初心忘るべからず

ウユニに来て10日目の朝。
昨日料理に使った牛乳が悪かったのだろうか、どうも昨日からおなかの調子がよくない。
昼食にそれを食べたせいで夜になっても何も食べる気になれなかった。
それで今朝は特別おなかが空いているわけではなかったのだが、サンドウィッチを食べにメルカドの2階にあるおばさんたちが営む軽食スタンドを訪れた。
今年ここも来るのは初めてだ。
右から左から奥からと声がかかる。
南米のメルカドを訪れた人ならわかると思うが、フレッシュジュースの店や昼食を出す店でも同じようなことが起こる。
どこもメニューは似たり寄ったりなのだが、うちの店に来いと呼び込まれる。何も声がかからないよりずっといい。

わたしの朝は早く、その代わり夜も早い。
毎年そうだが、夜に何か用事があることは珍しい。
宿泊している宿に日本人が滞在することは珍しく、いつも通りひとりで過ごすことが多い。
今年は暇な時間があるのならスペイン語のスキルを伸ばそうと、昔書いたノートを見返すのだが、そうするとすぐに眠くなる。
到着初日こそツアーに積極的に出る意気込みがあり、連続でツアーに出てみたが思うように成果が上がらないでいた。
人間のメンタルなどそう強いはずもなく、調子がいいときには上がるが、一方で調子がよくないときにそこまで前向きになれるはずもなかった。

はっきり言って暇だ。
この調子でまだ2か月以上ここにいるのかと思うとまったく嫌になるが、しかしこれもいつものことで、上がるときには上がることを知っているおかげでそこまで後ろ向きにはなることもない。ただ、今は暇だ。
もうはっきり今のうちに言ってしまうが、おそらく今年がここに来る最後だろう。
この先旅行でこの地を訪れることはあるかも知れないが、今のようにここへ来るのは今年が最後になりそうだ。

ウユニにもだいぶ人が増えた。
相変わらず日本人は少ないが、ツアーに出ていく車の数は尋常じゃない。
列車の墓場など、過去に見たことないほどの車の数が並んでいる。
夜のウユニ塩湖にも明かりが目立つ。
それらを見ていると潮時な気がしてくる。もう、1番よかった時期は過ぎたのかも知れない……。
マンネリ化、それもあるだろう。
どこに行ってもウユニの中では新鮮味がない。
この数年間で知り合いはとても増えて10日経ってもまだ挨拶しきれていないが、10日しか経っていないのにもう飽きてしまっているのは問題だった。
これでひっきりなしになしにツアーに出ているのならまだ救いもあるが、現実、待っていて撮影依頼があるほど有名ではない。
営業だ、営業をかけなくてはならない。それは分かっているのだが、わたしが営業して写真を撮るのもわたしだ。
そうなると誰でも彼でもというわけにはいかない、どうも、そういう風にはならない。どうしてもそこには「撮りたい」という気持ちが必要で、最低でも面白そうでなくては一緒に行くことはできない。

思えば2度目にウユニを訪れた辺りは、納得のいく写真を撮りたくてなんて思っていた。
初心忘るべからず……今一度自分は何を撮りたいのか、整理する必要がありそうだ。
確かに今年は稼がなくてはマジでまずい。しかしそれ以前に、いや本当に今年が最後ならなおさら、何が撮りたいのか、そこにフォーカスしたほうがいい。