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エムスリーがアフリカ投資-アフリカにおける日本企業の動き(2021年3月)

毎月、アフリカにおける日本企業の動きをまとめています。

弊社のサイトでは毎月アップロードしていたのですが、ちょっと忙しすぎて、こちらのnoteに書くのが間が空いてしまいました。

2012年から、現地メディアや海外メディア、そして弊社のネットワークから、日本企業のビジネス上の動きを収集しています。特に、アフリカに進出した、新規事業を開始した、投資を行ったといった、他の日本企業にとっても参考となる動きについて、注力して紹介しています。

アフリカに関する記事は、わりと飛ばし記事も多く、また実際には何も始めていないのにニュースになっていたりする場合もあるのですが、現場で動きがある、事業実態があるニュースについて、質実剛健な感じで選定を行っています。

前回noteで取り上げたのが12月の日本企業の動きだったので、前月3月から1月まで遡ってみてみましょう。

まずは3月。

エムスリー、豊田通商、SBI、丸紅を取り上げています。3月の一番の大きなニュースは、エムスリーによるナイジェリアの医療施設経営・投資会社AHHへの投資かと思います。

【ナイジェリア】エムスリーがガーナ、ナイジェリア、ケニアで医療施設を運営するナイジェリアのAfrica Health Holdings(AHH)に資本参加(3/1)

医療従事者専門サイトを通じた医薬品マーケティングのエムスリーが、ガーナ、ナイジェリア、ケニアで医療施設を運営するAfrica Health Holdings(AHH)に資本参加した。社内CVCファンドを通じた出資で、金額や比率は公開されていない。
AHHは、ガーナでRabito Clinic、ナイジェリアでCarePoint Hospitals、ケニアでMeridian Health Groupといった医療施設をあわせて38施設運営している。

エムスリーもプレスリリースしています。VCのLPとしてではなく、同社のCVCを通じての投資です。しかし、このプレスリリース以外、日本語の記事はほぼ見かけませんでしたね。エムスリーという日本を代表するヘルスケアIT企業で、いまや6兆円に迫る、ほとんどの著名な日本の大企業より高い時価総額である成長企業の初のアフリカ投資としては、寂しい感じでした。

エムスリーの主要事業は医療ポータル事業で、ポータルに参加する医師を資産として製薬会社向けに医薬品MRの機会を提供し、2000年の創業以来急成長してきました。しかし製薬開発ニーズの変化やシェアの取り切りによる成長余地の減少を迎えていることから、治験や遠隔医療といった領域に事業を広げ、また中国、英国、米国、アジア各国へと事業地域を広げています。

投資先であるAHHは、途上国において医療のオンライン化や遠隔医療の実現に取り組んでいる企業であり、成長余地というならその宝庫であるアフリカの主要国で病院を経営している企業です。エムスリーにとっては事業シナジーを狙った戦略投資の観点もあったでしょう。そうでなくても、エムスリーは近年投資事業にも力を入れており、世界においてニッチな領域で競争力のある企業に投資しています。

AHHはハーバード出身の元キャピタリストが創業した企業であり、エムスリーとのカルチャーとも近く、アフリカの企業であっても投資がしやすかった面もあるように思います。

日本企業は昨今、アジアを中心とした新興国で病院投資を実施していますが、その地理的拡大にという意味でも面白いですね。

3月の他のニュースは、いずれもアフリカの、特にスタートアップ投資を継続的に行っている、豊田通商、丸紅、SBIに関連するニュースです。

なお、この記事のサムネイル写真は、豊田通商の2つ目のニュースに絡めてウガンダのバイクライダー達の写真です。アフリカは、アジアと違い、どこでもバイクがたくさん走っているわけではないのですが、ウガンダはそのなかでは比較的二輪が優勢な国です。


【コートジボワール】豊田通商がアフリカのモビリティースタートアップに投融資するMobility 54を通じてコートジボワールの交通スタートアップMoja Rideに出資(3/3)

豊田通商とそのグループ会社CFAOは、共同で設立した投資会社Mobility 54 Investmentを通じて、コートジボワールのデジタル交通プラットフォームスタートアップMoja Rideに出資する。出資金額は非公開。

2017年にMoja Walletから名称変更したMoja Rideは、アビジャン市を中心に1,200台を超えるタクシーやバスに対して、複数の交通サービスにまたいで予約やキャッシュレス決済ができるシステムを提供している。アビジャン市には、約3万5,000台の乗り合いタクシーと約8,000台のミニバスが交通サービスとして存在している。同社は2015年11月には、小規模店舗向けデジタル決済ソリューションへの取組みに関してビル・アンド・メリンダゲイツ財団から助成金を得ていた。

今回の出資は、4,500万ドル規模のファンドであるMobility 54による新株予約権付転換社債の引き受けにより行われる。転換社債は同ファンドが2020年にケニアのバス運行管理スタートアップDate Integratedに出資した際も用いられた。Moja Rideへの出資は、2月に実施されたJICAと日本経済新聞社によるStartups in AFRICAというビジネスプランコンテストで、モビリティ54が特別賞を授けた後に決定された。


【タンザニア】SBIホールディングス傘下の中古車輸出SBI Africa Companyがタンザニアに法人設立。SNSマーケティングのBSMOや自動車修理のSaint Partsと提携(3/24)

SBIホールディングス傘下で中古車輸出を手掛けるSBI Africa Companyと、日本製品のSNSマーケティングを行うBSMOが、タンザニアのダルエスサラームにSBI Motor Tanzaniaを設立した。顧客対応のため現地にスタッフを置く。SBI Africa Companyがアフリカで法人を設立するのは初めて。

タンザニアの規制当局Tanzania Bureau of Standardsは、輸入中古車の到着時検査を義務付ける輸入規則の変更を行っており、運用は4月初旬からとされている。この変更に対応するため、SBI Motorは税関手続きと陸上輸送を代行するAfritel Systemと提携した。加えてタンザニアで修理工場を営むSaint Parts Companyと提携し、SBI Motorのサイトから中古車を購入した人へ無料修理を提供する。

SBI Africa CompanyとBSMOは2021年2月に提携した。東アフリカに代理店を設定し、月1万台の販売を目指す。


【ケニア】丸紅が出資する家庭用太陽光発電キットのPAYG販売の英Azuri Technologiesが有料テレビMultiChoice Kenyaと提携し、テレビと有料コンテンツのパッケージ販売を開始へ(3/25)

家庭用太陽光発電キットのPAYG販売の英Azuri Technologyと、南アフリカの有料テレビグループMultiChoice傘下でKenyan Broadcasting Corporationとの合弁事業であるMultiChoice Kenyaが、従量課金制のTVパッケージAzuri TV400の発売を開始する。太陽光発電キットにテレビを追加し、MultiChoiceの衛星放送DStvコンテンツをAzuriの顧客に提供する。

Azuri TV400は、太陽光発電キットに32インチTVとDStv HDデコーダーをセットする。80ワットの太陽光パネルと1時間あたり160ワットのLFPバッテリーを備えており、予想寿命は10年以上としている。

費用は頭金が8,999シリング(8,900円)で、1日あたりの使用料115シリング(110円)を払って30カ月間使用できる。バンドルされているDStvHDデコーダーには、月額1,000シリング(1,000円)から月額Ksh7,900(7,900円)まで様々な視聴パッケージがある。
※1ケニアシリング=1.0円(モーニングスター、3/27)


【ウガンダ】豊田通商が出資するウガンダのバイクタクシーリースおよびアセットファイナンス事業のTugendeがシリーズAで新たに360万ドルを調達(3/31)

アセットファイナンス事業を展開するウガンダのスタートアップTugendeがシリーズAで360万ドルを調達した。米ベンチャーキャピタルPartechがリードインベスターとなり、ケニアEnza Capitalや現地のエンジェル投資家らが参加した。調達資金は、ケニア、ウガンダでのファイナンス事業の原資とする。

今回の資金調達は、2020年11月に豊田通商が設立した投資ファンドMobility 54が主導した630万ドルの資金調達に続くもので、これにより、TugendeのシリーズAでの調達額は990万ドルに達した。


長くなったので、1月と2月分の日本企業のアフリカでの動きは、やっぱり別記事にします。弊社のホームページに動き自体はアップしてありますので、早く見たい方はこちらからどうぞ。


2012年からのバックナンバー、アフリカにおける日本企業の動きはこちらから


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