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166冊目:かもめ食堂/群ようこ

こんばんは、Umenogummiです。

今日は実写映画も好評だった、こちらの小説です。

かもめ食堂/群ようこ 作

フィンランドの首都・ヘルシンキで、「かもめ食堂」はひっそりと営業していました。いつも小さな東洋人の少女がグラスを磨いたりしているので、人見知りがちなフィンランド人は、遠目からそれを見るだけで「子ども食堂」などとひそひそと噂をしていました。

東洋人の少女―もとい38歳のサチエは父の口癖を思い出します。

 人生すべて修行

古武術の達人だった父に習い、武術のセンスに光るもののあったサチエは、周囲からの期待を一身に浴びますが、小学生の時に母親を事故で亡くしてしまいます。父一人子一人となったサチエが家事を行うようになってから料理上手だった母親のレシピを再現するうちに、すっかり料理にはまっていきました。

サチエは食物科のある高校へ進学し、ありとあらゆる料理を試し、クッキングスクールに通い、いつか素朴でもちゃんとした料理を食べてもらえる店を作りたいと願いますが、日本の有名店と言われる料理が調味料でごまかしたような美味しくないものであったり、クラスメイトも濃い味付けを好んだりする環境の中で、失望していました。

ある時サチエは「外国で日本食料理店をやればいい」と思い立ちます。数年辛抱し、サチエの嫌いな濃いものや目新しい料理を開発しなければならない弁当開発の仕事をしながら貯蓄を増やします。最終的には宝くじで1億円当てて、それを資金とします。父親の子弟のつてを頼り、フィンランドで店を構える手立てを整えます。

そうしてフィンランドの軽食とおにぎりなどの日本食がメニューに名を連ねるかもめ食堂を開店させたものの、店は閑古鳥。始めてやってきたお客さんは、ニャロメのTシャツを着た日本かぶれの大学生・トンミでした。

トンミに尋ねられた「ガッチャマンの歌」の歌詞が出てこず、苦心するサチエでしたが、たまたま訪れた本屋のカフェで日本語の本とにらめっこをする大柄な日本人女性・ミドリを見つけ、「ガッチャマンの歌を知っているか」と尋ねます。

指さした場所へ行こうと思い立ち、フィンランドへやってきたミドリはやがて、サチエの家に居候しながらかもめ食堂で働くこととなります。

映画ではなぜサチエがフィンランドでかもめ食堂をやることになったのかということが、あまり掘り下げられていなかったのが残念でした。時間的制約もあったのでしょうが、サチエがおにぎりにこだわる理由とか、結構重要かなぁと思ったので。まあ宝くじが当たって海外へ、というのは少し現実味がないですけれど。

映画は映画で、フィンランドのゆったりとした雰囲気、でもなかなかな心を許さないフィンランド人というのが表現されていて、とてもいいです。サチエが小林聡美さん、ミドリが片桐はいりさん、後半で出てくるロストバゲージして途方に暮れる日本人女性・マサコをもたいまさこさんが演じていますが、どの方もはまり役。かもめ食堂のやさしく、ゆるーい雰囲気が出ています。

映画から入っても、本から読んでも、どちらでも和やかで癒される作品です。

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