歩く
心の整理がついできたので、前に進み始めている。
前に歩き出したという方が適切かもしれない。
今までは後ろ向きで歩いていたのではないかとまで思う。
わたしはずっと、所々に置いてきた『残ったままの想い』を振り返っては「あそこにあれを置いてきてしまった」と後ろばかり見ていた。
残っていた想いが多すぎていつのまにか動けなくなってしまったのだと思う。気がついたときには前に進めなくなってしまった。
そのうち、ここにいつまでも立ち尽くすわけにもいかないことに気がついた。前に進めないのなら、来た道を戻ってみよう。置いてきた想いをちゃんと消化してあげよう。
置いてきた想いは貝のようにしっかりと閉じられていた。ゆっくりゆっくりと開いて消化をさせていく。たくさんの貝をひとつひとつ。
ひとつひとつ開いていくうちに、そこに想いを閉じ込めたのも固く閉じ続けていたのも、誰でもないわたし自身だったことがわかった。
外的要因がなかったとは言い切らないが、ともかく固く閉じることを決めたのはわたしだった。
それに気づいた時、いつのまにかほとんどの貝は開いていた。
ふたたび元の場所まで戻ったわたしは、前に歩き出す元気を取り戻したのかもしれない。
もう後ろを振り向く必要もないし、後ろ向きで歩く必要もない。
前に向かって歩き出すということは、手に届かないような先を見ることでもなく、手を伸ばしたら触れられるような目の前のものに向かって淡々と歩くようなもののように感じる。
今わたしにできることをやるだけ。
後ろを振り向く必要がなくなったとき、何故か先への不安もほとんどなくなった。
だって前に向かって歩くしかないから。
今わたしにできることは、今ここを歩くこと。
本当はきっととても単純なことだ。
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