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小説

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記事一覧

【掌編小説】雨降りの日に

 さあ泣けと君が映画を押し付けて来る。僕は「そういうことじゃない」とそれを押し返す。君は…

有未
11日前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第十一章「魂」

第十一章「魂」  ――此処は、何処なのだろうか……。頭の中に霞が懸かったようで、自分の居…

有未
1か月前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第十章【惜別】

第十章【惜別】  薄明かりが明かり取りの窓から入り込み、私を照らしていた。朝が来たのだ。…

有未
1か月前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第九章「縁」

第九章「縁」  ――その後は、筆者の今までの人生における思い出が、つらつらと綴られていた…

有未
1か月前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第八章「産道を経て、揺り籠に生まれ落ちる」

第八章「産道を経て、揺り籠に生まれ落ちる」  ――産道、というものを知っているだろうか。…

有未
1か月前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第七章「消失」

第七章「消失」  朽葉の貸し本屋での勤めの二日目。昨日同様、昼少し前に私はその表戸を開け…

有未
1か月前

【警鐘を打ち鳴らせ】 第六章「再会」

第六章「再会」  結論から言えば、予想の通りだった。灰色の彼は朽葉の貸し本屋に、私を働かせる話をしに来ていたらしい。朽葉は既に了承済みで、早速、私はその翌日から仕事をすることになった。とは言え、朽葉の言うことには「大した仕事は無いよ」ということだった。ちゃんと説明しろ、と灰色の彼が促すと、考え考えといった様子で朽葉は幾つかの仕事内容を私に告げた。  貸し本屋と言うからには本を借りに来る客の相手が主かと考えていたのだが、朽葉曰く「あまりお客さんは来ない」らしい。その中で私が

【警鐘を打ち鳴らせ】 第五章「対峙」

第五章「対峙」  晴天。三日の雨を終えた空は高く遠く晴れ渡った。早朝、私はその色と空気を…

有未
1か月前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第四章「樹形図」

第四章「樹形図」  今日も雨が止まない。これで三日目だ。昨夜もずっと降り続いたようで、そ…

有未
1か月前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第三章「遭遇、降雨」

第三章「遭遇、降雨」  此処に来て確か今日は五日目になる。しかし、そもそも私は此処に「来…

有未
1か月前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第二章「完全トーティエント数」

第二章「完全トーティエント数」  私に分かることは少ない。町がある、菓子商店がある、奇妙…

有未
1か月前
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【警鐘を打ち鳴らせ】 第一章「振り返れ」

"あらすじ"  町の中心にある大きな菓子商店で、男は自らの記憶を語り始める。男の傍には、い…

有未
1か月前
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【掌編小説】「遠くの空の下で」

  ――君に伝えたメロディーが、今も何処かで響いていますように。  話し相手を探していた…

有未
2か月前
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【掌編小説】寄り添う花

 土地を相続したの、これでお金の心配をしないで小説を書くことに集中出来るわ。そう言って、俺の彼女はにこっと笑った。  ずっと経理事務として働いて来た彼女は、良く俺に言っていた。辻褄合わせの人生だ、と。まるで貸借対照表を作っている時と同じで、帳尻を合わせているだけの自分が嫌になる、と。正社員として勤めていた彼女の休日は土日祝日で、俺は彼女を好きになってからすぐの時は良く遊びに誘ったものだった。しかし、会えない週も多くあった。今週はやることがあるの、と短いメッセージが彼女から来