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【演劇】【小劇場演劇製作改革 草の根PROJECTの検証結果発信_1.5期_No.5】『小劇場経済圏』の提案


(1) 小劇場界を一つの「経済圏」と見立てるという選択肢・可能性

◇現在進行中の当第1.5期プロジェクトにおきまして、(申し訳ないのですが・・)よく言っても成長要因が豊富にあるとは言えない今の小劇場界にとって、下記のような事が必要だと発信してまいりました。
『演劇界を成長させ観客数を増やすには、演劇の創り手を増やす事が必須である』
『小劇場界を一つの「産業」「業界」として維持成長させてていく意識・目線の大切さ』

◇しかし上記はあくまで理想であって、その理想を具現化する具体案なしでは「語るだけならなんぼでもできる」といった言説に過ぎません。理想を掲げるなら、もれなく具体案を示すことではじめて活きた提言になると当プロジェクトは常々考えています。

◇ふまえて、小劇場界を維持・成長させる具体案として、
『小劇場界を一つの経済圏と見立て、業界内で経済を回せる状況を構築する』
という方法に可能性があるのではないかと思い至りました。いかなる案か、次のセクション以降で具体的に説明してまいります。

(2) 経済圏とは

◇ご存じの読者の方もおられると思いますが、そもそも経済圏とは、『精選版 日本国語大辞典』によりますと「国際的または国内的に密接な経済関係のある一定の地域」と説明されています。
転じて最近では「地域」に限定せず、大きな企業グループが提供する多角的なサービスの活用により、ひととおりの経済活動がまかなわれる状況を指したりもします。例えば、「楽天経済圏」という表現をお聞きになったことがあるのではと思います。

◇『経済圏』の大きなメリットとして、その『経済圏』内部で経済が回されることによって、圏内にいる人々の生計がより立てやすくなることが挙げられると思います。また、企業グループの『経済圏』について言えば、圏内での経済活動の結果として、『経済圏』全体が経済的に潤うというメリットもあります。

◇ふまえて当プロジェクトが想起している仮説は、小劇場業界においてもし『経済圏』を形成できたら、多大かつ様々なメリットもたらしてくれるのではないか、というものです。

(3) 『小劇場経済圏』の形成がもたらしうるメリット

◇小劇場界で演劇活動を展開されている方の中には、もちろん演劇だけで生計を立てられている方もいらっしゃると思います。
しかし割合で言うと、かなりの方が生計維持のために他の仕事に従事しながら活動をされている状況なのではと思われます。
ここで一つ想起しますのが、もしその仕事が小劇場界に対しモノやサービスを提供するものであったらば、小劇場界を取り巻く状況はかなり変化するのではないかという点です。

◇まず、直接の演劇活動では無論ないものの、「仮の仕事」が小劇場界に対して提供されるものであれば、『小劇場経済圏』内の経済活動として、小劇場界全体の経済をプラスに回す行為となります。また、小劇場界に対して提供する仕事で生計を立てられるのだとしたら、その仕事へのモチベーションは大いに変わってくるのではと思われます。広い意味で、小劇場界に貢献している行為な訳ですから。

◇次のセクションにて、図解いたします。

(4) 【図解】『小劇場経済圏』がもたらすメリット ① 現状の小劇場界

【図解】① これまで~現状の小劇場界
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(5) 【図解】『小劇場経済圏』がもたらすメリット  ②『小劇場経済圏』が確立した場合に期待できる状況

【図解】②『小劇場経済圏』が確立した場合に期待できる状況
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(6) 『小劇場経済圏』の形成による効果【前セクションまでの図の解説】

◇セクション(3)の内容と一部重複しますが、演劇活動のみでまだ生活できていない方々の仮の仕事の働き口を、小劇場界内部の仕事から選択できる可能性が高まります。当然小劇場界の事情の理解度が格段に違うので、稽古参加の融通がきく状況が恒常的に期待できます。

◇こちらもセクション(3)と重複しますが(重要なので)、上記「仮の仕事」は小劇場内部で展開される事業なので、結果として「仮の仕事」も小劇場界に貢献する行為となります。

『小劇場経済圏』内部で経済を回すことで、業界全体の成長が期待できます。それゆえ、これまで既に演劇活動だけで生計維持できていた方はより経済的に安定する可能性が、「仮の仕事」で生計維持していた人は、業界の拡大により演劇活動そのもので自活できる可能性がそれぞれ高まると思われます。

小劇場界で成立が見込めそうな仕事の一例
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(7) 個々人の努力は業界に「足し算」で、業界全体の成長は「掛け算」で寄与する

◇2000年代半ばの解散まで小劇場の有力団体の一つだったブルー&スカイさん(当時はブルースカイさん)の座組・猫ニャーが、活動のさなか突如「演劇弁当猫ニャー」と名称を変え、演劇をしながら弁当屋も目指すという指針を掲げました。結局実現はしなかったようで、ブルー&スカイさんお得意の冗談だった?のかもしれませんが、当時、有力団体の主力役者の多くでさえバイトに明け暮れていた状況を知る身としては、画期的なアイデアだなとは感じていました。

小劇場界全体を一つの「業界」ととして成り立たせるには、業界内部の経済が一定以上の規模で、かつ一定以上の活発さで回ることが必要となります。何が『小劇場経済圏』成立の起点・発火点となるかは現時点では不明な為、当プロジェクトでは引き続き研究していきたいと思います。

◇これをお読みの小劇場関係者の方に最低限伝えたいのは、個々人がよい芝居を創り、より多く観客を呼べるよう働きかけることは必要不可欠かつ基本的な努力であり、これは四則演算で言えば「足し算」的な努力です。それに加え、業界全体を成長させることは「掛け算」的効果があります。「足し算」で積み重ねた成果は、もし業界が2倍・3倍と拡大すれば、それに比例して2倍・3倍の成果となるわけです。業界拡大の掛け算的効果には刮目すべきです。

※当プロジェクトは既存の小劇場界の否定を目的とはしていません。 新たな選択肢を増やす事をもくろんでいます。
全ての小劇場界~演劇ご関係者にお読みいただけたらと思っております。

【小劇場演劇製作の在り方改革 草の根プロジェクト】森 将和

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