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東京のこと

環八沿いの5階建マンション。
部屋の窓からは手のひらサイズの東京タワーが見える。
近くには多摩川の河川敷。

沿線沿いの小さな商店街が最寄駅で、喫茶店と焼鳥屋とスーパーとカメラ屋さん。
本屋さんとドラッグストア、そして居酒屋。
お弁当屋さんに、ケーキ屋さん、街の神社。
小さいけどなんでも揃っている。
夕方になると商店街は、焼き鳥を焼く炭の匂いが充満する。
買い物と帰宅で溢れる人。

私はその商店街のコンビニでバイトをしていた。
夕方はすごく好きでちょっとだけ嫌いだった。
1番生活が溢れる時間、家族連れや家に帰る人たち。
私は東京に1人だったから。

東京を離れてから10年以上、定期的に商店街の夢を見ていた。
ここに住んでいる夢、ここに向かう夢。
当時の恋人に会いにいく夢。
もっとその時を大切に生きればよかったなってそう思うのは、いつもすっかり戻れなくなってからだ。

こうやって、しまっている大事な記憶をたまにひっぱりだしては反芻する。
春はいつもよりも東京を思い出す。

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