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愛する人と一緒になりたい

タイトル:(仮)愛する人と一緒になりたい

▼登場人物
●天似(あまに)カケル:男性。54歳。サラリーマン(それなりの上役)。美幸だけを本気で愛する。
●天似美幸(あまに みゆき):女性。53歳。カケルの妻(持病で他界)。堅実な妻。
●花野可憐(はなの かれん):女性。44歳。美人。カケルの後妻(結婚後すぐ破局)。ステータスに注目する現実的な女性。
●九翠小代乃(くすい こよの):女性。40代(若く見える)。カケルの本能と夢から生まれた生霊。

▼場所設定
●某会社:カケルが働いている。都内にある一般的な商社のイメージで。
●Reunion in Heaven:お洒落なカクテルバー。小代乃の行きつけ。
●街中:病院など必要ならで一般的なイメージでお願いします。

▼アイテム
●Vitality and Dream in Reality:小代乃がカケルに勧める特製の錠剤。飲んだその人を若返らせて、現実での幸せを手に入れさせようとする効果を秘める。
●Eternal Life in Heaven:小代乃がカケルに勧める特製の液体薬。本当に愛する人と永遠の空間で暮らせる架け橋を造る効果を持つ(飲んだ人はこの世を去る形で)。

NAは天似カケルでよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたはこの現実に生きていて幸せですか?
また唐突ですが、亡くなった愛する人に会いたいとは思いませんか?
この現実で生活する場合、どうしても人には欲望がつきまとう。
地位や名誉やお金。
それは生活に必要なものかもしれませんが
この世を去るとき人はそれらのものを持っていく事はできません。
今回は、そんな事に悩み続けた
ある男性にまつわる不思議なお話。

メインシナリオ〜

ト書き〈総合病院〉

カケル「美幸…美幸ィ!!」

俺の名前は天似カケル。
今年54歳になるサラリーマン。

俺には愛する妻・美幸が居た。
美幸と俺は学生頃に付き合い始め、それから結婚し、
共働きで貧しい生活をずっと続けてきた上、
本当に仲睦まじい夫婦生活を営んできた。

俺達の間に子供はできなかったが、
それでも俺と美幸は幸せだった。
美幸は元々体が弱く、いっときから持病を悪化させ、
その頃から俺はずっと彼女を介護し続けこれまでやってきていた。

その美幸が今日、亡くなった。

カケル「美幸…」

俺は生まれて初めてと言って良いほど大泣きに泣き、
本当に後(あと)を追おうかともした。

でも美幸がクリスチャンだったのもあり、
俺も少しばかり教会に携わっていた事で
自ら命を断つ事はできず、これからどうしたものか…
それを少しずつ考えながらその後もまた美幸との思い出を心に宿し、
それなりに生活を続けて行こうとしていた。

ト書き〈カクテルバー〉

でも、最愛の人を亡くした事による喪失感は
それを経験した事の無い者が想像するより遥かに大きい。

俺はそれからもやはり何度も挫折してしまい、
生活への覇気が湧かず、
どうすればまた美幸に会う事が出来るだろうか…
そんな事ばかり考え続けた。

そんなある日。
俺はもう久しく通っていなかった飲み屋街へ行った。
酒でも飲んで憂さを晴らそうと思って。

そうして歩いていると…

カケル「ん、『Reunion in Heaven』?」

なかなかよさげなカクテルバーを見つけ、
そこに入ってカウンターにつき1人飲む事にした。

そして美幸の事を思い出しながら飲んでいた時…

小代乃「こんにちは♪お1人ですか?もしよければご一緒しませんか?」

と1人の女性が声をかけてきた。

彼女の名前は九翠小代乃さん。
都内でライフコーチ、メンタルヒーラーをしているとの事で
どこかそれらしいオーラを漂わせつつ、
なかなかおっとりした優しそうな人だった。

別に断る理由もなかったので俺は彼女を隣に迎え、
適当に談笑しながら飲む事に。

でも少し喋っていると不思議な事に気づいた。
彼女は何となく、
「自分の事を昔から知ってくれていた人?」
のような気がして、そのせいでか心が和み、
彼女に自分の事をもっと聞いてほしいと思うようになった。

悩みを打ち明け、その悩みを解決して貰いたい…
彼女がそんな職業に就いていたからか
そんなふうに思い、その通りに行動していた。

小代乃「そうだったんですか。すみません、そんな時に声をかけてしまって」

カケル「いえ、構いません。僕も話し相手が欲しかったですから」

それから俺はこれまでの事、そして美幸の事、
これからの事…今思っている事を全部彼女に伝えた。

すると彼女は…

小代乃「そうですか、分かりました。ここでこんな形でお会いできたのも何かのご縁でしょう。私が少し、お力になって差し上げられたらと思います」

そう言って持っていたバッグから
瓶入りの錠剤のような物を取り出し、
それを俺に勧めてきてこう言った。

小代乃「ぜひ、こちらを1度お試し頂けたらと思います。それは『Vitality and Dream in Reality』と言う特製の薬で、名前は少し長いですが、その効果は確かなものです」

カケル「え?」

小代乃「それを飲み続けていけばあなたはきっと現実での活力をまた取り戻す事ができ、それだけでなく心身共に元気な頃の覇気を取り戻す事もできるでしょう。文字通りに体も若返り、あなたは第2の人生に夢をもってまた歩いて行く事ができると思います。どうか私の言う事を信じて、1度お試し下さい」

よく聞けば、彼女は到底信じられない事を言っていた。
その薬は人を若返らせる事ができ、
こんな状態からでも新たな活力と生活への覇気を持たせ、
今背負っているこの悲しみを忘れながら
新しい生活を送る事ができる。

カケル「…小代乃さん。幾らなんでも、そんな冗談はちょっとやめて欲しいんですけど」

もちろんそう言って始め俺は断っていた。
人生の絶望に立たされて落ち込んでる人間を
あなたは更に馬鹿にするのか?
そんな事も言って彼女を逆に嗜めた程。

それでも彼女は…

小代乃「信じられないお気持ちは分かります。ですが、もし本当の幸せを手に入れたいならあなたは信じるべきです。信じる事から全ての事が始まるんですよ。嘘や気休めだと思って頂いても別に構いません。ですがその新たな一歩を踏み出す上でも、別に今のあなたにとって失うものは無いでしょう?もし本当に幸せになりたいのなら、あなたは信じるべきです」

「自分の言った事を信じろ」
と彼女は何度も言ってきた。

そこで又、やはり彼女は不思議な人だと思った。
全く信じられず受け入れられないそんな事でも、
彼女に言われるとなぜか信じてしまう。

段々その気にさせられ、俺はついその薬を手に取り、
早速その場で1粒飲んでいたのだ。

小代乃「あなたと美幸さんに幸せがあるように」

それから少し喋って俺達は店を出た。

ト書き〈数週間後〉

それから数週間後。
俺は本当に変わっていたのだ。
生活が変わり、俺の容姿そのものも変わり始めていた。

カケル「こ、これ、俺なのか…?」

毎日朝起きて、鏡で自分を見る時、その変化に気づいた。
だんだん若返ってきている。

それがある時から手に取るように分かり始め、
今54歳だというのにまるで40代の容姿に若返っている。

それから更に数ヶ月。
あのとき彼女に貰った薬を飲み続けていると…

カケル「…また若返ってるみたいだ…」

まるで俺は30代の頃の自分のように若返り、
顔のシワも何となく消え始め、肌は張りを持ち直し、
そのせいでか心まで若返ったような気がする。

それからである。

俺は若返ったついでに仕事にも精を出すようになり、
あのとき彼女が言ったように
また人生に新しく夢を持ち始め、
1度は場末のようになっていた俺の人生に
また華やかさが舞い降りたのだ。

可憐「あ、あの私、ずっと前からカケルさんのこと見てました!もしよければ私と、付き合って頂けませんか…?」

俺は10歳も若い会社の女性社員からそう告白され、
その彼女と一緒に第2の人生を歩み始めようとしていた。

カケル「本当に、又こんな人生がやってくるなんて…」

俺と一緒になってくれようとしている彼女、
花野可憐さんと共に手を繋いで歩いている内、
暫く浮かれるようにしてこれまでの悲しみを忘れた。

でも、そんな時でもやはり美幸が心から消える事は無かった。
あいつとはずっと苦楽を共にしてきた仲。
他人とはなかなか持つ事のない絆のようなものがある。

だから俺は可憐と一緒に居る時でも、
「本当にこれで良いのだろうか」
「これが第2の人生で求めるべき俺の幸せなのか?」
そんな事も思うようになっていた。

ト書き〈カクテルバー〉

それからまた1人でカクテルバーへ寄った時、
前と同じ席で座って飲んでいる小代乃さんを見つけ、
そばに駆け寄りこの前のお礼を言った。
そして今の自分がどんな生活をしているか、
その事も彼女に伝えた。

小代乃「そうなんですか?それはおめでとうございます♪」

カケル「ハハwいやぁ、これもみんなあなたのお陰ですよ。あなたがあの時、僕を助けてくれたから今のこの生活があるんだと思います。ですが…」

俺はそのとき可憐には教えなかった
心の悩みを小代乃さんに伝えていた。

カケル「…美幸の事を思うと、果たして今のこの状況が本当に自分の幸せなのか?…それが分からなくなる時があるんです」

小代乃「…」

彼女は黙って聴いてくれていた。

カケル「確かに生活は変わって、心に覇気も持つ事ができて、新しく人生を歩みながら夢を追い駆けているような気分です。でも、美幸の時とは違う。ここだけの話ですけれど、僕はどうしてもまだ今付き合ってる可憐に、美幸と一緒に居た時に見ていたあの幸せと言うか安心感のようなものが見えてこないんですよ」

美幸と俺はほぼ同い年。
でも可憐は俺より10歳若く、
同じ歩調で同じ生活の土台を歩んでいけるか…
その点に疑問があった。

小代乃「あなたは本当に前の奥様、美幸さんの事を愛してらっしゃったんですね。いえ、その愛は今でも続いてると言って良いでしょうか。お気持ちはよく分かりますよ。ですが、亡くなった人はもう帰ってこないんです。あなたは今後、現実の生活を幸せにしたいと思うなら、これまでの過去を捨て、思い出にしまい込んだ上で過ごしていかなきゃなりません」

小代乃「おそらくあなたと同じような身の上にある人は、そうして次の人生を歩んでいるのでしょう」

小代乃さんは俺の悩みを聴いてくれた上、
一々納得できる当たり前の事を言ってきた。

でも、
「そんな事はもう分かってる、その上で今こう言ってるんだ」
と言う気持ちが俺の中で空回りして、
やっぱり彼女に言ってもこの悩みだけは解決できないか…
と、もうその事について話すのをやめようかとした。

でも小代乃はその時に…

小代乃「私は一般論のつもりであなたに今こう言っているのではありません。今のあなたにとって必要な事だと思うから言うのです。過去の人は過去の人。それがどんなに愛する人でもそうなります。この世でまた幸せを得たいなら、あなたはそう思い、その通りに生活を変えるべきです。この事は別に言わなくても、あなたは心の中で分かってらっしゃるでしょう」

俺が密かにそのとき思った事を言葉にしてきた。

少し驚いた。
まるで俺の何もかもを見透かしてるようなその人の前で
俺は又その気になり、
その後の人生を少し変えてみようと本気で歩いていった。

ト書き〈トラブル〉

でもそれから僅か数日後。
俺と可憐の身にトラブルが起きたのだ。

仕事で大きなミスをしてしまい、俺は会社をクビになってしまった。
つまりこれまでの肩書を全てを失い、収入も途絶えてしまい、
また一から生活を始めなきゃならない。

この歳で再就職のクチを見つけるのは難しい。
でもこんな時だからこそ夫婦は支え合い助け合い、
一緒に歩調を合わせて生活して行く。

その力を可憐とお互いに持たなきゃならないと思った。

少なくとも美幸と一緒に居た時はそうだった。
こんな時こそ美幸は俺を支えてくれて、
貧しい時こそ夫婦の力を発揮する場面…
そう言いながら美幸は本当に身を粉にして働いてくれた。
共働きだったのはその為でもある。

でも可憐は…

可憐「もうあなたとは生活できないわ。まさか一緒になった途端、こんな事になるなんてね。私、貧乏な生活は嫌なの。あなたがそれなりのポストについて、収入もそれなりに貰ってて、将来ちょっとでも楽できるかなぁなんて思っちゃったからさ、それであんたと一緒になったのよ。50過ぎで、肩書も何にも失っちゃった人ってのは本当に惨めなものよねぇ。でもこれで良い教訓になったわ。これからは、もっと慎重に相手を選ばないとね♪じゃあね」

と言って、俺の元から知らぬ間に立ち去っていた。
俺の第2の生活での、2つ目の絶望である。

ト書き〈カクテルバーからオチ〉

それから俺はその絶望を引きずったまま、
又あのカクテルバーへ寄っていた。
するとまた同じ席で飲んでいる小代乃さんを見つけ、
そばへ駆け寄り、今の俺の状況を彼女に全部伝えた。

彼女と会うのもこれが最後と思い、それなりの覚悟をした上で。

カケル「小代乃さん、本当に有難うございました。あなたに会う事ができて本当に良かったです。嬉しかったです。でも、第2の人生にも僕は失敗しちゃいました。遅過ぎたんでしょうかねぇ。それともやっぱり美幸との事を思えば、これが僕に与えられた定め、人生だったんでしょう」

カケル「…俺、美幸の所へ行こうって、今思ってるんです。もう今の俺にとってはこの現実の勢いは強過ぎます。とても付いて行けないし、付いて行く気もありません。…小代乃さん、本当に有難うございます。お世話になりましたねぇ…」(微笑みながら)

彼女は又黙って、俺の言う事をずっと聴いてくれていた。
暫く沈黙が流れた後、彼女はパッと顔を上げて俺にこう言った。

小代乃「本当にお疲れ様でしたね。あなたの言われること本当によく分かりますし、もうそれについては何も言う気はありません。…でも最後に1つだけ、あなたにお聞きしたい事があります」

カケル「何ですか?」

小代乃「あなた、美幸さんに会いに行くと言われてましたが、本当に彼女に会いたいですか?今すぐ…」

カケル「…え?」

小代乃「もし本気でそうお思いなら、最後にその手助けをして差し上げます。あなたの人生です。どうかあなたがお決め下さい」

少し不思議な事を言うなぁと思ったが、
やっぱり彼女のオーラに包まれたまま俺は即答していた。

カケル「…もちろんです。俺が愛したのは、きっと彼女だけですから。可憐さんと束の間でも一緒になろうとしたのはやっぱり僕の過ちでした…」

それを聴いて彼女はまた冷静になり、
持っていたバッグからまた今度は
1本の栄養ドリンクのような物を取り出してきて、
それを俺に勧めてこう言った。

小代乃「分かりました、ではこちらをどうぞ。それは『Eternal Life in Heaven』と言う特製の液体薬でして、それを今ここで飲めば、あなたは今すぐ美幸さんと会う事ができるでしょう」

小代乃「もう1度だけ確認しますが、それを飲めばあなたはもう2度と今の生活・人生に戻る事はできません。若返ったままの今のあなたなら、また新しく仕事に就くか事業を始めるかして、この世での地位や名誉を手に入れる事ができるかもしれませんよ?そのチャンスを全部捨ててでも、あなたは美幸さんと会いたいと思うんですね?」

彼女が言おうとしていた事は、話の途中からもう分かった。
だからその話を最後まで聞かずに
その液体薬を手に取りその場で一気に飲み干していた。

確かに俺の体は今若返ったまま。
地位や名誉をまた手にして、
その上で金を稼ぐ事もできたかもしれない。
でも俺はそれを全部自分に必要ないもの、捨てて良い…
と確信したのだ。

ト書き〈美幸との再会〉

その液体薬を飲み干した後、小代乃は俺を誘って席を立ち、
その店のカウンター奥にあったドアの前まで連れてきた。

そして…

小代乃「さぁ、このドアを開けてごらんなさい。そこに美幸さんが居られますから」

何の迷いもなく俺はそのドアを開けて見た。
すると目の前に、俺と同じく、30代位に若返った
美幸が立って、俺が来るのを待ってくれていたようだ。

美幸「あなた、お帰りなさい。待ってたわ♪」

カケル「み…美幸……美幸ィ!」

俺は美幸のそばへ駆け寄り、思いきり抱きしめた。
出会った頃によく美幸がつけていた香水の匂いがプンと漂い、
あの頃を思い出しながら悲しみは消えてゆき、
甘酸っぱい青春が戻ってきたかのような
そんな幸せが俺と美幸を包んでいった。

そしてその瞬間にドアが閉まった。

ト書き〈そのドアを見つめながら〉

小代乃「フフ♪良いわねぇ、甘酸っぱい青春か。私はカケルの『本当に愛している人と永遠に暮らしたい』と思う本能と理想から生まれた生霊。その夢を叶える為に現れた」

小代乃「確かにカケルにはもう1度この現実に戻って、自分なりの生活の覇気を取り戻し、他の人と同じように幸せを掴んで欲しかったけど、でもカケルがいずれこの道を選ぶ事はもう知っていた」

小代乃「可憐は実に現実的な女性。見えるものに信頼を置き、その見えるものを信じて将来を勝ち取り、見える形での幸せをその結婚生活の土台にしようとしていた。でも、誰でもいつかはこの世を去ってゆく。その時に、見えるもの…地位や名誉やお金といった財産は持って行けない。持って行けるのは、ずっと自分のそばに居てくれた人への本当の愛だけ」

小代乃「カケルはきっとその事を、無意識の内にでも知っていたのかしらね。『Vitality and Dream in Reality』はその人を若返らせて、現実での幸せを手に入れさせる特製のお薬。そして『Eternal Life in Heaven』はカケルが経験した通り、本当に愛する人とだけ永遠の空間で暮らせる、その架け橋を造る特製の薬。カケルは最後に飲んだその薬の効果のほうを選んだ…そう言う事になるわよね」

小代乃「正しいと思うわ。…お2人共、その永遠の幸せな空間でずっとお幸せにね…」

動画はこちら(^^♪
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