見出し画像

タンゴバー

昨日の夜、タンゴバーに行った。

バーと言っても、アルゼンチンでは食事ができるところもバーと言っている。カフェもバーということが多いくらいだ。結構広い意味で使われている言葉だ。このバーは私的にレストランに近い。かなり古いレストランで、タンゴが好きな人にとって有名な場所でもある。たいていの金曜の夜、ここでアルゼンチンタンゴの生歌が聞ける。20時オープンと言っているけど、お客さんが集まり始めるのは21時ごろ。ショーが始まるのは22時過ぎ。その時の状況で頃合いを見てそれは始まる。

私が着いたのは21時を少し回ったころだった。ちょっと古めかしい格好の団体がいる。お年を召した方が大半だが、中には若い人も交じっている。どこでそれらの服を調達するんだろう?男性は小物を古いものにするだけで、それらしく見えるが女性たちは?。女性たちのドレスやブラウスは今どきのショップではまず見かけないものばかりだ。形は古いけど、遠目からの確認では状態もよさそうだ。本当に昔のものを大切に着ているのかな?

ここは料理もおいしい。私はラバ(イカリング)と鶏肉のミラネサ(カツレツ)を頼んだ。下戸なので、たいてい飲み物は常温のミネラルウォーター。たまに、炭酸物も飲むけど食事の時はお水が一番だ。ラバは前菜的な存在で早く来ることが多い。お腹が空いて早く食べたいときはこれを頼むと比較的早く食べられる。メインが来るまでのつなぎにはもってこいだ。お水飲みながら、待つ。音楽はアルゼンチンタンゴが流れている。世界中に広まったある病のせいで、タンゴもすっかり忘れてしまった。でもこの店は相変わらずの様子。ラバが到着。おいしい香りがする。レモンをかけていただく。ただのイカリングなんだけど、イカがとても柔らかいのに驚く。すごく、おいしい。アッという間に平らげる。

そうこうしてるうちに、ショーの準備が始まった。今日は少し早いな。そう思っていたら、2部構成らしい。初めはちょっとした劇があってその中でいくつかのタンゴっぽいダンス。役者さんたちはみんな若そうだ。20代から30代だと思う。

劇が終わってひと段落したら、すぐに男性の歌い手さんが登場。タンゴの曲を数曲歌う。バーで歌う歌手たちはリハーサルはしない。もちろん、ほかで声出ししてきていることは考えられるけど。この歌手も数十分前に到着して、席についていた。しばらくして、服を着替えて、歌い始める。謳ったことないけど、タンゴはオペラに近い歌い方をしていると思う。声量がすごい。なぜか途中でフニクリ・フニクラを歌い始めた。これは私も知っている。さらに何曲か歌う。歌手はみんなに踊るように誘う。古めかしい格好の団体さんたちも出てきて踊りだした。場も盛り上がって、いい感じに終わろうとしていた。

そのとき、DJがある女性を呼んだ。その女性も歌手だそうだ。男性の歌手の名前もその女性歌手の名前も知らなかったが、どうやら有名人らしい。彼女の名前はイネス。DJはイネスに歌うようにお願いした。イネスはただ遊びに来ただけで、歌うつもりないよみたいなこと言った。一度断られたからと言ってDJは引かずにもう一度お願いする。イネスはマイクに近づいた。

この辺のやり取りが日本人っぽいなといつも思う。アルゼンチンではよくある光景だ。奢るときもレジ付近で似た状況を見る。

イネスはマイクを通さず男性歌手と話している。どうも歌詞を確認している模様。それからアカペラで歌いだした。イネスは今年95歳だそう!でも、ちゃんと歌っている。マイクは使ってるけど、声量もある。曲のタイトルはわからないけど、素敵だ。大拍手だ。イネスも満足そう。3曲、歌った。多分歌うのが好きなんだね。たぶんイネスは特別だろうけど、高齢になっても歌えるっていいなと思った。

ショーが終わった後はお客さんたちのダンスタイム。タンゴ、フォルクローレ、などなど。楽しい時間が過ぎていく。

今日はちょっと得した気分になって家路についた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?