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携帯通信最後のフロンティア、エチオピアがモバイルマネーを開始

アフリカというと、ケニアのモバイルマネーM-pesa(エムペサ)が有名なので、どこでもモバイルマネーを使っているような印象がありますが、実は、違います。

モバイルマネーは金融と通信のはざまにあるだけでなく、結局は銀行口座に帰結するなんとかPayと違って既存の金融システムと並列に存在することになるため、法整備や規制の構築が大変なのです。

中央銀行も既存の銀行も既得権益が削がれますから抵抗します。ケニアのM-pesaは、さまざまな幸運が重なって普及できた産物であり、たとえば南アのようなテックの先進国でも、ナイジェリアのような人口が多い国でも、モバイルマネーは実質普及していません。

むしろ、モバイルマネーでなく、世界の潮流と同様、銀行口座をベースに決済・送金取引を使いやすいUIでモバイル化したモバイルウォレット(なんとかPay)か、モバイル出自の企業が銀行免許を取って展開するネオバンク、チャレンジャーバンクと言われるものが生まれています。

そんななか、エチオピアは独特の位置にいました。

エチオピアには通信会社が1社しかありません。国営のエチオテレコムが、人口1億人の通信事業を独占しています。

世界でもこの規模の国で外資開放をしていないのはごく少数らしく、グローバルな通信会社からすると、まさに最後のフロンティア、外資開放するときにはぜひ参入したい国でした。

歴史的な経緯もあり、外資に対して極めて排他的な立場をとってきたエチオピアですが、2018年にいまのアビー首相が就任し、経済の自由化を目指し始めます。

通信開放として、上限2社の外資に対して通信ライセンスを発行することと、エチオテレコムの株式40%を売却することを決めました。

通信ライセンスの入札には、10社以上が手を挙げたのですが、政府がだしてきた条件がけっこう厳しく、最終的に札を入れたのは2社だけでした。

ひとつは南アに本社を持ち、アフリカ17カ国で事業を行う、アフリカ最大の通信会社MTN。

そしてもうひとつは、英Vodafoneとその子会社である南アVodacom、ケニアSafaricomなどのコンソーシアムで、日本から住友商事も参加しています。

週刊アフリカビジネスでこのことをお伝えしたのは4月半ばでした。1週間で結果がでると政府筋は言っていたのですが、まだですね(1週間はいくらなんでも無理では?)

2社にライセンスを出すと言っていて、2社だけが応札したのだから、もう決まりかと思いますが、そうはいかない。エチオピア政府は(期待していた金額に到達しなければ)1社だけにするかもしれないし、どちらもなし(入札をやり直す)かもしれないとしています。ヤレヤレ。。

応札が少なかった背景には、金額や今後の投資額に関して政府が高いハードルを設けたことと、そのわりにはモバイルマネーなど虎の子となるライセンスが含まれていなかったためとされています。

エチオピアにもモバイルマネーは、これまでなくはなかったのですが、用途が限られていたり、使いづらかったり、キャパのない企業が提供者だったりして、実質的には広く消費者向けに提供されてきたとはいえません。

いいかえると、ライバルはゼロなわけで、すでにモバイルマネーを他国で展開し、競争にしのぎを削ってきた通信会社にとっては、垂涎の市場なわけです。

でも外資にモバイルマネーはやらせませんからね、といっていた矢先に、外資開放によって1社独占が崩されてしまうエチオテレコム側が、先にしれっとやってしまいました。

4月、中央銀行からモバイルマネーライセンスを得ました。

そしてつい一昨日、サービスが開始されました。

予定していた2週間以内とはいきませんでしたが、約3週間後にほんとうに開始されました。

当社の現地スタッフは、昨日さっそく入金し、妹に送金してみたそうです。

使い方や提供サービスは、ケニアのM-pesaと似ています。お金の出し入れはエチオテレコムの店舗で行います。USSDのみで操作を完結させることもでき、送金、決済、公共料金や学費の支払いなどが可能です。

現地語であるアムハラ語の画面。送金、決済、入金などが並んでいます。QRコードも装備されていますね。

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どうやら、外資への入札にモバイルマネーライセンスを含めなかったのは、まずは自国で知見を積むためだった様子。

エチオピアらしい堅実さ。。

アビー首相は、今後1年間は外資にモバイルマネーライセンスは出さない、よってこの間にしっかり学ぶように、モバイルマネーを除外したせいで入札の金額が低くなり損したんだから元とってよね(ちょっと意訳)、と発言しています。

1年後、実際に通信ライセンスを得た外資に対してモバイルマネー事業が許可されるかどうかはまだわかりませんが、この発言によってエチオピアが外資にモバイルマネーの門戸を開いた!と外野は盛り上がっています。

ツイートにも書いているように、開発したのはファーウエイです。5カ月で完了させたそうです。おそらく近いうちに、海外送金にも対応し、中国との貿易のやりとりにも使われるようになると思います。

モバイルマネーは取引のコメのようなところがあって、ケニアにいると、新規の取引や新しい事業を始めるときに、誰でも使っている即時決済の手段があることは、開始のハードルを一段下げることを実感します。

エチオピアはアフリカの中ではいまいちスタートアップが盛り上がっていない国ですが、今後増える後押しになりそうです。携帯で支払いを管理できるようになることで、他のアフリカではさかんな、配車、物流、バス管理といったモビリティー関連や、太陽光発電のSaaSサービスなどへの投資が生まれるでしょうし、コロナを経てアフリカで成長しているゲームやオンライン動画なんかとも相性いいでしょうね。

日本の3倍ある広い国土内での企業間決済や流通における決済、農産物の取引、eコマースなどに使われ、ビジネスへの参加者の裾野を広げ、また効率化することに期待です。



アフリカにおける新規事業に悩んだら、ご相談ください。今回記事でとりあげたエチオピアにおける事業についてもご連絡ください。エチオピアはこの写真を送ってくれたスタッフを始め、現地にとっても優秀なスタッフを抱えており、多くの実績があります。




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