スズキ、インド異変が押す「変身スイッチ」(日経記事)

トヨタとスズキの提携は、アフリカの新車市場の開拓という意味では理にかなったものだと思われます。

アフリカは、南アフリカとエジプトを除いて、まだ新車市場は勃興していません。自動車はたくさん走っていますが、乗用車に関してはほぼ中古車です(トラックは、乗用車よりも新車比率が高いです。たとえばケニアの場合、中型までのトラックの9割は国内生産の新車です)。

モータリゼーションの目安とされる一人あたりGDPが3,000ドルを超える国がこれから増えてきます。新車の販売は、まさにこれからなのです。

アフリカにおいて新車にとって一番のライバルは、中古車です。中古車の価格は、物流費、保険、税金などを加えると、港に近い国で、おおむね日本から出荷される際のFOB価格の2倍程度です。40万円の中古車が80万円程度。その価格が新車のベンチマークとなっています。

さらに、アフリカの消費者は燃費に敏感です。ガソリンもディーゼルは決して安くありません。

よって、今後まず新車は、100万円前後で買える小型車の戦いになるのではないかと考えています。

そこで、スズキです。

ピンチを迎えたスズキが将来を見据えて踏み切ったのが、8月末に発表したトヨタとの資本提携だ。
「インドはもっと太くする。次はインドからアフリカへ商品を展開する」(鈴木社長)。スズキとトヨタはアフリカ市場の開拓で手を結ぶ。両社がインドで生産した乗用車をスズキのお膝元と言ってもいいインド西部グジャラート州の港を輸出基地にしてアフリカ市場に輸出し、アフリカ各地で販売、物流、サービスで協業する。「最後のフロンティア」と呼ばれるアフリカは新車市場規模が19年3月期に約125万台で22年3月期には2割増の150万台、その後も着実に増える見通しだ。

ただ、価格で競争力がある小型車だからといって、そうスムースに新車が普及しない理由がいくつもあります。

日本だと、「新車が本物でちゃんとしているが、中古車はお古で傷もの」のような価値観がありますが、アフリカの多くの市場ではその認識はありません。もともと自動車=中古車であり、ちゃんと走っているので、新車を買うには「なぜわざわざ新車を買うのか」に対する答えが必要です。

小型車については、ここ数年で中古車でも増えています。ケニアを走る車をみていると、マツダデミオやトヨタヴィッツが明らかに増えてきました。ガーナやコンゴ民のタクシーの主力車はトヨタヴィッツです。ケニアではUberがスズキアルトを使っています。

小型車の中古車は、小型車の新車よりさらに安く、比較する価格がさらに下がってしまいます。なお、トヨタヴィッツやスズキアルトは、「タクシーみたい」だから乗用車としてピンとこないという消費者もいるようです。

日本からの中古車が多い東アフリカなどでは、状態がよく、車内装備も充実した日本の車が輸入されているため、新車はそれと戦わねばならないという辛さもあります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?