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架空の裁き人(びと)

タイトル:(仮)架空の裁き人(びと)

▼登場人物
●栗島蘆子(くりしま ろこ):女性。28歳。両親は既に他界。独身OL。
●岡田信二(おかだしんじ):男性。50歳。蘆子の会社の上司。
●草葉 瞳(くさば ひとみ):女性。20代。蘆子の心から生まれた生霊。
●阿武隈 寿(あぶくま ひさし):男性。30歳。ハンサム。蘆子が片想いする。

▼場所設定
●蘆子の自宅:都内の一般的なアパートのイメージで。
●某IT企業:蘆子が働いている。一般的なイメージでOKです。
●Judgment of Nature:オシャレな感じのカクテルバー。

NAは栗島蘆子でよろしくお願い致します。
(イントロ+メインシナリオ:ト書き・記号含む=5029字)

イントロ〜

皆さんこんにちは。
ところで皆さんには
人には言えない性癖があったりしますか?
性癖と言うのは時にその人の行動を支配するもので、
それが良いものなら問題ありませんが
もし悪いものなら社会からそれなりの制裁を受ける事になります。
今回は、どうしても他人には言えない強烈な性癖を抱えてしまった
ある女性にまつわる不思議なエピソード。

メインシナリオ〜

ト書き〈アパートで〉

蘆子「ハァハァ…ま、またやってしまった…。ダ、ダメだわ!どうしても、どうしても、この衝動が抑えきれない…!」

私の名前は栗島蘆子。
歳は28。
今、都内で1人アパートに住んでいる。

父と母は私が学生の頃に事故で他界してしまい、
それ以来、私はずっと1人で生きてきた。

その両親が亡くなった時に私の愛や性格も歪んでしまったのか。
いや、多分私の本性のようなものが表面に湧き出てしまい、
それ以来、私はその本性に自分が支配されている。

その私の本性とは強烈なもので、いわゆるサイコパス。

何かを破壊し、命あるものを殺さなければ気が済まない性格。
今、私はまたこの部屋で、拾ってきた小動物を殺してしまった。

蘆子「嫌…もう嫌…!なんで、どうして私、こんな事ばかりしてしまうの…」

いけない事だとは充分に解っている。
解っているけれど心が自然に渦巻いてしまい、
その目的を遂げなければ次の生活に進めない。

普通の人には絶対分からない、まるで私の深層心理に隠れたような
そんな悪鬼の姿が私の前に現れている。

ト書き〈会社〉

私は今、都内のIT企業で働いている。

岡田「栗島君、これコピー頼む」

蘆子「あ、はぁい♪」

岡田「フフ、栗島君、今日くらい付き合ってくれてもいいんじゃないか?え?良い店見つけたんだよ♪よかったら今夜あたりどう?」

蘆子「か、課長、やめて下さい。お仕事中ですよ?」

岡田「わぁかってるよ、わかってるけど、1回くらい良いだろう?」

蘆子「ダ〜メです。私にだってちゃんと相手を選ぶ権利があるんですから」

こんな調子で会社では普通のOLをやっている。
自分で言うのもなんだが、私は結構
男性社員からモテる方だった。

でも仕事が終わり、会社を出て1人になれば…

蘆子「ハァハァ、ま、また、また何かを破壊したい…だ、誰かを…」

こんな呪縛のようなサイコパスの気質から逃れられなくなる。

この性癖がはっきり現れたのは、私が20歳を超えた頃。
自分で自分の事を知った時から今日でもう8年間。
私はこんな自分が嫌で嫌で堪らなかった。

ト書き〈バー〉

蘆子「もうダメ!もう嫌よ!こんな自分全部忘れたい!」

その気持ちの勢いで私は今日、
本当に久しぶりに飲みに行く事にした。
そして行きつけのカウンターバーへ行こうとした所…

蘆子「あれ?こんなお店あったっけ?」

目の前に新装開店でもしたのか。
『Judgment of Nature』という新しい店が出来ていた。
ここもカウンターバーだ。

蘆子「入ってみよ」

中はかなり落ち着いていて、それなりに小綺麗。
気に入って、カウンターに座り1人飲んでいた。

そして自分への愚痴を吐きながら飲んでいると…

瞳「お1人ですか?ご一緒してもいいかしら?」

と1人の綺麗な女性が声をかけてきた。

彼女の名前は草葉 瞳。
どうも本業はコンサルタントらしかったが、
副業でメンタルクリニックなんかもしていると言う。
今流行りのヒーラーが専門らしかった。

蘆子「へぇ、いろいろなお仕事をなされてるんですね」

瞳「フフ、まぁ本業と副業が逆転してるような所もありまして、本当は精神カウンセラーになるのが夢でした。まぁ今でもクリニックをやってるもんですから、そちらの方が私としては本業と心得ておりますが」

彼女はどことなく不思議な人だった。
喋っていると騒いでいた心が何となく穏やかになり、
「昔から一緒に居てくれた人?」
そんな気持ちにさせられてくる。

そして心が安心するのか、彼女と一緒にいると
自分の今の悩みを全部打ち明けたくなり、
「きっと彼女なら今の私を救い上げてくれる」
そんな気にさせられ…気づけば私はその思い通り、
今の自分の悩みを全部彼女に打ち明けていた。

瞳「やはり何かでお悩みだったんですね。きっとそうだと思ってました。こんな仕事を長年していると、その人の横顔や背中を見ているだけで分かってきたりするものです」

蘆子「はぁ…」

瞳「それにしてもあなた、大変なお悩みを抱えられていますね。性癖と言うものですか。それは齢(よわい)20歳を越えれば直せない性格と同じようにして、その人の人生を縛り付けてしまうものです」

蘆子「あ、あの、私は一体…」

瞳「良いでしょう。こうしてここでお会い出来たのも何かのご縁。あなたのその今のお悩みを、少しでも軽くして差し上げましょうか?」

蘆子「え?」

瞳「どうぞ、こちらをお持ち下さい」

そう言って彼女が私の前に差し出したのは、
1本のゲームソフト。

蘆子「な、何ですかこれ?」

瞳「蘆子さんあなた、Googleマップと言うのをご存知ですか?」

蘆子「あ、はい、知ってますけど」

瞳「それはGoogleマップを土台にした冒険活劇モノのゲームソフトで、おそらく今あなたが抱えてらっしゃるお悩みを、そのゲームの中で全て発散する事ができる…まぁそんなような不思議な世界をあなたに与えてくれる事でしょう」

蘆子「は?…あの、どういう事ですか?」

瞳「あなたは自分の欲求を満たす為に現実でその行為をしてしまう。だから悩むのです。それを架空現実に置き換えて、その中での行為にしてしまえば、おそらく今あなたが抱えてられるような自責の念…つまり罪の意識に縛られる度合いは軽減されるでしょう」

瞳「どうぞその世界をお持ちになって、これからはその中でだけ、自分の欲求を満たすようにしてみて下さい。そうすれば必ず、今あなたが思われている以上の効果が現れるでしょう」

そのゲームは無料。タダでくれると言う。
貰って損はないと思ったが、
当然、そんな彼女の言う事は信用できない。

でもその時の私は人には理解できない程の、
自分の罪の意識から逃れたい一心だった。

だから藁にもすがる思いで
彼女が今言った事に賭けてみる気になり、
「もしそれで本当に今の自分が変わるなら…」
と言う思いでそれを試してみる事にした。

瞳「但し、そのゲームをプレイできるのは3カ月間だけです。その間に何とか自分でリハビリしてみて、その世界に今の自分の欲求を全部置き去るように努めて下さい。必ずそのゲームによってあなたが変われるきっかけが訪れます。その時に、どうか道を誤らないで」

瞳「良いですね?そのゲームをプレイして少しでも心が和んだ後は、絶対にこれまでしてきたような悪事に身を染めない事。これを約束して下さい」

私はもう自分が変わりたい一心だったので、
彼女の言う事を最後まで聞かず、そのゲームを手に取り、
未来の明るい自分を夢見始めていた。

ト書き〈2ヶ月後〉

それから2ヶ月後。
本当に私は驚くべき変化を遂げていた。

(貰ったゲームをしている)

蘆子「えい!えい!そりゃあ!」

Googleマップの中に登場する人間や小動物を殺し回る。
現実にしたいと思っていた事をそのゲームの世界の中だけでする。

このゲームは驚くべき程リアルなものだった。
だからだろうか。
私は現実において本当にそのゲームの中でしている
全ての行為をした気になり、
これまで心の中に渦巻き続けた…

「何かを破壊したい」
「誰かを殺し回りたい」

といった感情が全部消えてゆく。

蘆子「はぁ、今日も面白かった〜♪…あたし、本当に変われたんだわ。なんだか凄く心が軽い」

これがあの彼女の言ってた、心の中でのリハビリだったのか。
その成果は瞬く間に表れてくれ、
過去の自分を1つずつ修正するようにして
新しい今の自分を作り上げてくれていた。

ト書き〈トラブル〉

それから更に時が経ち、私の周りが明るくなった。
多分私自身が明るくなったから、
それまで以上に周りも明るくなってくれたんだろう。

そして私は恋をした。
隣の部署で働いている阿武隈君。
とてもハンサムで親切で優しい彼。

私の心はもう明るい未来へ向かって歩くばかりで、
その明るい自分の気持ちを素直に打ち明けようと
彼に告白した。

でも…

阿武隈「あ、ごめん。僕もう他に好きな人がいるんだ。その人とはもう結婚の約束もしてて…」

蘆子「え…。あ、そうだったんだ。ご、ごめんね、急に変なこと言っちゃって」

見事にフラれた。

それからだった。
私の心の中に、別の新しい衝動が芽生え始めたのは。

幸せそうな人間を見ると、その生活を打ち壊したくなる。
つまり嫉妬が私の心を取り巻いてしまい、
私をそんな欲望の虜にしようと試みてきた。

蘆子「いけないいけない!何考えてんのよ私!こんなこと思っちゃいけないわ!」

その時、私の心の中に初めて正義のようなものが現れた。
それは…

「今ここで戻ったら、また前の自分に逆戻り。せっかくこれまで自分なりに努力して、サイコパスのあの呪縛から逃れ新しい人生を勝ち取れたのに、ここで戻ればまた前のダークな人生に戻ってしまう」

その声が延々私の心の中に鳴り響き、
私はそれから1週間、その声と、
これまで覚え続けてきた衝動との葛藤を感じていた。

ト書き〈オチ〉

そして、あのゲームを貰ってから3ヶ月が過ぎた。

蘆子「あ、あれ!?で、出来なくなってる!…はっ、もしかして…」

思い出した。
このゲームをプレイ出来るのは3ヶ月。
その間に私は自分のリハビリをして、
また社会復帰を果たさなければならなかった。

蘆子「ダ、ダメ…こ、これが無かったら…これが無ければ私はもう…」

恋に破れて曲がった心の鬱憤も、
このゲームをプレイする事によって発散していた。
それが出来なくなった今、私の心は又、
あの妙な憎悪のようなものに取り巻かれていってしまう。

そして…

蘆子「ハッ!ハァハァ…ま、また、やってしまった…」

私はまた小動物を部屋の中で殺した。
どうしても駄目だった。我慢できない。

今の自分を救うものは「何かを破壊する事」
…これしか無いと私の中の悪魔が囁くのである。

その瞬間、背後に人の気配を感じた。

蘆子「あ!ひ、瞳さん!?」

瞳「蘆子さん。あなた約束を破りましたね?何があってもそのゲームをプレイした以上、前の自分には戻らないと私に約束した筈です」

蘆子「い、いや、でも…!」

瞳「もう言い訳は通用しませんよ?あなたには今から罰を受けて貰います。覚悟はよろしいですか?」

いきなり現れた事に霊的なものを感じたが、
そのとき私の中には今目の前にいるこの彼女、
草葉 瞳を殺してやろうと言う衝動が湧いた。

蘆子「…フ、フフ、瞳さん。あなたも間抜けな人ね。私がヤバい人間だと知った上で、こんな私と2人きりの密室にやって来るなんて…」

私は手に持っていたナイフを振り上げ、彼女に突っかかった。
でも…

蘆子「え…?な、なんで…!?」

ナイフは彼女の体をすり抜け、私は彼女の背後に倒れた。

瞳「フフ、無駄な事はおやめなさい」

そう言って彼女が指をパチンと鳴らした瞬間…

蘆子「え…え…?な、なによこれ…」

私の体が見る見る電子分解するように消え始め…

蘆子「き、きゃあぁあぁ!!」

持っていたナイフが床に落ちたのと同時に私の体も消え失せた。

気づくと私は
それまで自分がしていたあのゲームの中にいた。
それまでは普通に街中のマップだったのが、
私が飛び込んだその世界のマップは荒野に変わっている。

気づくと私の周りには、ライオンやトラ、
狼のような獣がウジャウジャ集まってきていた。

蘆子「や、やめて…なによこれ…やめてぇえ!」

私は体を縛られたまま、その獣達の餌食になった。

ト書き〈ゲームを見ながら〉

瞳「あの時、蘆子は確かに自分の心の中の正義の声を聞いたのに、それに従わず、結局、自分の欲望と本能のままに動いてしまった。その結果がこれね」

瞳「彼女がこれまで殺し続けた小動物の怒りが、猫をライオンやトラに変え、犬を狼やハイエナに変えてしまった…と言うところか。あれだけの事をしたのよ。今度はあなたが同じ事をされる番になるのは、もう心の中でも理解してるわよね」

瞳「私は蘆子の『サイコパスの性癖から逃れたい』と言う純粋な願いから生まれた生霊。でもその願いは所詮、表面的なものだった。彼女の中に渦巻いていたその欲望はその願いを上回るほど強烈なものだったという事は、今彼女にもきっと解ってるだろう」

瞳「彼女はこのゲームの中で裁かれる。そしてもう二度と戻って来る事は無い。動物は純粋に彼女を殺す。もし殺し回った動物が人間だったらと思えば、現実にも架空にも悍ましい結果が待っていたわね…」

動画はこちら(^^♪
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