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帰宅恐怖症~捨てられた愛~

タイトル:(仮)帰宅恐怖症~捨てられた愛~

▼登場人物
●愛野澄香(あいの すみか):女性。17歳。高校3年の受験生。帰宅恐怖症に罹っている。内向的かつ内気。心根は優しいが、両親への憤懣は凄まじい。
●愛野鬼女(あいの きめ):女性。澄香の母親。鬼畜の母。過度な教育ママ(しかし本心は周囲の目に配慮したステータス欲しさ)。夫に不満があると澄香に辛く当たる。サイコパス的な気質も持ち合わせている。
●愛野畜男(あいの ちくお):男性。澄香の父親。がさつで乱暴。浮気癖あり。その昔、澄香に乱暴した事がある。
●十和野 愛(とわの あい):女性。20代。澄香の「重圧から解放されたい・助けてほしい」という本音から生まれた生霊。
●ペットの犬:普通にペットショップで買える犬のイメージ。バーの前に捨てられていた。ポメラニアンのような仔犬でお願いいたします。

▼場所設定
●学校:有名私立高校のイメージ。澄香が通学している。
●愛野宅:一般的な戸建て住宅のイメージで。澄香の部屋は2階。
●愛寵(あいちょう)公園:澄香のお気に入りの公園。愛野宅から最寄りにある。ひとけはいつも無い。
●バー「イノセンス」:お洒落な感じのカクテルバー。愛の行き付け。

▼アイテム
●living blood(ライビング・ブラッド):特製のカクテル。これを飲むと体が本能のままに動き出すようになり、自分の本音を相手にぶつける事が出来る。

NAは愛野澄香でよろしくお願いいたします。

メインシナリオ~
(メインシナリオのみ=4334字)

ト書き〈学校〉

澄香「はぁ。今度のテストも悪いなぁ…。どうしよ…」

私の名前は愛野澄香。
今年17歳になる高校3年、いわゆる受験生だ。
最近、成績が悪い。
その理由は家庭不和。
母は異常な程の教育ママで、何かと私に辛く当たる。
お陰で猛烈なプレッシャー。
父は父で暴力漢。
母や私に暴力を振るう挙句、自分は外で奔放な毎日。

ト書き〈自宅〉

鬼女「あんた何なのコレ!?今頃あんた英語のテストで70点なんて取っててどーすんの!お母さんご近所に恥ずかしくて顔向け出来ないじゃない!」

案の定。
私はそれから2階へ上がり、またそそくさと机に向かう。
でも・・・

澄香「はぁ・・・。なんでアタシこんな家に産まれたんだろ」

ト書き〈夫婦喧嘩〉

鬼女「あんた!いま何時だと思ってんのよ!」

畜男「ああ?!」

鬼女「やめ・・・ちょっとやめてよ!」

畜男「うるせぇ!お前なんかこうしてやらあ!」

ト書き〈澄香が部屋で1人震えている〉

澄香「やめてぇ…もうやめてよぉ…」

私の両親は毎日大喧嘩。
父はいつも帰りが遅く、それに文句を言う母に暴力を振るう。
浮気癖も昔からあった。
かくゆう私も子供の頃、その餌食になった事がある。
それ以来、私は父に対して恐怖していた。
父と喧嘩した後、母は必ず私に辛く当たった。

ト書き〈数日後、愛寵公園〉

それから数日後。
学校帰りの夕方。
私は家に帰らず、最寄りの公園に立ち寄った。
ここは私のお気に入りの場所。
いつもひとけが無い。
騒々しい毎日の中で唯一安心できる場所。

澄香「はぁ・・・。もうウチになんか帰りたくない。このままどこかに行ってしまいたいよ。・・・でもお金は無いし。お小遣いなんてくれないもんなぁ。私の為に遣ってくれるお金と言えば学習費用だけ。それも自分達のステータス確保の為に・・・。私を自分達の道具にしか見てないんだわ。プレッシャーだ・・・」

家に帰れば孤独の筵。
途方に暮れていた時、1人の女性が声を掛けて来た。

愛「あら、女子高生がこんな時間にこんな場所で。ウチに帰らないの?」

澄香「え?」

見ると綺麗な人。
気付けばもう辺りは暗くなっていた。

愛「何か悩んでるみたいね。どう?ここで会ったのも何かの縁。その悩み少し話してみない?誰かに話してみるだけで、結構、気分は楽になるわよ?」

彼女の名前は十和野 愛。
歳は20代くらい。
黒髪の誠実そうな人だった。
それに彼女は何となく不思議なオーラを持っている。
「昔から私の事を知っている人」
そんな感覚がどことなく漂って来る。
気付くと私は、今の悩みを殆ど話していた。

愛「そう。家庭がそんなに冷え切ってるのね。」

澄香「私もう家になんて帰りたくありません!帰ったって辛いだけだし」

愛「今ハヤりの帰宅恐怖症ってヤツね」

澄香「え?」

愛「現代人には結構多いのよ。家庭に特定の不和があってそれが膨張すると、毎日緊張して生活するようになる。行く行くは安心できる唯一の住処である筈のその家がまるで針の筵のようになって、自分の居場所が見付からない」

愛「家の外には冷たい無関心が漲り溢れて、家の内には死のようなものがある。あなただけじゃないの。結構多いのよ、そういう事で悩んでいる人は」

澄香「あの、あなたは一体?」

彼女はメンタルコーチ。
どうりで悩みを引き出すのが上手い筈だ。
私は悩み相談の延長で、父に昔、暴力を受けた事も話してしまった。

愛「そう。ツラかったわね。・・・よし!今日はお姉さんに付いて来て!あなたが家に帰るのを、少しでも楽しくなるようにしてあげるから!さぁ行こう」

ト書き〈バー「イノセンス」〉

澄香「え?こ、ここってお酒飲む所じゃないですか」

愛「そうよ。結構、お洒落な感じでしょ?」

澄香「い、いえ!あたしお酒なんて飲めませんから!」

愛「いいのよ偶には。高校生だってお酒くらい飲めるわ。大丈夫♪私に任せて」

彼女は強引に私を店に連れ込んだ。
客は1人も居ない。

愛「はい、コレあなたの為にオーダーした特製のカクテルよ。試してみて♪それは『living blood(ライビング・ブラッド)』って言ってね、飲んだ人の正直を引き出してくれて、それまでの生活をすっかり楽なものに変えてくれるわ」

澄香「は?」

愛「いいから騙されたと思って!飲んでみなさい。あ、お金の事は心配しなくていいから。元々私の仕事はボランティアだし、サービスは全部、無料よ」

やはり彼女は不思議な力を持っている。
彼女にそう言われると、段々その気になって来る。
私はそのカクテルを一気に飲んだ。

ト書き〈仔犬を渡される〉

愛「どう?澄香ちゃん。この仔犬、飼ってみない?」

澄香「え?なんでバーに仔犬なんて居るんですか?!」

愛「この子、お店の前に捨てられててね、マスターが拾って世話していたの。でもほらやっぱり客商売でしょ?だからずっと置いとく訳に行かなくて、誰か貰ってくれる当てを探してたトコなのよ。この子はとっても従順でイイ子。きっとこれからのあなたに新しい生き甲斐と、生活空間を与えてくれるわ」

よく見ると可愛い仔犬。
真っ白な羽毛に包まれたポメラニアン。
見ている内に、私は飼おうと決意した。

ト書き〈自宅〉

鬼女「ダメよ!そんなもんウチに置いとける訳ないでしょ!」

澄香「お願いお母さん!この子の面倒は全部私が見るから!お願い!」

私は無心した。
父も母と同じように反対。
でも私は一歩も引かない。
初めて見せた私の本気に、両親は少し驚いたようだ。
仕方なく折れてくれた。
と言うか、
「これ以上バカを相手にしてもしょうがない」
そんな顔して2人とも去ったのだ。

ト書き〈澄香の部屋で〉

澄香「うふふ♪良かったねー。あなたの住む場所は今日からココよ♪」

この子は本当に可愛らしい。
私にずっと懐いて離れなかった。
その日から、私はご飯も2階で食べるようにした。
コンビニ弁当だけど、2人で食べるとやっぱり美味しい。
排泄も全部、私の部屋でするようにしつけた。
散歩の時だけ、私がこの子を抱いて行く。
餌はあのバーのマスターから貰う。
両親は一切、世話をしない。
でも私がいれば大丈夫!
この子も幸せそうだ。
私はこの子に「ポメ」と名付けた。

澄香「でもあなたって泣かないのね。少しくらい泣いてもいいのよ」

ポメは本当に大人しい。
クゥンとも言わない。
唯ずっと黙って私のそばにいる。
私はその夜、部屋でポメを洗い、ベッドに入って一緒に寝た。

ト書き〈成績が上がらない〉

澄香「はぁ。やっぱ成績上がらないなぁ」

私が通っているのは進学校。
学費はそんなに高くないがレベルは高い。
進学校ながら、私は最近、テストの難しさに付いて行けなくなっていた。

鬼女「こんなんじゃ有名国立どころか!そこらへんの3流私立にすら受からないわよ!勉強に集中してないから、こんなに成績下がるんでしょう!」

澄香「ごめんなさい~」

私はこっぴどく叱られながらも、ポメがいてくれるから安心できた。

ト書き〈ポメがいない〉

それから数日後。

澄香「行ってきまーす」

いつものように通学する私。
その日は学校が終わってから予備校に行く日。
家に帰るのは遅くなる。

澄香「はぁー疲れた~。もうこんな時間、早く帰らなきゃ!」

帰宅したのは夜の9時。

澄香「ただいまー(ポメ待ってるかな)」

私はいつものように2階へ上がってポメに会おうとした。

鬼女「ちょっと澄香、先にご飯済ませちゃいなさい。ほら今日はあんたの好きなステーキにしてあげたから。食べて元気付けて、しっかり勉強なさい」

澄香「えっ・・・。ってどうしたのお母さん」

いつにない母の優しい言葉。
今日は父も珍しく早く帰っており、もう寝室で高いびき。

澄香「有難う~♪うん!先にご飯食べる」

私は昔に戻ったように、母に子供のように甘えながらそう言った。

澄香「うん!美味しい美味しい!」

鬼女「それ食べたら勉強するのよ」

澄香「うん!任せといて!こんな美味しいの食べたらもう元気もーりもり!」

私は嬉しくて仕方なかった。

澄香「(フフ、きっと今日はお父さんが早く帰って来たから、お母さんも機嫌いいんだろうなぁ♪はぁー、ずっとこんな日が続いてくれればいいのに・・・)」

それから私は夕食を済ませ、お風呂に入り、2階へ上がった。
しかし・・・

澄香「あれ?ポメ?どこなの?」

部屋で待ってる筈のポメがいない!
小さいから物陰にでも入ってるのかと思ったがどこにもいない。

澄香「お母さん!ポメどこ行ったか知らない?!いないのよ!」

鬼女「・・・お母さん知らないわよ。どこかに逃げてったんじゃないの」

逃げられる筈ない。
ポメのあの小さな体で、2階の部屋から飛び下りられる筈がない。

澄香「そんな筈ないわ!きっとこの家のどこかにいるのよ!」

鬼女「っるさいわねぇ。そんな事より早く勉強しなさい!あの汚い犬もきっとあんたの味方してくれるわよ。もうあんたの体の中にいるんだからね!」

ハッとした。

澄香「お・・・お母さん、まさか・・・さっき食べたあの肉って・・・」

母は私のほうを振り返り、ニヤと笑った。

澄香「ひどい・・・そんな事・・・ひどすぎる・・・」

さっきのステーキはポメの肉。
私は気付かず食べてしまった。
そう知った途端、私は猛烈な嘔気に襲われ、意識を失い掛けた。

ト書き〈父母を食い殺す〉

澄香「おごぅええぇえぇ!」

鬼女「ひっ!あ、あんた、どうしたのよ」

澄香「がぁあぁああぁ!!」

鬼女「ぎゃあぁあ!グブっ!」

私は四つん這いになり母に襲い掛かった。
どうやら母をその場で食い殺したようだ。
そして包丁を持って父が寝ている寝室へ行く。

畜男「ふんぐおお!」

高いびきの父の首と胸を包丁で突き刺し、母と同じように食い殺した。

ト書き〈愛野宅を見上げながら〉

愛「本当にひどい親だったわね。一見、両親の方が被害者に見えるけど、真実を紐解けばまさにあの両親は自業自得。自分達が蒔いた悪の種に命を刈り取られただけの事。澄香の中に宿ったあの犬が、彼女の本能を呼び覚ました」

愛「彼女がこれまで募らせて来た親への怒りが爆発し、本当に両親に向けて訴えたかった事を暴露してしまった。澄香の中で生き始めたあの犬の血が、それを実現させた。でもまさか、あんな狂犬病のような姿になるなんてね」

愛「あの親達が澄香に植え付けて来た怨みがどんなものだったか、蓋を開けて見れば凄まじいものだったわね。例え子羊のようなあのポメラニアンでも、育て方を間違い怨みを買えば、あれ程の力を発揮する。馬鹿に出来ないわね」

愛「私は澄香の『重圧から解放されたい・助けてほしい』という本音から生まれた生霊。その願いを叶える為だけに現れた。あの仔犬は澄香の野性的な力そのものを象徴している。野生の血を発揮させ、彼女の空間を獲得させた」

愛「澄香にとっての愛の住処は、この現実で、彼女の中だけにしか存在しなかった。まさに捨てられた愛ね。その愛はこれからどこに向かうでしょうね」

動画はこちら(^^♪
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