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永遠に安心できる場所…

タイトル:(仮)永遠に安心できる場所…

▼登場人物
●丸久 治(まるく おさむ):男性。35歳。独身サラリーマン。臆病で神経質。
●上司:男性。50代。治の会社の上司。一般的なイメージでお願いします。
●九条康代(くじょう やすよ):女性。27歳。治の会社の同僚。美人。治が片想いしていた人。本編では「康代」と記載。
●同僚:男性。30歳。治の会社の同僚で飲み仲間。一般的なイメージでOKです。
●夢尾佳苗(ゆめお かなえ):女性。30代。治の本能と夢と欲望から生まれた生霊。

▼場所設定
●会社:治達が働いている。一般的な商社のイメージでOKです。
●個室居酒屋:会社帰りの道にあり治の行きつけ。部屋が全部個室になっている(座敷)。
●深い地下室:次元が違う空間のイメージでOKです。
(※個室居酒屋はこんなのをイメージしてます)

▼アイテム
●Strong Mind:佳苗が治に勧める特製の栄養ドリンク。これを飲むと心が常に落ち着き安らぎを得る。でも現実のトラブルには普通に傷付く。偽薬の形。
●Reliable Planter:佳苗が治に勧める特製の栄養ドリンク。これを飲んだ人は植物になり、その後ずっと夢を見る様な感覚で快適に過ごせる。

NAは丸久 治でよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたの安心はどこにありますか?
一生消えない永遠の安心なんてあるのでしょうか?
もしあれば、それが欲しいとは思わないですか?
今回はそんな安心な場所を求める事に取り憑かれた、
ある男性にまつわる不思議なお話。

メインシナリオ〜

ト書き〈会社〉

上司「あ〜キミ、今度、出張行ってきてくれないか?岡田君と一緒に頼む」

治「あ、はい。…え?お、岡田さんと!?」

上司「ああそうだよ。何か問題あるのかね?」

治「あ、いえ、別に…分かりました」

俺の名前は丸久 治。
今年、35歳になる独身サラリーマン。

これまでは順風満帆に来ていたのだが、
疫病が世間を騒がせた途端、俺の生活は一気に変わってしまった。

少し先輩の岡田さんは、その疫病に罹って治ったばかり。
でも岡田さんはちゃんとワクチンを打っていたのもあり
それほど酷くはならなかったんだろう。

でも俺は違う。
俺は体質からワクチンを打つ事ができず、
毎日毎日、出来るだけの防御策を考慮して
自分の生活をとにかく守り続けていた。

そしていずれは会社を辞めて、在宅ワークで身を立てていこう…
そこまで決心していたのもあり、
今回、その岡田さんとの出張命令を受けた時、
俺はこれを機に会社を辞めようと本気で思ったのだ。

なに、所詮は前から辞めようと思っていた会社。
今さら未練も何もない。
自分の生活を守る為にと、俺は至極当然の事をしているだけだ。

ト書き〈個室居酒屋〉

そう考えると少し気が楽になり、
「もっと早くにこうしてればよかった」
なんて思いつつ、俺はこれからの自分1人の門出を祝う為、
会社帰り、行きつけの飲み屋に行こうとした。

そこは個室の居酒屋で、人と接する事はほとんどない。

店に着き、中に入っていつのもように個室へ通され、
そこでゆっくり、外で飲む最後の酒を味わっていた。

すると…

佳苗「すみません、相室してもよろしいですか?他にお部屋が無いみたいなので…」

と1人の女性がいきなり俺の部屋に入ってきたのだ。

治「は…はあ!?い、いやちょっと!そんなの困りますよ!」

もちろん俺はそう言って断ろうとした。
でもその彼女を見ている内に何となく不思議な気になってくる。

なんだか他の人に対する気構えが無く、
彼女と一緒に居るその空間に安らぎのようなものを覚え、
もう少しこの彼女と一緒に居たい…
そんな気にさせられた上、
「まぁいいか…」
と俺はその人を部屋に上げてしまった。

でもここは個室を売りにした居酒屋。
果たして従業員がこんなふうに客を案内するものか…?

そんな疑問も確かにあったが、
彼女を見てるとその疑問がどうでもよくなる。
これは不思議な体験だった。

それから2人一緒にそこで飲む事に。

彼女の名前は夢尾佳苗さん。
都内で悩みコンサルタントの仕事をしていたようで、
そんな自己紹介もされた傍ら、
俺のほうも心が少しずつ緩んできたのか。

自分の今抱えている悩みを彼女に打ち明け、
何とか解決してほしい…そんな気にさせられていた。

佳苗「え?そうなんですか?会社を…」

治「ええ、辞めようかと思ってます。僕は生まれつき体質が余り強いほうじゃなく、今のこの世情でしょう?ワクチンだって打てないし、自分で防護策を図るしかなくて、もう本当に行動範囲がかなり狭まってしまって。これからどうしたら良いんだろうなんて細々(ほそぼそ)考える毎日なんです…」

佳苗「そうなんですか…」

治「それに余り神経質になり過ぎたせいか、最近じゃあ自律神経失調症って言うんでしょうか?それになってしまったようで、また多分そのせいだと思いますがパニック症の気(け)も最近少し自分にあるようなんです…」

本格的な悩み相談になっていた。
でも佳苗はずっと俺の愚痴のような
その悩みを真剣に聴いてくれていた。

そして…

佳苗「分かりました。ここでこんなふうにして出会えたのも何かのご縁ですよね。私がそのお悩みを少し軽くして差し上げましょうか?」

そう言って佳苗は持っていたバッグから
栄養ドリンクのようなものを取り出し、
それを俺に勧めてきてこう言った。

佳苗「それは『Strong Mind』と言う一種の心の栄養剤のようなものでして、飲めば常に心が落ち着いた状態になり、それまで悩んでいたり怖がっていたものをその不安や恐怖の対象から外し、平気にさせてしまう効果を持っています。まぁ簡単に言えば楽天的になれると言う事」

佳苗「あなたの場合は少し心を強くする必要があると思えましたので、こちらをぜひお勧めしたいと思いました」

治「え?いや、いきなりそんなこと言われても…」

佳苗「フフ、お気持ちは分かります。でも新しい自分を見つけようとする時にはやはり勇気を持って、一歩踏み出さなければなりません。ぜひ飲んでみて下さい。騙しませんから」

やはり彼女は不思議な人だ。
そう言われると信じてしまう。
そして俺はそのドリンクを手に取り、
その場で一気に飲み干していた。

ト書き〈数日後〉

それから数日後。
俺は本当に変わる事が出来ていた。

それまで億劫に思っていた事が何ともなくなり、
不安に思っていた事、恐怖に思っていた事、
苦しみに思っていた事が全て払拭され、
行きたい所へ行き、喋りたい人と喋り、
それまでの生活と打って変わって
伸び伸びした人生を送る事ができていたのだ。

「これが本来の俺の生活!」
そう思いながら、俺はなんだか生まれ変わったような気がした。

(普通の居酒屋を飲み歩き)

同僚「よぉ治!なんだか最近活動的になったじゃねぇか♪wどうしたんだよ?」

治「ハハ、そうか?別に変わらないぜ」

同僚「いやいや変わったよお前w前まで飲みに誘っても全然来なかったくせに。よぉし、じゃあもう1軒行くかぁ〜」

治「ああ♪」

もちろん帰ればうがい・手洗いをし、
外ではちゃんとマスクをつけて、
それまで通りの疫病対策は自分なりにしっかりしている。

ただ本当に心が丈夫になったのか。
とにかく思い通りに生活したい…と言う気持ちが溢れてきて、
そんな臆病や恐怖を思うよりまず動く。
この生活パターンが身に付いていたのだ。

ト書き〈トラブル〉

でもそれから数ヵ月後。
俺の身に別のトラブルが起きてしまった。

康代「ごめんなさい。私、丸久さんとは付き合えないわ」

治「え?…や、康代ちゃん…」

それまで俺に気があると思っていた
同僚の康代ちゃんに俺から告白したら、
あっさり断られた。

俺も思い込みが激しかったんだろうか。
まさかの展開だった。
てっきり付き合ってくれるものと思っていたのに。

これまでそんな素振りを何度も彼女は俺に見せてきて、
俺は密かにすっかりその気になっていたのだ。

治「マジでか…」

それから更にトラブルが連続して起きてしまった。

上司「おい!なんだこの前の仕事ぶりは!全然なっとらんじゃないか!」

治「す、すみません…」

仕事で連続してミスをするようになり… 

(会社帰り)

不良「へへwおっさん、イイから金出せよ!w」

治「な、なんだお前達は!うごあ!」(殴られる)

会社帰りに不良に囲まれタカられて、
おまけに殴られた額(ひたい)の所に怪我をした。

仕事で認められず、プライベートもそんな状況。
そんな形の生活が暫く続いた挙句、
俺はもうすっかり心の余裕も自信もなくしてしまい、
また前のように心が引きこもり、人と付き合う事、
新しい事への挑戦そのものが嫌になってしまった。

そしてまた会社を辞める事を本気で考え、
在宅ワークで身を立てようと綿密に計画を練っていく。

ト書き〈個室居酒屋〉

そして俺は又ある日の会社帰り。
外で飲む酒はこれを最後にしようと
それまで行きつけにしていたあの個室の居酒屋へやってきた。

(酒を飲みながら)

治「ふぅ。ここへ来る事も、もう当分はないかな」

そうして飲んでいたとき又…

佳苗「あ、やっぱりここにいらしたんですね?また相室してもよろしいですか?」

と言ってあの時ここで出会った
佳苗が前と同じ格好で入ってきたのだ。

こんな形で度々現れる不思議な女性。

「もしかして俺に気があるんじゃないのか?」
と普通に思ったが、そこでも不思議と彼女に対しては
恋愛感情が湧かず、それより心の拠り所になってほしい…
その思いがやはり強まり、
俺はまた今の悩みを彼女に打ち明けている。

でもこの時の悩み相談は相談なんてものじゃなく、
一方的に助けを求める俺の叫びのようだった。

治「もう…もう本当にこんな世間が嫌になったんです!こんな世界で生きてたら、いつ又ひどい目に遭うか分からない…。僕は、本当に一生安心できる、そんな場所へ行きたいと思ってます…」

この時、ふと自らこの世を去る事を考えていた。
その心を察したのか。
佳苗はそれまで静かに笑っていたその口調を改め
真剣に俺に向き合ってこう言った。

佳苗「治さん。誰でもそんな経験は1度や2度しているものです。あなただけじゃありませんよ。そんなふうに自分や世間を責めなくても、あなたが言われていたその在宅ワークで身を立てる方法を、本気で考えていったら良いじゃないですか」

しかし、在宅ワークと言っても楽じゃない。
いや今さら仕事を辞めて本気で在宅ワークだけで生活するなど
どだい無理な話なのだ。

その事も心のどこかでうっすら解っていながら
俺はただ現実逃避する為にそれを口実にして、
自分の心を休め…そう、気休めのようにしていただけ。

そのどうしようもない絶望のような思いが
その時の俺の心身を包み込んでしまい、
俺は佳苗に無心するようにこう言った。

治「ねぇお願いです佳苗さん!僕に、僕に一生安心できる場所を与えて下さい!でなければ僕は、もうこの世でやっていけません…!そうなんです、ダメなんですよ!例えいっとき挽回したって、また周りで嫌な事・鬱陶しい事が起きたらそれだけで心が傷つけられて、俺は世間を憎んで、自分すら虚しくしてしまう…」

治「…ねぇお願いです、あなた、多分できるんでしょう、そう言う事が?実は初めて会った時から、あなたの事を不思議に思ってたんです。ここは個室の居酒屋。あんなふうにして客が入ってくるなんて普通あり得ません…」

治「あなたはもしかして、僕を助ける為だけに現れてくれた天使のような…」

そこまで言った時、佳苗はまっすぐ俺の目を見つめて
俺の言葉を遮るようにこう言った。

佳苗「治さん。私がもし、あなたの思い通りの人だったとして、その私が勧める事への覚悟はありますか?」

治「…え?」

佳苗「さっき言われていた『一生安心できる場所』を与えてほしいと言ったあなたの本音、確かに私は叶えて差し上げる事が出来ますよ?」

治「か、佳苗さん…」

佳苗「でもその場合、あなたはこれまでの生活の全てを失う事になり、今後、一生の安心を手にする代わりに、ひどく静かな空間に住まう事になります。それでもよろしいのでしたら、今すぐそうしてあげましょう」

佳苗「最後にもう1度だけ確認します。それでよろしいのですか?他の人はあなたのような悩みを抱えていても、何とか活路を見出し、自分の理想の生活・将来の夢を追い駆けて、それこそ人間らしく生活しているのです。それらを全部投げ捨てて、全く新しい生活になる事への覚悟が、本当に今のあなたにありますか?」

かなり怖い事を言われているような気がしたが、
それでも俺は今までの現実の生活の事を思い出し、
あんな不安定で信頼できない幸せを手にするぐらいなら…
と心を決めてしまった。

治「…ええ、その覚悟があります。お願いします」

すると佳苗はまた持っていたバッグから
前と同じようにして1本の栄養ドリンクのようなものを取り出し
それを俺に勧めてこう言った。

佳苗「それは『Reliable Planter』と言って、それを飲んだ人は一生分の安心を手にする事ができます。この前経験なされたように嘘じゃありません。あなたはもう誰にもその平安を邪魔される事なく、人を煩わせる世間の出来事にも影響されず、一生ひっそりと、静かで安心できる生活を手にする事ができるでしょう。どうぞ、その覚悟がおありの内に飲んで下さい…」

俺は言われるままそのドリンクを手に取り、
その場で一気に飲み干した。

ト書き〈深い地下室のような部屋でオチ〉

それから俺は人間の世界から脱出できたようだ。
深い地下室のような場所に俺は置かれており、
ずっとベッドで寝ているような感覚で不安も恐怖もない、
本当に快適な生活を手にしていたのだ。

(プランターに植えられた観葉植物のようになった治を見ながら)

佳苗「フフ、治は結局このプランターに植えられた植物になってしまった。ここは誰の目にも触れない深い地下室。私が治1人の為に用意してあげたもの」

佳苗「私は治の『永遠の幸せが得られる場所・安心できる場所が欲しい』と言う本能と夢と欲望から生まれた生霊。その願いを叶える為だけに現れた。本当は少しでも心を強くして、現実の生活に生きて欲しかったけど無理だったわね」

佳苗「植物だから、人間が思う煩い事を一切思わず考えず、不安もなく恐怖もないまま、その生涯を終えるまでここで暮らしていける。生きる為の栄養は少しの水と肥料だけ。私がそれを用意して、ここでずっと世話してあげるわ…」

動画はこちら(^^♪
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