うにころまる

ただ物語るだけの生き物

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絶対に三億円がもらえる世界

○月□日  今日、買い物に出掛けたら、見知らぬ老人が突然わたしに大きな紙袋を押しつけてきて、 「なにがどうでも、これだけは必ず、あんたにもらってもらわねばならん」  と言ってきた。袋は三つあり、ずっしりと重く、持ち上げることすら困難だった。どう考えても犯罪のニオイしかしないので、いらんもらえの押し問答になり、挙げ句、老人の言うことには、 「昔あんたにそっくりな女を深く傷つけ不幸にしてしまったんじゃ。償ってからでないと死ぬに死ねない。この哀れな年寄りを助けると思って、これをも

    • 誰からも欲しがられない妖精の子

      ひとつ目の巨人が世界を支配していた頃、荒れ野に妖精がひとりで暮らしていました。 巨人は戦争が好きで、大地は常に燃えさかっていましたので、妖精の住む草原の丘は、もうほんのわずかしか残っていませんでした。 そんななか、虹色の羽を持つ美しい妖精だけが巨人の庇護をうけ、とりどりの花が咲き乱れる庭に囲われていました。 巨人は戦争を愛するのと同じくらい、美しいものを愛したので、妖精のために広大な庭をつくり、世界中から持ち帰った花々で埋め尽くしたのです。 そこは花を食料とする妖精族

      • ちいさき翼の英雄

        昔々、地球には「足のある人類」と「足のない人類」とが住んでいました。 「足のない人類」は、歩くことが出来ないので、腕で地面を這って移動しました。 「足のある人類」は、しかめっ面。そんなふうに地面を這いずられては、うっかり踏んづけてしまいそうになるし、それにいつも地面にぴったりくっついているから、なんだか汚いと思ったのです。 最初のうちこそ踏んづけてしまわないよう気をつけて歩いていたのですが、そのうち面倒になって、踏んづけても構わないと思うようになってしまいました。 そ

        • 赤い宝石の花

          赤と黒との戦いは数万年にも及んでいた。 黒は攻撃力が高く、赤は攻撃力を持たないが、かわりに生命力が強く、数で勝った 赤は黒を体内に取り込むことで攻撃する。 強く健康な赤の戦士は、黒を体内で無効化するばかりでなく、黒を叩く武器へと変化させる。 それでも黒の戦士は変化を拒み、体内から赤に食らいつく。 それは、赤が黒を食うか、黒が赤を食うかの戦いだ。 有史以来、常に赤が勝ってきた。だが敗れた黒も、数十年もすれば蘇り、何度でも襲来する。以前よりも強くなって。 なぜ、そん

        絶対に三億円がもらえる世界

          影法師のお姫さま

          むかしむかし、ある国に、とても元気な姫がいました。 姫には、ともだちがいなかったので、いつもじぶんの影法師とあそんでいました。手を繋いで花畑を探検したり、夕焼けを見ながらおしゃべりしたり、夜には同じベッドで眠りました。 影法師は昼間は小さく、夕方には大きくなって、夜は蝋燭の灯にゆらゆらと揺れながら、片時も離れず姫を見守っていました。 ある日のこと。 となりの国の王さまが、お城にやってきました。 それは、たいへん尊い光の国の、それはそれは立派な王さまだったので、国をあ

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          北の果てのロマンス

          タイニーリルは、たまごを持って生まれてきた。 たまごを持っているのは特別な個体で、他のものより、ひとまわりは大きかった。豊かなヒレのドレープは、泳ぐたびにひらひらと、しなやかな腰にまとわりついた。 タイニーリルは、とても速く泳ぐことができた。 仲間が共食いしているときも、いちはやく逃げて、遠くで涼しい顏をしていられた。 たったひとりで海面近くまで浮き上がり、光を浴びて帰ってくることだってできるのだ。ほかのだれにも、そんなことはできやしない。 何故ならタイニーリルの仲

          北の果てのロマンス