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地味な「子育て」をなめないでくれ

以前友人の男性に、「子どもを見ているとき以外は何をしているの?」と聞かれた。

私は現在育休中で、その時子どもはまだ1歳にもならない時だった。内心「おいおいまじかよ、なめてんのかよ」と思ったけれど、実際子育ての経験がなかったり、身近に赤ちゃんがいなければ、仕方のない発言なのかもしれない。でも、そう思うと同時に、いまの日本にとってはそれだけ、触れずにいれば子育てについてほとんど何も知り得ない、子どもが遠い社会なのだな、と思った。「社会全体で子育てをする」なんて言うのは本当に夢のまた夢で、みんな自分の毎日のタスクを完了するだけで精一杯である。

例えば私のある1日はこうだ。

朝の7時頃、子どもと一緒に目を覚ます。夫がまだ家にいる場合は子どものことを見てもらって少しゆっくりする(まだ夜間に授乳をしているので、夜もあまり眠れていないのだ)。いない場合は、私が面倒をみる。子どもの機嫌がよければそのままオムツをかえ、服を着替えさせるし、機嫌が悪ければ水を飲ませたり、何かバナナなどの簡単な食べ物を与えたり、音楽をかけて歌を歌ったりして落ち着かせる。子どもが落ち着いたら、子どもの朝ごはんの準備をし、あげながら、掃除、洗濯を行う。でも子どもはずっとじっとしていないので、一緒に遊んだり、危ないことをしていないか様子を見ながらになるの。何度も中断し、あっと言うまに2時間くらいが経つ。(子どもの機嫌が悪いときは朝起きてから数時間、水分を摂ることはおろか、トイレに行くこともままならない。)

午前9時、ようやく自分の朝ごはん。しかしやっとご飯にありつけた私に対し、眠くなってきた子どもがぐずぐずと絡み始め、私は食事もそこそこに、子どもを抱っこ紐に入れて、ブラブラと部屋の中を歩くことになる。うまくいけばすぐ寝てくれるし、寝ないときはあきらめてまた一緒にしばらく遊んだりする。子どもを寝かせたら中断された家事の続きをやったり、自分の本を読んだりすることも。しかし、我が子は眠りが浅く、残念ながら大体の場合30分くらいで目を覚ます。子どもが起きてきたら、再びオムツを替え、今度は出かける準備をする。水や子どもの昼食やお菓子や服の着替えなどを整え、専用の鞄につめ、自分自身も簡単に化粧をして着替え、抵抗する子どもをなだめながら、上着などを着せる。

11時頃、外出する。外を散歩したり、子育て支援センターのようなところに出かけ、15時頃に帰宅する。うまくいけば帰り道に寝てくれるし、寝なければまた抱っこしたり授乳したりして寝かしつけを行う。長く寝てくれるときは合間に夕食の準備を行ったり、おやつを食べたりする。

17時、子どもが昼寝から起きてくる。子どもと遊んだり(同じ絵本を連続で3回読まされたりする)夕食の支度をしたりして過ごしている間に夫が帰ってくる。

19時、夕食。20時、お風呂。21時、就寝。

明け方までに3度ほど起きるので、夜間も寝かしつけを行う。

ひとつのことを成し遂げるのに、大人の3倍くらい時間がかかるし、まだまだ目が離せないので、ほとんどひとときも気が休まるときはない。寝かしつけても寝ず、結局0時近くに寝たのに、次の日の朝6時に起き出す日もある。便秘や鼻風邪で、一日中機嫌が悪く、もう10キロを超える体を抱っこし続けなければいけない日もある。だから、その日1日が終わると「あぁ今日も無事に終わらせることができた」と自然と思うようになった。何にもないことが何よりの幸せ、だなんて、年に一回は海外旅行に行きたい、と考えていたほんの数年前私には想像すらつかなかった。

「子育て」はそれだけで毎日がハードでデンジャーだ。だからその日一日、子どもの命を守り抜いた、ただそれだけで私は十分に立派な仕事をしたと思っている。というか、そうやって自分を鼓舞して、毎日をやり過ごしているのだ。じつのところ。夢のようにかわいく、しかし信じられないくらい手のかかる赤子に翻弄されながら、いつかこの大変な日々にも終わりがくると信じている。





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