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恋人の仇(かたき)

タイトル:(仮)恋人の仇(かたき)

▼登場人物
●鬼ノ毛 信(おにのけ しん):男性。35歳。優香の恋人だった。10年前に優香を殺害され、その犯人をずっと追う。
●芽野菓 滝(めのか たき):男性。40歳。優香を殺害後、ずっと逃走している。源氏名「田山香織(たやまかおり)」。
●山田優香(やまだ ゆうか):女性。享年25歳。信の恋人だった。滝に殺される。
●牧野洋二(まきの ようじ):男性。40歳。
●探偵・闇屋(たんてい・やみや):男性。名前・年齢不明。ネットを通じて探偵作業をしてくれる。

▼場所設定
●信の自宅:安アパートのイメージで。
●キャバレー「ボカスノ」:一般的なイメージで。洋二がオーナー。滝が働いている。
●街中:公園やホテルなど一般的なイメージで。

NAは鬼ノ毛 信でよろしくお願いいたします。
(イントロ+メインシナリオ+解説=3798字)

イントロ〜

皆さんこんにちは。
皆さんは愛する誰かを殺された事はありますか?
絶対経験したくない事ですが、もしそんな事があれば、その殺した相手を生涯かけて追いかけるでしょうか。
今回はそんな悲惨な経験をした、或る男性にまつわる【意味怖】のお話です。

メインシナリオ〜

ト書き〈信の自宅アパート〉

俺の名前は鬼ノ毛 信。
今年で35歳になる。
俺には10年前、山田優香と言う恋人がいた。
彼女とは結婚の約束をして、その後、幸せな家庭を築く筈だった。
しかし…

ト書き〈10年前の回想シーン〉

信「優香!優香ぁー!どうした?!誰にやられたんだ!?」

優香「し、信ちゃん…黒ずくめの…男…ア、アズイズの…香水」(そのまま生き絶える)

信「お、おい、優香…優香しっかりしろ!優香ぁ!」

優香が殺されたのは俺の家から最寄りの公園。
デートの待ち合わせをし、ちょっと忘れ物をしたからと俺が家に帰ったその瞬間の出来事だった。
まさにあっと言う間。
優香は背中を刃物でズタズタに引き裂かれていた。
すぐ病院に運んだが、搬送先で亡くなった。
享年わずか25歳。
俺はその日から、犯人追跡の人生を歩み始めた。

ト書き〈捕まらない〉

それから数日、数週間、数ヶ月、数年が経過して行く。
なのに犯人は一向に捕まらない。
俺は、優香が死ぬ間際に言ったあの言葉、
「黒ずくめの男」
「アズイズの香水」
この2つを警察に伝え、捜査に全面協力した。

信「犯人の野郎、絶対に捕まえてやる。あわよくば警察より早く俺が見つけ出して、この手で八つ裂きにしてやるから覚えてろ…!」

ト書き〈信の捜査開始〉

しかし捕まらない。
警察は確かに目下全力で動いてはいたが、犯人の足取りが追えないばかりか、犯人の輪郭すら掴めなかった。

信「いったい警察は何してやがるんだ!こうしてる間にも、犯人はどんどんどんどん遠くへ逃げてくじゃねぇか!」

事件発生から3年が過ぎ、5年が過ぎ、やがて10年が過ぎようとしていた。

普通の人なら10年前の事件など記憶に残らない。
けれど、事件の被害者となれば話は全く別だ。
昨日のように覚えている。

信「駄目だ。もう警察になんか任せちゃおけない!俺がこの手で、この手で犯人を挙げてやる!どこまでも追い駆けて、必ず犯人の居所を掴んでやる!」

警察なんて、所詮は他人だ。
自分の肉親や恋人が殺されたわけじゃない。
だから公式の捜査と言っても本腰を上げない。
本気にならない。
だからこんなに時間が掛かり、余計な事ばかりしてやがるんだ!
そう思ったその日から、俺は警察に隠れ、優香を殺した犯人を独自で追った。
俺の単独捜査が始まったのだ。

ト書き〈探偵・闇屋〉

そんな或る日の事。
俺はインターネットで「探偵・闇屋」と言うサイトを見つけた。
このサイトではインターネットを通じ、探偵作業の成果、その情報・結果を伝えてくれる。
相手の探偵と名乗る者の素性は分からず、こちらの素性も明かす事は無い。
だから秘密は厳守され、セキュリティも大いにバックアップされる事になる。
互いに信頼のみで繋がる関係になるが、俺は犯人追求に猛進していた為、そのサイトを敢えて信頼した。
取り敢えず自分の手足にする為に、そのサイトを利用したのだ。

ト書き〈捜し回りながら公園のベンチで疲労困憊〉

信「ち、ちっくしょう…ハァハァ、犯人は一体どこに隠れてやがる…!」

やはり単独での追跡は難しい。
「黒ずくめの男」「アズイズの香水」…僅かこれだけの手掛かりじゃ、何の追求も出来やしない。
俺は犯人の顔も姿も全く見ていない。
もし街で偶然その犯人とすれ違っても、そいつが犯人だと判らない。
ただ公園付近の見張り、その界隈に住んでいる人の動向、その連日の観察から僅かずつ割り出されて来る犯人っぽい人物像の確保…これしか出来る術(すべ)が無かった。

信「やっぱり無理なのか…。そりゃ初めから無理な話だよなぁ。たったこんだけの情報じゃ、犯人を追うにも追えやしない。あの探偵にだって僅かな情報しか伝えられないし、警察は警察で仇打ちを恐れて、犯人の情報なんて教えちゃくれない」

そんなこんなで、俺は心底から疲労困憊していた。
世間の常識が俺の犯人追跡を阻む、そんなふうにも思われた。

信「クッソォ!俺はこんなに悲しい思いをして人生に絶望して、大事な愛する人を失って、もう人生終わりだって言うのに、優香を殺したその犯人の顔すら拝めねえのか!ちきしょう…!」

ト書き〈探偵から連絡〉

その時だった。
例の探偵から携帯に連絡が入った。

信「え…見つかった…?」

なんと驚くべき事に、探偵・闇屋は俺の恋人を殺した仇の男を、見つけたと言って来た!

(メール内容)
あなたの恋人・山田優香さんを殺した犯人は、芽ノ菓 滝と言う40歳の男性です。
10年前の犯行後、ずっとその身を隠し、逃走を続けていました。
現在その男は、都内の◯◯町にあるキャバレー「ボカスノ」と言う店で働いています。
しかしこれ以上の事は分かりませんでした。
すみません。
あとはあなたがそこへ行き、自分の目で確認して、犯人を見つけ出してみて下さい。
報酬の方は、仕事半分が成功と言う事で、半額で結構です。
あしからず。
なお、このメールはすぐに消去して下さい。
探偵・闇屋

信「マ…マジかよ、ボカスノって言ったらこっからでもすぐ近くじゃねぇか」

そのキャバレーを俺はよく知っていた。
客として行った事はないが、その店の前の通りをよく歩いていた。
どうやって犯人を割り出したのか全く判らなかった。
唯々「さすが探偵!」と心から崇めるより他無い。
俺は早速、店に向かった。

ト書き〈ボカスノ〉

洋二「いえ、そんな人はここで働いていませんけど?」

信「え?」

俺は店に到着後、早速そこのオーナーである牧野洋二と言う男に「芽ノ菓 滝と言う男が働いていないか?」と訊いた。
しかしそんな男は居ないと言う。
確かに店を見渡したところ、男の店員はその牧野洋二1人であり、他は皆んな女性店員だった。

洋二「お客さぁん、せっかく来たんですからちょっとぐらい遊んでって下さいよ♪」

信「はぁ…」

俺の体から全ての力が抜けていくようだった。

ト書き〈ボカスノで飲む〉

それから俺は、その店でしこたま飲んだ。
もう何もかもがどうでもよくなってしまった。
心底から困憊していた。

信「くそぉ…あの探偵、ガセ情報、掴ませやがったのか…!騙された…」

そんな思いが心をくるくる回り、もう飲み潰れたかった。

香織「お客さん♪どうしたの?何か落ち込んでるわね?よかったら、悩み聞きますよ?」

その時、そんな俺に優しく声を掛けてくれた女がいた。
そこの店員で、源氏名は田山香織と言った。
俺は無性に誰かに甘えたくなり、彼女にぽつぽつ悩みを話し、挙句、優香の事もそれとなく話してしまった。

ト書き〈ホテルへ〉

香織「大丈夫?ちょっと飲み過ぎたんじゃない?休憩していこ♪」

あれから香織はずっと俺の悩みを聞き続けてくれた。
自分も同じ女性だからと、優香の不幸を我が身のように感じ取ってくれ、話の途中で泣いたりもした。
俺は久しぶりに酒を飲んだので、グロッキー状態となり、その店から近くのホテルで休憩する事にした。
その時「1人じゃ不安だから」となんと香織もついて来てくれ、ずっと俺を介抱してくれた。

信「ああ…気分悪い…み…水を…」

香織「はいはい、どうぞ、お水よ♪ゆっくり休んでて」

香織はとても美しい女だった。
どことなく、優香に面影が似ていた。
ホテルに入った途端、俺は部屋のベッドでバタンキュー。
そのまま暫く眠ったようだ。

ト書き〈目を覚ます〉

20分ぐらいだろうか。
眠りからふと覚めた俺は、部屋の中を見渡した。
香織はどうやらシャワーを浴びている。

信「や、やべ…!帰らなきゃ!」

咄嗟にそう思い、シャワールームの外から大声で香織に一言謝り、部屋から出ようとした時だった。

香織「ち、ちょっと待って!」

バスタオルを巻いたままの香織がそのまま飛び出してきた。
しかし香織の顔は40代くらいの男の顔で、右手にはカミソリが握られていた。
その時気づいたが、テーブルの上にはアズイズの香水が置かれていた。

解説〜

はい、ここまでのお話でしたが、意味怖の内容は分かりましたか?
今回は比較的、分かり易かったかも知れませんね。
それでは解説します。

ラストの場面に注目しましょう

キャバレー「ボカスノ」で信を介抱した女・香織は、実は男でした。
化粧が落ちて、男だと分かったのでしょう。
そしてその右手にはカミソリが持たれてあり、テーブルの上にはアズイズの香水がありました。

そう、この香織こそが、あのとき優香を殺した犯人・芽野菓 滝だったのです。
滝は逃走する為にその容姿を変え、整形を何度も繰り返し、すっかり女になっていたのです。

夜の店と言うのは、そこで働く人の素性や経歴をほとんど重視しません。
これ幸いと滝はそこに身を落ち着かせ、追跡の目からなんとか逃れようとし、結局、10年もの間そこに潜伏し続けていた訳です。

信は犯人の姿を見ておらず、騙されるのは簡単でした。
店のオーナーもまさか香織が元男で、更に殺人犯だった等とは夢にも思わなかったでしょう。

探偵・闇屋の情報は確かなものだったのです。
現代の整形技術はとても緻密で精巧なもの。
確かに何度も何度も整形を繰り返せば、元の姿がどんなものだったのか、想像も付かなくなるかも知れません。
実際、整形を繰り返し、何年も捕まらなかった犯人は実在します。

この後、信がどうなったのか。
それは皆さんのご想像にお任せします。

動画はこちら(^^♪
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