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【夢日記#13】カツサンド、衝動

博多だろうか。
小さな繁華街にある老舗洋食店に入った。
国内に3店舗を構えるカツサンドが有名なお店でここが本店らしい。私はおそらく一度来たことがある。
着席して20分。G氏が遅刻して現れた。
程なくしてカツサンドが運ばれてくると「出ようか。」とG氏が言う。
私たちはまだ一口も食べていないカツサンドを残したまま店を出た。
通り過ぎる私たちを店員さんが不思議そうに見ていた。

商店街を歩くと、老婆が野次をとばしてきた。
1週間以上は洗っていないであろうボサボサの髪の毛に黒ずんだ肌。ゴミがパンパンに入ったビニール袋を大事そうに抱えていた。

商店街を抜けると広大な敷地を持つ洋館にたどり着いた。
イギリス式の庭園には花々が咲き誇り、沿道に植えられたグリーンは彫刻のように美しく剪定されていた。

夜になったというのに人がちらほらいる。
2階に上がってみるとフェラーリの販売会が催されていた。
床一面ガラス張りで宇宙船のような空間だ。何人かの健康そうな男性スタッフが前を向いたまま警備員のように点々と佇んでいる。みんな同じ顔で同じ体型だ。
足元にある大きなガラスドームを興味津々に覗いていると、「ここに注文した車が実物大で映し出されます。実際に触ったり試乗もできます。」と何れかのスタッフが淡々と説明してくれた。
G氏はすでに納品待ちとのことで、その車を見せてもらった。白のボディに黒のシート。案外オーソドックスな色選びをするんだなと少し驚いた。
G氏は足元のドームに潜り込み、映し出された車のシートに腰掛け、ハンドルを回したりシートレザーを撫でたり、長い時間をかけて近々自分の元にやってくる車をめいっぱい愛でていた。

ふと、さっきカツサンドを食べないまま店を後にしたことを思い出した。お腹がすいてきた。
そうだ、私は車を見にきた訳ではないのだ。
G氏に「ごはんは?」と尋ねると、「そろそろ帰ろうか」と言ってきた。
「は?」私は腹が立った。
わざわざ呼び出しておいて、お腹も満たさないで帰るつもり?無礼な。お腹が空いてイライラする。
販売会場を後にし、長い螺旋階段を降りながら「なんで急に?」と聞くと、
「今彼女作るつもりなくてさ。」と、距離を離しながら答えた。
「いやいやいやいやいや、彼女とかじゃなくない私?もともと友達でしょ。意味わかんない。ご飯食べない理由になってないし。」
すらすらと文句が出てくる自分に驚いた。
エントランスを出ても未だ腑に落ちない説明しかないG氏に、苛立ちは最高潮に達した。
「ふざけんなよ!」G氏を殴った。思いっきり殴った。
感情をこんなに露わにしている自分に、途中何度か違和感を感じたが、怒りはおさまらない。
私はひたすらに殴り続けた。
パンチの手応えがない。乾いたドスという音がするだけだ。ならば、と次は足を引っ掛け階段から落とし、伸びきったG氏をまたひたすらに殴った。なんだか物足りない。

帰路、低層アパートから20代女性が飛び降り自殺をしたというニュースを見た。母親が見つけたそうだ。


2022/8/24

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