんなに受験科目としてみんなが大事にしてないせいもあるのか、あんまりyouyubeの中で競争相手がいなくて。今は増えてしまいましたけどね。
高校倫理の解説動画をあげていったんですけど、作り続けることができなくなっちゃったので。

qbc:カリキュラムが終わったんですね。

kusakari:はい。一応、現代社会もできるかなと思ったんですけど、現代社会って意外と難しくて。で、今あげているのは基本的に読んだ本の話ばっかりですね。

qbc:なるほど。そうしたらどうしましょうかね私から質問していきましょうか?

kusakari:一応小説書いてて、そっちの話の方がしたいです。

qbc:どんな小説を書かれているんですか?

kusakari:基本的にウェブの小説には向いてない、現代を舞台にしたものしか書いてないですね。カクヨムにアップしています。

カクヨムのアカウントはこちら!

kusakari:最初に書いたのは19だったと思います。大学生の時ですね。
自伝的なエッセイみたいなものを書いてて、それはネットにはあげたことはないんですけど。それが一番最初にこうちゃんと完結させられたものというか、それなりの分量でうまくいったものですね。7万字ぐらい書いたんじゃないのかな。

qbc:最初からそんなに? すごい。

kusakari:それがすごく恥ずかしいというか。自分のことを書くよりも、自分が関わってきたことを書くのがすごい難しいっていうかやりづらくて。それ自体をそのまま作品にするわけにもいかないんですよね。
それで、それを改変して作ったのがカクヨムにあがってる小説ですね。
自分が橋から川に飛び降りた、というか自殺未遂をした経験をもとに書いた話です。

qbc:え、自殺未遂したことがある?

kusakari:はい。

qbc:え、川?

kusakari:川です。川です。

qbc:何川です?

kusakari:まぁそれはちょっと。

qbc:あ、言えないですよね。有名な川?

kusakari:有名ではないですね。

qbc:はいはい。

kusakari:結構高い橋です。それくらいしか言いたくはないんですけど。

qbc:あ、全然大丈夫です。助かったんですよね?

kusakari:はい、助かってるんで今喋っているっていうか。

qbc:えー、失神? 飛びこんで?

kusakari:なんも普通に背泳ぎして生きてるって感じです。背泳ぎができたおかげというか。

qbc:叩きつけられたりとかも大丈夫だったんだ?

kusakari:はい。イマイチ分からないです。すごい運が良かったんだとは思います。

qbc:なるほど。

kusakari:それで、運良く生きてて、それで何か書けないかなと思って。

qbc:なんで死のうと思ったの? 説明できてたら死んでねーよみたいなことなのかもしれないけど。

kusakari:大丈夫です、意外と。一応作品にしてしまったんで。すごい細かいディテールを聞かれない限りは何にも感じないです。
カクヨムの中に「ヒトノモノ」っていう作品があるので、それがその時の話を題材に書いた作品なんですけど。全部が本当じゃないですよ。

こちらでございます。

kusakari:その小説の中だと主人公は死んでるんで。ま、僕は生きてるんですけど。

2、江戸川乱歩

kusakari:小説は「ヒトノモノ」ってタイトルなんですが、そういう恋愛しかできなくて。
相手がいる人しか好きになれないっていうがあって。ずっとそういう病気というか。

qbc:いや、いいんじゃないの。隣の芝生は青く見えるというか。不倫しかできないみたいなこと言う人もいるし。

kusakari:そんな感じです。それを繰り返してて。それと、なんか自分の性癖やべーんだなーと思って。それで、何か起こる前に死んだ方がいいかなとか思った感じです、簡単にいうと。

qbc:あ、全然イメージが違った。追い込まれてとかじゃないんだね。私は生きていない方が良いんだみたいな感じだよね、自分が社会悪だなって思ってしまうっていうか。

kusakari:そんな感じです。一応医学的な診断だとうつ病ってことになってて。こないだ治療が終わった感じにはなってるんですけど。

qbc:薬飲んだ?

kusakari:はい。一応投薬の治療がこないだ終わったみたいな感じですけど。

qbc:哲学やるような人は基本的にうつ病みたいなもんだと思うけど(※めちゃくちゃ偏見。。)まぁ、健康っていう概念が今非常に狭いからねえ。
なるほど。おもしろいじゃないですか。実際に何かもめ事は起きてるの?

kusakari:これといって起きてはないですけど。ほとんど内面の話ですよね。

qbc:友達の彼女が好きとか?

kusakari:好きになった人の彼氏は見たことないんですよね。

qbc:あーなるほど。彼氏がいるんですって聞くとエンジンがかかっちゃうみたいなタイプ?

kusakari:なお燃えるみたいな。

qbc:え、すっごい厄介者(笑)

kusakari:ちょっと話が前後しちゃうんですけど、高校生の時に江戸川乱歩の本を読んで、それでなんか目を開かれた感があって。自分は普通の性癖じゃないのではって思っちゃって。

qbc:あーそういう入り方だったんだ。なるほど乱歩なんだね。

kusakari:不思議と江戸川乱歩って絶対性行為の話は書かないんですよね、なぜか。あんなに異常性癖って書かれてるのに。
大量に読んだはずなんで間違ってないと思うんですけど。なんかその手前なんですよね。

qbc:描写自体がNGだったからね。

kusakari:僕もなんか妄想癖ひどいんですよ。空想上と実際のリアルの恋の区別がつけられないところがあって、それでいて知りもしない彼氏がいるっていうシチュエーションがどうやらすごい好きらしくて。

qbc:あーなるほど。実際に行動に移すとか移さないにしろ、言ってることは分かりますよ、興味として。

kusakari:まぁそれで、結局その女の子を空想して、全部五人囃子(※18禁対策で隠語にしました)して抜けるっていう感じ。

qbc:その女の子と付き合ったりするわけじゃないの? そうじゃないの?

kusakari:食事くらいはしたことありますよ。

qbc:あー分かりました、雰囲気は。

kusakari:その先に行かないみたいな。

qbc:それは変態だよね。(笑)。なるほど分かりました。

kusakari:なんていうんですか、出来事として何も進展しないけど頭の中だけ色々進展してくみたいな感じで、相手から男として見られてない感ってのがすごく分かってて。

qbc:はいはい。

kusakari:この先ないよねみたいな。

qbc:その、なんだろうな。なんで川に飛びこんじゃうの、それで? 害はないじゃん? 五人囃子するだけだったら害はない。

kusakari:どこかで本当に空想だけで終わるのかなと思う時あるんですよ。

qbc:うんうんうん。ただ自殺はしちゃったんだ、他は空想で終わるのに、自殺のところだけは実現させちゃうのがすごい。

kusakari:それと、このままずっと生きててもなー感はずっとあって。このまま空想癖のまま終わるのかな、みたいな。これ現実に起こらないまま終わっちゃうのかなーみたいなのが、若干22くらいで見えてきちゃったというか。っていうのもあって。

qbc:まぁ意味が見出せなくなったっていうね。あまり年齢は聞かないんですが、今おいくつなんですか?

kusakari:今、23とちょびっとです。

qbc:じゃあ大学を卒業したばっかりってこと?

kusakari:まぁそうですね。

qbc:全然大丈夫じゃん。なんだ若いんじゃん。

3、きびしいnoteの18禁基準を回避したい

qbc:自殺をきっかけに書くようになったってこと?

kusakari:まぁそうですね。やたら文章を長く書くことには恵まれてたというか、才能があったというか。おもしろいことかは分かんないですけど、書けたんですよね。
あと時系列に綺麗に喋るのが苦手なんですよ。書いてる方がちゃんと書ける。

qbc:喋るのがうまくないから書くってことですか。書くと、どういう気持ちになるんですか?

kusakari:すっきりしますね。

qbc:根っから書くタイプなのかもしれないですね。

kusakari:でも書き切れてないなと思ってて、今でもずっと書いてられるっていう感じはありますね。自伝的的なもの書いたよなと思ってても、それじゃなーって思っていて、この間二本目を書き終えたところなんです。
女の人監禁する話なんですけど(笑)。女の人を監禁するとか誘拐するとかいやーな話なんですけど。

qbc:今日も、SNSで20代の子が中三を誘拐したみたいなニュースみたね。

kusakari:僕あんまり小さい子に向く関心がよく分からなくて。基本的に年上の人が好きですけど。

qbc:バイト先の人とか? 好きになるっていうか奪おうとする妄想をする相手は。

kusakari:ひょんなことで出会った大学院の人とか。その人とは一番仲が良かったと思うんですけどね。食事したりとか美術館とか行ったりしたくらいなので、表面的には何もなかった。普通だと思うんですけれど。その人の家で食事したこともありますし。
その女の人がフラれた衝動かなんかでめっちゃくちゃヤケ酒してて。酒飲むと眠くなるタイプらしくて。で、寝ててめっちゃいい体してるなーとか思ったんですけど。ていうのと、その側にあるベッドで彼氏とやってたらしくてって言う話も聞いてて。うわーとか思ったんですけど、これはなんかもうだめだなーって思って何も言わずに帰ってたんですけど。

qbc:なんで? 何がダメだったの?

kusakari:いやーなんか(笑)。

qbc:別に何にもダメじゃないじゃん。それは、それで自殺しちゃダメでしょ。それは別にいいじゃん、やってほしかったんでしょ?

kusakari:いやー分かんない、そんな。

qbc:それは分かんないって。試してみないと分からなかったんじゃん。まぁ別に過去に対して言ってもしょうがないかもしれないけど。

kusakari:人の体ってどこまでが正解なのか分からないっていうか。

qbc:正解?

kusakari:なんていうんですかね。本当に肉体関係になるノリが分かんない。空気感とか、ノリでやるんですか? 分からないですけど、経験ないんで。

qbc:そうなんだ。いや別に、好きで抱きたかったら抱くんじゃないの。やりたいからやるんじゃないの。

kusakari:あーだからそういうノリ、、そういう感覚として、、、

qbc:そうだね。気持ちとして相手がやりたい、こっちはやりたくないとかはあるけど、基本的にやりたいんだったらやるっていうだけじゃない? お腹空いたから食べるとか、そういう感じじゃない? そのレベルだよね。

kusakari:あー。

qbc:生理現象って言ってもいいし、もっと高度な感情と言ってもいいけど。色々な局面がありますよね。愛情深い時もあれば、仲直りでする時もあれば、性欲があってっていう時もあればね。
あとチャレンジっていうか、こういうタイプの人とやったことないなみたいなとかさ。まぁ色々あるけどさ。それくらいのものだよね。

kusakari:あー。純粋に美術としてしか興味ないってよくないなとか若干思ってるんで。

qbc:技術? テクニック? 美術?

kusakari:美術です、アート。

qbc:えーそんなんじゃないよ、全然。ただの気持ちいいことでしかない。

kusakari:なんていうんですか、鑑賞物としてしか興味湧かないっていうか、女の人に。

qbc:それはまあ、そういう側面もあるかもしれないけど。基本的に重いしさ体、くっついてると暑いし。感情でまちまちだよ他人の体に対する感覚なんて。ただでもやっぱり一体感はあるし。気持ち悪いね、おっさんが行為について童貞に説明するインタビューなんて。
えっと、そうですね、それは、一線を越えてしまえば全然関係なく、美術とかそういうのじゃ無くなると思いますよ。それでも美術って思うんであればそういう性癖なんでしょうね。それはなんとも分からない。モノにしか性欲が湧かない真性のフェティシストなのかもしれないし。

kusakari:その人自体に興味ないというか。フォルムにしか興味ないのに関係するのは悪いよなーくらいの良心があるみたいな感じです。

qbc:話したりするんでしょ、だって。その人と話しててもつまんない?

kusakari:別におもしろいと思ったことない(笑)

qbc:おもしろいと思わない?

kusakari:はい。一般人はそういう風にして人と仲を深めていくんだなーっていう学習をした結果、そういうことしてる、普通な会話してるって感覚で。楽しいとか思わないですよ、あんまり。

qbc:鑑賞するためだけにって感じなんだね、話をするのは。

kusakari:そんな感じですよね。そういうことを言ってると「人の心ねーな」っていうくらいの常識があるんで、ちゃんと。

qbc:あーなるほど。人間関係の常識から見ると異端な感覚を持った私が、普通の人と行為に及ぶのは後ろめたいな、悪いなっていうこと?

kusakari:まとめるとそういうことですね。何も欲情しない女の人と喋ってるのが一番楽しい感じがしました。そそるものがない相手がいい。
欲情すると、単なる鑑賞物にしか見えなくなっていうか。

qbc:いつ頃からそんな感じになったんですかね、昔から?

kusakari:昔からですね。一方的に追いかけてるのが好きなだけで、それ以外には興味ないんだなーって感じ。そういう舞台設定が好きと言うか、自分が作ったストーリーが好きみたいな。
今はちゃんとそれが頭の中で考えた小説のネタであって、現実にしたいこととは違うよねっていう切り分けができるんで悩まなくなりました。
大学生の時は、その現実の話と妄想の話が合体しちゃって不思議なことになってましたね。
今は純粋に小説書いているだけなんで、恋愛に対する興味もないんですけど。

4、罪悪感

qbc:小説は、人に読んでもらってどんな感想をもらいますか?

kusakari:サイト自体がやさしめに作られてるのかというのもあると思うんですけど、バッシングを受けたりはないですね。
自分の中では深刻だと思ってることだけど、題材としては実はありふれてることを書いてるだけなのかなと。
カクヨムとかそういうサイトって、書き手が他の人の作品を読むっていう構造になってるので、すごく有名じゃない限り、こき下ろしたりとか批判したりとかってなかなかないんですよね。

qbc:あ、ほとんど書き手なんだ、こういうサイトって。

kusakari:あ、感覚的にです。純粋な読み手の人に読んでもらってるとは思ってないですね。ちゃんとコメント残してくれないと誰が読んだかなんて分かんないんで、何とも言えないんですけど。
ただコメントくれる方って、ほとんど書き手の方ばっかなので。やっぱり自分がされたくないことを人にしたくないっていう精神だと思うんですけど、やっぱり。これといって何も言われたことないですね。だからそれはある種の救いというか。思ってるほどおかしくないのかもみたいな。

qbc:あー。

kusakari:ちゃんと言語化して喋ってるか喋ってないかの違いであって、意外と僕の言ってることって変でもないのかなっていう気もしなくもないですね。

qbc:めちゃくちゃ変ではないよね。自殺まで行くのはまれだけど。

kusakari:教養としてバックボーンにはどこか、キリスト教とかそっちがあるんですよ。

qbc:キリスト教徒なの?

kusakari:キリスト教徒じゃないんですけど割合よく知ってて。淫らな気持ちそのものが悪いよねっていう価値観がすごく分かるんですよ。聖書に書いてある。
性欲があることにそんなめっちゃ悩むんだーとかすごい幼い時は思ったんですけど、大学生になったらすごく分かるようになって。人の女に手を出したくなったら地獄に落ちた方がいいよねみたいなことが書いてあるんですよね、簡単に言うと。
確かに、って。

qbc:うんうん。

kusakari:考え過ぎって言われたらそれまでですけど、なんかめっちゃ人を愛せないんだわーっていうのをはっきり自覚した時にこれ死にたいわってなったって感じですよ。

qbc:ふーん。

kusakari:なんか中間の付き合い方が分かんないですよね、多分。なんかもっと適当のほどほどみたいなのが掴めたら、死のうとしてないよなっていう気がしますよね。

qbc:そういう鬱屈というか、どこにも行き場がないみたいな状態にはなったんですね。

kusakari:喋っても「それってみんなそういうもんじゃない?」って返しをされること多くて。そういう返しは慣れているというか、普通のことをやたらと難しく言ってるというか、勝手に悩んでるだけよねーみたいな感じに言われて。それに行き場のなさを感じたっていうのはあります。

qbc:そういうのを話す場所、カウンセリングの時は話せたって言ってたじゃないですか。

kusakari:カウンセラーの人って女性ばっかなんでそんな話してないです。カウンセリングを受けたのってすごい自殺をしようとした時とはもう違うというか、また別の時ですね。

qbc:自殺後?

kusakari:前です。

qbc:でもその時にはそういう性欲はあったわけでしょ? 他人の女に情欲するって。

kusakari:その時は無かったですけどね。

qbc:じゃあ今、私に話したの初めて?

kusakari:まあそうかもしんない。

qbc:なんかありがとう。私、大学の時に、後輩と付き合ってたんだけど、その後輩のさらに後輩の男の子にごにょごにょ呼び出されて、東中野かなんかにさ、東京の地名だから東中野って言っても分からないかもしれないけど。

kusakari:あ、分かりますよ。

qbc:あ、分かる? 東中野に呼び出されてさ。そこに住んでたからね彼が。
そしたら僕〇〇先輩のことが好きで~って。あ、そうなんだってって感じなんだけど、好きで、無精してしまったって言ったかと思うとボロボロ泣き出してしまったんだよね。すみませ~んって言って。
うそでしょ~って思って。なんも悪いことしてないのにさ。私はこの人に何を感じたらいいんだろうみたいな気持ちになって。そういう性欲を抱くこと自体に罪悪感を覚える人がいるんだ、みたいな。

kusakari:その罪悪感、分かる。そっちの方が分かっちゃいます。おこがましいけど。

qbc:まったく分かんないわけじゃないよ、言ってること自体は。ただ別に泣く必要もないし、私にそれを言うっていうのが分かんなかったかな。

5、箱男

qbc:小説は今後も書き続けますか?

kusakari:そうですね。一応公募とかにも出してますし、色々やってはいますね。
根本的には、自分の中のなんでこんなに肉体的行為が怖いのみたいな話とか、すごい掘り下げて書きたいというのがあって。
そもそもが人が何で生まれてくるかが僕分かんなくて。17くらいまで。

qbc:なるほど、うんうん。

kusakari:僕男子校に通ってて。それを教えてもらった時になんかすごい身震いがして、気持ち悪いなって思っちゃって。

qbc:インターネットでめちゃくちゃ性がありふれた時代じゃないですか、今。

kusakari:よく言われるんですけど、なぜか知らなくて。

qbc:ただその性っていうのがあるのは分かるでしょ? 女性の裸とか。

kusakari:その行為と子供が生まれることの因果関係が繋がってなくて。その言葉は知ってたんですけど、どのタイミングで受精してるかがよく分かってなくて。何の現象なんだろうと思ってて、ずっと。それを教わった時に、あーこんなんで生まれてくるんだっていうショックがあって。

qbc:性教育大事だなって、今私思った。

kusakari:そう思います、ちゃんとした方が良いと思います。コンドームつけろよとかよりも大事です。

qbc:そっか、って思って。切り離して考えたことなかったから。なるほどね。そうだね、性行為と受精が別個のものって感じても変じゃないね。

kusakari:そもそも人って生まれてこない方が良くないか? ってずっというと思ったんで、幼い時から。

qbc:それはなんで?

kusakari:いじめとか受けたからだと思うんですけど、色々。不登校までいってないですけど、その手前までなっちゃって。なんか人が信じられないよねーみたいな。今は大したことないんですけど。
あとその時流行っていたのが、20世紀少年って漫画で。綺麗に東京が全滅していくっていうお話なんですけど、UFOからばい菌が出てきて人が死ぬシーンがあって、「これでいいじゃん」と思っちゃったんですよね。
性行為で人が生まれるってのを聞いてそれがすごく嫌だっていうか、気持ち悪って思って。自分の父と母がそんなことしてるんだっていうのも気持ち悪くて。なんかそういうのに疎そうな二人がハァハァしてるんだとか思ったら気持ち悪くて。

qbc:私の知り合いの話だけど、お父さんが産婦人科医でめちゃくちゃ堕胎させまくってることに対して嫌悪感を抱いてて、なかなか性行為に及べなかった、ていう女の子がいたね。
まあなんか、そういうのもあるんだろうね。イメージていうか。いじめとかそういう普通に性欲が合って性行為をしたいのというのが正常なルートで、自分はそっちじゃない以上ルートの方に興味

qbc:別にやばいことはないけ普通に性欲があって性行為をしたいのというのが正常なルートで、自分はそっちじゃない異常ルートの方に興味

kusakari:セクシャルマイノリティって色んなくくりがあるじゃないですか。そういうくくりでちゃんと言い表せるのは、ある意味、羨ましいって若干思っちゃうんですよね。
申し訳ないですけど、同性愛とかカテゴライズされてこういう人だって一言で表せる「何か」があるなっていいなと思って。
でも差別と闘ってる人がいるし、それを一概に良いとか悪いとか言える立場に僕はないですけど。

qbc:そうね。

kusakari:性的対象はマジョリティ的な性的思考してるくせに、それを満たすやり方がマイノリティだなぁと思ってて。だからそれを言い表せるきれいな言葉がなくて。

qbc:なるほどね。

kusakari:おこがましいんですけど、こういうのを聞いて僕だけじゃないんだーって誰かに思って欲しいなっていうのもあって、インタビュー受けてるってのもあります。
そんなにピンポイントで重なる人いたら怖いんですけど。

qbc:まぁいるんじゃない? 性欲のトリガーは何だって話。

kusakari:オンライン読書会に参加してて、ちょっと性に関する話題を喋ったことがあるんですけど、なんか性行為どうのってなっちゃって、すごいついていけない、嫌な苦い経験をしたことがあって。

qbc:俺の性行為論、私の性行為論が飛び交ってしまった?

kusakari:社会では普通喋れないことを喋れる機会としてある読書会イベントなのに、なんだ普通の話してんじゃんと思ってしまって。
なんかマゾの方の話とかも聞いたんですけど、でもマゾってちゃんとカテゴライズされてるだけまだマシだよねとか思ってしまって。それは衝撃的なカミングアウトだと全く思わなくて。
そんなんでカミングアウトした気になってるんだーみたいに、若干軽蔑の念を覚えたんです。お相手がいるだけいいじゃないの、みたいな感じになっちゃって。

qbc:相手がいれば幸せだよね(笑)。

kusakari:単にマゾって言ってるだけじゃなくて、サドのお相手がちゃんといて。お互いに何かしらコミュニケーションがあって。

qbc:だってマゾって言っても普通の行為もできる人たちなんでしょ? あることが好きすぎてみんなの前で裸になれない体だから、一緒に温泉入れないとかのレベルではなくて。

kusakari:二人で楽しい思いするために頭使ってるだけなんじゃんって。

qbc:それは幸せそうだよね。

kusakari:僕みたいにそもそもコミュニケーション自体に負い目があるタイプとは全然違う。
僕はコミュニケーションがなくて、一方的なものが好きなんです。

qbc:安部公房の『箱男』読んだ?

kusakari:あー主題は分かります。読んだことないんですけど。

qbc:安部公房自体は?

kusakari:『砂の女』はあります。

qbc:『箱男』はフィットするんじゃないかなって思うけど。

kusakari:箱に穴を開けて見てるだけの話ですよね。雑に言うと。

qbc:そうそうそうそう(笑)。文学系のやつって雑に言ったら全部つまらないけどさ、あらすじつまんないから。
盗撮っぽい感覚が常に付きまとってる小説で、世の中から隔離された状態でずっと盗み見ている話。

kusakari:安部公房は割と好きです。

qbc:であれば『箱男』は安部公房の最高傑作だと思う。

kusakari:結局、一方的なものが好きなんだったら、ちゃんと言語化してちゃんと人様に見られるものにする方が健全というか、悩まずに済むよねっていうのが、今の答えですかね。

qbc:なるほど。

kusakari:凝って文学的なもの書きたいという欲求はなくて、簡潔で分かりやすいもん書きたいなっていうのはあります。ただ簡潔に分かりやすい文章だからといって、書かれてることが分かりやすいかは別にしたいなとは思いますね。

qbc:もっと小説が読まれたらなって思いますね。書いた作品に対してこうだああだっていう意見によって、小説全体が変わっていくので。
私も二十歳くらいからネットに小説を投稿し始めたんだけど、意見もらって変わっていったからね。

kusakari:見てる人の母数が増えない限り変わらない、て感じますね。

qbc:私もこの無名人インタビューは、もともと小説を読んでもらうために始めたことだからね。知らない人の小説って読まないよ。
「無名人インタビューっていう企画をやってる人が書いている小説」という入口にしたい。

kusakari:そうですね。僕も古典的なものしか読まないんで。もうすでに死んでる名のある人たちの作品を読むほうが多いですね。単にはずれ作品を読んで損をしたくないだけっていうか。

qbc:評価がね、かなり定まった人=古典ってことだよね。ちなみに誰が好きなんですか?

kusakari:夏目漱石です。いろいろ言いましたが。夏目漱石と江戸川乱歩です。
夏目漱石のモチーフって「他人の女を好きになる」だと思ってるんですよね。嫉妬しないと恋愛できない人の話を繰り返してて、ずっと何か引っかかってるんだなぁと思って。後半そういう作品ばっかで。ちょっと舞台設定変えてるだけでやってることが似てて、なんでそんなに繰り返すんだろうって。

qbc:明治の人たちって基本的に結婚を強制的にある程度有力者と結婚させられるわけで、そういう取ったり取られたりっていうのが多かったんじゃないのかな。

kusakari:どうですかね。不倫したいなと思いつつ、不倫そのものを書けない人なんですよね。

qbc:それはやっぱり時代の倫理じゃないの?

kusakari:なんかその厳格さがすごい好きなんです。僕自身、そういう願望を持ってるだけで、何もしたことないんで。結局、ちょっと食事行ったくらいで僕はお終いだったんで。

qbc:おもしろいかもしれないですね。もうちょっと客観視して見れたら。なんでそうなのかっていうところまで引ければ。

kusakari:結局、フィクションの領域にしか欲情できないんだなっていうのがはっきり分かると、まぁしゃーないのかなって思うようになりました。何か具体的な経験を経ないと変われないんだなーって。
なんていうんですかね、ある意味自給自足っていうか自分で生み出して自分で抜けちゃうっていう状態に入ってしまって。

qbc:生態系ができあがってしまったと。

kusakari:それを満たすような現実の出来事なんてほとんど起こんないよなって。

qbc:まあそうね。童貞ってことに関しては、童貞じゃなくなった時にこのインタビューを読み返したら「この時の自分が何言ってるか全然分かんないんですね」みたいになるでしょう。

kusakari:そんなもんですかね。

qbc:小説は、純粋に楽しみですね。何か起きるんじゃないのかなっていう気がします。
考え続けているパワーっていうのは薄まらないと思う。

kusakari:本当にありがとうございました。

qbc:いいえ、とんでもないこちらこそ。ありがとうございます。

(編集協力:えつこの部屋)

▷アウトロ

文字起こし担当えつこさんからは、この回はしんどかった、というコメントをいただきました。男同士でこういう話するの聞いてるの嫌だろうなと思いつつお願いしてたのですが、案の定、苦手筋だったみたいです。

kusakariさんは肉体的な性が苦手というお話でしたが、社会的にも性というものから距離をとるような風潮があるかなあ、とちょっと思ってます。どうなんですかねえ。
私自身は、奔放な性生活のほうが人生幸せだろうなと思います。まあ嫌いな人もいるんですが、シンプルに楽しいからなあ。
社会って点から見ると、コントロールが難しくなりそうですがね。

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