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架空の現実

タイトル:(仮)架空の現実

▼登場人物
●夢似恵 保(むにえ たもつ):男性。35歳。デザイン企業に勤める独身サラリーマン。趣味は寝る事と絵を描く事(自画像が得意)。「架空の保」は保が絵に描いたキャラクターの事。このキャラクターが保に代わってその人生を歩む形(姿形は保そのものでOKです)。
●上司:男性。50歳。保の会社の上司。一般的なイメージでOKです。
●軽井優子(かるい ゆうこ):女性。30歳。保の会社の同僚でフィアンセ。
●夢野(ゆめの)イツカ:女性。30代。保の欲望と本能から生まれた生霊。

▼場所設定
●デザイン企業:保達が働いている。都内にある一般的なイメージでお願いします。本編では「会社」とも記載。
●Space of Dreams & Pictures:同じく都内にあるお洒落なカクテルバー。本編では「カクテルバー」とも記載。
●保の自宅:都内にある一般的なアパートのイメージでOKです。

▼アイテム
●Dream Reality:イツカが保に勧める特製の液体薬。これを飲むと心が現実に強くなれ、一時的に人生の成功者の様になれる。ただし期限付き(使用は1回限り)。
●Painting Transformation:イツカが保に勧める特製の液体薬。これを飲むと漫画に描いたキャラクターと人生を交換でき、本人はその夢の中でその幸せな人生を送る事が出来る。その代わり本人はずっと眠り続けたまま。

NAは夢似恵 保でよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたは夢を絵に描く事は好きですか?
よく子供の頃から描いた絵は、夢そのものであり、
それにキャラクターなんかの絵はどことなく
自分に似せて描く…とも言われたりします。
そんな自分の自画像を、誰でも1度ぐらいは
描いた事があるのではないでしょうか。
今回はそんな趣味を持つ、あるサラリーマンにまつわる不思議なお話。

メインシナリオ〜

ト書き〈会社〉

上司「夢似恵君!夢似恵君!!」

保「は…はい!」(寝起き)

上司「君は仕事もせんで何やっとるのかね!まさか君、会社で寝てたんじゃないだろうな!」

保「い、いやそんな事は…!」

上司「午前中に頼んどいた資料、まだ出来とらんのかね!」

保「す、すみません!今すぐやります!」

俺の名前は夢似恵 保。
今年35歳になる独身サラリーマン。

今はやっとの思いで入れたデザイン企業で働いてるが、
毎日上司に怒られっぱなし。
まぁ当然の事だ。
俺は会社に来てまで居眠りしてるんだから。

そう、俺の趣味は寝る事。
世間の全ての事を忘れ、夢の中で楽しんでこそ人生の醍醐味♪

俺が眠って見る夢はなぜか全部楽しいものばかり。
これは1つの幸せなんだろうが、でも現実問題、
それでは世間様が許してくれぬ。

そしてもう1つの趣味は絵を描く事。

子供の頃からの夢が漫画家や絵描きになる事だったのもあり、
今はこうしてデザイン企業に入れてとりあえず良かったんだろうが、
仕事と言えば企画案件の書類作成やコピー係。

デスクワークと言っても絵を描くより字を書く事のほうが多く、
絵に関する仕事はほとんどさせて貰えない。

これじゃ何の為にこの会社に入ったのか。
ほんとに分からなくなる事がある。

ト書き〈会社帰り〉

「お疲れ様〜」
その日の会社帰り。
俺は久しぶりに飲みに行く事にした。

保「はぁ〜今日も疲れたなぁ。ほんとに仕事先、もう少し考えて変えたほうが良いのかもしれないなぁ」

そんな事をブツクサ言いながらいつもの飲み屋街を歩いていた時。

保「ん、あれ?こんなトコあったんだ」

全く知らないバーがある。
看板には『Space of Dreams & Pictures』と書かれてあり、
外観は綺麗で中も落ち着いていた。

俺はふらりとその店に入り、
いつものようにカウンターにつき1人飲んでいた。
そしていつものように愚痴りながらチビチビやってると…

イツカ「こんばんは。お1人ですか?もしよければご一緒しませんか?」

と1人の女性が声をかけてきた。

彼女の名前は夢野イツカさん。
都内で「夢のコンサルタント」というヒーラー教室をやってたようで、
主にライフコーチみたいな仕事をしていると言う。

まぁ別に断る理由もなかったので隣の席を空け彼女を迎えた。

でも喋っている内に不思議な気がする。

なんだか「昔から知っているような人」の気がしてきて
何となく心が和み、そのせいでか自分の事を
もっと彼女によく知って貰いたい…
なんてそんな気持ちも湧いてきて、
気づくと俺はなんと、
今自分が抱えている悩みのようなものを
彼女に全て打ち明けていた。

保「ハハw僕はどうもダメで、会社に行ってもほんと居眠りばかりで、今日も上司にドヤさてれたんですよ。趣味は寝る事、そして絵を描く事」

保「絵と言ったって水彩画とか水墨画とかそんなんじゃなくて、子供が描くような漫画の絵でね。まぁ言えば、現実逃避する為に絵を描いて、そこに登場させるキャラクターを自分のようにして描き、そいつに現実で自分が出来ないような事をさせてウサを晴らしてる…そんな事の繰り返しを毎日やってんです。ハッwダメな人間だと思うでしょあなたも?僕の事」

やはりほとんど愚痴のような感じになってたが、
それでも彼女は真剣に俺の言う事を聴いてくれていた。

イツカ「いえ、夢を持つ事は良い事ですし、私がやってるヒーラー教室にもそのような方は多く来られてますよ。現実では自分の居場所が見つからず、したい事も見つけられず、小説や絵を描いてその中でこそ自分の夢を叶えてしまう。…そう言うのも現代人にとってはとても大切な事で、現実での自分の心のバランスを図る良い土台になっていたりもするのでしょう」

保「はぁ」(何となく聞き入っている)

イツカ「良いでしょう。ここでお会い出来たのも何かのご縁です。私があなたのそのお悩みを少し軽くして差し上げましょうか?」

保「え?」

そう言って彼女は持っていたバッグから
瓶入りの液体薬のようなものを取り出し、
それを俺に勧めてこう言った。

イツカ「それは『Dream Reality』と言うまぁ特製の液体薬でして、その昔、西洋で試薬として生まれたものです。主に現実で覇気を持てない人、夢を持てない人、心が落ち込み人生を楽しめない人の為の精神薬として生まれたものですが、その効果が余りにも強く、一時(いちじ)は市販が中止になっていました」

イツカ「ですがその効能は多くの人の心の助けになり、やはりその効果は確かなものだったので、今回、人体に支障の出ない形で新しく栄養剤として生まれ変わったのです」

イツカ「おそらく今のあなたにとっても、こう言うお薬は最適なものになるとは思います。もしあなたが試してみたいと言われるならこちらをお勧めしたいのですが、いかがでしょう?」

また話を聞いてる内に少し不思議に思ったが、
彼女には何となく独特なオーラが漂っている。
全く信じられない事でも、
彼女に言われると何となくその気になり信じてしまう。

そして俺はついその気になり、その栄養剤を手に取り
その場で一気に飲んでいた。

ト書き〈数日後〉

それから数日後。
俺は本当に人が変わったように人生を楽しんでいた。

上司「やぁ〜夢似恵君!君の今度の仕事の成果、本当によくやったもんだよ!その調子でこれからも頼むぞ!」

保「は、はい!有難うございます!」

仕事はテキパキと驚くほど捗り、
周りの俺を見る目も変わってきて、
更にいろんな仕事を任されるようになった。

デザイン企画や絵を描く仕事!
これがやっと会社で俺の元にも回ってくるようになり、
今までは勤務態度が良くなく、信頼されていなかったから
ただ回ってこなかっただけの事。

その事も実体験を通して分かってきて、
俺は益々仕事に精を出し、出世街道まっしぐら。
そんな人生を送る事が出来ていたのだ。

優子「保さんってほんと絵がお上手ね♪これまでデザインの仕事を保さんがしてるトコ見た事なかったから、ほんと知らなかったわ。今度私にも絵の描き方、教えてくれないかしら?」

保「いやぁ、ハハw僕でよければぜひ」

それから俺は同僚だった軽井優子さんと言う人と仲良くなり、
彼女といろいろ接点を持つ内に付き合うようにまでなったのだ。

(デート中)

優子「はぁ…あたし、保さんと出会えて幸せよ」(うっとりする形で)

保「俺もさ優子。これからは仕事だけじゃなく、プライベートでもずっと一緒にやっていこうな」

優子「うん、嬉しい」

そしてデートを重ねる内に俺達は婚約した。

ト書き〈数日後〉

それからまた数日後。
俺は1人で又あのカクテルバーへ寄っていた。

中に入ると、前に座ってたのと同じ席で
イツカさんがお酒を飲んでる姿を見つけた。
俺はすぐに駆け寄り彼女にお礼を言った。

保「やぁイツカさん、いらしてたんですね?お会いできてよかったです♪」

俺はあれから今までの事を全部彼女に伝え、
自分が変われた事、幸せな人生を送れている事、
その事を全部ひっくるめて彼女に心の底から感謝した。

イツカ「それはよかったです、おめでとうございます」

彼女も自分の事のように喜んでくれて、
俺と優子の将来を祝福してくれた。
でもこの時、1つだけ気になる事を言ってきた。

保「え?そ、そうなんですか?」

なんとあの日貰った液体薬は1回限りで、
今後はもう貰えないとの事。
これからは自分で人生を開拓し、心を丈夫に持って、
優子と2人の人生と会社での生活を自力で守っていく事。

これを是が非でもしていかなきゃならない、
という事を彼女は念押しの形で俺に言ってきた。

でもそれを聞いている内、途端に不安になってきた。
あれから数日間が過ぎ、俺の心は何となくまた綻び始め、
少しまた昔の自分に戻りかけていたのだ。

だから今日このバーへ来たのも
もしかすると彼女に又会えるかもしれないと期待して、
もし会えなければ都内の「夢のコンサルタント」を訪問し、
そこでもう1度あの薬を貰おうと密かに思っていたのだ。

でも、それがもう出来なくなった。

思えば、あの薬を飲んでから俺の生活が変わった。
人生そのものが変わり、将来の夢を持つ事も出来、
今こうして優子と結婚の約束まで出来て、
仕事も打って変わって捗るようになっている。

全てはあの薬のお陰だったのだ。

それに普通の薬とは違い薬物依存症ではないと思ったのもあり、
俺のその事への決意は少し固いものになっている。

だから余計にあの薬を無心したくなり、
「何か代わりの物でも良いからこれからの自分を助ける何かが欲しい」
とそこで俺は彼女に実際訴えていた。

イツカ「保さん。先程もお話ししましたように、ああ言うお薬はいっときの心を助ける為だけのもので、それ以上頼ってしまってはやはり依存症になってしまい、あなたにとって、本当の助けにはなりません。ですからどうか今回の経験をバネにして、今後の生活は自力で設計し守って行く…この強い心を持って頂きたいと思っています」

彼女の言う事は一々解ったが、でもどうしても自信が無い。
言われれば言われるほど自信が無くなり、
それから俺はまた変わってしまった。
そう、昔の自分に一歩ずつ着実に戻っていたのだ。

ト書き〈トラブルからオチ〉

そして…

上司「どうしたんだね夢似恵君!せっかく君も仕事をやる気になって、それなりの成果を出してくれると思ったら、また失敗続きのダメ社員か!?おまけにまた居眠りするようにもなって!一体どうしたんだ!」

保「す、すみません…」

まず仕事が捗らないようになり、
会社でドヤされる日々が返ってきた。
それに…

優子「会社で居眠りばかりしてるなんてどうかしてるわよ!本気で私との将来をちゃんと考えてくれてるの!?こんな調子じゃ将来が心配だし、結婚も考えさせて貰わなきゃならなくなるわ」

保「ゆ、優子…」

優子もこんな俺に愛想をつかすようになってしまい、
結婚も怪しくなってきた。

やはり無理もない事。
こんな男と一緒になる女なんてまず居ないだろうし、
こんな男をずっと採用し続ける会社も無い。

俺は社会不適合者なのか?
そんな不安が今更ながら強烈にやってきた時、
俺は又あのバーへ行き、
必要なら夢のコンサルタントまで行こうとした。

(カクテルバー)

でもその日の会社帰りにバーへ立ち寄った時、
やはりイツカさんはそこに居てくれて、
コンサルタントまで行く必要はなかった。

でも彼女を見るや否や俺は一目散に駆け寄り、
今のこの状況から救って貰う事だけを無心した。

保「イツカさん!お願いです!なんとか、なんとか今の僕を助けて下さい!こんなお願い、あなたにすること自体が間違ってる事は重々承知してます!でもあなたはあの時、僕を本当に助けてくれました!」

保「あなたは不思議な人だ。まるで僕の事を全部知ってくれてるかのようで、その時に必要な事を僕にしてくれたんです。だからか…あなたしか居ないと思ってます、僕を助けてくれる人は!」

もう他人から見れば俺は狂ってるように見えるだろう。
でもこのとき彼女に言ったのは俺の正直。
それ以上ない本心からの訴えだった。

無心し続ける俺に彼女も漸く折れてくれたのか。
次にこう言って俺のその願いに応えてくれたのだ。

イツカ「ふぅ。仕方ありませんね。それでは、前にお話ししましたように『Dream Reality』はもう手元にありませんから、別の方法であなたをお助けしましょう」

そう言って彼女は持っていたバッグから
また新しい液体薬を取り出し、それを俺に勧めてこう言った。

イツカ「それは『Painting Transformation』と言うこの前と同じような特製の液体薬で、それを飲めばきっと今のあなたの夢は叶えられ、全てが順風満帆に行くようになるでしょう」

保「え?ほ、ほんとですか!?」

イツカ「ええ。ただし、あなたのこれ迄の生活は失われ、今後の人生は一変します。あなたは夢を見るようにその成功した自分の人生を眺めるようになり、それなりの幸せの中でもう1人の自分を見る事になります。もしそれでも良いのなら、どうぞお飲み下さい。あなたの人生です。強制は致しません。あなた自身が決めて、今後の人生を開拓する一歩を踏み出すのです」

少し怖い事を言われてるような気がしたが、
でもまた今までの人生が変わり成功した人生の歩み手になる…
それなりの幸せの中でずっと居続けられる…
この2つの言葉がキーワードになり、
俺はイツカの言葉を最後まで聞かず、
その場で液体薬を手に取り一気に飲み干していた。

ト書き〈保の部屋でベッドで眠り続ける保を見ながら〉

イツカ「結局、保はこの人生を選んだのね。彼はずっと眠り続ける。楽しい夢を見て、その夢の生活が、彼が絵に描いたキャラクターを通して演出されてゆく…」

(会社)

上司「やぁ夢似恵君!やっぱり君は相当な実力の持ち主だったんだね!この調子でこれからも頼むぞ!」

架空の保「はい!有難うございます!」

優子「保さん♪来月にでも式場の下見に行きましょうよ。私、早くあなたと一緒になりたいから」

架空の保「ああ♪行こうか」

(保の部屋に場面を戻して)

イツカ「今世間で生きて、会社で働いてるのは、保が描いた漫画のキャラクター。保は自画像を本当に上手く描く事ができ、その出来栄えは誰が見ても保そのもの。周りの人が本当の彼だと間違えても無理はない」

イツカ「私は保の『夢のような人生を送りたい』『現実の自分に出来ない事を漫画のキャラクターに託し、そこで叶えた夢を本当の現実に投影させたい』と言った欲望と本能から生まれた生霊。その夢を叶える為だけに現れた」

イツカ「だから保が描いたキャラクターに命を吹き込み、保の代わりにその人生を歩ませたのよ。本当は保自身に自分の人生をしっかり歩んで貰い、自力で幸せを掴み取って欲しかったけど無理だったわね…」

イツカ「でもまぁ、これが漫画を描いてる時に一瞬でも本気で夢見た保の願いだったのだから、見方を変えれば保にとってある意味、心底から願える本当の幸せなのかもしれないわ。あなたの事はここで私が守ってあげる。今日も夢の中で、お幸せにね…」

動画はこちら(^^♪
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