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うつ病は、「太る」

多くの人は、「えっ、そんな憂鬱になって寝込むような病気なら、痩せて、やつれるんじゃないの」と、思っている。
確かに、私は、うつ病になった当初、痩せに痩せた。
ガリガリだったと言っていい。
そんな私が、ある時から、「太る」ようになった。
どのくらいかって?

一番痩せていた時から、プラス20キロだ。

私は拒食症になったこともあるのだけれど…その話はまあ、別途違う記事で書こうと思う。

うつ病が太るなんて外に出て運動をしてないからだ!
引きこもってだらけているからだ!

そんなことを思った人がいたら、殴る。ええ、殴るさ。
しかしそう思っている人のなんて多いことよ…。

一時期、私はモデルと被写体の仕事をしていた。(アイコン見てみて、ね、なかなか愛らしいでしょ。ごめん、何でもない。)

拒食症から抜け出た私は、38~40キロをキープしていた。それ以上は、どんなに食べても太らなかった。
そして、拒食症になった時の、異常なまでの体重への固執から、再発を防止するために、「あえて」体重計に普段から乗らないことを徹底していた。
「よく食べるよねえ」とは言われてきたけれど、もう私は体重という魔物から逃げられたのだ、と高を括っていた。

うつを発症した。

何も食べられなくなった。とにかく、食欲はないし、固形物を食べると吐いてしまう。(ここで、拒食だったときの経験が役立った…というのもおかしいけれど、吐くことに慣れていた)
気づけば私の体重は35キロ、いや、酷い時は34キロまで落ちた。
その時、叔母の家に居候していたのだけれど、困り果てた叔母が、レーズンバターを持ってきて、
「これ十個食べたら1キロ太る!」
とまで言うようになった。
その後、段々と固形物を食べられるようになり、私の体重は38キロまで回復した。少し、うつが寛解しかけていた。

ジプレキサと、セロクエル(クエチアピン)という、メンヘラが恐れる悪魔のクスリがある。鎮静作用があり、安定剤として今も私はセロクエルを毎日4錠は飲んでいる。効果があるから、勿論飲まないという選択肢はない。医師に処方されているのだから…。
この時、私はまだ、この悪魔のクスリの副作用を知らなかった。

お腹が、空いて空いて仕方がない。

通常の空腹感ではない。戦時中の子供か、飢饉の時の百姓か、というレベルのとてつもない空腹感が私を襲った。

なに、これ…

とにかく、私は食べた。食べざるにはいられなかった。夜中に冷蔵庫をあさり、食べる。食べる。食べる。
クッキーの缶一つを、貪るように空にする。
ホールケーキを一人で食べる。
拒食だった頃の私が見たら卒倒するであろう量の食べ物を、食べに食べた。
それでも私は高を括っていた。私は食べても太らない体質なのだと…。

ある日、被写体の仕事を終えた私に、言いづらそうに、マネージャーが切り出した。

「沈むちゃん、あのさ、」
「はい?」
「もしかして、あの、妊娠してる…?」

そこで、私は、妊婦に見えるほど自分が太ったことを知った。

モデルの仕事は鬱が酷くなり辞めたが…、恐る恐る、体重計に乗ってみると、デジタルの画面に、

46

という数字が表示された。

信じられなかった。何度乗っても46だ。これはまずい、これはまずい…。

それでも、あの空腹はやってくる。せめてもの抵抗に、お腹が空いたらヨーグルト!無糖!と決めて、なんとか空腹を誤魔化した。

ああ…悪魔のクスリよ…
体重計に乗ると、

48

と表示された。

もう、この時点でキープしていた体重からは10キロ太ったことになる。眩暈がした。これは、ダイエットをするしかないと…。

幸い、空腹感は徐々に収まり始めていた。クスリに慣れてきたからだろう。
しかし、私は悪魔のクスリ、セロクエルの本気を知ることになる…。

基礎代謝が、落ちるのだ。

なので、普通の量の食事でも、太る。
ついに私は、50キロの壁を越えた。
「40キロ以上になったら死んでやる!」と思っていた拒食の頃の私が見たら、泡を吹いて失神するだろう。
暴食はやめたのに、太り続けるのだ。

気に入っていた服がどんどん着られなくなっていった。
スカートを履くときは思い切りお腹をへこませないと入らなかった。
もうモデルだった頃の見る影もない…

太り続けた私は、54キロになった。
冒頭で34キロになったと書いたが、20キロ太ったことになる。

もう、自分が恥ずかしくて恥ずかしくて、発狂寸前。

久しぶりに友人に会うと、言葉を濁さない人からは率直にえ!?どうしたの!?と言われ、オブラートに包むのがうまい友人からは、

「前は天使っぽかったけど、女神っぽくなったね」

と、言われた。
分かっている。西洋絵画のふっくらとした女性…。

必死にダイエットをして、ジョギング、食事制限等をして、今は46キロ。
50の壁からはどうにか戻ってきた。
モデル体型ではないものの、なんとか普通体型だ。

今はダイエットよりも療養を優先しているため、ダイエットはしていないが、これ以上太るのは避けたい次第である。

うつ病患者が太るのは運動不足だと思っている人。

これを読んでもまだそう思うなら、ビンタ。

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