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寒さの夏はおろおろ歩き

岩手県出身の作家、宮沢賢治の有名な作品「雨ニモマケズ」の一節、「寒さの夏はおろおろ歩き」は、東北太平洋側に吹き付ける「やませ」のことを指していると言われています。

「やませ」とは、春から夏にかけて北海道の北のオホーツク海付近に高気圧があるときに、その高気圧から吹きだしてくる冷たい海風のことで、低い雲(層積雲)や霧・霧雨(層雲)を伴い、持続すると東北の太平洋側沿岸部を中心に日照不足と低温をもたらします。

見出しの画像がその「やませ」の雲がかかっている状態です。(青森県三沢市で撮影)

見るからにどんよりとした空模様で、日照もなく暗い感じがします。

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そして、これはその画像を撮影した日の天気図ですが、やはり、オホーツク海付近に高気圧があることが分かります。(天気図は気象庁ホームページより。)

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そして、気温を見てみると、太平洋側の沿岸部では、日中でも気温が20℃に届いていない所が多くなっています。(画像は気象庁ホームページより。)

「やませ」が吹かない地域の方々には、にわかに信じられないかもしれませんが、真夏(7~8月)であっても、「やませ」が吹いた日は最高気温が20℃に届かないことも珍しくありません。

もはや、「涼しい」を通り越して「寒い」とさえ感じることもあります。

まさに「寒さの夏」なのです。

ちなみに、北海道の太平洋側では、真夏であっても、20℃はおろか最高気温が10℃にも届かない日もあったりします。

こうなると、もはや「凍える夏」です。

まだ、現在のような週間天気予報もない時代にそんな日が続けば、農作物などへの影響も懸念され、「大丈夫かな」、「早く晴れてほしい」と不安や心配から「おろおろ歩き」になってしまう気持ちもよく分かります。

このように、どんよりとした気持ちになってしまいがちな「やませ」ですが、私は「寒さの夏はおろおろ歩き」という一節を思い出し、宮沢賢治も同じような空を見ていたんだなあと、勝手に少し感傷的な気分に浸ってみたりしています。

あと、そのような日は、エアコンをつけなくてもよいという利点もあったりします。

とはいえ、やっぱり夏は夏らしい方が、四季の移り変わりを感じられて私は好きです🌞

#寒さの夏


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