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アフリカにおける日本企業の動き(2020年8月)

毎月、アフリカにおける日本企業の動向をまとめています。

今月は、豊田通商、住友電工、いすゞ自動車、ヤマハ発動機、ブリヂストン、三菱商事、日産自動車、矢崎総業を取り上げています。期せずして、自動車関連のニュースで埋められることになりました。

今回取り上げたニュースはいずれも、「週刊アフリカビジネス」というニュースレターから抜粋したものです。週刊アフリカビジネスでは、毎週タイムリーにニュースをお伝えしています。

週刊アフリカビジネスを購読している企業や費用については、以下からご覧ください。

そもそも、日本の企業ってアフリカで何しているの?と思った方は、こちらに600企業弱の情報を一覧にまとめてありますので、みてみてください。


1本目は、豊田通商がアフリカ向けに中古車輸出を行っている日本企業に出資したというニュースです。

【アフリカ全般】豊田通商がアフリカ向け中古車輸出でカーペイディーエムに出資(8/2)

豊田通商は、中古車のオンライン輸出販売における協業を目的に、カーペイディーエムと資本業務提携を結んだ。出資額は不明。

カーペイディーエムは強みがある商用車やトラックに加えて乗用車の仕入れを増やす。豊田通商が持つ販売網とアフターセールス機能を活用する。協業を梃子に、5年後に中古車輸出で10%のシェアを目指す。

(コメント)豊田通商はアフリカにおいて、自動車販売の他、地熱や風力発電、肥料工場、ベンチャー投資と、広い領域で事業を行っています(44ページ)。

2012年には仏商社のCFAOを買収し、同社が持っていた主として西・中部アフリカにおける自動車販売店や製造業なども手に入れ、アフリカ大陸ほぼすべてにカバレッジを広げました。

ベンチャー投資に関してもとても活発です。2019年8月には、アフリカのモビリティー分野のスタートアップに投資するための投資会社、Mobility54も設立しています。54は、アフリカの国の数ですね。

自動車に関しては、アフリカにおけるトヨタ車の営業・販売が2019年に豊田通商に全面移管されたため、販売を一手に担っています。アフリカ36カ国では直接投資先を通じて、12カ国では日本の他の商社を含む他社を通じて販売しています。

2018年にトヨタ自動車が発表したスズキとの協業内容には、スズキのインド・クジャラート工場で生産した自動車をトヨタがアフリカでOEM販売することが含まれており、これも豊田通商が行っています。

新車の販売のみならず、ケニアでは2012年に豊通オートマートケニアという中古車販売に特化した法人を設立し、トヨタ車に限ることなく中古車を販売しています。トヨタや豊田通商のような新車を生産・販売する会社が、他社も含めた中古車の販売を行うのは珍しいことでしょう。ただ、アフリカでは、流通している自動車の9割が中古車なのです。

中古車に関わっていないことには部品供給やアフターサービスの規模を出すことができず、また、政府入札や大企業といった既存の新車ユーザーを除いた一般消費者との接点が持てず、来るモータリゼーションに備えることができません。

ケニアの中古車販売会社には修理工場も備えており、デンソーなどの部品やタイヤなども販売しています。この記事のサムネイルはその中古車販売会社の写真です。

今回出資したカーペイディーエムは、中古車輸出オンラインサイトを運営しており、トヨタハイエースなど商用車や建機に強みを持ちます。トヨタのハイエースは、アフリカでは荷台を改造して座席を作ってバスとして使われており、中古車需要が高い車両です。ハイエースの販売がアフリカ各国で増えることは、豊田通商にとってもアフターサービスネットワークの構築に繋がりますし、また、中古車輸出プラットフォーマーの持つ他社含めた調達力やオンラインサイトの知見は役に立つものでしょう。


【ナイジェリア】ヤマハ発動機が出資する、ナイジェリアでバイク配車や物流アプリを展開するMax.ngが電動バイクの導入を開始(8/13)

ナイジェリアでバイク配車アプリや物流事業を展開するMax.ngが、電動バイクの使用を開始した。

新たに使用されるMAX-Eシリーズは、24カ月超かけて開発され、パイロットを行っていた。同社が電動バイクの導入を発表したのは2019年6月で、2019年11月にデザインとコンセプトが完成していた。

Metro Africa Expressの略であるMax.ngは、南アジアのGrabとGo-Jekからインスピレーションを得て、ナイジェリア初のバイク配車プラットフォームとして2015年に設立された。物流サービスから始まり、2017年に旅客輸送に拡大した。2019年にケニアのベンチャーキャピタルNovastar Venturesや日本のヤマハ発動機から700万ドルを調達している。

(コメント)ヤマハ発動機はアフリカで、二輪車や船外機を販売しており、アフリカ54カ国中48カ国に代理店を設置しています(18ページ)。アフリカ大陸を広くカバーしている日本企業のうちのひとつです。

豊田通商とも協業しており、ナイジェリアでは二輪の生産・販売を行う合弁を設立、ケニアでは二輪の生産・販売を豊田通商に委託しています。

さらにヤマハは、2017年頃からアフリカへのベンチャー投資を進め数社に投資しています。 今回のニュースのMax.ngには2019年に出資しました。

今回の電動バイクの車体には関わっていないようですが、Max.ngとの間では、バイクが主として使われる農村部含めた地域的な展開や、使用バイクにおける協業を行うのではないかと報じられています。

ナイジェリアの配車バイク事業については、Max.ngの競合となるに関する記事で、コロナ禍などに直面した現在の事業環境について書いています。


【南アフリカ】日産自動車が南アフリカで事前融資判断オンラインツールの提供を開始(8/25)

日産自動車の南アフリカ現地法人Nissan South Africaが、オンラインで10分以内に自動車融資の可否がわかる事前融資判断ツールの提供を開始した。南アフリカで自動車メーカーが提供するのは初となる。

WesBankの技術を使ったもので、信用調査機関の信用情報とリンクしている。同社サイト上の事前承認フォームに入力することで融資可否を知ることができ、頭金の金額や予算に合う車の検討などを具体的に進めることができる。通常面倒で時間がかかる融資手続きを便利に早く、煩わしさをなくし、オンラインで承認されれば購入時にはその承認番号によって販売店で手続きすることができる。

(コメント)日産自動車も、アフリカにおいて活発に事業展開を進めている自動車メーカーのひとつです(17ページ)。

他の地域でもそうだと思いますが、アフリカでの自動車の販促においては、新車でも中古車でも、融資の提供がキーとなります。ケニアでは、トヨタ、いすゞといった企業が優遇ローンを現地銀行とともに積極的に開発しています。

南アフリカは新車を売ることができる市場ですが、融資の重要性は同じです。今回のニュースは、融資の可否を知り、購入のための資金プランを立てるところまでをオンラインで行うことで、販促を進めるものです。

南アフリカは厳しいロックダウンによって、自動車ディーラーも開店できない時間が長く続きました。現在は感染者の減少により規制が緩和され、営業ができる状態になっていますが、オンラインに移行した人々の購買パターンに沿いながら来店も促す仕組みともいえます。


【ケニア、エジプト、タンザニア】いすゞ自動車が3年ぶりにタンザニアで正規販売代理店を設定。エジプトのコングロマリットAl Mansour Automotiveの現地子会社を任命(8/7)

いすゞ自動車のケニア子会社Isuzu East Africaが、3年ぶりにタンザニア市場で販売を再開する。正規代理店としてエジプトのコングロマリットAl Mansour Automotiveの現地子会社を任命した。ダルエスサラムにショールームを設置する。

タンザニアは世界銀行による分類において、7月に低中所得国に格上げされている。

(コメント)いすゞ自動車は、GMとともにアフリカ展開をしてきましたが、GMが2017年に撤退したのに伴い、南アとケニアでGMの出資分を買い取り独資でトラックの製造と販売を開始しました。アフリカ28カ国に代理店を持ち、エチオピアでも製造を行っています(16ページ)。

ケニアでは、いすゞ、日野、FUSOなどが組み立て生産により新車のトラックを販売しています。アフリカで流通する自動車の9割以上は中古車と書きましたが、ケニアの商用車に関しては新車が優位です。いすゞはその中でもシェアが高く、いすゞ車に対するトラックドライバーさん達の信頼はとても高いです。

ケニアとウガンダ、タンザニア、ルワンダ、ブルンジ、南スーダンの各国は、東アフリカ共同体という地域共同体を結成しており、これらの国の間では、一定の現地製造比率を超えた製品については免税で販売することができます。つまり、いすゞのトラックは、ケニアから東アフリカ共同体の国々に免税で輸出することができます。

ケニアの商用車市場で高いシェアを誇るいすゞ車ですが、今回のニュースのタンザニアではいすゞのシェアは高くなく、むしろFUSOが高いです。隣国同士なのに面白いですね。これから巻き返しを図っていくのかと思います。

なお、さきほどトヨタとスズキの協業についての文章でリンク貼ったのと同じ記事で、いすゞのケニアにおける乗用車への進出も取り上げています。


【南アフリカ】ブリヂストンが南アのバイアスタイヤ工場を閉鎖へ(8/20)

ブリヂストンの南アフリカ現地法人Bridgestone Southern Africa (BSAF)は、ポートエリザベスにあるバイアスタイヤ製造工場の閉鎖を発表した。同工場は1936年に操業を始め、1日約500本のタイヤを生産する能力を持つ。

今回の閉鎖は、親会社ブリヂストンが最近発表した事業戦略に沿うもの。同社は、収益性の高い成長分野に焦点を当て、コアのタイヤ製品を強化する。農業機械や建設・鉱山車両用のバイアスタイヤは世界的に衰退しており、BSAFの業績も近年経済状況や安価な輸入品の流入といった業界要因によりプレッシャーにさらされている。

BSAFは、農業用でも普及が進むラジアルタイヤへのシフトを進めており、閉鎖するバイアスタイヤ工場の従業員をラジアルタイヤ工場へと配置転換することを検討している。ラジアルタイヤはより長持ちし、生産面においても近代的に高速で製造することができる。

(コメント)ブリヂストンは、南アにタイヤ工場を持ち、アフリカ38カ国に販売代理店を置いています(21ページ)。

今回バイアスタイヤ工場を閉鎖するとのこと、同じ南アに持つラジアルタイヤの工場は継続です。ラジアルタイヤの製造を開始したのは2018年、開始時のニュースはこちらです。


【マダガスカル】三菱商事が出資するオフグリッド発電の英BBOXXとマダガスカルのGroupe Filatexが提携を協議と報道される(8/21)

マダガスカルの不動産会社で太陽光発電事業も手がけるGroupe Filatexが、オフグリッド発電をアフリカで手掛けるBBOXXとマダガスカル事業における提携を協議していると明らかにした。交渉は初期段階にあり、BBOXXのビジネスモデルをマダガスカル農村部で応用できるかを分析しているという。

BBOXXはコンゴ民主共和国、ルワンダ、ケニアなどで事業を展開しており、未電化地域の人々に電気をきっかけにさまざまなサービスを導入するのがビジネスモデル。たとえば、仏有料テレビのCanal +と提携し、テレビコンテンツの追加提供などを行っている。プライベートエクイティAfrican Infrastructure Investment Managers (AIIM)が株式30%を保有しており、さらなる追加投資の検討も明らかにしている。

Filatexはマダガスカルの家族経営の不動産会社で、太陽光発電へと事業を拡大している。マダガスカルでは人口の85%が電力へのアクセスがなく、国土をカバーする送電網はないものの、年間の日照時間は約2,800時間という。同社は太陽光発電には100万人の潜在顧客がいるとしている。同社は、コートジボワール、ガーナ、ギニアなどでの事業展開も図っている。

(コメント)三菱商事は昨年8月に、SHS(Solar Home System)と呼ばれる、家庭用の太陽光発電キットをアフリカで割賦販売(サブスク販売)するBBOXXへの出資を発表しています。

SHSは、日本の商社にとても人気の投資先ですね。どの商社がどのSHSスタートアップに出資しているか、以下にまとめています。

未電化地域に電力を届けるというESG/SDGsの文脈に沿うことや、アフリカで攻めあぐねている消費者向けの事業であること、農村の流通という届けにくいところに物を届ける手段として将来的に活用できるのではないかという期待などが、出資につながっていると思います。ビックプレイヤーがすでに投資しており、スタートアップ投資といえでも安全牌であることも理由でしょう。


【南アフリカ】住友電工が自動車部品の談合を巡り罰金の支払いに合意(8/3)

住友電気工業は、同社が競争法に反して自動車部品において談合的な入札を行ったとする南アフリカの競争委員会の指摘に対し、30日以内に43万7, 278.38ランド(260万円)の罰金を支払うことで合意した。69の自動車部品メーカーが同様の疑惑で調査を受けたなか、住友電気工業が支払いに応じた最初の企業となった。
※1ランド=6.0円(モーニングスター、8/6)

【南アフリカ】南アフリカで実施されている自動車部品メーカーの談合摘発において、矢崎総業が住友電工に続いて罰金の支払いに合意(8/25)

ワイヤーハーネスを南アフリカで製造販売する矢崎総業が、談合行為に対して罰金380万ランド(2,300万円)を支払うことで合意した。

矢崎総業は、デンソー、住友電工とともに、事前に価格を取り決めたり、入札の応札企業を談合しているとの情報があり、調査が行われていた。南アフリカの競争委員会が行った調査により、3社は2003年から2009年の間に15回のカルテルに関与していたことが判明した。これらの事例には、ホンダやトヨタ、ルノー、日産といった自動車メーカーからの見積依頼が含まれている。最終的に競争委員会は、価格の取り決め、受注企業の事前協議、入札談合があったと判断した。

矢崎総業は不正行為への関与を当初否認していたが、競争委員会との和解に応じた。同社には課徴金の支払いだけでなく、独占禁止法遵守のための内部規定を作成して規定の実行状況をモニタリングすることが求められる。

住友電工は、43 万 7 278.38 ランド(270 万円) の罰金を払うことですでに合意している。
※1ランド=6.3円(モーニングスター、8/28)

(コメント)現在南アでは、自動車部品メーカーの談合疑惑に関する調査が広く行われているようです。住友電工、矢崎総業ともに、南アに工場がある日系メーカーなど向けにワイヤーハーネスを供給するため、現地に工場を持って生産を行っています。

南アフリカでは、日系の自動車メーカー5社が現地で生産を行っており、住友電工や矢崎総業を含む12社ほどの部品メーカーが現地で製造を行っています。製造を行わず販売拠点をもって販売している部品メーカーもあります。

どの企業が南アで事業を行っているのかは、こちらからご覧ください。16ページ目からがメーカー、19ページ目からが部品メーカーです。PDFをみたい方はこちらから


【ケニア】中古車などの輸出前検査を実施する日系2社が入札書類虚偽の疑い(8/7)

ケニアにおいて、自動車、モバイル機器、スペアパーツの検査事業を営む日系企業2社が27億ケニアシリング(27億円)の入札を勝ち取るために虚偽の文書を提出したことが発覚し、操業停止となる可能性がある。2社はAutoterminal JapanとEAA Companyで、偽造文書をケニア基準局(Kenya Bureau of Standards、KEBS)に提供した疑い。

日本における自動車、モバイル機器、スペアパーツの輸出前検査実施企業を既存のQuality Inspection Services Japan(QISJ)以外に増やそうとしている。KEBSは2018年4月3日に日本、アラブ首長国連邦、英国、タイ、南アフリカからケニアに輸出される中古車、モバイル機器、中古スペアパーツを検査するためにQISJと3年間の契約に署名した。

The National Assembly’s Public Investments Committeeによると、Autoterminal Japanは技術提案書に重大な虚偽表示があった。EAAは、2014年5月1日付けのリース証書を入札書類に添付していたが、当時英国に物理的および技術的インフラがなかったにも関わらず偽造した書類を提出した。2社に対してはケニアで事業を行うことを禁止する手続きが開始されている。


今回紹介したような日本企業の動向は、毎月まとめており、こちらにバックナンバーがあります。2012年7月からの情報が揃っています。

アフリカへの事業進出や新規事業を検討している企業の方に対して、さまざまな質問に回答するスポット相談を行っています。心理的に遠く、情報も少ないアフリカで事業を立ち上げるには、情報不足や土地勘不足がネックになることも多いため、さっと簡単に相談ができるようにしたものです。以下からお問い合わせください。




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