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【小説】ヴァルキーザ(ルビ付き版)

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小説『ヴァルキーザ』本文にルビを振った版のマガジンです。(本文の内容を少し改変しています)
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2021年12月の記事一覧

小説『ヴァルキーザ』4章(3)

小説『ヴァルキーザ』4章(3)

すぐに亭主は、失礼をした、と詫びた。そして彼は自分の名前を名乗り、冒険者たちを温かく迎え入れた。亭主の名はジェイクという。グラファーンは二人分の宿泊料をジェイクに支払った。

ジェイクはグラファーンたちに、自分の二人の子供、メイとシンを紹介した。母親は早逝していない。長女のメイは14才で、勝ち気だが、優しい性格の娘で、グラファーンたちをテーブルに案内し、給仕をしてくれた。メイの弟のシンは、まだ8才

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小説『ヴァルキーザ』4章(2)

小説『ヴァルキーザ』4章(2)

カルマンタの町が見えてきた。グラファーンとイオリィは、町の中へ入ってゆく。グラファーンはイオリィに金を融通し、町の入口付近の店で一応充分な旅装を整えさせた。そして二人は町の様子を調べるために中を歩いてゆく。

街頭には、色んな場所に貼り紙がしてあった。お尋ね者の手配書のようだ。山賊の人相を描いた似顔絵と、名前、そして 懸賞金の額と、ほかに数行の文が書かれている。名前は「ゴルク」とある。

グラファ

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小説『ヴァルキーザ』4章(1)

小説『ヴァルキーザ』4章(1)

4.カルマンタ
グラファーンはそれから何日間か旅をした。彼は、荒れ野をつきぬけるように延びる道を歩いてゆく。突然、目の前に一匹の狼が現れた。

ウルフは、グラファーンが背負い袋に入れ持っている食料を狙っているようだ。獣はグルグルと唸りながら近寄ってくる。グラファーンはやむなく戦うことにした。初めての実戦に身震いするような気持ちだった。

狼が襲いかかってきた。グラファーンは攻撃を躱し、剣を鞘から抜

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