見出し画像

マイ・ワーマタ・デイズ ~vol.3 安定期と言われる所以~

酒と酒のある空間が好きな、もとい、好きだった、東京在住30代前半の総合職の女です。仕事も、経験を積むほど面白さが増す中、ある日マタニティライフがスタート。vol.1では「呑兵衛からの卒業」、vol.2では「乗り切れツワリ」と、妊娠初期を綴りました。

vol.3は、妊娠11週目から17週目の妊娠中期。つわりから安定期への変化を体感している頃のログです。

ー妊娠11週目ー

有給休暇とリモートワークの浸透に感謝。

通院中の産婦人科は分娩台が無い医院なので、分娩予約のために、先生の推薦から選んだ産科のある総合病院へ紹介状を持って訪問。週末は予約を受け付けず長時間待つと伺い、今の体調でそれは避けたいと、貯め込んでいる有給休暇を利用し平日に予約をしたら、主人も「リモートで仕事するから同行したい」と言い出した。今や夫婦どちらの会社も、メールは常にスマホで処理できるし、ここ1・2年はリモートワークが浸透して、アポや出席必須の会議がない限りオフィスに縛られず調整がしやすい環境になった。働き方改革が叫ばれる今の風潮、制度を導入した会社、理解ある所属部署に感謝。そして、トライアルと言って以前から先陣切って利用し始め、慣らしておいて良かった。

ー妊娠12週目ー

服と仕事と出産経験。

お腹が徐々に大きくなり、悩みの一つが服。これまではぴたっとタイトで身体の線にプレッシャーをかける服を好んで着ていたが、今や一変、ストンと落ちる大きめサイズのワンピースを選び、それもZARAやユニクロで気に入ったデザインを2色買い、週1ルーティンだろうと気にせず着回すことにしている。案の定、後輩ちゃんから一緒に行ったランチで「ご懐妊ですよね!」とすぐ聞かれ、「お洋服で分かります」とのことだった。オフィスの中では人に言うタイミングもなかなか無いし、積極的にアピールしまくるつもりも無いので、見た目で分かりやすければそれで良いかなと思う。妊婦になって訪問回数が増えた西武百貨店で、嗜好を変えて、素材が綺麗、お腹周りは目立たず、でも全体のシルエットはすっきり見せる服をと探していたら、目に付いたブランドがあった。試着したら好印象だったので、今や飲み会も無く出費が減ったからと自己肯定し、購入。このブランド、タグの運営会社名を見ると、10代20代の頃お世話になったSLYやmoussy、RODEO CROWNを抱えるバロックジャパンリミテッドさんだったので気になっていた私は、会計時に販売員のお姉さんに訪ねてみた。まさに、SLYの有名デザイナーの方が今や3児の母となり、出産や年齢を重ねて服の選び方に変化を感じて、新ブランドを立ち上げられたとのこと。ライフスタイルの変化が仕事に発展をもたらした、憧れるような格好良い事例だと思った。子供と仕事は時間的・体力的にぶつかり合う、反比例のような関係だと私は勝手に想像していたが、子供を持つことにより仕事の新しい世界を広げ、アップデートし続けている素敵な女性たちが存在することに改めて気付かされた。

溢れる情報との付き合い方。

一時帰国中の高校の友人を囲んで、懐かしい仲間が集合。クラスも部活も違ったが気の合う仲間で、その繋がりも気付けば14年。そして偶々、自分の2ヶ月前に1人、1ヶ月後に2人が出産予定で、2児の母もいて心強い。皆、今の仕事が好きで復帰前提である所も話しやすい要素のひとつである。話題はつわりから出産エピソード、腹帯、海外の通院話、ネットの信頼して見ているサイト、学資保険、旦那さんの生命保険etc…と尽きず、いちいち笑える。友人の情報はあくまでサンプル1だと思っているし、全て鵜呑みにはしないスタンスだが、でもやはり感覚の近い人の意見は受け入れやすいもの。仲間の口コミと、医療機関の指導と、信頼度が高い編集部のある媒体から個人が運営するアフィリエイターのブログ寄りの記事まで多岐に渡るネットの情報。知識は多いほど選択肢は増えるし、時間的にも心的にも余裕を持って冷静に準備ができるので、自分の負担にならない程度にバランス良く取り入れたい。30年以上生きていても、出産・育児ほど全てが初の経験で、情報を仕入れないと分からない事って、なかなか無い気がする。

出産・育児マーケットデビュー。

気になったら即行動したいので、友人の話を聞いた翌日、初めてのアカチャンホンポへ。アカチャンが産まれてから立ち寄る空間だと思っていたので、マタニティ向けの手厚いサポートに驚いたし、ポイントカード登録時に出産予定日の入力欄があったり、おめでとうございますと言いながらスタッフさんがカードを手渡してくれるのは新鮮だった。広大な売り場には腹帯ひとつ取っても産前産後たくさん種類がある。ベッドにバギー、大量のおもちゃにお洋服、タイトルに(巨大なお財布として重要な)育じい育ばあと書かれたパンフレット。そして出産予定日を把握されているので、今後妊娠週数や子供の成長に合わせ、需要にぴたりと合うターゲティングプロモーションが展開されていくのであろう。売り場を歩きながら、出産・育児は巨大市場だなぁと夫婦で語り合った。

ー妊娠13週目ー

妊婦として街で初めて声をかけられた日。

妊娠を期に、仕事の稼働時間に対する意識が高くなった。私の仕事は繁閑の波があるので、落ち着いている今時期は業務を稼働日に集中させて、来年度に繰り越せない分の有休を意識的に使わせてもらうようにした。今日は、実に1ヶ月半振りのすっきり感が身体に訪れた。体調が安定したら真っ先に行きたかった歯医者を午前中に終え、まだ体力が安定しているのを確認し、お昼は妊娠前好きだった中目黒の酸辣湯麺屋へ。カウンターに、メンズに混じって妊婦が腰かける。お酒と離れてから一段と薄味にしているので、塩味を以前より強く感じたが、その分お水をがぶがぶ摂りながら美味しくたいらげた。お会計の時、割腹の良い朗らかな女性スタッフさんが私のマタニティマークを見て、「お腹はまだ目立たないけど妊婦さんなのね、冷やさないように気を付けてくださいね」と優しい笑顔で声をかけてくれた。忙しいラーメン店でそんな温かいコメントを貰えると思っていなかった私は嬉しくなって、「妊娠前からここが好きで、つわりが明けたのでエネルギーを付けに来ました」と即答した。胃も心も満たされ、まだ体調の良さも続いていたので、その足で区役所に向かい、窓口で保育園制度についてレクチャーしてもらった。つわり明け当日に即保育園の事を考えるなんて気が早いとか批判されそうだが、私にとっては気が落ち着く、有効な時間の使い方となった。安定期1日目としては大充実の一日だった。

新しい楽しみにアンテナを。

妊娠して、現金がお財布から去っていくスピードが明らかに減速した。これまで美味しい食事にお酒に、時にタクシーと、一晩で何枚もお札を取り出してきた、その差分の大きさを実感する。今の不安定な身体では、お値段を気にすることよりも、できるだけ最短距離で自宅に帰りたいので、会社のすぐ近くにある品川ISETANの食材コーナーに立ち寄ることにした。見慣れないラベルがずらりと並ぶポン酢の棚を眺めながら、食材や調味料を色々試すのも妊娠中の新たな楽しみになるかもと思った。味の濃さに敏感な今だからこそ、調味料は値段で選ばず美味しいものを探して、梅干しや納豆のような常備食も他で見かけないものを選び、違いを知ってみたい。妊娠により今までの趣味を封印している今、身体に合った新たな楽しみを探したいと思った。

ー妊娠14週目ー

席を譲ってくれるひとたち。

朝の通勤時、席を譲っていただくことが度々ある。東京はゼロに近いものと想像していたので意外だった。累計3回目となるこの日、譲ってくれたのは驚くことに女子中学生。マタニティマークに反応してすっと立ち上がってくれた。少し恥ずかしそうだったので、あまり目立たないように小さく御礼を伝え、降車時にも「助かりました、ありがとうございます」と敬語でそっと伝えた。自分の半分以下の歳の子が譲ってくれるとは、誰から教えられたのか分からないけれど、図々しい私と違って我が子もそんな子供にしたいと思った。

ー妊娠15週目ー

つわり再来か。

むくむくと膨らみを増していくお腹。子宮の成長に胃が圧迫されている影響で、この日はつわり再来かと思う気怠さだった。ごはんも少量しか食べられない。解放的に体調が良くなることなんて、産むまでないんじゃなかろうかと思えてきた。

ー妊娠16週目ー

新しい趣味、始動。

胎盤が完成したおかげでようやく体調が安定してきたので、新たに2つのことを始めた。1つめは定番でもあるマタニティヨガ。妊娠発覚後2ヶ月半、身体を動かすことから遠ざかっていたので、私の身体は体調不良とお腹の重みの影響から姿勢が酷く崩れ、腰が重く、肩も凝るようになっていた。一日も早く運動がしたくて、つわりの時期からヨガ教室の情報を調べていた私は、産婦人科の先生の許可が出たその日に即申込んだ。当日、ヨガマットの並ぶ教室で周りを見渡すと、自分のお腹は誰より小さかった。しかしいざ始まると、周りの30週を過ぎた巨大なお腹を抱えている先輩方の可動域と体力は自分以上で、驚かされた。このヨガ教室は、リフレッシュにとどまらず、産みやすく戻しやすい身体を作ろうという真剣さで、想像以上にストイック。ここなら妊娠中や出産に向けた知識も付くし楽しみに通えそうと、チケットのまとめ買いを決めた。2つめは英会話スクール。TOEICは勉強しても、聞き取れない話せない、苦手な英会話を私はこの歳まで完全放置してきた。残業と飲み会が減り、時間とお金がある今こそ集中して苦手にチャレンジしようと、私は扉を叩いて、恥ずかしげもなく最下級クラスからのスタートを申し出た。臨月前までの4ヶ月間という、妊婦ならではの明確な期限は、自分も教室側も延長が提案できないので、集中するには案外有効かもしれない。どちらも、自分の体力を過信しない範囲で、楽しみながら継続していきたい。

ー妊娠17週目ー

妊娠による客観的な変化。

半年振りに大学のゼミ仲間と恵比寿の焼肉店で再会。同じゼミだった主人も一緒なので、夜出掛けることへの身体の不安は軽い。仲間から言われて驚いたのは、「前回会った時は六本木にしがみついてますって雰囲気だったのに、妊婦になって顔付きが穏やかになった」とのこと。確かに、前回会った時は連夜飲み歩いてばかりだったので、仲間のその表現も否定できなくて笑えたが、穏やかになった自覚は全く無かった。妊娠の経過は今後どうなるか分からないから冷静に努めようとしているし、仕事の内容も変わっていないから気は張ったままなのだが、酒を絶ち睡眠も充分に取るようになって顔の血色でも良くなったのだろうか。後日、社内の他部署の先輩にも「穏やかな顔付きになったね」と不意に言われた。自覚が無くても、もしかするとホルモン的なもので、身体だけでない不思議な変化が少しはあるのかもしれない。

ー妊娠中期の ~vol.4 ハピマタライフとは~ につづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?