新時代の”肉”食文化を暮らしに定着させるには?
最近、人工肉が話題です。日経新聞でもこのような特集が組まれていました。
ただ個人的にはこうした動きになんとなくモヤモヤした気持ちを抱えていました。
何にモヤモヤしていたのかがうまく言語化できなかったのですが、自分の気持ちを分解した結果、「肉食は環境に悪い」、「このまま肉食を続けることはよくない」というように書かれていることが多いことにモヤモヤしていたと気づきました。
結論から言うと、人工肉を今のお肉にとって代わるもとではなく、「私たちの食や生活をより豊かにするもの」としてとらえると、みんなが幸せになると思います。
この結論に至るまでに、「そもそも人工肉ってなんだっけ?」というところから理解を始めました。
人工肉の定義とは?
人工肉という呼び方もあれば、「フェイクミート」、「代替肉」、「植物肉」などと言われたりします。「培養肉」というのもありますね。
正式な定義はまだ定まっていないようですが、一般的には「食肉代替品(植物肉含む)」、「培養肉」の大きく2つに整理されることが多いようです。
人工肉(Artificial meat)とは?
・食肉代替品(Meat analogue)
ビヨンド・ミートなどは植物を材料とする
・培養肉(Cultured meat)
動物から組織または細胞を取り出し、培養して得られる人工的な食肉
(Wikipediaから引用)
食肉代替品の代表例が、大豆や小麦などの植物性たんぱく質を肉状に加工してつくられる植物肉(plant-based meat)です。
Googleトレンドを見ると、「植物肉」で検索されることが多いようですね。
植物肉の名を一躍有名にしたのが、アメリカでブームを起こした
の2社です。
ビヨンド・ミートは植物肉を専門に扱っている企業として初めて、NASDAQ上場を2019年5月に果たしています。
FY2018は27,989千ドルの営業損失ですが、FY2019の3Q時点では438千ドルの営業利益を出しています。このまま黒字で着地するのか本決算に注目です。
人工肉が注目を集める背景
PESTをつかって整理してみます。
■Politics(政治)
独立行政法人農畜産業振興機構の資料によると、国連食糧農業機関(FAO)が2006年に発行した「Livestock’s Long Shadow」という報告書の中に、
温室効果ガス排出量の18%近くが畜産関連活動に起因する
との記載があり、これがキッカケで「畜産は温暖化に大きく影響する」という認識が広まっていったようです。
ビヨンド・ミートの創業者は元は燃料電池企業で働いていましたが、ある時、「環境問題を解決するにはインパクト燃料電池ではなく、肉の生産に取り組まないといけない」と気づき、ビヨンドミートを創業したそうです。なんらかの形でこの報告書の影響を受けた可能性が高いですね。
■Economy(経済)
昨今、ESGやSDGsを意識した経営をする企業が増えてきています。
昨年参加した世界経営者会議でも、ほとんどの経営者が「ESGやSDGsを意識した経営を行う」との話をされていました。
例えば日清食品安藤CEOは、中長期戦略として「EARTH FOOD CHALLENG」を掲げ、カップヌードルをすべての面でサステナブルな形態に進化させるという話をされていました。
これから多くの企業がサステナブルを意識した商品やサービスの開発に力を入れていくと思われます。
植物肉に関しては、2023年に市場規模が約7000億に達すると見込まれています。
■Society(社会)
日清食品の安藤CEOも、「最近はエシカルな消費者が増えてきた」と語られていましたが、欧米の若者を中心に環境問題への意識が高まっています。
その結果、ヴィーガン(絶対菜食主義者)やベジタリアン(菜食主義者)、食生活から意識的に肉の摂取量を減らすフレキシタリアンと呼ばれる人たちも増えてきています。
また、高齢化が進む中で健康意識の高まりから、お肉と比べて低カロリーでヘルシーな植物肉を好んで食べる人も増えてきています。
■Technology(技術)
いくら環境や健康によくても、食べ物である以上、美味しくないと多くの人に食べてもらうことができません。
テクノロジーの進歩により、食べ物の成分がより詳細に分析できるようになり、熱や圧力によってたんぱく質の繊維構造を変化させて、限りなく本物の肉に近い味や食感を再現できるようになったことが、昨今の植物肉の盛り上がりの背景にあります。
また、培養技術を用いて牛の細胞から培養肉を製造する研究も進んでいます。日本では2019年に日清食品が培養肉の製造に成功したと発表しています。
植物肉を実際に食べてみた
Nサロンのイベントで植物肉を実際に食べてみました。
食べてみたのは、イスラエルのスタートアップ、RILBITEの植物肉です。
結論から言うと、「”肉”ではない」というのが私の感想です。
RILBITEに関しては、肉らしさではなく、「添加物なしでヘルシー」、「食べごたえがある」を売りにしていくのがいいのではないかと思いました。
春巻きにすると見た目も食感も味もひき肉と見分けがつかない
スープにすると肉感はほとんど感じなくなる
RILBITEの4P分析
■Product
大豆をベースとした6種の天然素材からできており、野菜を多く使っているのが特徴です。「混ぜる」工程に独自の技術をもっており、添加物なしで製造しているようです。
野菜からできているので、当然、低カロリー・低脂質です。
「添加物なし」という点は、本物の肉に近づけるために添加物を加えているビヨンド・ミートとの大きな違いですね。
ただ、そのせいか、パティはややボソボソしており、肉汁はありません。
■Price
試食会にRILBITEを提供していただいた三井物産の方によると、日本での販売価格、時期はまだ決まっていないものの、1パティ(120g)あたり120円〜150円くらいと、本物の肉のパティと同程度の価格での販売を想定しておられるそうです。
残念ながら、イスラエルでの具体的な販売価格は見つけられませんでした。
■Place
Youtubeの動画によると、イスラエルでは4万食のバーガーを提供しており、学校では、毎週月曜日に100万人の子どもたちがRILBITEを食べているようです。
日本では、最初はレストランなどでの提供を予定されているそうです。
■Promotion
ビヨンド・ミートやインポッシブル・フーズと比べると、HPやSNS等、インターネット上でのプロモーションはまだまだこれからのようです。
プロモーション動画が公開されていますが、こちらはRILBITEを使ったバーガーを食べて「美味しい!」と言う人が次々と出てくるだけであり、こちらもまだまだこれからのようですね。
植物肉を日本で普及させるには?
実際に食べたことがあるのがRILBITEだけなので、「RILBITEを日本で普及させるには?」という観点で考えました。
自分がCMOだったら、「ヘルシーで高たんぱく」、「食べごたえがあり腹持ちがする」点を武器とした販売戦略を考えると思います。
たとえば、スポーツ選手やフィットネス愛好家、ダイエットしたい人向けに、「新しい食事の楽しみ」としての提案を考えます。
「筋トレの後はたんぱく質」は常識ですが、筋肉の合成は筋トレ後も48時間継続するため、効率的に筋肉量を増やすには、筋トレ直後だけでなく、その後も継続的にたんぱく質を摂取する必要があります。
大豆由来のたんぱく質には「腹持ちがよい」、「吸収がゆっくり」という特徴があるため、この「継続的にたんぱく質を摂取する」という点にフォーカスし、「無添加・ヘルシー」、かつ「食べごたえがある」という特徴を活かした食事メニューの提案などを行っていくことで、まずは認知を拡大していくのがよいのではと思いました。
人口肉をどう取り入れていくのがよいか?
人工肉や植物肉について色々調べていった結果、
「環境に良い、悪いという側面だけで畜産や人口肉をとらえたニュースが多いこと」
に、自分のモヤモヤポイントがあることがわかりました。
「食文化」というように、食べ物や食事には長年培われてきた文化や価値観が根付いています。
それらを大切にする心も大事に、そして、畜産業が環境に与えている影響にも目を向け、広い視点で「どうすればよりよい社会にしていくことができるのか?」ということを考えていく必要があると思います。
人工肉についても、「今の暮らしの中にどう組み込んでいくか」、「新しい食材をどう楽しむか」という観点でとらえていきたいと思います。
植物肉の「味や調理方法が気になる!」という方はこちらのnoteをどうぞ。
ごちそうさまでした。
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