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【単発】日本神話の家系図をまとめてみた。

日本神話における神々の親子関係は非常に複雑である。
また、神々はそれぞれいくつかの別名を持つため、余計に分かりにくい。

そのため、今回はメインの血統に絞ってシンプルに纏めてみることにした。

イザナギから神武天皇までの系譜

これが記紀(『古事記』と『日本書紀』)の記述をざっくり整理したものだ。


更に、神話で区分けしたもの

イザナギからアマテラス、ツクヨミ、スサノオの三貴子が生まれる。
アマテラスとスサノオの誓約という儀式によってオシホミミが誕生。

高天原を追放されたスサノオはヤマタノオロチを倒す。
クシナダヒメを娶り、オオクニヌシ、コトシロヌシと出雲の系譜が続く。

国譲りが行われると、オシホミミの子のニニギの日向への天孫降臨が実施される。
ニニギはサクヤヒメと結婚し、寿命の概念が生まれる。

山幸彦はワタツミの宮を訪れ、海幸彦を懲らしめる。
そしてフキアエズから神武天皇へと日向の系譜が続く。

神武東征を成し遂げた神武天皇は、コトシロヌシの娘であるイスズヒメを皇后とする。
これにより、イザナギから始まった系譜が初代天皇・皇后で再び一つに統合されることとなった。


この系譜を見て感じたことは、「あまりにも出来過ぎている」ということだった。
初代天皇と初代皇后の系譜が1つの祖先に繋がるのは明らかに作為的だろう。

このような状況は、アマテラスとスサノオに血縁関係があること、2人が「誓約」と呼ばれる謎の儀式をしていることに起因する。
したがって、本来の系譜においてはアマテラスとスサノオに関連性はなく、記紀編纂時に系譜が創作されたと推測した。


また、この系譜にはもう1つ気になる点がある。
コトシロヌシからイスズヒメまでの世代的距離が空きすぎていることだ。
コトシロヌシからイスズヒメまでの間に、神武天皇側の系譜は山幸彦とフキアエズの2世代を消化している。
これは非常に不自然である。

私はこの疑問への解答として、山幸彦とフキアエズの2世代も本来の系譜には存在せず、記紀編纂時に創作されたと推測した。

根拠といえるかは分からないが、状況証拠をいくつか提示する。

①フキアエズの叔母・甥婚
系譜を見てもらえれば分かるが、山幸彦とフキアエズの配偶者は姉妹だ。
『古事記』を初めて読んで驚いたのを覚えているが、フキアエズの世代の登場人物はフキアエズとタマヨリヒメの2人だけである。
叔母・甥婚は系譜の引き延ばしが最もやりやすい方法であるから、フキアエズの世代が創作された状況証拠足り得ると思う。


②塩土老翁(しおつちのおじ)
山幸彦のエピソードと神武天皇のエピソードの両方に塩土老翁という人物が登場する。山幸彦が神武天皇をモチーフとして創作されたことを意味していると推測する。


③山幸彦のエピソードの異質性
系譜を見てもらえれば分かるが、山幸彦と海幸彦は例外的に漢字で表している(神武天皇は除く)。
これは何故かというと、『古事記』と『日本書紀』で本名に混乱が見られるためである。
山幸彦、海幸彦とは彼らのニックネームである。

そして、そのエピソードは他の神話と比較して明らかに不自然なのだ。
詳しくはいずれ「古事記全文解説シリーズ」にて扱いたいと思うが、率直に言って建国神話にふさわしくないのである。

いわゆる海幸山幸神話と呼ばれるものなのだが、私が読んだ感覚を述べると、「メインストーリーとは完全に関係ない物語」である。
海幸山幸神話というものが別であって、神武天皇の先祖の系譜を伸ばすために取ってつけたというのが目に見えて分かるレベルなのだ。


このような理由から、山幸彦とフキアエズの世代の系譜は記紀編纂時に創作されたものと仮定する。
まとめると、次のようになる。

ニニギの子が一気に神武天皇となると仮定する。
山幸彦は神武天皇が、ワタツミはコトシロヌシがモデルだと推測する。

このように、記紀編纂時に付け加えられたと思われる箇所を取り除いた場合、下のような系譜が完成する。

驚くほどシンプルで明快な系譜となった。

神武天皇の父親はニニギ、祖先にはアマテラスとタカミムスビがいる。
皇后イスズヒメの父親はコトシロヌシ、祖先にはスサノオがいる。

綺麗な4世代の系譜が出来上がった上に、曖昧だった天津神と国津神の理解も格段にしやすくなった。
高天原出身が天津神、地上出身が国津神と考えていたが、もっと単純であったのだ。
初代天皇の系譜が天津神、初代皇后の系譜が国津神なのだ。


今回は以上になります。最後まで読んでもらえて嬉しいです!
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