ドラフトを迎える東京六大学野球戦士たち2023
こんにちは、シュバルベです。
10月26日(木)に行われるプロ野球ドラフト会議が迫ってまいりました。過去2年も同様のタイトルで執筆しましたが、私がよく観に行く東京六大学野球連盟に所属している選手で、プロ志望届を提出している選手たちについて書いていきたいと思います!
今年のプロ志望届提出者は以下の5校11名。
昨年は6校24名と非常に多くの選手が志望届を出し、NPBから指名を受けたのは以下の7名。支配下では5名に留まりました。
・荘司康誠投手(立教大学→楽天1位)
・蛭間拓哉選手(早稲田大学→西武1位)
・村松開人選手(明治大学→中日2位)
・萩尾匡也選手(慶應義塾大学→巨人2位)
・橋本達弥投手(慶應義塾大学→DeNA5位)
・是澤涼輔選手(法政大学→西武育成4位)
・村上喬一朗選手(法政大学→オリックス育成5位)
順位縛り(※社会人野球の企業チームに内定し、ドラフトn位以下や支配下指名でないならNPB球団には入団はしない。という約束)などもありますが、やはりプロへの道は狭く険しいものです。
今年のプロ志望届提出者のうち9名に関して、これまでの成績や投球/打撃の内容、プロ入りしてからのビジョンなど書いていきたいと思います。
※三沢大成選手と東海林碧波選手については現地で見たことが無いため、申し訳ないですが割愛させて頂きます。
1.投手編
まずは投手から。直近の10月16日時点での通算成績は以下の通りです。
この数値も参考にしつつ、以下個別の選手に触れていきます。
順番は公益財団法人全日本大学野球連盟の表に準じます。
■ 池田陽佑(立教大学)
高校時代は2018年春・夏、2019年春・夏と4度甲子園に出場し登板を重ねた世代のフロントランナー。佐々木朗希投手や宮城大弥投手らとともにU-18代表にも選出されました。
立教大学進学後も1年生から登板を重ね、4年春までの7季で39試合165イニングに登板。この秋も主戦投手として投げ続け、今年の六大学の投手の中では最もイニングを投げた投手となっています。
下級生時から身体が出来上がっていたため伸びしろの部分はあまり無さそうに思われがちですが、大学3年秋ごろから平均球速が一段階上がり、7回・8回の試合終盤でも安定して146~8km/hを計測できる馬力がつきました。この秋も2カード目の法大戦1回戦で8回自責点1の完投を見せています。
ツーシーム、カットボールの動くボールで芯を外すのが得意な投手で、奪三振率は13.7%と低いですが与四球率も6.5%と低く、結果的にK-BB%は7.2%。過去にドラフト入りした投手の多くがK-BB%は10%を超えることから鑑みると物足りない部分は正直あります。
連投はやや苦手としており、リリーフでの登板時にショートイニングだからといって150km/hオーバー連発ということは無く、むしろ尻上がりにテンポも良くなり球速も出てくるという先発タイプです。
プロ志向は強く昨年の冬から明言。
同じく立教大学に進学し今シーズン主将を務める西川晋太郎選手(智辯和歌山④)を支える副将で、投手陣のまとめ役。試合前には投手陣を集めベンチ前で話し合いを行うなど新しい取り組みも見せています。
大学4年間、投げ過ぎによる反動もありながらも着実にステップを踏んできたので、ドラフト会議で報われると良いなと思う選手です。
■ 尾﨑完太(法政大学)
大学4年間で着実にステップアップしてドラフト候補に成長した尾﨑完太投手。高校時代に甲子園出場経験は無いものの、大学1年秋に早くもリーグ戦初登板を経験し140キロ台中盤を投げたことで注目を集めました。
1年生の頃はかつての高橋奎二投手のように大きく足を上げるライアンフォームでしたが、現在はオーソドックスな二段モーションに。変わっていないのは右足の「くの字」ステップで、左投手としては珍しく、美しいその並進が"写真映え"するピッチャーです。左投手でこのステップを採用する投手はあまり多くなく、他の投手と比べても打者と正対するまでの時間が長いように感じます。
大学3年春から本格的に先発に転向、これまで143イニング登板し防御率は3.02。尾﨑投手で特筆すべきはその奪三振率の高さです。
通算でも24.3K%ありますが、大学4年の春は42.1イニング投げて27.5K%と圧倒的な奪三振力を見せました。与四球も多く、この春も13.5BB%ありましたが、K-BB%=14.0%は過去に六大学からNPB入りした投手と比べても遜色のない数字です。
高い奪三振力の源になるのが、伸びのあるストレートと大きな縦割れの変化球。ストレートの球速はアベレージで140km/h中盤、ややばらつきもありますが高めでも空振りを多く取ることの出来る球質です。尾﨑投手の代名詞的なボールが110km/h台の縦割れのカーブで、これはゾーンの中に入れてカウントを稼ぐことも、決め球として使うことも出来る球になっています。
尾﨑投手自身、カーブには自信を持っており次のように語っています。
チームの先発の軸である一方、完投できた試合はリーグ戦でまだ1試合。球数を要してしまう分、長いイニングを投げられるかどうかという点は課題になっています。
春のリーグ戦では早稲田戦で先発→中継ぎ→中継ぎと3日続けてマウンドに上がり、リリーフで投げた2試合4イニングを無失点4三振。連投でも打者に向かっていける心身の強さを見せることが出来ています。
これまでの最速はこの春の慶應戦での150km/h。22年オフには目標153km/hと語っており、球速がすべてではないものの昨今のドラフト市場において150km/hが珍しくなくなった中では更に評価をひと押しできるものであることは間違いありません。
この秋は最初のカードでリリーフ登板3イニングからスタート、2カード目の慶應大学戦では先発復帰していますが不調な感は否めず、それでも中継ぎも含めてフル回転を余儀なくされている点は気になる部分です。スタッツ的にも20イニング投げて19奪三振は変わらず好成績な一方、与四球20と奪三振数を上回ってしまい、制球難の印象は拭えません。
最後の秋にアピールとはいきませんでしたが、健全な運用・フォームの微修正を行えるチームであれば一段高いレベルの投球が出来る投手なだけに、指名されるチームによって大化けの可能性があるでしょう。
■ 石原勇輝(明治大学)
高校時代は社会人大阪ガスを経由して昨年広島カープに入団した河野佳投手、同じく明大に進んだ森勝哉投手、大商大に進学し今年のドラフト候補の高太一投手らと同級生の石原勇輝投手。当時から注目される左腕でしたが、大学で武器を磨いた4年間を送りました。
初登板は1年生の秋季リーグですが、本格的な台頭は昨年の秋季リーグから。貴重な左のリリーフのポジションに入ると、ストレートは常時140km/h後半が出るようになり、3年秋に8試合12イニングで防御率1.50。特に奪三振はイニングを上回る16個と、スタッツ的にも好成績を残しました。
通算で23.8K%、K-BB%は13.9%で、どちらも六大学からプロ入りした投手の成績と比べて遜色ないものです。
武器はスライダー。尾﨑投手のカーブと比べると球速があり、横変化量も大きなこのボールは右打者に対してもインローに落とせる有効なボールとなっています。
4年春からは先発に回る試合もあり、当初そのスタミナはチーム内でも懸念されていたそうですが3先発16イニングで自責2。慶大・早大戦では6イニングを投げ切るなど、先発でも可能性があるところを見せることに成功しました。
3年秋は両腕を大きく上げてから投球動作に入るルーティンがありましたが、4年生になってからは通常のワインドアップに。フォーム自体はオーソドックスゆえ左右に球が散ることはそこまでなく、今後も制球面で大きく苦しむことは考えにくいでしょう。
球種的には変化球はスライダーとチェンジアップを多用し、スライダーの曲がりの幅を変えるタイプ。従来からスライダーは良かったのですが、この夏にチェンジアップの球質に力を入れたと本人も話しています(明大スポーツ「(59)秋季リーグ戦開幕前インタビュー 石原勇輝投手」)。
この夏にはソフトバンク三軍戦で4回無失点の好アピールも。
この秋は先発・中継ぎ・ロングリリーフと様々な役割を任されていますが、奪三振能力は相変わらず高く三振数がイニング数を上回っています。球速は140km/h台半ばが多い一方、変化球のキレには磨きがかかっています。
尾﨑投手同様、これまでの最速は149km/hと球速面はもうひと押し欲しいところではありますが、左の中継ぎ投手としてはNPBでも活躍する姿を思い描きやすい投手だと考えます。
■ 蒔田稔(明治大学)
今年アメリカで行われた日米大学野球にも、追加招集から選ばれて登板を重ねた蒔田稔投手。高校時代は甲子園出場は無いものの、2学年上には村上宗隆選手が在籍したほか、同級生では川野涼多選手が西武ライオンズに高卒でプロ入りを果たしています。
大学3年春に先発として覚醒し、同シーズンでは9試合61イニングで防御率1.90。今に続く明大の三連覇の礎となり、ベストナインも獲得しました。
しかし夏の全日本大学野球選手権では打球直撃の影響もあり本来のピッチングは見せられず、その後の大学代表合宿に参加するも落選。3年秋はパフォーマンスを落とし、この年は蒔田投手にとって苦楽共に味わったと言えるでしょう。
ドラフトイヤーである今年の春の東大2回戦に先発するも2回2失点、しかし2先発目となった慶大戦では6回1失点。その後も試合によって波があったものの、春季リーグの途中から石原投手と配置転換し中継ぎに回ってからは調子を取り戻し3イニング1安打4三振。
明大のリーグ戦3連覇に貢献すると、日本選手権では仙台大学を相手に先発し7回を被安打1与四球2の完璧な投球。それも評価され、この夏に行われた大学代表候補合宿に追加招集、無事に代表メンバーに名を連ねて日米大学野球でも登板を重ねました。
明大の卒業生でもある柳裕也投手に似たヒールアップの入る投球動作で、フォーム自体はオーソドックスなオーバースロー。左右にボールが散らばるようなことはほとんどなく、制球は比較的安定したピッチャーです。
ゆったりとしたカーブや、キレのある落ち幅の大きなフォーク、130km/h台のカットボールなど球種は非常に多彩で、緩急合わせたピッチングが特徴です。
ベストナインを獲得した大学3年春はこれに加えて140km/h台中盤をコンスタントに叩くストレートがありましたが、今年に入ってからはそこまでの球速はあまり出ず142~3km/hが多くなっています。
ただ、「真っ直ぐの質というかホップ成分っていうのは代表の中で一番の数字だった」(2023年9月7日付明大スポーツ)と話しているように、球速以上に高めのボールには力があるように見え、実際空振りもしっかりと奪えています。奪三振率は22.1K%と高く、持ち前の制球があるためK-BB%=14.2%と10%を超えてしっかりとドラフト指名ラインに乗せています。
この秋も3先発を含む4登板で防御率は0.98と好成績を残し、ドラフトの日を迎えます。
■ 村田賢一(明治大学)
高校時代は速球派右腕として埼玉県大会で注目されていた村田賢一投手。大学ではモデルチェンジし、多くのゴロを築き制球で勝負する投手に成りました。
大学2年秋からリリーフとして登板を増やし、3年春から本格的に先発転向。同級生の蒔田投手とエース争いを繰り広げ、3年秋に開幕投手の座を射止めます。早稲田大学戦では93球で完封勝ちと”マダックス”を達成するなど明大のエースここにありというピッチングを見せました。
この年のハイライトは、神宮大会決勝戦。國學院大学を相手に先発すると、9回を5安打無四球の完封勝ち。この試合では103球と惜しくもマダックスならずではありましたが、球数少なく長いイニングを打たせて取るピッチングは広く大学球界に知られることとなりました。
大きな故障もなく先発登板を重ね、今年の春季リーグでは45イニングを投げ防御率0.80。球速も140km/h中盤まで見えはじめ、ベストナインも獲得し順風満帆という形で終えました。
しかし、ドラフトイヤーの注目される立場で迎えた日本選手権の決勝戦、青山学院大学には序盤から捉えられ4回途中4失点KO。
「今まで1年2カ月の間、負けてこなかった。今日負けて、改めて自分に必要なもの、課題が出ました。課題をつぶせる時間もある。課題が発見できる試合になりました」と、この試合は一つ大きなきっかけとなった試合になりました。
この夏の代表候補合宿ではショートイニングで150km/hを計測するなど、馬力があるところもアピール。無事、代表に選ばれ日米大学野球でも登板しています。
村田投手の武器は制球力とシンカー系の落ち球。ストレートの球速は平均して142-3km/hですが、左右のコーナーにきっちりと投げ分けていきます。シンカー系の落ちるボールは落差の大きいものも、ツーシーム系の動くものと数種あり、このボールで多くのゴロを築いていきます。スライダー、カーブも勿論使いこなし、先発投手らしい球種の豊富さで打者と勝負していきます。
この秋は開幕前に故障でU18壮行試合と六大学オールスターを欠場。その影響もあってか、開幕から球速が上がらず130km/h台後半の表示も多く、村田投手が先発として稼働するようになってからワーストの成績・内容となっています。
完成度の高さが謳われがちですが、球速に伸びしろがある点も含めて考えれば、まずは二軍でしっかりと1年間戦える体力を培っていくことを優先したい投手です。
■ 加藤孝太郎(早稲田大学)
「下妻の星」の異名を持つ加藤孝太郎投手。
2年生の春季リーグで初登板を踏むと、3年生で飛躍を果たし2季続けて防御率1点台。昨秋は38.1イニングを投げ防御率1.41で最優秀防御率のタイトルを手にしました。
今春も初登板となった東大戦で1失点完投スタートし順調でしたが、明大戦で7失点の炎上。ただ、それ以外の6試合では45イニング7失点(防御率1.38)と安定しており、そのすべてで6イニング以上を投げています。
この秋も東大戦は完封スタート。4試合続けて6イニング以上を投げ、立教戦で4失点を喫したものの防御率2点台前半。大崩れせずにイニングを少ない球数で稼いでいけるのは大きな長所です。
リーグ通算5完投とスタミナ十分、ストレートの平均球速は140km/h台前半ながら変化球も含めて丁寧にコースを投げ分けるピッチングスタイル。特に右打者・左打者問わずアウトコースにボールを集め、スライダーやカーブも自在にコントロールするコマンドの高さはリーグ屈指です。
ホームプレート寄りに上体を倒すようなフォームで、阪神岩崎投手の右バージョンのような形でフィニッシュしていきます。腕の長さが他の選手に比べて長く感じる投手で、出所の見づらさ・タイミングの取りにくさに繋がっているのではないでしょうか。
ドラフトにかかるかという視点で言えば、やはり球速面での物足りなさは一つ挙げられるものの、この夏もトレーニング・食事面で取組み成果を次のように話しています。
これまで16.2K%、6.9BB%でその差分は9.2%。スタッツでは決してこれまで挙げてきた投手に劣らず、あとはプロ入りする選手に持っている凄みのようなものが披露できる試合があればと思います。
2.野手編
続いて野手です。プロ志望届締切日である10月15日時点での通算成績は以下の通りです。
この数値も参考にしつつ、以下個別の選手に触れていきます。
順番は公益財団法人全日本大学野球連盟の表に準じます。
■ 廣瀬隆太(慶應義塾大学)
六大学屈指のスラッガー廣瀬隆太選手。
これまでに積み上げてきた本塁打数は19本。コロナ禍で試合数が限られたシーズンが多かった中で、長い東京六大学野球の歴史の中でも現時点で荒川尭氏・山口高誉氏に並ぶ5位タイ。これだけでもドラフト上位指名は約束されていると言っても良いでしょう。
1年生から出場を果たし、秋には中軸に抜擢。当時の慶應義塾大学は木澤尚文投手や正木智也選手らプロ入りしたメンバーに加えて名門社会人チームにほとんどの選手が進むチームで、分厚いレギュラーの壁を一気に破っていく若き大砲候補は明大の上田希由翔選手と並び注目されました。
大学3年生・4年生のシーズンでは大学日本代表に2年続けて選出、今年の日米大学野球では初戦に打った瞬間のホームランを放つなど米国の力強いボールに対しても振り負けないパワーを改めて証明しました。
夏のOP戦途中に右手首を痛めた影響でU18壮行試合・六大学オールスターは欠場しましたが、どうにか秋季リーグ開幕戦には間に合わせ出場を続けています。怪我の影響から守備負担の少ない一塁での起用になっていますが、打撃面では10月X日時点で打率3割を超えています。
この秋は逆方向へのライナー性の打球が増え、バッティングを見ていても強引さが減っているように見えます。従来の廣瀬選手は圧倒的にプルヒッターで、状態の悪いときは引っ張って飛ばそうとしすぎて落ちるボールにバットが止まらないというシーンが目立ちました。「半足」ホームベース寄りに立つなど試行錯誤の結果、よりよい打撃スタイルに近づいているのであれば、廣瀬選手にはまだ伸びしろが多く残されている未完成のスラッガーといいう位置づけになるでしょう。
守備ではサードよりセカンドを送球の精度含めて得意としており、一塁・二塁が基本的な守備位置と考えるべきでしょう。決して二塁手としてのレンジは広くなく、特に二遊間寄りの打球に対して弱さがあるため守備範囲に優れた遊撃手と組むことがマストにはなるものの、プロでもセカンドに残り続けるだけの努力は怠らない性格です。一塁手としてはスクーピングも反応も良いので心配ないでしょう。
走力は意外かもしれませんがかなり速く、特に一塁駆け抜けの速さは十分担保されています。盗塁は少なくベースランニングも従来は上手さを感じませんでしたが、この秋はすでに3盗塁。
パワーに注目が集まりがちですが、非常に筋肉質でアスリートらしい身体から生み出される瞬発力がある分、守備と走塁に関しても意識次第で伸びていくタイプではないでしょうか。
ラストシーズンで主将に立候補、キャプテンとしての役割は幼稚舎以来ということで変化に向かって邁進していった一年。ドラフトで次のステージへの切符を手にし、更に大きな選手として突き進んでほしいですね。
■ 熊田任洋(早稲田大学)
東邦高校時代は現中日ドラゴンズの石川昂弥選手と共にクリーンナップを担い、遊撃手が多く選出されたU18代表の正遊撃手の座も射止めた熊田任洋選手。
1年春の開幕戦で9番ショートに抜擢されると、コロナの影響で短縮シーズンながら全5試合にスタメン出場し初ホームランも達成。素晴らしい滑り出しとなりました。
しかし2年春・秋と2シーズン続けて打率1割台に低迷、3年春も打率.208。守備でも精彩を欠き、それでも小宮山監督は上位打線でショートを守らせ続けていたため、非常につらい時期だったのではないでしょうか。
転機となったのは3年秋。山縣秀選手(早大学院③)が攻守にアピールしショートに入り、熊田選手はセカンドにコンバートとなりました。それまでと見える角度が大きく変わったこともあり守備面ではまだ粗さがあったものの、打率.342で3本塁打。三振も僅か2つと打撃面でキャリアハイを記録しました。
小宮山監督からはこのセカンドコンバートについて「これから上の世界でやっていくためにはセカンドもできた方がいい、今季はセカンドをやってくれ」と直接声をかけられたそうですが、ある種吹っ切れてパフォーマンスを最大化することが出来たのはマインドの変化も大きかったのでしょう。
今年の春から熊田選手は志願でショートのポジションに戻っています。その守備に関しては試合の中でもムラがあり、ファインプレーも出れば簡単なゴロを捕球ミスしてしまうなど課題があるものの、打撃は3年秋に続いて打率.341に2本塁打。13打点はこのシーズンのトップとクリーンアップの仕事を果たしました。それまで3季連続でベストナインの遊撃手は宗山塁選手が獲得してきましたが、この春は熊田選手が奪う形となりました。
二塁・三塁含む打撃型のユーティリティプレイヤーとしてこの夏は大学代表入り、日米大学野球に出場しました。この大会ではなかなか打てず速球対応など課題も見られましたが、自分から多くの選手に声を掛けチームをまとめていくコミュ力の高さは傍目からも明らかで、自チームにいる時とはまた違う熊田選手の良さが光ったように思えます。
身体の頑丈さはお墨付きで、4年間リーグ戦で行われた全試合に出場している選手は熊田選手のみ。打席に入る前のルーティンを見れば分かる通り、非常に身体が柔らかいことが怪我の少なさに直結しているように思います。
無事是名馬とはよく言いますが、UT性を持ち打撃で持ち味のある選手として長くプロでも重宝されるイメージはありますし、現時点で熊田選手より評価の高い(と思われる)選手よりも長くグラウンドに立ち続けていることは十分ありそうです。
■ 上田希由翔(明治大学)
ここまで書いてきた二人の打者、廣瀬隆太と熊田任洋とともに1年生から出場し世代を牽引してきたのが上田希由翔選手。愛産大三河高校時代からNPBスカウトの声も聞かれた選手で、入学した時にはすでに大きな太ももをもち身体は出来上がっていました。
20年秋季リーグの初戦でいきなり4番ファーストに抜擢、打率.344を残し一躍明治大学の主力選手に。レフトやサード、一時期はセカンドの守備位置にも入りましたが、変わらないのは打線の中核に居ること。
2年生シーズンは打率2割台ですが打点に関しては2年秋以降今まで5季連続で2桁を記録。プレッシャーに強く、チャンスの時こそ一本出せる精神力とバッティングの技術は上田選手最大の強みです。
3年春に打率.368を記録、この年の大学代表に選ばれオランダへ。戻ってきてからはそれまで以上に打球に角度がつくようになり、リーグを代表する強打者として3年春~4年春の3季続けてベストナインを獲得。この3シーズンで明治大学もリーグ3連覇を成し遂げ、まさにチームを引っ張る選手となっています。
年次を経るごとに三振率は下がり、通算の四球数46にたいして三振37。高いコンタクト率は明治大学からNPBへ行った選手に共通する項目で、上田選手の場合はそれに長打も多く生まれるという点で今年の上位ドラフト指名が確実視されています。
打撃フォームはシンプルで、余計な動作がなくすっとバットが出てくる形。今夏のU-18壮行試合ではインコースのストレートを回転でライトスタンドへ打った瞬間のホームランにするなど、技術の高さを感じさせます。
守備に関して、この春~秋にかけて送球の精度からサード守備はやや不安定。セカンドとしてはレンジの面で厳しく、明治大学という守備を重視するチームの構成上も短期間に終わりました。一塁に関しては捕球面で上手く全く問題ないのと、外野に関してもセンター含めて可能性があるくらい打球への入り方は良い選手です。後述するように足もあるので、NPBにおいては外野含めた両コーナーポジションにつくことが多くなるのではないでしょうか。
通算11盗塁、この秋含めて4季続けて盗塁を成功させるなど走力は高く、二塁打・三塁打もほとんどがスタンディングで到達しているようにベースランニング面でも貢献できそうな点は、プロでも即戦力に近い部分でしょう。
「人間力野球」を謳う明治大学だけあってキャプテンシーも高く、田中監督も今年は事あるごとに「チーム上田」を強調しています。
即戦力野手としての評価も高いですが、守備走塁に関してはプロのレベルに順応する期間は欲しいところ。バッティング技術はすでに高い水準であるため、二軍で1年間シーズン完走し2年目から本格的に一軍のレギュラー争いという形が最大値を生み出す可能性が高いと考えます。
3.さいごに
ここまで9人の選手について細かく書いてきましたがいかがでしょうか。ほぼすべて私見ですので参考レベルではありますが、どの選手も1年生の時からプレーを見ていることもあり思い入れは強いです。
一人でも多くの選手がNPBから指名され、各人の夢が叶うとよいですね。
健闘を祈ります。
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