S・S『違法の冷蔵庫』
ミニマリストの僕たちが隠れ家に住んで半年。
前までは付かず離れずで仲が良かったのに
「依存されたくないの。依存は荷物でしかない」
あなたは僕を避けるように
白濁した窒素と酸素、二酸化炭素の箱に入ってしまった。
ここから見ると
本当は息苦しさがないのに
あなたが生き苦しく見える。
「そんなに僕が嫌い?」
僕は外へ出て
鋭角の石を拾い、手に握るのだけど、
箱を叩いてみようとすると
あなたの尖った目から左目だけ涙が浮いて
怒っているのか、威嚇して見える。
僕は後ずさりし、あなたから目を逸らし
握った石をベランダから放り投げ
風俗やキャバ嬢が狂い咲く街へ足を運ぶ。
箱に入ったあなたを見捨てるつもりはないが
きっと違う男が助けにくる。
これが線引きだからね、僕からの餞。
白濁した気体は水素と炭素に入れ替わる。
違法の冷蔵庫か。
王子さまがいるんだろう
幸せになりな
あなたの価値観に合うといい
「またね、ばいばい」
北東からの風は冷蔵庫の冷気より冷たい。
※ 賞レースに参加するつもりがないので本日投稿
#小説
#ショートショート
#ショートショートnote杯
#ショートショートnote