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アフリカにおける日本企業の動き(2020年7月)

アフリカにおける日本企業の動きを毎月まとめています。

今月は、関西ペイント、日立製作所、住友商事、フルヤ金属、いすゞ自動車を取り上げました。

コロナの影響を受けて、日本企業のアフリカ事業ってどうなっているのでしょうか。

今回取り上げたニュースは、毎週メールで配信している「週刊アフリカビジネス」というニュースレターから抜粋したものです。週刊アフリカビジネスのご購読は以下から申し込めます。

そもそも、日本の企業ってアフリカで何しているの?と思った方は、こちらに600企業弱の情報を一覧にまとめてありますので、みてみてください。

それでは、以下ご覧ください。

【ナイジェリア】関西ペイントがナイジェリアから撤退と日経新聞が報じる(7/11)

関西ペイントが2020年度中にナイジェリアから撤退すると日経新聞が報じた。海外の拡大路線を転換する。M&Aにより欧米の塗料メーカーに先駆けて新興国に進出したが、今後は収益が低い資産を整理し、強みである企業向けを開拓するとしている。

(コメント)これは珍しく日本語のニュースとして日経が取り上げていたものですが、同社がナイジェリアの合弁企業の株式売却で合意したのは昨年度だし、ちょっと実情違いますね。週刊アフリカビジネスの法人版の方では、どういうことなのか、解説をしています。

関西ペイントは、2011年に南アフリカでヨハネスブルグ証券取引所上場企業を買収した後、2013年にジンバブエ、2017年に東アフリカ(ウガンダ、ケニア、タンザニア、ルワンダ)で現地企業を買収しました。2016年には主として自動車用塗料の製造販売拠点としてモロッコで現地法人を設立しています。こちら(PDF)に詳しく説明しています。

2019年度の売上に占めるアフリカ事業は357億円(構成比8.8%)となっています。今回10%を切ってしまいましたが、有価証券報告書でアフリカがセグメントとしてでてくる日本企業のうちの1社です。


【エジプト】日立製作所がABBのパワーグリッド事業を買収し設立したHitachi ABB Power Gridsがエジプトをアフリカのハブと位置づけアフリカへの輸出を強化すると明らかに(7/14)

日立製作所がスイス重電大手ABBのパワーグリッド事業を買収し設立したHitachi ABB Power Gridsは、今後エジプトをアフリカ地域のハブと位置づけ、エジプトで製造した変圧器と高電圧製品の輸出割合を数年で50%まで増やす考えであると、地域ダイレクターが明らかにした。

ABBは1926年にエジプトで拠点を開設し、現在10th of Ramadan工業団地に2つの最新鋭の工場を構えている。1つは変圧器、もう1つは高電圧製品を製造しており、変圧器は中東北アフリカの30カ国以上に、高電圧製品は5カ国に輸出している。変圧器の現時点での輸出割合15〜20%だという。現在はモロッコとコートジボワールに支店をおきながら、エジプトから北アフリカと西アフリカ27カ国以上をカバーしている。

(コメント)2018年12月に合意した、日立によるABBの電力システム部門の大型買収。1年半後のこの7月手続きが無事完了し、日本のメディアでも大きく報じられました。これがアフリカにどう関わってくるかというと、ABBはアフリカでガチに電力システム事業を行っているのです。

とくに、今回取り上げたエジプトでは、1926年と約100年前から事業を行っており変圧器と高電圧製品の工場を複数保有し、エジプトから輸出も行っています。

日本企業のアフリカビジネスは、製造業が弱いのです。正確に言うと、多くの製造業企業がアフリカで商売を行っていますが、販売のみで、現地に工場を持ち企業は非常に少数です。

自動車はトヨタの南アをはじめ各社および部品メーカーが工場を持つ例が多いですが、それ以外は上述の関西ペイントの他、日本たばこ、味の素、YKK、サントリー食品、ユニ・チャーム、大塚製薬、LIXIL、ロート製薬、サンヨー食品といったところでしょうか。

ABBの買収で、日立がこれに加わります。送電関連は政府相手の仕事や大型プロジェクトも多く、その顧客基盤を得られたのは大きいですね。

なお、上記の製造機能をアフリカに持つ日本企業も、グリーンフィールドではなく現地企業の買収で製造に参入した企業が多いです。JTも味の素もサントリーもLIXILもロートもそうですね。


【マダガスカル】住友商事がマダガスカルのニッケル鉱山開発事業アンバトビーの出資比率を54.17%へ引き上げへ。共同出資者カナダSherrittの債務整理により(7/27)
 
住友商事はマダガスカルのニッケル鉱山開発事業アンバトビーへの出資比率を引き上げる見通しだと発表した。47.67%から54.17%へと引き上げる。

共同出資者であるカナダSherritt International Corporationが、住友商事のSherrittに対する債権とSherrittが持つアンバトビー事業の株式の一部を交換するとした債務整理計画を提出し、債権者に賛成を得たもの。裁判所の承認を得て計画を実行する。住友商事は2017年にもSherrittから持分の一部を取得している。

アンバトビーは世界最大級のニッケルプロジェクト。4月からはコロナウイルスの影響で操業を停止しており、年内は操業停止が続くとされる。

(コメント)ニッケルは、次世代自動車にとって重要な鉱物資源で、将来的な需要が大変期待されています。

ただこのマダガスカルのアンバトビーは、操業前からマダガスカルの政変など外部環境に振り回され、今回のコロナでの操業停止など苦難続きです。もっとも、資源開発とはそういうものかもしれませんが。。

共同出資者のSherrittは2019年に持分比率に応じた株主拠出要請額の拠出ができず、株主間協定上の債務不履行に陥っています。債務の整理にあたって、住友商事が彼らの持ち分を引き取ったという形です。


【南アフリカ】フルヤ金属が南アPGM大手アングロ・プラチナムと低温活性触媒を活用する環境事業会社を合弁設立、アングロ・プラチナムが40%出資(7/27)

工業用貴金属メーカーのフルヤ金属は、南アフリカのPGM大手で英国に Anglo Platinum Marketingと合弁契約を締結したと発表した。フルヤ金属が設立した低温活性触媒を活用する環境事業会社Furuya Eco-Front TechnologyにAnglo Platinum Marketingが40%出資した。

Furuya Eco-Front Technologyは、人体に有害なアレルギーや悪臭の原因となる揮発性有機化合物(VOC)や、植物の腐敗を早めるエチレンを除去する低温活性触媒を量産できる技術を持つ。同触媒により、鮮度劣化による食料廃棄の削減やゴミの防臭、抗菌による公衆衛生の向上が期待できる。

(コメント)面白いですね。フルヤ金属は、南アの鉱山会社Lonminなどと取引を行い、PGMの販売を行っています。この触媒、保冷庫や輸送コンテナに活用したり、ゴミの処分や空気の清浄といった場面で使用することが期待されているとのことです。


【ケニア】いすゞ自動車がケニアでソーシャルディスタンシングを保ちながら最大限の乗客を乗せられるミニバスを再設計(7/30)

いすゞ自動車のケニア現地法人Isuzu East Africaが23人乗りミニバスを再設計した。コロナウイルス感染拡大により、密集を避けるため車内に空席を設けるというルールが実施されている中、効率的に多くの乗客を載せられるよう設計した。登録承認を受けるためにNational Transport and Safety Authority とKenya Bureau of Standardsと現在協議を行っている。

既存の33人乗りのミニバスは、空席を設けなければならないため、乗せることができる乗客数は合計16人となる。ミニバス運営事業者によると、これにより運行あたり1,000ksh(980円)の損失がでているという。再設計されたミニバスは座席を3列にし、23人が乗れるようにする。

ケニアにおけるミニバス産業の売上は年間4,200億シリング(4,100億円)以上とされる。
※1ケニアシリング=0.98円(モーニングスター、8/1)

(コメント)いすゞ自動車はケニアに工場を持っており、トラックなど商用車を中心に製造販売しています。いすゞは市場で人気ですね。アフリカので使われる自動車は中古車が多いですが、ケニアのトラックについてはこの、現地で作られている新車の方が中古車よりシェアが高いです。いすゞだけでなく、日野もFUSOもケニアでトラックを作っています。

ちなみにいすゞのトラック、改造されて、バスとして走っているのです。

こんなのとか、

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こんなのとか、(サムネイルの写真です)

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かなり自由な感じです。客席部分を改造する会社はいすゞが承認したオフィシャルな会社も存在しています。塗装はそれを行う専門の会社があります。

いすゞのケニアの工場には、バスになるのを待つトラックがたくさん並んでいます。

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【ルワンダ】ソフトバンク子会社HAPSモバイルが、ルワンダで成層圏での無人航空機(ドローン)通信基地局によるモバイル通信の実証実験を開始へ(7/31) 

ソフトバンク子会社HAPSモバイルが、ルワンダにおける成層圏通信基地局によるモバイル通信の共同研究に関してルワンダ情報通信技術革新性とMoUを締結した。

ルワンダにおいて無人航空機の試験飛行を実施し、4Gならびに5G通信の提供を実証する。アフリカ各国における商用化に向けての端緒とする。

ルワンダ情報通信技術革新省は、今回の実証実験について、概念実証を推進する国を目指すというルワンダ政府のビジョンと合致すると歓迎している。

(コメント)成層圏に基地局を設置して、現在の基地局ではコストが合わないエリアにもインターネットを拡大するというプロジェクト、ソフトバンクのHAPSモバイル社は無人航空機(ドローン)を使っていて、GoogleのLoon社は気球を使っています。

Loonについては、ちょうどこの6月でしたか、ケニアで気球インターネットの商用サービスを開始しました。HAPSモバイルは、今後同じ東アフリカのルワンダで実証実験を開始するということですね。

Loonは実証実験開始してから今回の商用化まで、たしか2年くらいかかっているはず。HAPSも同様でしょうか。

なお、ルワンダは、政府と握れば許認可が得やすい国で、新しいことの実証実験の場所として選ばれやすいです。ドローンによる医薬品配送のZipline社も、いまはガーナなどで事業を行っていますが、最初にトライアルしたのはルワンダでした。


アフリカにおける日本企業の動き、2012年からのバックナンバーはこちらから見ることができます。検索して見つけることもできますよ。




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