ドラフトを迎える東京六大学野球戦士たち2022
こんにちは、シュバルベです。
10月20日(木)に行われるプロ野球ドラフト会議が迫ってまいりました。昨年も同様のタイトルで執筆しましたが、私がよく観に行く東京六大学野球連盟に所属している選手で、プロ志望届を提出している選手たちについて書いていきたいと思います!
今年のプロ志望届提出者は以下の6校24名。
昨年は5校16名だったので、それに比べて+8名。非常に多くの選手がプロ志望届を提出した年となっています。高校時代から名の知れた選手もいれば、大学に入ってから成長した選手も多士済々。
昨年は投手編/野手編で分けましたが、宣伝も面倒なので今年は1つのnoteにしたいと思います!
※早大の菅原宗一郎投手のみリーグ戦での登板が無く、私自身一度も拝見したことが無いため割愛しております。申し訳ございません。
1.投手編
まずは投手から。各選手の10月10日時点での通算成績は以下です。
この数値も参考にしつつ、以下個別の選手に触れていきます。
順番は公益財団法人全日本大学野球連盟の表に準じます。
■荘司康誠(立教大学)
今年の秋季リーグで台頭してきた速球派右腕が荘司康誠投手です。
188cm/88kgと大柄で、ストレートは常時150km/h前後を計測。美しいフォームから繰り出される指にかかったストレートは目を見張るものがあります。高身長ゆえに一層落差を感じるスプリットのほか、カットボールや、ストライクを取れるカーブを主な持ち球としており、現代NPBのトレンドに近しいピッチ構成も魅力的です。
先発投手としてのスタミナは十分で、春季リーグ最後のカードとなった明大戦では1戦目・3戦目に先発し、計17イニングを自責1に抑えるなど非常に高いパフォーマンスを発揮しています。大学日本代表としてもオランダで行われたハーレム・ベースボールウィークにも参加し、対アメリカ戦では2戦とも先発を任されました。
現時点で通算2勝3敗とこの点では結果を残せていませんが、投げているボールの質と将来性でドラフト上位候補に名を連ねるようになった荘司投手。ただ最後の秋季リーグでは苦戦しており、初戦の法大戦では満塁弾を浴びるなど2試合続けてKO。慶大戦こそ6回2失点でしたが、被安打8と本調子とは言えません。
今年に入ってから今が一番状態が悪いと言ってもいいのですが、それでも球速は150近く出ていますし、この夏はオランダ遠征含めコンディションを一定に保つのはかなり難しかったのでしょう(他の大学代表投手も同様のケースが散見されます)。
直近の東大戦では常時140km/h後半とやや出力は抑えめでしたがストレートは高めに、変化球は低めに、と高低を使った組立てで7回1失点と新しい姿も見せています。
今のNPBのレベルに対して荘司投手であれば最も順応し高い目線で投球できるのではないかと期待しています。やや細身すぎるきらいはあるためプロに入ってからのビルドアップも楽しみで、2年後~3年後に一軍ローテ100イニングを見込むようなビジョンになっていくのではないでしょうか。
■宮海土(立教大学)
立教大学の鉄腕リリーバーと言えば左腕の宮海土投手です。
1年秋から神宮のマウンドを踏むと、セットアッパー~クローザーとしてこの4年間フル回転。春季リーグではストレートが140km/h中盤を叩く試合も多く着実にビルドアップしてきました。投球としては、なんといっても右打者のクロスファイアに投げるストレートが魅力です。
63イニングを投げて73三振と大きく奪三振数が上回るピッチングを見せ、順調に大学野球生活を送ってきましたが、4年生になってからやや不調に陥ってしまっている部分は気になります。春季リーグでは2年春以来の10イニング以下に留まり、下級生に難しい局面での登板を明け渡してしまいました。
秋季リーグ初戦でも齊藤大輝選手にホームランを浴びてしまい躓いた感はありますが、NPBのチームを見渡しても左のリリーフ投手が不足しているところは多く感じます。
怪我の少なさも宮投手の優れた点の一つなので、一定数以上の稼働が見込める左のリリーフとしてNPB入りを期待したいですね。
■井澤駿介(東京大学)
東京大学のエースとして3年間チームに貢献してきたのが井澤駿介投手です。
大学2年生の2020年春季リーグで開幕投手に抜擢されると、その試合で慶應義塾大学を相手に5回3失点とゲームを作り現在まで6季続けて開幕試合を任されています。通算イニング数170.1投球回は現時点で世代TOP。鉄腕ぶりがうかがえます。
大学2年時はアベレージで130km/h台前半のストレートでしたが、今やMAX144km/h、アベレージでも140km/h前後まで出力を上げてきました。持ち球としてはカットボール、スライダー、カーブ。特にカットボールを得意としていて、右打者からは逃げ、左打者には食い込む厄介なボールとなっています。
慶應義塾大学の堀井監督が「井澤君と言えば、カットボール。もちろんウチも対策をしていますが、春から秋にかけてストレートの威力が増した。もともとこの2つは球速差がさほどなく、打者は的を絞りにくいのですが、カット、ストレートの両方をマークする必要を感じています」(9月17日付4years)と話すように、4年秋になってピッチングは更に進化を遂げています。
ピンチを作っても動じず、大胆にインコースに投げ込む胆力を持ち合わせ、粘り強いピッチングで並居る競合大学の打者を退けるピッチングから”偉人”と称されるまでになった井澤投手。
育成指名でもNPB入りを明言するだけに、その覚悟が報われると良いなと思います。
■橋本達弥(慶應義塾大学)
今年、慶應義塾大学のクローザーを担ったのが橋本達弥投手です。
大学3年の春にリーグ戦初登板すると、140km/h中盤のストレートに鋭く落ちるフォークボールを武器に快投。クローザーといっても2イニングの回跨ぎでゲームを〆る起用法で、24イニングで自責わずか2点の難攻不落のストッパーとなりました。同年には春季リーグ戦の優勝決定試合・全日本大学野球選手権の決勝戦、いずれも最後にマウンドにいた投手となっており、プレッシャーのかかる試合でもいつも通りのピッチングが出来る強心臓ぶりはプロ向きでしょう。
4年生になってから先発転向も試みましたが春季リーグ開幕戦で内容悪く、その後リリーフに再転向して規定到達・最優秀防御率のタイトルを獲得しています。
野球伝来150周年記念試合では150km/hも計測し、1イニング2奪三振無失点。プロへのアピールは十分できたでしょう。この秋のリーグ戦初登板となった立大戦の初戦でも山田健太選手を150km/hのストレートで打ち取っており、この球速帯なら安定して出せる出力を見せてくれました。
今後も後ろを担う形になると思いますが、フォークという決め球が明確にあるので即戦力に近いポジションで見込めるというのは大きいように感じます。先輩の木澤尚文投手(現・東京ヤクルトスワローズ)が2年目のシーズンでリリーフとして台頭しましたが、それに続くような活躍を期待しています。
■増居翔太(慶應義塾大学)
2年生の時から慶應義塾大学の2戦目の先発を任され、今年6月に行われた大学野球日本選手権の決勝戦でも先発したのが増居翔太投手です。
1年春から中継ぎとして6試合に出場し早くから頭角を現しますが、本格的な先発転向は3年春から。通算15勝をあげ貯金を13個作っている、勝てるピッチャーです。
ストレートのは平均140km/h前後で、精度の高いスライダー・カットボールを武器に優れた制球力が売りだったピッチャーでしたが、最後の秋ではMAX147km/hを計測するなど常時140km/h中盤を叩けるようになり新しい姿を見せています。春は不調で四死球が多く三振が少ないという厳しい内容だったのですが、秋は44回を投げ38三振9四死球。本来のスタッツを取り戻してきています。
体格は小柄で投球も淡々と投げているように見えますが、常に投手優位のカウントを作っていく強気のピッチングは観ていて気持ち良く、彼が投げる試合はあっという間にゲームセットになるそんなイメージです。
テイクバックの取り方を変えたこともあり、ドラフト直前になってまた進化し始めた増居投手。貴重な先発左腕候補としてリストアップしている球団もあるのではないでしょうか。
2.野手編
続いては野手です。各選手の10月10日時点での通算成績は以下です。
この数値も参考にしつつ、以下個別の選手に触れていきます。
■中川卓也(早稲田大学)
高校の同級生である山田健太選手同様、1年春から出場機会を多く得たこの世代の代表選手の一人が中川卓也選手です。
大阪桐蔭高校で主将を務め、入学時点で非常に知名度も高い選手でしたが、下級生のころは十分に力を発揮できていませんでした。しかし21年秋に打率.333で初めて打率3割を超え、三塁手のベストナインに選出。最高学年となった今年はキャプテンとなり早稲田大学をまとめています。
通算で打率.223、出塁率も.337と見栄えが悪いですが、3年秋は11四死球7三振とアプローチを改善させ、長打という部分でも二塁打を5本放っています。ただ本塁打は4年間で0本、コーナーポジションであることも鑑みるとやはり打力を求められるのは間違いありません。
守備位置としては一塁・三塁につき、サード守備は年々上達してきています。セカンドも春に守りましたが2失策で内容も良くなかったことから、基本はコーナーポジションになると思われます。
ネームバリューは世代でもトップクラス、あとはどこまでそのポテンシャルを評価されるかという点になってくるでしょう。
■山田健太(立教大学)
1年春からこの世代を引っ張ってきた好打者が山田健太選手です。
2019年、1年生ながら春の開幕戦から出場を果たすと、打率ランキング4位の.375を記録。同年秋は打率.333で一塁手のベストナインを獲得するなど、早くから結果を出してきました。通算9本塁打は世代で2番目に多く、打率より1割近く高い.416の出塁率も魅力の選手です。
同じ二塁手の齊藤大輝選手に比べると打球方向は広角で、速いライナー性の打球を飛ばすという違いがあります。
特にこの秋は初球からしっかりと振り切るスイングが出来る打席アプローチが目立ち、法政大学二回戦では2本のタイムリーを放つなど結果も出ています。
立教大学の溝口監督が「山田がポイントゲッターにならないといけないと思っています。逆に言うと山田が打点を稼げるようになると前後が楽になりますし、展開としても非常に良くなると思うので、打点やポイントとなる試合での爆発できる有効打を期待します。」(2022年9月17日付立教スポーツ)と言う通り、ここぞのタイムリーないしホームランは継続した課題ですが今の打席でのアプローチなら時間の問題ではないでしょうか。
1年秋から3年秋まで全試合に出場(1年春も12試合中11試合に出場)している身体の丈夫さも魅力の一つで、この点は同級生の打者の中で頭一つ抜けています。身体が資本・財産の仕事になるので、この4年間79試合の多くで打線の中軸打者を張ってきたという実績は評価されてしかるべきでしょう。
三振率は18.4K%で、過去の六大学から直プロの野手陣が軒並み10K%台前半であることを考えると高い数値となっています。一方で四死球も16.0BB%と多く勝ち得ており、過去のプロ指名選手の中でも上位に入ります。今年、アプローチをどう考えるか、そしてどのような結果になるかでドラフトの順位が左右されるでしょう。
この世代はこの先紹介する明大の村松選手、法大の齊藤選手とセカンドを守る2人のプロ注目選手がライバルとなります。二人と比べた時に、走塁面では山田選手は劣っており通算1盗塁で、二塁打・三塁打の数もそこまで多くありません。ライナー性の当たりが多いとはいえ、この点は気がかりです。
守備面では1年生で一塁を守り、2年生から二塁につきましたが、守備範囲にくる打球は堅実に処理できる確実性はあります。ただレンジはライバル2人に比べて狭く、二遊間の打球に強いショートとセットでないと厳しいかもしれません。ファースト守備は高校時代含めて経験がありますが、より打力を求められるポジションなので、セカンドないしサードで踏みとどまってほしいところです。
投手への声がけ・内野陣への守備位置の確認などはかなりこまめに行っており、リーダーシップを3年生にして執っている姿が印象的で、実績も含めて新チームの主将就任は満場一致だったのではないでしょうか。
端正な顔立ちですが、正木選手(慶應大学→ソフトバンク)同様、グラウンド上では泥臭く基本を怠らない好選手だと自信を持ってお伝え出来ます。
■道原慧(立教大学)
今年レギュラーを掴むと、主に1番センターを担った道原慧選手。
魅力はその総合力。45試合13盗塁、ランニングホームランも1本放つなどその足に注目されることが多いのですが、しっかりとプル方向に振れるところがとても魅力的です。出塁率.363でしっかりとボールも見られますし、出塁できれば持ち前の足で揺さぶりもかけられるので、投手にとってはとても嫌な選手だと思います。
3年春にブレイクしたものの、3年秋~4年春と打撃面で高低の揺さぶりに脆さが見え好成績は残せていません。しかし、ラストシーズンのこの秋は再び粘り強い打撃と思い切りを両立できつつあり、本来のポテンシャルを開花させようとしています。東大戦での右中間スリーベースなどはまさに真骨頂でしたね。
右投げ左打ちの俊足外野手というだけではNPBへの殴り込みは実際厳しいですが、最後の最後で打撃でどこまでアピールできるかにかかっています。
■是澤涼輔(法政大学)
この秋にリーグ戦初スタメンを果たしたのが是澤涼輔選手です。
下級生で出場したフレッシュリーグではスタメン起用された試合もありましたが、リーグ戦では同世代の大柿・村上の両選手が打撃面でも結果を出しており出場機会に恵まれていませんでした。
この秋の早大戦で遂にリーグ戦初スタメンを果たすと、2年生の吉鶴投手と篠木投手をリードしゲームメイク。イニング間のスローイングでは肩の強さを見せていました。
守備についているのは1試合しか観られていないので多くは言及できませんが、吉報があると良いなと思います。
■村上喬一朗(法政大学)
4年春に攻守両面で大きく成長した姿を見せたのが村上喬一朗選手です。
3年生の秋季リーグから同学年の大柿廉太郎選手(高崎健大④)に代わってレギュラーを掴み、打率も3割越えで結果を残しましたが、キャッチャーの守備という部分ではやや物足りなさを感じていました。
しかし、冬を超えてスローイングの強さ・正確さ、キャッチング、ブロッキングなどあらゆる点でレベルアップし、4年生のラストシーズンを迎えています。
秋季リーグでは開幕後2試合続けて大柿選手・是澤選手にスタメンを譲ってしまうなどで遅れてしまいましたが、春にしっかりと能力は見せたのであまり心配はしていません。体格には決して恵まれていませんが守備型捕手としての需要はあるように感じますし、3年秋~4年春と2季続けて打率3割を記録した上でホームランも1本放っているので打力も期待できます。
投手への声がけ、ベンチスタートでも腐らず常に声を出している選手で、見ているだけで元気になれるタイプです。
■齊藤大輝(法政大学)
3年生ながら昨年の法政大学で最も恐ろしいバッターはこの齊藤大輝選手でした。
右の強打者で足も使えるタイプはここ3年のドラフト会議で人気の高いカテゴリーで、齊藤選手は次に紹介する山田健太選手と共に今年の上位候補に位置付けられると考えています。
インコースにツボを持っており、さらに打球角度をつけるのが本当に巧い選手なので、本人も打撃のイメージに挙げる山田哲人選手のようにインコースをくるっと身体を回転させてレフトスタンドに放り込むことができます。打球方向は引っ張り方向が多く、シフト全盛の時代を迎えるであろうNPBで、右のプルヒッターは今後さらに重宝される点からも注目です。
4年春は打率.208と絶不調に終わり、この秋もここまで打率.212と昨年に比べて結果をだせていません。春はほぼ3番に起用されていましたが、秋は1番~2番を任され、通算出塁率は.393、通算15盗塁という彼の出塁能力と走塁能力を活かす起用が目立ちます。
今年の不調の中でもホームランを春・秋ともに放っており、悪いなりにどこまでやれるかみたいな帳尻合わせが出来るのは強みだと思っています。
ハーレムベースボールウィークでは外野のポジションに就くなど、セカンドだけでなく内外野複数ポジションを守れる足の速い右の好打者という位置づけにどこまで近づけるか。プロからの評価が楽しみです。
■木下将吾(法政大学)
主に代走としての出場で通算4盗塁を決めているのが木下将吾選手です。
3年生の秋季リーグで代走としてリーグ戦初出場すると、出場2試合目で初盗塁を記録。代走からレフト、ライトの守備位置につくことも。
通算11打席0安打で打撃については言及できないのですが、先日の慶大戦三回戦でリーグ戦初スタメンに起用されるなど監督からの期待値も見える選手です。現実的にはNPB入りはかなりハードルが高いとは思いますが、
■野尻幸輝(法政大学)
がっしりとした体格ですぐに目を奪われる、そんな選手が野尻幸輝選手です。
木更津総合高校時代は投打の軸として二度甲子園に出場、高校3年時にはU-18日本代表にも選ばれた非常に名の知れた選手ですが、主に野手として取り組んだ大学時代は打撃で苦しみます。大学1年春からベンチ入りし初ヒットも記録しましたが、通算打率は1割台。4年春にライトのレギュラー獲得するも苦戦し秋は出場機会を減らしています。
投手としては大学2年春に二試合に登板。そしてこの秋にも一試合に登板しました。140km/h後半のボールも投げていましたが、立教大学の山田健太選手に完璧な一発を浴びています。
投打ともにリーグ戦で結果を出しているとは言い難いですが、底知れないポテンシャルを感じる選手なのでプロの環境で大化けの可能性は秘めているように感じます。
■阿久津怜生(東京大学)
東大の中軸打者にして、異色の経歴を持つ外野手が阿久津怜生選手です。
中学時代は陸上400mで全中優勝、宇都宮高校では硬式野球部に所属するも東大入学後はアメフト部に入部。ランニングバックなどでプレーしましたが、身体のビルドアップをもとに大学二年生で硬式野球部に転部すると、昨年からリーグ戦に出場し活躍を続けています。
アメフト部の経験について、次のように話しています。
4年春季リーグで早大の伊藤大征投手から初ホームランを放つと、秋にもここまで2本塁打。インコースのボールをライトスタンドにライナー性でたたき込む力強さを見せつけています。
また、先に引用した対談で話している走塁についても素晴らしく、通算14盗塁を記録。東大野球部自体、昨年から走塁面に重きを置いた戦術を採っていますが、阿久津選手はその代表格でベースランニングやスライディングの技術においてもリーグで3本の指に入る巧者です。
若き日の青木宣親(東京ヤクルトスワローズ)に似た特徴的な打撃フォームは映えますし、守備面ではやや不安も無くはないですが、東大出身選手で初の野手としてのNPBドラフト指名となれば非常にエポックメイキングな出来事になります。
この秋の猛アピールで一気にドラフト戦線に殴り込んだ阿久津選手。十分実力を持っていると考えています。
■朝日晴人(慶應義塾大学)
2020年までチームには3年間でレギュラーを張った瀬戸西純選手(慶大→ENEOS)がいましたが、同選手の卒業後にショートのレギュラーを手中にしたのは朝日晴人選手でした。
守備範囲は広く、送球の抽斗が多く、肩も強い。3年春まで捕手登録だったのが信じられないぐらい守備に長けています。大学選手権大会・神宮大会でも変わらぬ動きを披露し、慶應の正ショートの座を確固たるものとしました。
課題だったのは打撃面でしたが、4年春に打率.391で首位打者争いをするまでに成績を伸ばし、立大の荘司投手からホームランも放ちました。多くの打球が逆方向~センター寄りで、NPBクラスのパワーピッチャーと対戦した時にどうなるかという点は少し気になりますが、そこを補うのが高い出塁能力になってきそうです。
選球眼は非常に優れ、通算出塁率は.403あります。183打席で17三振に対し25四死球。四死球の数が三振の数を上回る選手は今年の候補でもやはり少なく、この部分はプロ入りしてもある程度見込めるのかなと思っています。
春は送球の面で少し苦戦し3失策がついてしまっていますが、ファースト守備が…というシーンもありましたし、レンジの広さは間違いありません。今年のドラフト候補で遊撃手は比較的薄いカテゴリーでもあるので、NPB入りの目も十分にある選手でしょう。
■下山悠介(慶應義塾大学)
六大学屈指のバットコントロールを誇るのが下山悠介選手です。
1年生から出場を重ね、330打席に立ち通算打率.276。通算出塁率は.379で打率と1割近く乖離があります。堀井監督も「ミートする力はチームでトップクラス」と語るようにバットコントロールに優れ、終盤の大事な局面では一層集中力が増して安打が目立つ好選手の一人です。21年神宮大会準決勝でのサヨナラツーランはその最たるものでしょう。
4年生の春まで主に中軸を担ってきましたが、最後の秋では1番バッターとしての出場が続いています。しかし打率はこの秋.182と初めてと言っていいほど苦戦をしており、直近の試合では6番に降格させられてしまいました。持ち前のバットコントロールはあるものの、少しバットの出が悪いかなと感じており、らしくない見逃し三振も増えてきています。
ただ、これまで積み重ねてきた75安打は間違いなく実績としてありますし、チームも優勝争いに食い込んでいるのでラストシーズン駆け抜けて欲しいですね。
守備面ではサードを定位置としています。セカンド・ショートに取り組んだこともありますが決して順調とは言えなかったので、得意の打撃を伸ばす点でもサードに集中したこの1年は正しいと思っています。ただ失策が春・秋共に2つずつとまだ課題はあります。
同じく慶應→慶應大の柳町選手(現・ソフトバンクホークス)のような粘り強い打撃をどこまで評価されるか、ドラフト会議が楽しみです。
■萩尾匡也(慶應義塾大学)
希少な右のパワーヒッター枠に入ってきそうなのが萩尾匡也選手です。
六大学ではホームラン1本ですが、11月に行われた神宮大会でバスターホームランを放つなど2本塁打。地力の強さを現し一躍注目されるようになりました。ここまでの通算長打率は.976、8本塁打。二塁打を11本放ち、盗塁も7個決めるなど足もしっかりと使える選手です。
彷彿線を描くようなホームランはそこまで多くないですが、ライナーを突き刺すような打球を左右に放つことができ、神宮球場のようなバッター有利な球場では将来30本も打てる要素はあるように感じます。
春季リーグ開幕前に堀井監督から萩尾選手と廣瀬隆太選手で10本塁打、と発破を掛けられていましたが、その春にしっかりと4本塁打を記録する当たり持っている男でもありますね。
一方で課題も明白。シーズンごとに少しずつ改善の兆しはありますが通算で26.3K%と三振が多く、7.2BB%と選球眼の部分ではややプロ入り後も苦戦する可能性があります。
それでもやはり長打力と走塁面は非常に魅力的で、今は4番打者として打線の中軸を担っていますが、スワローズの塩見泰隆選手のような攻撃型1番バッターとしての活躍を期待したくなります。将来は目標としている鈴木誠也選手のような大きなプレイヤーになって欲しいですね。
■山本晃大(慶應義塾大学)
強打を誇る慶應義塾大学の打線の中でポイントゲッターの役割を担うのが山本晃大選手です。
浪人で慶應義塾大学に入学。下級生時は筋力を戻すことに重点を置いて地道なトレーニングを重ね、4年生の春季リーグでついにレギュラーを掴んだ苦労人です。
今年の春は打率.340、2本塁打、13打点と大活躍。出塁率の高い打者が並ぶ慶應義塾大学の打線において、ポイントゲッターとしての役割を担いました。17本の安打のうち、8本が長打でスリーベースヒットも2本放っています。
この秋、初戦の東大戦ではやや打撃を崩されるシーンが多かったのですが、2カード目の立教大学戦では3試合連続安打を放ち、すでにホームランも2本。春と変わらぬ強打者っぷりを見せつけ、打点も5試合で7つ記録しています。何より春は8三振6四死球と三振>四死球だったのが、秋は2三振14四死球と打席でのアプローチが大幅に改善されました。
通算打率は.298ですが、出塁率・長打率ともに非常に優れているためOPSは.992。打席数には大きく差があるものの、今回プロ志望届を提出した選手の中でトップの数字です。
守備に関しては下級生時から両翼での出場で、NPB入団後も打力をどれだけ発揮できるかが重要となるでしょう。スワローズジュニア出身でもあるのでぜひ贔屓に欲しいという思いもある選手ですが、打撃面でこの一年どこまで評価が上がっているかドラフトの結果を楽しみにしたいですね。
■蛭間拓哉(早稲田大学)
浦和学院高校時代よりプロ注目と言われ、この世代で最も多くのホームランを放っているのが蛭間拓哉選手です。
早稲田大学に入ってから身体の厚みが本当に大きくなり2年生時からホームランを量産、通算12本と現役最多本塁打を放っています。
打席に入ったオーラは別格で、蛭間選手以上に雰囲気の有るバッターはアマチュアではいなかったと思っています。スイングスピードの速さが目につき、1打席の中で必ず1度はフルスイングでボールにコンタクトする凄まじい集中力と当て勘は必見でしょう。
大学代表として臨んだハーレムベースボールウィークでは6試合で11打数3安打4打点。出塁率はなんと.556で出塁能力の高さを発揮しつつ、しっかりとランナーを返す役割を全うしました。
リーグ通算23.2K%と三振の多さは目立ちますが、13.3BB%と四球を選ぶことは出来ているので、今のように積極的にスイングをかけていくことは正しいように思えます。
足に関しては通算で二塁打17本、盗塁8個決めているように、大きな身体ながら俊敏で、代表候補合宿では50m5.93秒と全体4位につけました。この1年はセンターのポジションについており、強肩を活かした守備はプロでも両翼なら安定して計算できるでしょう。
そしてそんな蛭間選手ですが、10月11日に西武ライオンズが1位入札を公言しました!
コンタクト率を上げていく育成に優れたチームだと思いますし、蛭間選手にとっていい球団がまず手を挙げたなという印象です。勝手な私の理想では2番ライトの立ち位置で二塁打を量産していくバッターになって欲しいなと。プロ入り後にまず苦労するのは速球対応だと思うので、最初は二軍スタートでじっくりと磨き、一軍の壁に当たっても跳ね返す強靭なマインドに期待したいですね。
■村松開人(明治大学)
14年連続でプロ野球選手を輩出している明治大学。その来季新体制の主将が村松開人選手です。
村松選手の最大の魅力はそのバットコントロールです。通算168打席中、三振はわずかに8つ。4.8K%は同世代の中で圧倒的な数字です。2021年に関しては92打席で2三振、四球は11個を選び一気にステップアップを果たしました。この秋も34打席で1三振と怪我明けでも変わらぬ打席でのパフォーマンスを見せています。
昨年は2季続けて3割後半(春.366、秋.361)を記録、この秋は打率4割越え。通算OPS.920と打力に関しても文句なしのドラフト候補でしょう。
通算13盗塁と足も使え、三塁打4本はリーグトップの本数で、バントも巧い、まさに攻撃型二番打者としてプロでも重宝されるタイプだと考えています。
明大スポーツの記事では、春・秋ともシーズン前に怪我をしない身体づくりとしてウェイトとバッティング練習で体重を増やしたと話しており、実際に秋の最終カード法政戦で三浦銀二投手(現・DeNA)からリーグ戦初本塁打を逆方向に放ちその成果を示しました。1年前の六大学野球連盟の名簿では76kgでしたが、現在は80kgになっており、しっかりと増量を果たしています。
今年の春季リーグは足の怪我で開幕からスタメン出場は一度もなく、代打での3打席に終わりました。怪我は既に完治し、この秋は開幕戦からセカンドで出場すると東大戦では9打席連続出塁を記録。3試合連続マルチヒットで、続く早大戦でも2試合3安打。村松開人ここにあり、というべき存在感を示しています。
守備面では、宗山塁選手(広陵①)がポジションを掴むまではショートにも入っていましたが、主戦場はセカンドとなっています。昨年はシーズン4失策と確実性には欠けていましたが、二遊間の打球への反応は良く守備範囲は比較的広いタイプです。スカウトからも俊足を評価され、その足があれば遊撃も、という声が春先にはありました。実際に、六大学オールスターでは遊撃でスタメン出場を果たしています(送球エラーをしてしまいましたが)。
明大スポーツのインタビューでは、昨年の守備面について次のような厳しい自己評価をしています。
ここまで言語化が出来て自身の事を分析できるというのは選手にとって一つの強みになるのではないでしょうか。
守備時の声がけもしっかりしていますし、既に昨秋には内野ではリーダー的存在を務めていたので、明治の次のキャプテンは村松選手だろうと予想していました。怪我で出場できなかった春季リーグでも大きな声を常にベンチからかけて圧倒的なリーダーシップをとり、チームはリーグ優勝を果たしています。
こんな選手が内野に居るといいなと思う選手の一人なので、ぜひNPB球団と縁が合ってほしいなとおもいます。
■蓑尾海斗(明治大学)
2021年秋季リーグ3位の打率.400、ベストナインも受賞して復活のシーズンを送ったのが蓑尾海斗選手です。
1年生の春に早くもマスクを被ると、当時のエース森下暢仁投手(現・広島カープ)のピッチングもあってリーグ優勝、全日本大学野球選手権でも蓑尾選手は出場を果たしました。1年秋は8試合に出場し2020年から正捕手かと思われましたが、20春~21春にかけての3シーズンで出場は2試合1打席のみ。明治大学の厳しいポジション争いを感じさせましたが、昨秋に復権を果たしました。
今年は副将として村松キャプテンを支えるとともに、扇の要として春季リーグ全試合でスタメンマスクをかぶりチームの優勝に貢献。日本大学代表候補合宿にも参加し、経験を積んでいます。
通算打率は2割半ば、長打は150打席近くたって5本と少ないですが、センターを中心に逆らわずに弾き返していく打撃は勝負所での一本を多く生んでいます。この秋の早大戦では9回表に2点差に広げるセンター前ヒットを放ちましたが、これぞ蓑尾選手の真骨頂と言えるものでした。
守っては闘志あふれる姿勢で投手を奮い立たせ、上級生から下級生までよくコミュニケーションを取りつつリードをしてきました。春にチームを優勝に導いている点も含めて評価がされていくのかな、と思っています。
■岡本伊織(明治大学)
がっしりとした身体で、明治大学ベンチから大きな声で試合中味方を鼓舞し続けるのが岡本伊織選手です。
初出場は1年生の春季リーグ。同年秋の立大戦では初スタメンを果たすなど、早くから期待を集めていた選手で、実際にスイングスピードの速さは上級生に劣らないものでした。
ただ、2年生のシーズンは年間通して出場が無く、この2年で15打席。代打での出場がそのほとんどで、守備位置であるファーストには上田希由翔選手ら強打の下級生がいたことで出場機会に恵まれませんでした。
今春の東大戦でリーグ戦初本塁打を放っており、ポテンシャルは間違いなくあるのですが、それ以上にやはりムードメーカーとしての貢献に目が行きます。この春、明治大学は優勝を果たしましたが、ベンチで常に村松開人主将とこの岡本選手が声を出して雰囲気を作っていた印象が強いです。
ドラフトにかかるかは神のみぞ知りますが、次のステップがどうなろうと今の持ち味を変えずに突き進んでほしいですね。
■明新大地(明治大学)
明治大学のスターティングラインナップは甲子園常連校出身者でほぼ占められますが、付属校である明大中野出身でこの春にレギュラーを掴んだのが明新大地選手です。
2年生の春季リーグで初出場と初スタメンを勝ち得ますが、熾烈な外野守備位置争いや怪我もあり3年時は主に代打・守備交代での出場に留まりました。しかし、4年春の開幕戦で代打タイムリーを放つなどアピールし、春季リーグ後半はレギュラーの座を獲得。打率.324に加えて、慶大戦では初本塁打も放ちました。
この秋はまたしても熾烈な外野手争いでベンチスタートの試合が多くなっていますが、早大戦では代打でタイムリースリーベースヒットを放つなど変わらぬ集中力を発揮しています。三振の多さが懸念点ではありますが、外野3ポジションを無難にこなす守備力もある選手で、ビルドアップすると面白い存在になりそうです。
また、こちらのブログではその人柄がよく表れているのでご一読を。
こうした選手が報われると良いなと思いますね。
3.さいごに
ここまで今年のプロ志望届提出選手を書いていきましたがいかがでしたでしょうか。やはり今年は多いですね笑
運命の日はあと1週間後。多くの選手に吉報が届くことを心から楽しみにしています。
4.出典
写真はいずれも筆者撮影。
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