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置き去りにされた、私のエネルギー



「洋服を沢山買う人って、
 エネルギーが余ってるからなんだって。」


幼なじみと洋服を見ていた
こうやって女同士で買い物をするなんて
一体、いつぶりだろう

結婚して以来、彼以外との外出が
ほとんど無くなっていた事に気づいた


コロナが原因か、それとも


日本人離れした顔立ちとスタイル
店員さんと話してる姿は、立場が逆に見えた

彼女は自信とオーラに満ち溢れている



「私、エネルギー有り余ってるのかな。」


ボソボソと言った私の言葉を
笑って吹き飛ばしてくれる

彼女が好きだと改めて思った

ずっとそのままでいて欲しいと強く願って
手にしていたワンピースを掛け直した
今日は初めから買うつもりが無かった


彼女なら、私が例え結婚しても
変わらないで居てくれると信じた

いや、変わらないで居て欲しいという
私の願いかもしれない



コロナ自粛が明けて
片道約1時間の通勤が戻った

30分早く家を出て各駅停車に乗る
一駅前で降り、少しだけ朝の散歩を楽しむ


会社まで心を落ち着かせる、静かな時間


閑静な住宅街を何も考えずに歩く

途中、コンビニのテラス席で
コーヒーを楽しむおじ様達を
今日も確認する

お金と時間が充分にあるだろう穏やかなグループ

まさに、余裕という言葉を表現した朝の風景
一切の嫌味を感じないのは
なぜだろう


数ヶ月前は、腹痛を和らげる時間だった


胃の締め付けで真っ直ぐ立てなかった

出社するまで、時間をかけて体調を整える
外の空気を吸って心を落ち着かせる

私が考え出した出社方法だった

いつの間にか
小さな幸せな時間になっていた



今日は、雲一つ無い青空だ





「別に、出世したくないでしょ?」


アクリル板を探すため、ハンズに外勤

職場に居たくない私は
部長の依頼を快諾して、上司の後を追った



「どうせだし、ゆっくりして行こうよ」

上司と私は意味も無く
最上階フロアから降りることにした

上司であって1番の相談役
部長の指示が耐えられないこと、
仕事を辞めたいこと、
結婚のこと、

これからのこと


何の話でも、包み込んでくれた



たしかに、結婚して家事が増えた

早く帰って夕飯の支度をしたい
早く寝て朝のお弁当作りに備えたい

彼の時間軸に、自然と合わせている自分がいる

仕事より家庭中心になりつつあった


経理の仕事は淡々としている
その上、誰かに感謝をされる仕事でもない

だから私は淡々と仕事をするしか無い


面倒な話には巻き込まれたく無いし
自分の仕事だけをこなしていたい


どうせ1番下っ端の私だ
先輩達の何割のお給料を貰えてるのだろう

そう考えるだけで口が曲がるのは
歪みはじめた根性のせいだろうか


会社のお金を任されるのは荷が重い
だからと言って全てを諦められるのは、しんどい
仕事が出来ない奴と烙印を押される、カナシイ



異動なんてしなければ

前の部署で3年目を迎えていれば


好きで異動した訳では無いけど
そのまま続けられていたかは分からない


別に、出世したいなんて思っていない


ただ、精一杯頑張りたい

そして認めて貰いたい

私の居場所が欲しい

全力で仕事をして、全力で認めて貰える
自分の居てもいい場所が欲しいだけだ




「楽な部署、例えばあの部どうですかね」

空っぽに笑いながら
ハンズで彼のお弁当箱を選びながら
そう、答えてる自分がいた



新しい道を探す時が来たのだろうか



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