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赤ちゃん茶道と、日本人価値仮説

 エン様(赤ちゃんのあだ名)、茶道デビューしました。
 私の趣味が茶道で、まだ動かないねんねの時期にはお茶碗を触らせていたりしたのだけど、動くようになり、物を投げるようになり、危なっかしくてエン様とお茶を楽しむのは難しくなってきた。お茶は大人二人の楽しみにしていた。

 ところが、保育園の食材リストに入っていたのだ。「あんこ」が。
 これは和菓子デビューするしかない。とっておきの美味しいあんこを食べてもらおう。

 そこで私は赤坂塩野さんを訪れた。関東で最も洗練された上生菓子を作るお店。最初に触れるならシンプルなきんとんがいいかなと思い、「彩のきんとん」にした。青と紫のきんとんに、露のような錦玉羹が乗っている。紫陽花や梅雨の情景を表したものだろう。(後から、初めて食べるには色味が悪いものを選んでしまったかなとも思った……。青は食欲をそそる色ではない)

彩のきんとん
出所: 赤坂塩野

 抹茶はカフェイン含有量が多いので赤ちゃんにはまだ飲ませられない。緑茶をうすーく淹れることにした。普段エン様には水ばかり飲ませており、保育園で麦茶を飲んでいるが、緑茶は初めて。どんな反応をするだろうか。

 茶碗は、エン様が生まれてから知り合いの作家さんに世界で1つしかないエン様のためのお茶碗を作ってもらった。今までも触らせたことはあったけど、このお茶碗でお茶を飲むのは初めて。

エン様の名前の由来からデザインしていただいた

 

 保育園から帰ってきて、夕飯を食べた後、お菓子とお茶を出してみた。

おててが! おててがかわいすぎるんだがー!!
スプーンですくってあげてみた。まんざらでもない感じ。
エン様はお茶碗を自分で取って口に運んだ。天才やな。めっちゃこぼしてるけど。
お茶碗を噛んでみた。
その後、お菓子を手づかみ食べしていた。粘土状態。笑 むにゅむにゅする感触がいいね。

 これで保育園食材リストの「あんこ」クリア。なんと贅沢な赤ちゃん。


●赤ちゃん茶道の目的

「子どもには本物に触れさせてあげてください」

 私が茶道の先生に妊娠報告した時、いただいた言葉。ものすごく大事なことを言っていただいたと思う。
 
 例えば器ひとつとっても、100均のものと作家ものでは、デザインや質感、手触りが全然違う。100均は安価に便利なものを作り、社会において重要なポジションを占めている(100均がなくなれば困る人がたくさんいる)。しかし100均のものばかり使っていて、センスが育まれるだろうか。物の質の良さを判断できる目が養われるだろうか。

 ここに3万円の織部焼のマグカップがある。私が30歳になった記念に日常使いできる良い器がほしいと探し求め、ギャラリーで作家さんと会話をしながら選んで買ったもの。


 この器は土に多くの空気を含んでいるので、とても香りが移りやすい。紅茶やコーヒーを淹れると香りが移る。油物を洗った後のスポンジでこの器を洗ったら油物の香りが移ってしまった。使い勝手は100均のマグカップの方がいいかもしれない。
 でもこの器を使っていると、器を育てる経験ができる。作り手の顔が見え、香りの変化を感じ、大切に扱うことができる。100均のマグカップでは絶対にできない経験だ。

 「本物」を考えるとき、私にとっては抹茶も外せない。抹茶スイーツブームでどこもかしこも抹茶だらけだが、本物の抹茶の美味しさを知っていると、抹茶スイーツの味は抹茶ではないし、美味しいとも思えない。本物の抹茶は甘く、風が抜けるような爽やかさを感じることもある。

 本物に触れるには、茶道はとても良い。抹茶、お菓子、器、軸、花、着物などどれも本物の日本文化に触れることができる。だからエン様には小さい頃から茶道に親しんでほしいと思っている。


●そして、日本人価値仮説

 この文章を書くと右だとか国粋主義だとか捉えられるのではと心配しつつも、私の仮説を書いてみる。

 これから日本の人口は減り、グローバル化はどんどん進んで、日本にいても海外の方と一緒に生活したり仕事をすることが今よりもっと当たり前になるだろう。日本人が海外に住むケースももっと増えるだろう。
 世界的に日本人はレアキャラになる。レアポケモンのように、日本人というだけで高い価値がつく日が来るのではないだろうか……? という仮説を持っている。
 
 でもレアポケモンはレアなだけで価値が高いわけではない。レアポケモンならではの特徴や強みを持っていないといけない。

 つまり日本人がレアキャラになる時、日本についてきちんと知っていて、お茶が点てられたり、着物を着たり、墨と筆で字が書けたり、花を生けたりできると、活躍できる場が広がるのではないだろうか。

 毎夏、会社にスタンフォード大学や北京大学からのインターン生がやってくる。私は彼らが来る度、会社で茶会を催している。
 先日、今年のインターン生茶会を催した。彼らはとても日本に詳しい。茶道が戦国時代に始まったことも、千利休の出身地も知っている。でも、本物の抹茶を飲むのは初めてだった。アメリカでも "Matcha"  を売っているが、砂糖が入っていると言っていた。茶碗が工業製品ではなく、人の手で一碗ずつ作られていることに驚いていた。歓談は長く続いた。
 
 そして茶会が終わったあと、アテンドしてくれていた人事部の方から「彼らがこんなに笑顔なのは初めて見ました」と言葉をいただいた。これが文化の力。


 何でもいいから1つ日本文化をしっかり知っておくと、良いと思う。いくらAIが発達しても、人と人とのコミュニケーションはなくならない。文化はコミュニケーションにおいて大きな価値を発揮する。これが私が勝手に考えている日本人価値仮説。

 だからエン様には小さい時から茶道に触れてほしいなと思っている。たとえ茶会を開くことがなくても、一服の茶が点てられると世界が広がる。



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 最後に宣伝です。エン様のために世界に一つだけの茶碗を作ってもらったのはsioneというブランドで、千年残る器を作っています。オーダーでの器作製は誰でもできます。既製品も素敵なデザインばかりです。自分用、子ども用、ギフト用などでぜひ!

 sioneブランドディレクターのSHOWKOさんの出されたこちらの本もおすすめ。子どもを「感性のある人」に育てるうえで参考になること多数です。

 
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《終わり》

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