被害妄想(ショートショート)
トントン
トントン
ノックの音がした。
「こんな夜にだれだろう」
ベッドの枕元に置いてある目覚まし時計を見ると、夜8時過ぎだった。
35歳で独身のぼくはこの「つばめハイツ」に引っ越して3か月ほど経つが、いまだかつてNHK訪問員のほかに訪れる者はいない。
玄関のドアノブに手をかけた。
「はい。どなた様ですか」
ドアを開けると、アラフォーらしき髪の長い色白の女性が立っていた。
「あのー」
どこか見覚えある女性だ。
真剣な眼差しを向けてくる。
「あのー、このアパートの上に住んでいる