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カップラーメンの詩

その赤と白のコントラストに目を奪われた。手にした瞬間に、あの絶頂感を求めてしまう。お湯を注いだ3分間の気分はさながら、初デートの待ち合わせのようだ。香ばしい匂いが僕を侵略してくる。口が、胃が、脳が、一つの共通の意思を持つ。この瞬間が最も楽しみな時間かもしれない。期待感が膨れ上がり、破裂しそうになる。満たしたい。その気持ちに支配されることに悦ぶ自分が確かにいた。さぁ、いよいよ対面の時だ。蓋を開ければ、照れ隠しの湯気が舞い上がり、行儀良く並んだ可憐な表情を崩されるのを、今か今かと待ち侘びている。僕は前のめりになりながら、箸を乱暴に突き刺し、優しく丁寧に掬い上げ、膨らませた頬から冷たい空気を馴染ませるの。さぁ至福の時だ。香りと共に麺を啜り上げ、その瞬間に味覚が支配された。濃厚な旨味。スパイスの刺激。心地良く喉を滑り落ちていく感覚。あぁ、僕の全てが入れ替わるんだ。あの頃の僕を思い出すんだ。

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