マガジンのカバー画像

うまべぐ著 読みものコレクション

281
エッセイ、コラム、ショート小説などを書いてます。現在休止中ですが、いつか復活しようと思っています。
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

海は嫌い

小さな改札口を抜けると、都会とは異なる匂いがした。 土曜の午前にもかかわらず、陽射しが容…

動けなかった男と動ける男たち(エッセイ)

朝6時、4階病室のカーテンを開けると、ちょうど目の高さにある近くの電線にすずめが二羽とま…

短歌 入院中にて

ヘルプ三―この病室は踏切か?  迫る足音左から・・・右へ #短歌 #入院 #ナースコール #看護

最後の墓 (エッセイ)

『最後の墓』 昨日体験したことを書きました。 #エッセイ #墓参り #不思議な体験

12

歳月

音もたてずにいつの間にか空にニョキっと現れた駅前にある巨大マンション建設現場の前を歩くと…

ひきこもり

木の葉ざわめく青山通りをゆっくり歩いた。 向こうからマリンブルーのジャケットをたなびかせたフィーゴ似の外国人がさっそうと闊歩する。その横ではワインレッドのパンツスーツに身を固め、長い髪を抑えながら日本人キャリジョが表情を崩さず大股で歩く。 二人は私の目の前を横切り、イタリアンレストランに消えていった。 私は昔の勤務先が蘇る。 普段、リモワにデイトレの私は、自分の腹に目をやる。 帰り際にココカラファインに立ち寄り、フックにぶら下がる『大人のカロリミット』の商品札を手に取った。

一芝居(ショートショート)

朝ご飯を済ませ、一人分の洗濯物をハンガーに干していた。 北関東に住む私は72歳になり、定年…

異空間(エッセイ)

納期が重なっていた別々の仕事を終えた。 業種は異なれどどちらも新技術と新製品、そして米国…

月曜日の盗難(ショートショート)

赤川はある食品会社の営業所に勤務していた。 その営業所の2階は独身寮、その上の階は社宅とな…

勝ったぞ、見てるかー! ~とっておきの名前~(ショートショート)

ムーンストーンが目の前を先頭で駆け抜ける。 栗毛のたてがみを風になびかせながら、尻尾をピ…

変わりゆくもの(エッセイ)

6人部屋へ戻ってきた俺たちは少しぶかぶかのスーツからジャージに着替えた。 だれもがうつむき…

できなかった乾杯 ~あこがれの元巨人軍多摩川グラウンド~(エッセイ)

梅雨の合間に、夕方のウオーキングを再開した。 これまでとルートを変え、車も人もあまり行き…

被害妄想(ショートショート)

トントン トントン ノックの音がした。 「こんな夜にだれだろう」 ベッドの枕元に置いてある目覚まし時計を見ると、夜8時過ぎだった。 35歳で独身のぼくはこの「つばめハイツ」に引っ越して3か月ほど経つが、いまだかつてNHK訪問員のほかに訪れる者はいない。 玄関のドアノブに手をかけた。 「はい。どなた様ですか」 ドアを開けると、アラフォーらしき髪の長い色白の女性が立っていた。 「あのー」 どこか見覚えある女性だ。 真剣な眼差しを向けてくる。 「あのー、このアパートの上に住んでいる