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【超能力捜査】霊視で解決・アメリカ多重人格〇人事件


1988年8月15日。アメリカ・テネシー州メンフィスの娼婦が多いエリア。25歳のシャロン・デニス・ムーアが道に立っていたところ、32口径の拳銃で撃たれる。

この年メンフィスで起こった95件目の殺人である。第一容疑者を見つけるのに時間はかからなかった。2人の目撃者が、ラリー・ウォードという男の名前を挙げたのだ。

目撃者によると、ウォードは生前に被害者と関連のあった男で、被害者と一緒に去り、一人で戻ってきたと言う。ピストルも所有していた。

警察はすぐにウォードを追跡し、犯行現場近くにいたところを捕まえる。彼はその翌日に起訴された。しかし事件は予期せぬ方向へ転換していくことになる。

休暇でメンフィスを訪れていた超能力者のキャロル・ペイトが、この事件に関する不穏なビジョンを見る。この件はまだ公にされていなかった。

キャロルが言う。

「あるビジョンが見えました。直感的な知識と言いましょうか。連続殺人犯がメンフィスで野放しになっているのが分かりました。」

彼女は直ちにこの事件の責任者、ケン・イースト警部と連絡を取る。

イースト警部は言う。

「多くの場合、警察は超能力者の介入を好みませんが、私は常にオープンでした。」

キャロルが言う。

「イースト警部に伝えました。私には連続殺人犯に関するビジョンが見えて、その男が娼婦を狙い、追いかけて銃で撃つのが見えます、と。他の警察署との実績もあるので、もし私が言っていることが重要だと感じられたら直接お会いしたいと言いました。」

イースト警部は、そのオファーに応えない理由がないと判断した。

キャロルは化学的に証明できないものと繋がるためにサイコメトリーを使う。

サイコメトリーとは、人間や物体に触れることにより、それに関する情報を読み取る特殊能力である。触るとラジオのチャンネルに合わせるように情報を感じ取ることができると言う。

キャロルは言う。

「犯罪現場の実際の写真は、被害者と殺人犯両方の主な周波を含みます。それから過去、現在、未来へ行けます。犯罪現場の写真を何枚か見せてもらって状況が見えてきました。最初に分かったのは、逮捕されたのは真犯人じゃないということです。」

ラリー・ウォードが真犯人ではないということがあり得るのか。それとも超能力者の間違いなのか・・。

これに対し、イースト警部は言った。

「目撃者はウォードが人を撃ったことを自慢していたと言っています。だから私達は真犯人だと確信していました。疑いようがなかったんです。」

イースト警部にとっては意味不明なことだった。キャロルが言ってることを裏付ける情報は何もなかったからだ。

彼はキャロルに感謝の気持ちと共に、何かあったら連絡することを伝える。キャロルは、連絡がある気がしていた。彼はキャロルの不思議なビジョンを無視することになる。

6週間後、別の娼婦が殺される。彼女は最初の被害者と同じタイプの銃で撃たれていた。警察は真っ先に、裁判まで保釈されていたラリー・ウォードを疑い、再度捕まえる。

しかしウォードは固いアリバイで警察を驚かせる。彼はその時間、遠く離れたレストランにいたのだ。彼の話の後ろ盾になる目撃者もたくさんいた。

イースト警部は言う。

「訳が分かりませんでした。最初の事件では目撃者の証言ですぐに犯人を逮捕できた。だから彼らのところに戻って再度聞きこみをし、ポリグラフの提案をしました。」

ポリグラフとは、脳波・呼吸・脈拍・発汗などを、同時に測定・記録する装置。うそ発見器としても使われる。

するとは彼らは憤慨した。結局、最初の目撃者二人は嘘をついていたことが判明する。

単純明快だったはずの事件は、突然行き詰まり、最初からやり直しとなる。2件の殺人が起こり、容疑者もいなくなったのである。キャロルが推測した、警察が逮捕したのは真犯人ではないというのは事実だったのだ。

イースト警部はキャロルに連絡し、捜査が失敗に終わったことを告げる。

しかしここでキャロルは恐ろしい予測をした。

「これは連続殺人です。1件や2件では終わりません。それ以上になります。」

今回、イースト警部はキャロルの言葉を信じた。すでに2人を殺している犯人を捕まえることに必死なため、失うものは何もなかった。

イースト警部がキャロルに、メンフィスの犯行現場に来てもらえないかと聞くと、彼女は、「もちろんです、助けになるなら。」と了解する。それでもイースト警部は、キャロルとのミーティングを内密にしていた。

イースト警部は言う。

「捜査官達はこのケースに熱心に取り組んでいます。もし私が超能力者のビジョンを手がかりに捜査をしていることを知ったら彼らは良くは思わないでしょう。」

こうしてキャロルとイースト警部は2件目の殺人現場で落ち合う。28歳のロレア・アン・デベリーは二発撃たれていた。一人目の被害者と同じ銃で撃たれていたことが確認されている。引き金を引いたのは誰なのか。

キャロルは言う。

「私は犯行現場の遺体の写真をお願いしました。遺体発見現場のエネルギーと共に使うのです。そうすることで犯人のエネルギーを感じ取れるようになります。犯人が見えました。アフリカ系アメリカ人です。40代前半くらいでしょうか。あご髭を生やしています。どちらかというと洗練された顔立ち。ひろっとしていて身長は175cmあるかないかくらい。」

イースト警部はキャロルの言う全てのことを書き留める。

「かなりの描写です。目撃者よりもはっきりしています。」

キャロルは犯人の心の中を洞察する。

「この男は多重人格者です。殺人を犯す人格の名前はアル。正反対の二つの性格が見えます。シャイな性格と支配している性格。アルはとても強く暴力的で悪意を持っている。乗っ取ろうとしています。」

キャロルのビジョンに見えるアルは恐ろしかった。

「バーンズは殺人を強要されています。これは連続殺人。1件や2件では終わらない。それ以上になります。彼はまだやり終えていません。」

イースト警部はキャロルの描写を捜査に取り入れることにした。

彼はこう考えていた。

「娼婦たちはあの辺りでたむろしています。彼女たちにもっと情報を与えればそれだけ戻ってくる情報も多くなるでしょう。」

キャロルがアルの新しいビジョンに取り組めるよう、犯行現場の写真を渡し、何か分かったらいつでも連絡してくれるように伝えた。

キャロルは言う。

「エネルギーの中に入っていく時に探していたのは、犯人を捕まえるために何ができるのか、彼の次の行動は何か、次の被害者は誰か、場所は?と言ったことでした。」

2人目の被害者が殺されて1週間後、また別の娼婦の遺体が路地で腐乱した状態で見つかった。30歳のリンダ・トラットだ。

遺体の数が増え、捜査関係者はキャロルの見通しは正しいとにらんだ。連続殺人犯が娼婦を追い回しているのは明らかだった。警察は、この件をうまく扱わなければ、遺体の数がさらに増えるのは間違いないと感じていた。

10日後、また別の銃撃事件が起こる。女装家の22歳のトニー・トンプソンはドレスを着て、人里離れた通りの角で車を降りたが、そこで2発撃たれてしまう。

しかし今回、初めて犯人がしくじることとなる。トニーは重傷を負ったものの、生きていたのだ。そして初の証人となる。

彼は2発の銃弾を受け、一つの弾はまだ体に残ったままだった。病院でその弾を取り除くと、これまでの事件で使われた銃弾とマッチする。

トニーは警察に犯人を詳しく描写する。信じられないことに、それはキャロルが描写していた犯人と一致していた。

イースト警部は言う。

「多くのケースで、スケッチは実際の犯人と一致することはありません。でもキャロルの描写から描かれたスケッチはいくぶん一致していました。」

一方、警察からの現場写真を用いて、キャロルは殺人に関する更なるビジョンを見ていた。しかし犯人の悪の人格であるアルの過去を見るのは難しかった。

キャロルは言う。

「参りました。彼がどこに住んでいるのか見えませんでした。彼が家に帰ると、アルは消えてしまうからです。そしてかろうじて正気を保っていた、シャイで静かな男性になるわけです。」

キャロルと女装家トニーによる犯人の描写は、通りにいる娼婦達によって裏付けられる。彼女達に犯人のスケッチを見せると、見たことがあるという女性が何人かいた。

しかし警察はそれが誰か分からない。が、確かなのは、犯人が大胆になってきたということ。

女装家トニーが撃たれた6日後、37歳のジョイス・トーマスが殺された。同じ銃、同じエリアで。

警察は連続殺人であることをメディアに公表する。連続殺人犯が娼婦と女装家をターゲットにしていることが明るみになると、町はその話題で持ちきりとなる。

キャロルは言う。

「犯人はかなり悪人で暴力的です。信じられないほど暴力的。」

警察は事件一つ一つの捜査を強化する。連続殺人犯が野放しになっているなか、殺人の間隔は短くなっていた。

警察に全く手がかりがないわけではなかった。生き延びて唯一の目撃者となった女装家トニーは、漠然ながらもグレーの小さい車という証言もしており、これは通りにいる娼婦達が言っていたことでもあった。

キャロルにはさらに別のビジョンも見えていた。彼女はイースト警部に電話をする。犯人がまた殺人を起こすと感じていたのだ。

キャロルは言う。

「未来を見ました。次の被害者は同じエリアの石でできた協会近くで出ます。これを防げる気はしませんでした。でも犯人は捕まる。石の協会がキーとなって。」

ダウンタウンに石の教会はいくつもあったが、警察はその情報をパトロールや副部隊と共有し完全に見張っていた。情報武装をし、そのエリアのパトロールを強化していたにもかかわらず、その翌日に犯人は次の犯行を決行する。

また別の女装家、30歳のマーク・ルイスが撃たれたのだ。クレイボーン協会というメンフィスで一番大きな石の教会の近くで。まさにキャロルがビジョンで見たように。

幸い、彼は傷を負ったが生き延びた。その翌日、ルイスはメディアのインタビューに応じる。

「発砲しか見えなかった。それで、俺を撃ったな、と言ったら、犯人は、黙れと言いました。それで犯人に手を伸ばして掴もうとしました。犯人を押したのを覚えています。それで犯人が後退りをして2発目を首に撃たれたんです。」

ここでやっと警察に大きなチャンスが到来。警察は犯行現場を去ったグレーの小さい車を特定する。犯行現場に向かう途中でその車を目撃した捜査官が、ナンバーを書き留めたのだ。車の所有者はジェームズ・バーンズという配達業の44歳の男。

警察はバーンズの家に行き妻ダイアンと話す。妻によるとバーンズがその車を運転し、夜間外出することがあると言う。まだ欲しいだけの証拠はなかったため、隠しカメラを設置することにする。

バーンズは家を出た後、娼婦の立つエリアに行き娼婦を車に乗せるだろう。そこで警察が彼の鼻を明かす計画だ。武器を持っていればこっちのもの。なくても罪を認めさせるための話はできる。

その翌日、ジェームズ・バーンズは犯行エリアに戻ってくる。警察は近くで後を追っていた。

警察はその時点で彼を止める。次の被害者を出すわけにはいかないからだ。バーンズは逃げようとするが、警察はすぐ後ろにいた。そしてついにジェームズ・バーンズが逮捕される。

昼間に犯行現場に戻ると銃が見つかる。32口径だった。一連の事件に使われたものと同じ銃である。

ジェームズ・バーンズは拘留されたものの疑問は残る。動機は何なのか。キャロルがビジョンで見る多重人格は当たっているのか。

取り調べの段階で、バーンズは自分に手錠をしてくれるように頼む。どうしたのかと聞くと、彼は言った。

「俺は奴じゃない。俺の名前はアルだ。」

キャロルの言っていたことは本当だった。アルが背後にいたのだ。そしてバーンズに自身の妻と子供達を殺させたがっていた。そのことでアルとバーンズはよく口論した。その度に娼婦を殺しに行き、アルを満足させていたのだ。」

キャロルがアルを知る由はなかった。犯人の頭の中に住む悪の人格である。

イースト警部は言う。

「アルという名前に驚きました。取調べの中でバーンズが狂ったような言動を見せたんです。どうか僕に手錠をしてくれ、彼があなたを傷つけないようにとか、自分を傷つけないようにとか。」

キャロルは言う。

「バーンズの存在はあったのですが、ほぼ感じることができませんでした。彼から感じるのは起こっていることに対して気が乗らないことだけ。でもアルは強烈でした。」

キャロルは更なる情報を得ていた。バーンズの逮捕から2週間後、キャロルはイースト警部に電話をする。

キャロルが言う。

「犯人が別の被害者の服を脱がせているのが見えました。服はその場にまだあります。小さな教会と古い橋の間です。」

イースト警部としてはもはやその情報に頼らない理由はない。捜査官を派遣した。

捜査の結果、キャロルが説明した通りの場所で血のついた服が見つかる。そしてそれはリンダ・トラットのものだと鑑定された。腐乱した状態で見つかった被害者である。

イースト警部は言う。

「驚きました。見つかったものは事件につながる新たな証拠ですから。」

ただ、リンダ・トラットを撃った銃弾は見つかることはなかった。そのため、この件においてはバーンズを殺人罪に問うことはできない。

バーンズが罪に問われたのは、シャロン・デニス・ムーア、ロレア・アン・デベリー、ジョイス・トーマスの3人の殺人。

弁護士のジョン・キャンベルは言う。

「多重人格が必ずしも狂っているとは限りません。コントロールしている人格が物事の善悪がつく場合は適役です。」

ジェームズ・バーンズは三件の殺人事件で有罪となり、刑務所内の精神病院に送られた。

キャロルの見解は詳細までほぼ全て当たっていた。

警察が間違った犯人を逮捕していること、犯人の正確な描写、多重人格者であること、コントロールしている人格の名前、犯人が石の境界の近くで逮捕されることも。

イースト警部は驚きを隠せない。

「情報を知るはずの人から毎回手がかりを聞き、実際に毎回それが当たっていたら、驚かないわけにはいきません。」

キャロルはメンフィスを何ヶ月間にも渡って震撼させた殺人事件を解決に導いた。

「犯人に捕まって欲しかった。それが重要でした。彼を止めなければいけませんでした。」

殺人の動機を尋ねられたバーンズは、寒くてしびれるような「感情」に襲われ、それは「害虫」と考えた人々を殺害することでしか和らげられなかったと主張した。

拘留中および裁判中、彼は頭を左右に振ったり、居眠り後に目を覚まして叫び、狂って癇癪を起こしたりと、ますます奇妙な行動を示した。

バーンズは、彼の少なくとも5人の異なる人格のうちの1人が犯罪を犯したと主張。多重人格障害を専門とする精神科医は、彼が実際にこの病気に苦しんでいたと結論付け、12の異なる人格を特定した。

彼はアルコール依存症の両親から定期的に虐待を受けており、 人生の早い時期から精神疾患の兆候を示し始め、さまざまな施設でうつ病、幻覚、薬物乱用の治療を受けた。これらの治療の合間に、バーンズはさまざまな軽犯罪を犯した。最も大きな有罪判決は銀行強盗。

当局はまた、別の娼婦三人の殺害についても、バーンズが犯行に及んでいる可能性があるかどうか捜査していた。 これらの事件では追加の告発は行われておらず、事件が解決されたかどうか、またバーンズが事件の容疑者として残っているかどうかは不明。

司法取引の一環として死刑は取り下げられ、罪状は第二級殺人に減刑。代わりに16年の服役後に仮釈放の可能性を伴う懲役40年の判決が下された。彼の刑期は2016年に満了しており、おそらく彼は拘留から解放され、生きていれば現在は自由の身となっている。










車乗せて人里離れた場所まで運転し、そこで32口径の自動拳銃で複数回撃つというものだった

殺人犯は女装者を拾ったとき、彼らが女性であると信じていたようだという。




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