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小説

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私の書いた小説をまとめています。
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#小説

【警鐘を打ち鳴らせ】 第十一章「魂」

第十一章「魂」  ――此処は、何処なのだろうか……。頭の中に霞が懸かったようで、自分の居…

有未
6日前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第十章【惜別】

第十章【惜別】  薄明かりが明かり取りの窓から入り込み、私を照らしていた。朝が来たのだ。…

有未
6日前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第九章「縁」

第九章「縁」  ――その後は、筆者の今までの人生における思い出が、つらつらと綴られていた…

有未
6日前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第八章「産道を経て、揺り籠に生まれ落ちる」

第八章「産道を経て、揺り籠に生まれ落ちる」  ――産道、というものを知っているだろうか。…

有未
6日前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第七章「消失」

第七章「消失」  朽葉の貸し本屋での勤めの二日目。昨日同様、昼少し前に私はその表戸を開け…

有未
6日前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第六章「再会」

第六章「再会」  結論から言えば、予想の通りだった。灰色の彼は朽葉の貸し本屋に、私を働か…

有未
6日前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第五章「対峙」

第五章「対峙」  晴天。三日の雨を終えた空は高く遠く晴れ渡った。早朝、私はその色と空気を目に収めてから軽く眠りを取り、今に至る。灰色の彼はいつもの定位置、板間の右奥の片隅で未だその両眼を閉じ、微動だにしない。起きているのか眠っているのか良く分からなかった。  私はおもむろに家屋内を見渡す。さして多くの時間を此処で過ごしたわけでは無いのに、何処か懐かしさを覚えるのは何故だろう。或いは元の私の家もこのような造りなのだろうか。  そんなことを考えながら、私は座布団を引き寄せ座

【警鐘を打ち鳴らせ】 第四章「樹形図」

第四章「樹形図」  今日も雨が止まない。これで三日目だ。昨夜もずっと降り続いたようで、そ…

有未
6日前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第三章「遭遇、降雨」

第三章「遭遇、降雨」  此処に来て確か今日は五日目になる。しかし、そもそも私は此処に「来…

有未
6日前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第二章「完全トーティエント数」

第二章「完全トーティエント数」  私に分かることは少ない。町がある、菓子商店がある、奇妙…

有未
6日前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第一章「振り返れ」

"あらすじ"  町の中心にある大きな菓子商店で、男は自らの記憶を語り始める。男の傍には、い…

有未
6日前
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【掌編小説】「遠くの空の下で」

  ――君に伝えたメロディーが、今も何処かで響いていますように。  話し相手を探していた…

有未
1か月前
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【掌編小説】寄り添う花

 土地を相続したの、これでお金の心配をしないで小説を書くことに集中出来るわ。そう言って、…

有未
3か月前
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小説のかけら 5【ただ月の光が見下ろしていた】

 人の話を真面目に聞く気はあるのかと、ついに彼が私のイヤホンをそれでも気を遣ったのか片方だけ引き抜いて言った。私は片方だけになったイヤホンから壊れたように繰り返される「I only want to be with you」を聴きながら彼の怒った顔を見上げていた。まるで嘘のように禍々しいストロベリー・ムーンの光がレースのカーテンの隙間から差して薄暗い室内を照らした。  しかしながら、お互いの顔を確認するには充分な光だったのだろう、何を笑っている、と彼が私に尋ねるではなく淡々と