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自分解消

タイトル:(仮)自分解消

▼登場人物
●遠野芽衣子(とおの めいこ):女性。27歳。独身OL。臆病。
●手茂(てしげ)ケアル:女性。20代。芽衣子の恐怖と理想から生まれた生霊。

▼場所設定
●芽衣子の自宅:両親が譲ってくれた一軒家(両親は別に家を買ってそこに住む)。
●Transparent Store:お洒落なカクテルバー。芽衣子とケアルの行きつけ。本編では「カクテルバー」とも記載。
●街中:必要ならで一般的なイメージでよろしくお願いします。

▼アイテム
●Anxiety Relief:ケアルが芽衣子に勧める特製の錠剤。これを飲むと不安や悩みを解消させ心を大らかにする。生活にも覇気を持てる。1か月分。
●Self-Resolve:ケアルが芽衣子に勧める特製のカクテル。これを飲むと悩みや苦しみを解消する上で自分の姿も消されてしまう(透明人間になる形)。

NAは遠野芽衣子でよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたは泥棒に入られた事はありますか?
できれば一生経験したくない悲惨な事ですよね。
ですが幾らあなたがそう願っていても、
そう言った犯罪は向こうから勝手にやって来るもの。
それをどうやって防げば良いか?
誰でも日常的に考える事ではないでしょうか。
今回はそんな事への不安に取り憑かれた
ある女性にまつわる不思議なエピソード。

メインシナリオ〜

ト書き〈カクテルバー〉

私の名前は遠野芽衣子。
今年27歳になる独身OL。

今は少し郊外にある一軒家に1人で住んでいる。
両親は別に家を買ってここは別荘。
そんな形でここにぽつんと1人住むようになって、
私は新たな不安に取り憑かれていた。

それは、泥棒や強盗殺人などの事件。
これ迄ほとんど考えてこなかった事だが、
やはり女が1人でこんな家に住んで居るとなると、
そうした不安はどうしても湧き上がってくる。

芽衣子「はぁ。やっぱり父さんと母さんに言って、私も一緒に住むようにして貰おうかな…」

そんな不安に駆られた時はやはりそう考える。
でも一人暮らしはもともと私の夢で、
またそんな形で両親と別居するようになってから
そんな日も経っておらず、この時点でそんな事を言うのも
やっぱり気が引ける。かっこ悪い。

そんな事を思いつつ、日々を過ごしていた。

又、こんな不安に駆られた時、
私はいつも行きつけのこのバーへやって来る。
不安解消にお酒はもってこいの代物だ。

ここは少し前に見つけたお店で、名前は『Transparent Store』。
どこか落ち着いていて、私の不安や恐怖を解消してくれる
少し不思議なお店だったのだ。

ト書き〈数日後〉

そして、それから数日後の事。

芽衣子「え?あ、青山さん家(ち)に泥棒が入ったって!?」

私の家から数十メートルも離れていない
青山さんの家に泥棒が入った。
金目(かねめ)の物やアンティークなどが盗まれており、
たまたま青山さん一家は出かけていたから犯人と鉢合わせはせず
それ以上の被害は無かったらしいが、
もし鉢合わせていたらどうなっていたか。

それを思うと、それだけで恐怖になった。
しかも青山さんの家がそうして被害に遭ったと言う事は、
いつ私のこの家も被害に合うかわからない。

そう、ここ界隈では少し前から
泥棒や、強盗殺人事件が頻繁に起きていた。

そんな犯人にしてもすぐ捕まる人も居れば
上手く逃げおおせる奴らも居て、
そのまま未解決事件になってしまえば
近隣住民としては堪らない。

ト書き〈トラブル続き〉

更に数週間後。
私の身の周りでトラブルが連続して起きるようになってしまった。

ついにまた私の家から最寄りの界隈で
強盗殺人事件まで起きてしまった。
しかも犯人はまだ捕まっておらず、その辺に隠れているか、
もうどこか遠くへ逃げ去っているか。

その辺りの事も分からないまま、恐怖の日々が始まったのだ。

芽衣子「わ、私の家は大丈夫よね…。そんな泥棒とか入ったりしないわよね…」

これまで1度もそんな被害に遭った事のない私は、
これまでの習慣の惰性でそう思う事にしていた。
でも自分だけが安心と言う保証はどこにもない。

そんな時、更なるトラブルが舞い込んだ。

芽衣子「お父さん!お母さん!!」

私の両親が事故に遭い、2人とも他界してしまった。
こんな悲劇がまさか連続して起きるなんて。
私は絶望の余り、更に心をとがらせてしまい、
ほとんどノイローゼのような生活に…。

これで私に身寄りは居なくなり、
いざと言う時に助けてくれる人は無くなった。
親戚や従兄妹はみんな遠い田舎に住んでおり、
すぐ帰る訳にもいかず気安く頼る事もできない。

結局、両親が住んでいた家は売却し、
その売った金を自分の貯金に回して
その後、生活する事になった私。

(極めつけのトラブル)

そして数日後。
極めつけのトラブルが起きてしまった。
都内で働いている私が仕事から帰った時…

芽衣子「な、なにこれ…」

部屋の中がめちゃくちゃに荒らされていた。

常日頃から警戒していたのもあって
銀行通帳や印鑑は私しか知らない所に隠していたので無事だったが、
この家の住人が女性だと分かったからか犯人は、
金目の物より私が普段身に付けている下着や
洋服なんかを盗んでいた。

しかも冷蔵庫まで荒らされており、その様子から
犯人は暫くこの家で寛ぎながら過ごしていた事が
分かった。

もちろん警察にはすぐ行ったがこんな時、
速攻で解決してくれるなんて事は絶対にない。
未解決事件まであるのだから仕方がないのだが、
「もし強盗殺人なんて目に遭ってしまえば…」
やはり女性1人…私の不安は更に深まっていく。

ト書き〈カクテルバー〉

その翌日。
私は又あのカクテルバーへ立ち寄っていた。
カウンターにつき1人そこで飲んでいると…

ケアル「お1人ですか?もしよければご一緒しませんか?」

と1人の女性が声をかけてきた。
彼女の名前は手茂ケアルさん。

変な名前だなぁなんて思いながら聞いてたが
彼女はどうやら都内でスピリチュアルコーチや
メンタルヒーラーの仕事をしていたようで、
その名前はペンネーム感覚でつけたとの事。

なるほどなんて思いながら暫く喋っていると、
彼女が不思議な感覚の持ち主だという事に気づき始めた。

どこか安心できるところがあり、それより何より、
「昔から私とずっと一緒に居てくれた人?」
のような感覚がうっすら漂ってきて、
だからか心が解放されるように自分の事を彼女に打ち明け、
更には今自分が抱えている悩みを全て彼女に解決してほしい…
そんな気持ちにまでさせてくる。

そして気づくと、私はその通りの行動をしていた。

ケアル「え?泥棒とか強盗殺人?」

芽衣子「え、ええ。いきなりこんなこと言って変に思われるかもしれませんが、私、今その事でほんとに悩んでるんです…」

私はこれまでの事や今の自分の心の奥底の悩みを
全部彼女に伝えていた。

ケアル「そうですか、それは大変ですね。まぁここでこうしてお会いできたのも何かのご縁です。それなら私が少し、そのお悩みを解決して差し上げましょうか」

芽衣子「え?」

そう言って彼女は持っていたバッグから
瓶入りの錠剤のような物を取り出し、
それを私に勧めてこう言ってきた。

ケアル「これは『Anxiety Relief』と言う私が特別に取り寄せたお薬で、心の悩みや不安を解消してくれる上、更に生活への覇気を持たせてくれて、その将来にも希望を持たせてくれるでしょう」

ケアル「おそらく今のあなたにとっては最適な薬になると思いますし、この経験をバネにして、将来へ羽ばたいてゆく事もできると思いますよ?いかがでしょう?お試しになられますか?」

いきなりそんな事を言われても普通は信じない。
でも彼女はどこか不思議な人。
彼女に言われると全く信じられない事でも信じてしまう。

それに私は今、不安と恐怖の毎日を過ごしていたのもあり、
藁にもすがる思いで少しでも
今の自分を快適にしてくれるものなら何でも良い。
そう思う気持ちが大きかったのもあり、
彼女がその時言ってくれた事を全て信じ、
その薬を手に取って、その場で1粒飲み干していた。

ケアル「フフ、お代は結構ですよ。別にこれは仕事じゃありませんので」

芽衣子「本当ですか?」

ケアル「ええ♪ただそのお薬は1瓶30粒で、ちょうど1ヵ月分になります。そしてこれは誰に対しても同じ事になるのですが、そのお薬は少し依存性が強いところがありましてお勧めするのは1回限り。そのお薬で不安や恐怖を解消した上、どうかその経験をバネにして、その後は自分で生活の安心を掴み、明るい将来を築いていって下さいね」

確かにその錠剤を飲んだ時、私の心はフッと軽くなった。
文字通りに不安や恐怖が解消されたのか。
また彼女と会ってこうして喋っていたからかもしれないが、
私の心の中には安心とゆとりのようなものが芽生えていた。

ト書き〈数日後〉

それから数日後。
私の生活は本当に変わっていた。

それまでのように何かにビクビク
おどおどするような所はもう無くなって、
実際、自分の家に泥棒が入ったとしても
「大丈夫、なんとかなる」
みたいな気持ちでその後を過ごす事ができていた。

これまでの私から見れば、本当に信じられない事だ。

そしてそうなると生活にもやはり覇気が出てきて、
将来の事や自分の夢を改めて見直す時間も増えるようになり、
私は今自分に与えられているこの生活環境に感謝していた。

細かな事に感謝できる人生。
なんと素晴らしい事だろう。

そんな時。
私のすぐ隣の家で強盗殺人事件が起きた。
でもその時でも私は必要以上に不安や恐怖を思わず、
「そうなったらなった時」
みたいな気持ちで本当に大らかに居た。

芽衣子「どうしたんだろ私、全然怖くないわ」

これが本来持っていた、私の本当の強さだったのか。
そんな事さえ思い、私は妙な自信さえ持っていたのだ。

ト書き〈薬を貰ってから1ヵ月後〉

でもあの錠剤を貰ってから1ヵ月後。
ちょうど薬が切れた時…

芽衣子「ハァハァ…ど、どうしたんだろ私…」

それまでとは打って変わって恐怖が私を取り巻くようになり、
ちょっとした事でもビクついてしまう
不安の虜になってしまった。

もとからそんな生活を送っていたのを思い出し、
更なる恐怖がやってきた上、少し前に起きた事件の事、
私のすぐ隣の家で起きた強盗殺人事件…
未だにこの界隈で頻繁に起きている泥棒事件…
そんな事件への不安が心を支配し、
私はどうにも居た堪れなくなってしまった。

ト書き〈カクテルバー〉

それからまた私はすぐあのカクテルバーへ行き、
1度でも私を本当に救ってくれたあの彼女、
ケアルさんにどうしても会いたいと思った。

名刺を貰っておらず連絡交換もしてなかったから
これは1つの賭けだったが…

芽衣子「あっ、居た!ケアルさん!」

店に入ると彼女は前と同じ席に座って飲んでおり、
彼女を見つけるや否や私はすぐ彼女の元へ駆け寄って
今の気持ちを全て伝えた上でなんとか救って貰おうとした。

芽衣子「お願いです!助けて欲しいんです!また前みたいなお薬もらえませんか!?」

私はもう狂ったように無心する。
でも彼女は…

ケアル「前にも言いましたように、あの薬をお勧めするのは1度限り。あとは何とか自分の力で安心を勝ち取ってほしいのですが。他の誰を見てもそうでしょう?みんな同じ条件の中で暮らしているんです。その中でも皆それぞれの夢や希望を持って、そして安心をその心に宿し、今のこの生活を歩んでいます。あなたもそうして自分を落ち着かせ、何とか将来を明るいものにして行こうとは思えませんか?」

と私の気持ちを否定し、窘めてきた。
でも私を取り巻く不安は彼女のその言葉を受け付けない。

芽衣子「ダメなんですよ私は!頼れる人はもう居ないし、1人であの家にぽつんと居たら不安とか恐怖とかが大きくなって…だからと言ってあの家を出て行く訳にもいかないし、今私の心を助けて欲しいんです!あなたなら出来るんでしょう!?1度でも私を助けてくれたんだから!」

私はもう狂ったようにそう訴えた。

すると彼女は漸く折れてくれたのか。
別の方法で私をこの窮地から救ってくれたのだ。

ケアル「ふぅ、仕方がありませんね。そこまで言われるのでしたら、なんとか致しましょう」

そう言って彼女は指をパチンと鳴らし、
1つカクテルをオーダーしてそれを私に勧めてこう言った。

ケアル「どうぞお飲み下さい。それは『Self-Resolve』と言う特製のカクテルで、それを飲めばきっと今のあなたの悩みは解消されます。今の恐怖や不安に取り憑かれた自分を消すようにしてそのカクテルはあなたの生活を救い、その後、2度と同じ不安に苛まれる事はないでしょう」

ケアル「でも良いですか芽衣子さん。そうすると今までのあなたの生活は、一変するように消されてしまいます。不安や恐怖が消え去るのと同じようにして。もしそれでも良いのならどうぞお飲み下さい。あなたの人生です。私は強制しませんし、あなたが決める事ですから…」

「この不安や恐怖が一切解消される」
「私はもう何も悩む事なく苦しみから解放される」
「そして同じ不安に苛まれる事はもう無い」

この3つの言葉がキーワードになり、
私は彼女の言葉を最後まで聞かず
そのカクテルをすぐに手に取り一気に飲み干していた。

ト書き〈自宅:透明になった芽衣子〉

それから私は今でも平安に
自分のこの家で住む事ができている。

もし強盗や泥棒に入られても、私が襲われる事はもう2度と無い。
それだけじゃなく、女性特有の悩み…
見知らぬ男に強姦されると言う
そんな日常の恐怖からも一切解放される事になるのだろう。

だって私はもう、誰にも見えないんだから。

(芽衣子の自宅を外から眺めながら)

ケアル「フフ、今日も彼女、楽しそうに自分の時を過ごしているわね。これで安心。彼女はずっとそう思い続けて今後も生活を繰り返すでしょう」

ケアル「私は芽衣子の恐怖と理想から生まれた生霊。その不安から解放し、彼女の理想をずっと叶え続ける為だけに現れた。彼女が飲んだあの最後のカクテル『Self-Resolve』は文字通り、自分を解消すると言う事で自分を消してしまう効果を秘めていた。彼女の姿はこの現実の生活で誰にも見えない。でも彼女はこれまで通り生活を続けていく事ができる」

ケアル「確かに彼女は不安や恐怖から解放されたけど、これが果たして本当に幸せだったんだろうか。フフ、それもきっと、彼女にしか解らない事かもね…」

動画はこちら(^^♪
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