歳月
音もたてずにいつの間にか空にニョキっと現れた駅前にある巨大マンション建設現場の前を歩くと、壁面に掲げられた電光掲示盤の数字がくるくる変わるのをガン見した。どうやら騒音計のようだ。
路地を入る。
色褪せた玄関のドア半分が草で覆われている古民家があった。なんだかひと気のなさそうな佇まい。その庭に伸びる太い木から、まるで歌唱力ナンバーワン決定戦のようなミンミンゼミのライブに足が止まる。優勝しそうな一番声量のある一匹の鳴き声が「ミンミンミーン」と余韻を残すと、甲子園のサイレンを思い出した。
「もうすぐ終戦記念日か」。
空を見上げると、マンションを覆うように入道雲が立ち込めていた。
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