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マイ・ワーマタ・デイズ ~vol.2 乗り切れツワリ~

酒と酒のある空間が好きな、もとい、好きだった、東京在住30代前半の総合職の女です。仕事も、経験を積むほど面白さが増している中、ある日マタニティライフがスタート。vol.1では「呑兵衛からの卒業」を振り返りました。

vol.2は、妊娠7週目から10週目の妊娠初期中盤。つわりの乗り切り方を模索していた頃のログです。

ー妊娠7週目ー

田舎の空気のありがたさ

年末年始の飛行機があまりに高いので、クリスマス連休を使い四国の主人のご両親の元へ帰省。私は体力への自信をすっかり失っているし、飛行機での移動は双方の両親に心配されたけれど、空気が澄んで人混みもなくゴハンが美味しい田舎で過ごしたい気持ちが強かった。まず、街歩きにマスク不要。移動は自家用車という安心感。そして、優しく、的確なアドバイスをくれるご両親。暫く過ごしていると、常につわりを背負う怠い身体に時折軽さが舞い戻った。特に、高知県内の山の上にある巨大な県立植物園を散歩した時には、緑のパワーなのか、すっきりと澄んだ心地が身体中に流れて嬉しかった。対して辛かったのは、帰省時は必ず立ち寄る大のお気に入りの寿司屋。とり貝、シマアジ、雲丹・・・食べたい気持ちに身体がついてこれない。ずっと張り気味だった私のお腹はとうとう帰りのタクシーで痛みに襲われ、ご実家に着くなり前屈みでお手洗いに駆け込んだ。妊娠以来久々の美味しい生魚に胃腸が驚いたのか。食意地に負けた何ともみっともない嫁である。それと、元気をもらったのは、帰省すると必ず立ち寄るセレクトショップ。緩み始めたお腹に優しい服選びをした。今までのタイトめスタイルとは暫くお別れ、新ジャンルにゆるシルエットのニットロングワンピを選びながら、服の系統を変えることも新たな楽しみにしようと思った。紐でウエスト幅を調整できるボトムスを購入したら、お義母さんが今後の大きくなるお腹のためにと、手縫いでゴムを継ぎ足してくれた。有り難くて仕方ない。

少しずつコントロール。

連休明け4日ぶりの出勤、今週の稼働は3日間と思うと乗り切れそう。最近、朝ごはんが今までのパン1つでは足りない。お昼ごはんも男盛り定食を部署のオジサマと並んでしっかり食べる。それと学んだのは、仕事中ちょこちょこ食べ物を口にすると気分が楽になる。この日の社長打合せも集中力高く進行できて一安心だった。夜は50人程が集まる業界忘年会に繋がりで誘っていただいていた。これは何とか参加したかったので、定時で帰り、一旦自宅で30分程休んでから恵比寿の会場に向かった。バーカウンター形式だったので烏龍茶にストローを差さないでもらえば誰にも特に突っ込まれず、沢山の人と交流しながら元気に乗り切れた。以前だったら二次会へと当然向かっていたが、一次会終了後に幹事に御礼を伝えてささっと退散。この身体と生活に少し慣れてきた。

ー妊娠8週目ー

年内の仕事を乗り切った。

年内最終出社日の夜は、お世話になっている編集部で開催される恒例のケータリング忘年会。先輩と時間をずらして、近くのカフェで休憩してから合流。大好きな日本酒銘柄のボトルを目の前に、オレンジジュースで乗り切った。酒に手を出せない理由を聞かれた時の交わし方が未だ下手。

何もない休日がこんなに有り難いなんて。

今までは予定のない休日が落ち着かなくて苦手だったのに、今の私には何もないことが嬉しい。徒歩圏内の買い物で十分満足できる。身体が変わり、自宅にいる時間が増えたので、屈むことが苦しくなる前にと、夫婦で自宅の断捨離を決行。すっきりした家は気分が良い。

波のある体力に要注意。

年越しは今年も自宅から徒歩15分のお寺さんに御礼参り。新年初日は、このご時世にも有り難く元旦から営業するショッピングモールで、実家の家族と主人とランチ。しかし30分の電車と人混みに体力は不安定気味で、コース料理の一品目あたりから、貧血になる手前のような具合の悪さ。相変わらずよく喋る親とワイワイ話しながら食べ進めていると復活してきたが、ジューシーなお肉は食べれず。体力を過信しがちな私をよく知る母は、食べれても動けても立派なつわり期間なんだから強がらずに大人しくするようアドバイスした。お見通しである。

ー妊娠9週目ー

Uber Eatsがある時代で良かった。

妊娠も3ヶ月目に入り、大人しく過ごす生活に慣れ、怠さも少し緩和傾向と思った矢先、休日の昼間に初めて吐気を覚えた。週明けの出社への自信は一気に減退。私は横になるしかできなかったので、主人のお昼ごはんをどうしようか悩んでいたら、家事は頑張っているものの料理だけは全く手が出せない主人が「Uber Eatsでマックが食べたい」と言う。自分のせいで、休日の昼に大の大人にジャンクフードの代名詞のようなものを食べさせるなんてと罪悪感もあったが、この体調では仕方が無いのと、不思議とこれなら私も手を出せそうに思えた。主人のセットのポテトを多めに、あとチキンナゲットを付けてもらった。怠さで横たわりながらも、これは食べれた。その後、お昼寝から明けたら吐き気は失せて、怠さも改善。出社への自信を取り戻した。つわりにも打ち勝つ、ジャンクフード。

早めの時期に、上司にご報告。

仕事始め、早めに会社に着き、上司に新年の挨拶を済ませた後、朝礼の前でも後でも構わないので10分程面談させて欲しいと伝えた。予想のつかない顔をしていた上司だったが、会議室に入り話を切り出すと、全力でおめでとうございますと言ってくれた。先ずは組織にご迷惑をおかけすることになる申し訳無い思いを伝えた。過去に妊婦への配慮を当然の権利のように振る舞う女性を見かけて、それは違うと若手の時から感じていたので、自分は迷惑をかける立場であることを冷静に認識し、組織への影響を最小限に留めるよう残りの期間は抜けのない引継ぎを実行する心積もりであることをしっかり伝えたかった。それと、会社への一般的な報告タイミングである安定期は2月中旬になるが、1月から次年度に向けた人事の動きがあると想像し、早めにお伝えしたことや、予定日と産休開始時期、そして経過が問題なく保育園にも入れた場合と前置きして最短の復帰時期を告げた。こういう時、子供がいて、恐らく妻想いとみえる優しい上司の存在は有り難くて、体調はどうなのか、無理せず通勤時間ずらしたり辛い日は遠慮なく早退をと、協力の姿勢を示してくれた。さらに上司は、人事に関わるからその上の部長には伝えるが、そこから話が拡散する可能性があるけれど大丈夫かとまで確認してくれた。それに対して、勿論です、ご判断はお任せいたしますと即答した。妊娠発覚以降、私はヒールを控え、好んで着ていたタイトな服を封印し、ゆるシルエットのワンピースを着始めたので気付いている人も居るだろうが、上司に話したことで気持ちが軽くなった。ようやく、マタニティライフという新しいステージに向かい始めたような、新鮮な気持ちを実感し始めた。

ー妊娠10週目ー

勤務時間で精一杯の体力。

主担当を任されている業務の打合せがある日は何とか休みたくないので、それを避けて週に一回テレワークを設定させてもらい、他の4日間は体力を見ながら乗り切る。朝食べるパンの数を増やし、こまめに間食をとり、ランチは変わらず上司達とがっつり定食を摂る。しかし毎日夕方になると体力ががっくり落ちるので、帰り道はスーパーに寄る気力すら無く、夕食を済ませて21時頃には眠りはじめる生活。これまでは、30代になっても夜中の3時位まで楽しく飲んで翌日には元気に8時出社する、体力が取り柄のような生活をしていただけに、そのギャップにいちばん驚いているのは主人である。

手足バタバタ。

すっかり通い慣れた産婦人科。妊活中の精子診断以降はじめて、主人も診察室に呼ばれたので、もしかして検診結果に何かあったのかと不安になった。ところが、その理由は胎児へと進化した赤ちゃんのエコーを主人に見せるためという、先生の心遣いだった。主人は、いつも私が産婦人科から帰ってエコー写真を見せる度に「僕もエコー画面見たいなー」と言っていたので念願叶ってというところだが、それがこのタイミングだったことに納得。まだ妊婦の足をパカッと開いて見る検診台の段階なので、その露わな姿に入室した主人は驚いた様子だったが、そんなことはどうでも良かった。10週目の胎児は頭と胴が分かれ、いつの間にか手足が生えていた。先生が、寝ているのかな〜と言うので何のことかと思っていたら、暫くして、モニターに映る胎児の手足らしきものがバタバタと動いたではないか。黒い画面に映るその影のような存在に、初めて、可愛い、という感情を抱いた。これは、忘れられない感動の瞬間となった。それ以来、身体を気怠さが襲うと、「栄養欲しいから何か食べてくれー」とか「血液の循環が悪くなるから少し休んでくれー」とか、3・4cmの赤ちゃんが手足をバタバタして訴えている気がして、「おう、そうだよね、ごめんよ」と言いたくなるような、ホッコリした気持ちが持てるようになった。検診モニターに映る赤ちゃんが動くまで待って、私たちに見せてくれた、先生のお陰である。

ー妊娠初期後半の ~vol.3 安定期と言われる所以~ につづく


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