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言葉はラベルを貼る

「言葉はラベルを貼る。」

彼とビール瓶で呑みながらのことだ。

後輩の一人が、ココロが弱いって指導されてるんですけど、どうすれば強くなるか彼自身も僕も悩んでいる、と僕が話したときに彼がビールの瓶のラベルについて語りはじめた。

「1回貼られたラベルは貼り替えるの大変や。この瓶のラベル取れるか?」

渡されたビール瓶のラベルを端から爪を立てて剥がそうとするが、隙間なく貼り付けられていラベルは取ることが出来なかった。

貼るのは簡単。剥がすのは難しい。だからこそ、最初にどんなラベル貼るかよう吟味せなあかん。ビール瓶にメロンソーダのラベルは似合わんやろ。」

ビールはビールがいいですね。

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「人はいろんなラベルを貼られる。優しいラベル。反対に甘いというラベル。芯があるというラベル。反対に我が強いというラベル。人は簡単にラベルを貼る。

気をつけなあかんのは、人はそれになろうとしてまうねん。ビールならビールにってな。」

ラベルの貼り方というのはあるんですか。僕は彼に尋ねる。

「あるよ。マイナスのラベルを貼り付けたらそればっかり気にしよる。失敗したあかんて。萎縮する。

ココロが弱いというラベル貼られると、自分は弱いからあかん、になる。

だからラベル貼る時はプラスのラベル貼るねん。そしたら、それになろうとするポジティブなエネルギーが生まれんねん。

弱いなら強くなれ、ではない。弱いとは痛みがわかるということや。オレなら痛みがわかるってラベルを貼る。そこを伸ばせばええ。」

彼は瓶を持ち、ボクと自分のグラスに注ぎ、追加で注文する。

「こわいで、言葉は。すぐラベル張りよるからな。貼り間違えた、で貼り替え難しいからなぁ。」

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人の良いとこを見つけることが大切なんですかね、と言って、僕はビールを飲む。

「そうや。でも、なにより効果的なんは、相手とすり合わせすることやな。

自分かて他人にやで、勝手にここがエエトコと決め打ちされて悪い気はせんけども、できるなら話はしたいやろ。」

ええ、確かに。納得してないとしっくりこないこともありますから。

店内が混み始め、周囲の声が大きくなった。そのため、彼の声も自然と大きくなっていた。

「相手のポジティブなエネルギーを生むには、相手のなりたい姿から、言葉を互いにすり合わせたほうがより効果的やねん。

それができれば、自分で動くエンジンが搭載されんねん。」

そして彼が言った。

「エエかぁ。言葉はラベルを貼りよる。だから、相手とすり合わせてポジティブなラベルを貼る。これが肝心や。」

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余談

後日、後輩にどんなふうになりたいかを二人で対話した。そして、僕は後輩のことを、「寄り添う人」というラベルを貼った。

寄り添う人と会えば、必ずよく寄り添う方法はあったか、とか、発見はあったか、とか声をかけ続けた。

後輩はそれ以来、僕のことを慕うようになり、今では僕のチームの右腕になって、僕を含めたメンバーに寄り添ってくれている。

※彼については同マガジンの「#1 語れる言葉を持っているか」をご覧ください。

※僕が彼のことを書く理由や僕の現状については同マガジン内の「不完全なことば」をご覧ください。




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